【魔女と蔑まれた私。実は神託の聖女でした?-命を弄ぶ回復魔法使いと蔑まれた私の物語-】

はくら(仮名)

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【老執事の話】

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 私は長年、レアフ家に執事として仕えてきました。
 レアフ家というのはユキア様の家系のことであり、国内でも有数の伯爵家として有名でございます。
 私はそのレアフ家に先々代、つまりユキア様のご祖父母の代から仕えてきたのです。
 はい。私は現在の当主を自称している、ユキア様の義理の父親のことを認めておりません。

 あの男は、あの男だけでなくユキア様の義理の母親もまた、レアフ家の財産を強奪しに来た悪党だと私は思っています。
 ユキア様のお父様……先代の当主様は、あの女に騙されたのです。
 あの女は、ユキア様のお父様が奥様を亡くして精神的に弱っていたところにつけこんで、レアフ家を乗っ取る為に取り入ったのです。

 ユキア様のお父様が、再婚した一年後に突然死したのが、そもそも怪しいのです。
 実はお亡くなりになる半年前から、ユキア様のお父様は体調を度々崩しておられました。その度にあの女が特製の薬と料理だと言って、どこで手に入れたのか分からない薬と、自分で作った料理を旦那様に食べさせていました。

 きっとあの薬は毒薬で、料理にも毒が含まれていたに違いありません。
 ……はい、確たる証拠はありません。
 私がどこで買った薬か尋ねても、

『知り合いの医者に特別に処方してもらったものよ』

 と答えて、ならばそれは誰かと問い詰めても、

『貴方には関係ないでしょ。全く、老害ジジイはこれだから嫌いよ』

 と文句を言う始末。
 確証こそありませんが、私には確信があります。
 あの女は間違いなく、あの男と最初からグルになっていて、レアフ家の財産を奪う為にやってきたのです。

 でなければ、旦那様がお亡くなりになってから、すぐに再婚するなどということは致しますまい。
 旦那様を病死に見せかけて殺害することも、あの男と再婚することも、あの男が現当主の座に居座ることも、全ては最初から計画されていたことに違いありません。
 …………ユキア様が不憫でなりません。

 ユキア=レアフ様こそ、レアフ家の現当主に相応しいお方であり、レアフ家の全ての財産を相続すべき資格をお持ちなのです。
 それなのに、あの者らときたら……。
 よりにもよってユキア様を魔女呼ばわりして罵り、蔑み、挙げ句の果てには小さく狭い物置部屋に追いやる始末。

 断じて許せませぬ。
 無論、私はあの者らに抗議しました。しかし、あの者らはてんで聞く耳を持たず、

『そんな言い掛かりを付けるなら、お前をクビにするぞ! それでもいいのか⁉』

 そう怒鳴ってきました。
 …………私はとても悔しい気持ちでいっぱいでしたが、その場は引き下がるしかありませんでした。
 実のご家族を失い、命を弄ぶ魔女だと蔑まれ、小さく狭い物置部屋に追いやられたユキア様の味方になれるのは、いまはもう使用人である私達だけでした。

 もしも私や私達がクビになってお屋敷を去ってしまえば、誰がユキア様のお力になれるでしょう?
 私達がいなくなってしまえば、ユキア様の味方が減るだけではなく、あの者らが新たな使用人を雇って、ユキア様を迫害することを推し進めてしまうかもしれません。
 だからこそ、それが容易に予想出来るからこそ、私は、私達は、お屋敷から出ていくわけにはいかなかったのです。

 しかし、私達の助力にも限界があります。私達に出来るのは、あの者らに気付かれないようにユキア様の身の回りの世話をして、お心の支えになっておあげになることくらいでした。
 それでなければ、ユキア様を連れて、お屋敷から、あの者らから逃げ出すくらいがせいぜいでしょう。
 ですが、それでは、ユキア様のレアフ家の継承権を放棄したも同然になってしまいます。レアフ家とは全く関係のない者が、レアフ家を乗っ取るのを認めてしまうことになってしまいます。

 ……ですから……はい……貴方様のご来訪のお知らせを受けた時は、これこそが神様がお与えになった最後のチャンスだと思いました。
 どうか、どうか、ユキア様をお助けになってください。
 ……王太子殿下。



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