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【第四幕】 【王都】
その六十四 ……あのシスター、とは?
しおりを挟むついさっきまでそこには誰の気配もなかったはず……ミョウジンは顔付きに緊張感を漂わせて、半ば身構えるようにしながらユウナに言う。
「いったいいつからそこにいたんだ?」
「……たったいまです。あなたがなかなか戻らなかったので、様子を見に来ました。……フーラさんの出迎えに行っているだろうとは思っていましたが……」
「……ドゥの指示か?」
「……それもあります」
鋭い顔を向けるミョウジンと、無表情で受け流すユウナ。
二人の雰囲気にフーラはしどろもどろになりながら、
「あ、あの、けんかは良くありませんよ。二人とも仲良くしましょう」
そう言う彼女に、ミョウジンは答える。
「心配するな。別にケンカなどしていないさ」
「そ、そうですか……?」
「ああ。それより、きみは彼女のことを知っているのか?」
ミョウジンの問いに、フーラはうなずいた。
「はい。まだ見習いだったときに、回復魔法について教えていただきました」
「そうか……」
そうつぶやいてから、ミョウジンはあることに気が付いて、思わずユウナのほうを見る。
(いまのフーラの口振り……もしかしてこのユウナという女は、以前から王宮にいたということか……てっきり、俺がこっちに召喚されたあとにやってきたのだと思っていたが……)
ミョウジンがフードの人物たちの元に召喚されたあと、チート能力を使いこなすためやこちらの世界の常識や習慣などを知るために、しばらくの間、王宮や王都で過ごしていたことがある。しかしその期間のうち、ユウナの姿を見かけたことは一度もなかったはずだった。
……少なくとも見た記憶はなかった。
ただ単にユウナの影が薄いということもあるだろうし、ユウナと会わなかっただけということだろうが……何か腑に落ちない気がした。
そしてふとした疑問がよぎる。
もしユウナが意図的にミョウジン含めて、ショウやジャセイなどの、こちらに召喚されたチート能力者と会わないようにしていたとしたら……?
それなら、いままで自分がユウナの存在に気が付かなかった理由にも説明がつくかもしれない。
しかし、なぜ彼女はそんなことを……?
ミョウジンがそんな疑問を巡らせていると、フーラがユウナに話しかけていた。
「そういえば、さっきミョウジンさんと話していたんですよ。外壁の門を通るときの通行証の制度を見直したほうがいいって。ね、ミョウジンさん」
フーラがミョウジンに振り向く。考えていた疑問を中断させて、ミョウジンはうなずいた。
「あ、ああ。俺が前にいたところでは、通行証の発行には身分証の提示が必要だったし、その通行証は発行した本人しか使えなかったからな。こっちでもそうしたほうがいいと思ったんだ」
「……なるほど……」
二人の言い分に納得したのか、ユウナは静かにうなずいて言う。
「……あとでドゥに伝えておきます……」
彼女の返答に、フーラも口を開いた。
「あとはドゥさんや王さまたちに任せておけば大丈夫ですねっ。それはそうと、シスターさんの用事もちゃんと間に合えばいいですよね、ね、ミョウジンさん」
「あのシスターのことなら心配する必要はないだろう。きみと違って、きちんとしてそうだったし」
「あ、ひどいですっ。私だってちゃんとしてますからっ」
「いつも大事なときにドジばかりしているがな」
「うっ……だからこれからは気を付けますって」
「分かった分かった」
フーラとミョウジンの会話を聞いていたユウナが、静かな雰囲気を崩さないまま、横から口を挟んだ。
「……あのシスター、とは?」
それに対して、明るい調子でフーラが答える。
「イブさんというシスターさんです。先ほど、門を通る前に会ったんですよ。王都に急ぎの用事があるとのことでした」
「……。……そう……ですか……」
ミョウジンもユウナに言う。
「そういえば、同じノドルの街のシスターだったな。もしかして、知り合いか?」
「……。……ええ……」
静かな雰囲気を崩さないまま、感情のこもっていない無表情で、影の薄い修道女は答えた。
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