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第三十二話 たぶん
しおりを挟む笑い声を上げるルタを、ロウは見やる。そこで彼女は思い出したように。
「それは分かりましたから、教えてくださいよ。あなたのスキルってなんなんですか?」
「ん、『未熟』だよ」
「『未熟』?」
「そ」
なんとはなしに答えるルタを、ロウは一瞬ポカンとしたように見る。彼女のその様子に気付いた彼は。
「どした? そんなに珍しいスキルか?」
「珍しいかどうかは分かりませんけど、あたしは初めて聞きました。普通、スキルっていったら『長剣』とか『短剣』とかの攻撃向きのものか、『料理』や『鑑定』みたいなサポート向きが多いですから」
「まーなー」
あっけらかんとしたふうに応じるルタに、ロウは続けて尋ねる。
「ですけど、どうして『未熟』がデバフにつながるんですか?」
「そんなことおれに聞かれてもな。推測するに、いわゆる未熟っていうのは、ちゃんと成長していない、一人前に育っていないってことだろ」
「まあ、そうですね」
「だからさ、『未熟』スキルは対象をその未熟な状態にして、元々の状態から能力を下げている……んだと、おれは思ってる」
「……分かるような、そうでもないような……?」
ルタと最初に出会ったときのエビルボア戦、およびそのあとの迷惑な冒険者とのケンカ……その二つに関しては、確かに対象を未熟な状態にしたことでデバフ効果を与えた、ということで説明がつくかもしれない。
だけど、とロウには疑問が残る。
「エビルボアと迷惑な冒険者はそれでデバフしたというのは分かりましたけど、それなら今日のスケルトンタイガーはどういうことなんでしょう。あれはすでに死んで骨になったのが、スピリット系に憑依されたものです。筋肉がなくて骨だけなのに、未熟な状態にできるんですか?」
「んなこと言われても、実際にできたしなー」
ボリボリと、少し困ったようにルタは頭をかく。
「あれはたぶんだけどよ、骨の状態を変化させたんじゃねえかな」
「……骨を『未熟』にしたってことですか?」
小首を傾げるロウに。
「そ。骨粗しょう症って病気、あるじゃん」
「聞いたことがあります。骨がもろくなる病気ですよね」
「そう、それ。スケルトンタイガーの骨の密度とか強度とかを未熟、つまり低下させてよ、その結果、あいつのステータスを下げたんじゃね。たぶん」
「…………」
彼の説明に、ロウは納得したような、まだ『?』が残っているような、そんな顔をしている。
「というより、たぶん、ってなんですか、たぶんって。自分の能力ですよね」
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