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第六十三話 面倒くせえ

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 少し困ったように頭をポリポリとかいてから、ルタは看護師に聞いた。

「とりあえず、病室だけでも教えてくれねーか? 一応行ってみて、ダメそうだったら帰るからさ」
「構いませんけど……官憲の方達に疎まれても知りませんからね」

 病院内で面倒事を起こされたら困ると思ったのだろう、看護師は渋い顔をする。が、一応ルタ達に教えることは教えてくれた。
 そしてルタとロウは教えられた病室の場所へと向かっていく。三階の一番端がその部屋であり、そこに向かいまでの道中で、ロウはルタに聞いた。

「でも、ルタさんも通り魔を捕まえる気になったんですね。あの三人組に聞きに行くってことは。てっきり官憲に全部任せるのかと思ってました」
「え」
「…………え……?」

 意外な様子でロウを見るルタに、彼女もまた疑問符を返す。それからルタは。

「あー、あー、うん、まあ、そういうことになるか。結果的には」

 と、どこか奥歯にものが挟まったような言い方をした。彼のその言葉に、当然ロウは疑問を抱き、質問を重ねる。

「結果的には、って……じゃあ、どういうつもりで話を聞きに来たんですか?」
「どういうつもりでって、そりゃあ、あんたを護衛から外すためだよ」
「…………はい?」

 これまた予想外の返答が飛んできて、ロウはさらに疑問符を浮かべてしまう。

「どういうことですか? 自分の命を狙っているから返り討ちにしようとか、関係ない人達を巻き込んで許せないとか、そういうことじゃあ……」
「違う違う。いや違わないけど、一番の理由じゃない。だいたい、俺が標的にされているかもってのだって、ただの憶測だし」
「それはそうですけど……」
「一番の理由はもう言ったけど、あんたに護衛をやめさせるためだよ。さっさと通り魔を捕まえりゃ、あんたの面倒くさい護衛もなくなって、晴れておれは自由の身になれるんだからな」
「…………」

 あまりの言い草に、ロウは呆れて口をポカンとしてしまった。

「どんだけあたしに護衛されるのがイヤなんですかっ」

 いまいるのが病院だということも忘れて、思わず声を上げてしまう。廊下や病室にいた何人かがびっくりしたように彼らを見た。
 周囲からの注目を集めていることに、慌てたようにルタが彼女に言う。

「声がデケエって。病院なんだから」
「す、すいません……」

 指摘を受けて、ロウが周囲に頭を下げていく。それから再びルタに向いて、今度は普通以下の声量で。

「そんなにイヤですか? あたしに護衛されるの」
「イヤっていうか、面倒くせえ」
「面倒くせえ、って……」

 嫌なこととどう違うのか?

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