116 / 131
第百十六話 死んでたんですね
しおりを挟むルタとおやっさんが知り合ったのは数ヶ月前のことだ。件のパーティーを抜けたルタが日々のクエストで日銭を稼ぎ、腹をすかせながら路地にうずくまっているときにおやっさんが声を掛けたのが最初だった。
そのときにツケ払いでいいということで牛丼を奢ってもらい、以来、ルタは店の常連となったのだった。
そしてわずか数ヶ月という間ではあるが、互いに相手はこういう人間だと理解し、気の置けない言葉を交わすようになっていった。
だからこそルタは、いまのおやっさんの態度に疑念を覚えたのだ。予想していた態度とは異なっており、それはつまり、この問答でおやっさんはなにか重大な秘密を隠しているのではないかと。
それがなにかまでは、はっきりとは分からないが。
「遠回りな聞き方は苦手なんでな、単刀直入に聞くぜ。あんたはメディ=イールと知り合いだったのか?」
「…………」
沈黙。
「いつ、どこで、どんな理由で知り合った?」
「…………」
沈黙。
「まさか恋人同士だったなんて言うなよ。もしくは親子とか親戚とかもな」
「…………」
再三の沈黙、かと思われたが、やや遅れて返答が来る。
「……まさか。んなわけあるか。変な誤解はすんじゃねえ」
「だよな。奴からもそんなことは一度も聞いたことはないし、匂わせてもいなかったからな」
「…………!」
ルタの口振りに、おやっさんは直感したようだった。
「おまえ……まさか知り合いだったのか……っ⁉」
「まあな。知らなかったのか。メディから聞いてなかったのか?」
「……聞けるわけがねえ。俺が見つけた時には、もう……。…………」
なにかを言おうとして、だがおやっさんは押し黙ってしまう。それ以上に口を開かせるには、事情を説明させるには、なにかが足りないらしい。
と、そこで、おやっさんの口走った言葉を聞いて、ロウがなにかを察した。その考えを証明できるようなピースは少ない。だがおやっさんの言葉はヒントになった。
それを確かめるために、ロウがおやっさんに言う。あるいはそれは確認のための質問かもしれない。
「……死んでたんですね。メディ=イールさんは。あなたが見つけたときには、もう」
「…………っ」
おやっさんが鋭い視線をロウに向ける。ロウはそれをまっすぐに受け止めて、まっすぐに見つめ返す。
明確な返答はなかった。けれども、おやっさんのその反応がすべてを物語っていた。
メディ=イールはすでに死んでいると。
二人の様子におおよそは察したものの、ルタは現出した疑問をおやっさんにぶつけた。
「おい、待て。メディがもう死んでいて、おやっさんがそれを発見したのなら、なんで失踪届けを出したんだ。普通に殺人として官憲に言えよ」
「…………」
「黙ってねえで、なんか言ったらどうなんだ? まさか本当にあんたが通り魔なのか?」
怒鳴っているわけではない。大声を上げているわけでもない。声の大きさはいつものような普通程度の大きさで、感情を抑えた冷静な口調。だがその奥には確かに真実を追求する真剣さが込められていた。
0
あなたにおすすめの小説
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!
本条蒼依
ファンタジー
氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。
死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。
大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる