【完結】 『未熟』スキル 最強ではないが相手を最弱にすれば関係ない ~かつてパーティーを追放された者の物語~

はくら(仮名)

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第百二十二話 絶対に人だけは

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 ルタは拳を握りしめる。ルタは元パーティーメンバーに不親切な態度を取られ、元パーティーから追い出された身だ。だから、彼らの身に起こった不幸に対して、憤慨する道理はどこにもない。
 あるいはザマア見ろと言い返すこともできるはずだった。だが……。
 だが、ルタは拳を握りしめた。怒る理由などないはずなのに、なぜだか怒りが湧き上がってきた。理由は分からない。足手まといと、お荷物だと言われて、もはや仲間でもなんでもないはずなのに。

「……ちっ……ロウの癖が移っちまったのかもな……」

 小さくつぶやく。そうでなければ整合性が合わないと言わんばかりに。
 そしてまた。言いようのない感情を抱いていたのはロウも同じだった。

(この人は、いいえ人じゃない……この存在を野放しにしておくわけにはいかない……っ)

 悪魔は足元に倒れているニーサを見下ろすと人差し指をクイクイと動かして。

「ほれ、いつまで寝ておるんじゃ。さっさと起きんか」
「…………」

 その動きに従うように、彼女の身体が起き上がる。しかしその瞳にそれまでの光はなく、完全に操られていることが察せられた。

「まったく、面倒な娘じゃな。潜在能力を引き出してやったのに、人間を殺すことだけはいつまでも躊躇しておるんじゃから。特別に譲ってやろうと言っても、一口も口をつけなかったしの」
「「…………っ⁉」」

 悪魔にしてみればただの愚痴や文句に過ぎないのだろうが、二人にとっては聞き捨てならない言葉だった。ルタが悪魔に強い口調で問う。

「どういうことだ……⁉」
「どうもこうも、言った通りじゃよ。通り魔だけにな。かっかっかっ」

 上手いことを言ったつもりなのか、悪魔はおかしそうな笑い声を上げる。しかし二人はそんなことは無視して、ルタが察した推測を言った。

「てめえがニーサさんを操って通り魔をやらせた、だが最終的にメディ達を殺したのはてめえ自身ってことか……⁉」
「だからそう言っておるじゃろうが。勘が良いのか悪いのか分からん人間じゃな」

 何度も同じことを言わせるなと呆れるように悪魔が答える。彼らの会話に、ロウもいままで調べたことを思い出して、合点がいっていた。

「ルタさん、思い出してください、通り魔に襲われたあの三人組が言っていたこと……」
「……トドメは刺さずにメッタ刺しにしてきた、って言ってたな……奴らは自分達をいたぶっているふうに感じてたみてえだが……」
「だけどそれは、見方を変えれば殺さないように手加減していた、とも言えます……あの悪魔が言ったことと合わせて考えれば……」

 ロウの言いたいことを察して、ルタは彼女にうなずく。彼もまた同じ結論に達していた。光のない瞳を向けてくるニーサへと向いて。

「あの悪魔に操られながら、ニーサさんは抵抗していたってわけだ。絶対に人だけは殺さねえようにって、必死になって」

 彼の言葉に、ロウもまた言う。

「店長さんに言われました。ニーサさんを助けてくれって。悪いのは全部悪魔だって」

 その言葉に悪魔が含み笑いをした。

「ふむ、悪魔が悪いのは当たり前じゃろう。だから悪魔とお主らは呼んでおるのだから」

 それは揚げ足取りか、それとも言葉遊びのつもりなのか。悪魔は二人の言うことに怒るでもなく蔑むでもなく、面白いオモチャを見つけたような愉快そうな顔をしていた。
 そんな悪魔を強く見据えながらルタが言う。

「ロウ、ニーサさんを頼む。なんとかして無力化してくれ。俺はあの悪魔を倒す」

 いまのニーサは悪魔によって潜在能力を引き出されているらしい。はっきりいっていまのロウが渡り合えるかは疑問があったが、それでも逃げるわけにはいかなかった。ロウはうなずく。

「分かりました。……死なないでくださいね」
「誰に言ってやがる。……行くぞ!」

 二人はそれぞれ悪魔とニーサのほうへと駆け出していった。悪魔もまた面白そうに笑みながら。

「ほう、個別戦闘か。いいじゃろう、その興、乗ってやろうではないか」

 悪魔がフワリと地上数十センチほどの高さに浮かび、ルタへと迫る。同時にニーサもまたナイフを構えると高速度でロウへと襲いかかっていった。

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