131 / 131
第百三十一話 エピローグ(後編) ……気が向いたらな…… 【完】
しおりを挟むそして、それからニーサは真顔になると、二人へと頭を下げる。出てきたのは謝罪の言葉だった。
「ルタさん、ロウさん、この度は本当に申し訳ありませんでした! わたしがあの悪魔に操られていたばっかりに、お二人に、いえお二人だけではなく店長や町の皆さんに多大な迷惑をお掛けしてしまって……っ」
彼女のお詫びに、ルタとロウが顔を見合わせる。二人もまた真顔であり、目が合うや互いにうなずきを交わした。
代表するように、ルタが一度咳払いをしてからニーサに言った。
「過ぎたことだ気にすんな……とは言わねえし、言えねえ。だけど、ニーサさんが操られて無理矢理やらされていたのは確かだし、いまこうしてものすごく反省していることも確かだ。ニーサさんのこれからについては、官憲に任せることにするつもりだ」
「…………、はい……」
顔を上げたニーサが、真剣な顔でうなずく。事態を重く受け止めている彼女に、ルタは言葉を続けた。
「官憲には知り合いがいる。すっげえ真面目なおっさんで信用できる人だ。たぶん、ニーサさんのこともちゃんと判断してくれると思う」
「……お気遣い、ありがとうございます……」
ニーサはまた頭を下げる。それから二人に向き直って。
「官憲に行く前に、わたしが迷惑を掛けた方々にも謝りに行こうと思っています。店長や、あの三人組の方達に……それと、悪魔に殺されてしまった方のお墓参りにも……」
健気な態度を見せる彼女にルタが口を挟む。
「いや墓はまだできてねえんじゃねえかな。失踪扱いになってたから」
「あ……」
気付いたニーサがどうしようという顔をしたが、そこでロウが提案した。
「それなら、その方達が亡くなられた場所に向かいませんか? お墓参りは、お墓ができてから、ということで……」
その提案にルタが賛同の意を示す。
「そうだな……とりあえずはそうしようか。ニーサさんがそれでいいなら、だけど」
彼が目を向けると、ニーサもまた強くうなずいた。
「……はい……そうしましょう……」
そしてニーサはいままで迷惑を掛けた者達の元まで向かって、それぞれに誠心誠意頭を下げていった。ルタとロウはそんな彼女についていって、その様子を見守っていた。
ニーサのことを疑っていたわけではない。むしろその逆で、心から信じていた。
ついていったのは、事件に大きく関わった者として、ニーサのことをちゃんと見届けようと思ったからだった。
そして……。
官憲のサージへとニーサのことを引き渡したあと、二人は帰路についていた。サージは事の顛末を聞くと真面目な顔でうなずき。
「分かりました。彼女のことは我々に任せてください。ルタさん、ロウさん、今回はお疲れ様でした。本当にありがとうございます」
そう言ったのだった。
太陽はすでに傾きつつあり、二人が歩く道はかすかなオレンジ色に染まりつつあった。ふと気になったというように、ルタがロウに尋ねる。
「あんたはこれからどうする? 腹が減ってんならメシでも奢るぜ」
「なんか珍しいですね。ルタさんが奢ってくれるなんて」
「なんかそういう気分になってな」
「…………」
どこに行こうかと相談したわけではなかったが、二人の足は自然といつも行っている料理屋へと向かっていた。さっき会ったばかりだが、おやっさんは二人を見て、なんと言ってくるだろうか。
少しの沈黙のあと、おもむろにロウが言った。
「そういえば、あたしのこと名前で呼んでくれましたよね、昨日。悪魔と出会ったとき。あんた呼びじゃなくて」
「そうだっけ? つか、その前も名前で呼んだときくらいあるだろ」
「そうですけど……」
ロウの耳は少し赤くなっていた。あるいは夕焼けでそう見えただけかもしれない。
「これからも名前で呼んでくれませんか? あたしのこと」
「…………」
少し考えるような間。沈黙。そして。
「…………、……気が向いたらな……」
自分の頭の後ろに両手を当てて道の先を見ながら、彼はそう答えた。
【 完 】
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
【完結】テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
攻略. 解析. 分離. 制作. が出来る鑑定って何ですか?
mabu
ファンタジー
平民レベルの鑑定持ちと婚約破棄されたらスキルがチート化しました。
乙ゲー攻略?製産チートの成り上がり?いくらチートでもソレは無理なんじゃないでしょうか?
前世の記憶とかまで分かるって神スキルですか?
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。
アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚…
スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。
いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて…
気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。
愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。
生きていればいつかは幼馴染達とまた会える!
愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」
幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。
愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。
はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる