【完結】 『未熟』スキル 最強ではないが相手を最弱にすれば関係ない ~かつてパーティーを追放された者の物語~

はくら(仮名)

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第百三十一話 エピローグ(後編) ……気が向いたらな…… 【完】

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 そして、それからニーサは真顔になると、二人へと頭を下げる。出てきたのは謝罪の言葉だった。

「ルタさん、ロウさん、この度は本当に申し訳ありませんでした! わたしがあの悪魔に操られていたばっかりに、お二人に、いえお二人だけではなく店長や町の皆さんに多大な迷惑をお掛けしてしまって……っ」

 彼女のお詫びに、ルタとロウが顔を見合わせる。二人もまた真顔であり、目が合うや互いにうなずきを交わした。
 代表するように、ルタが一度咳払いをしてからニーサに言った。

「過ぎたことだ気にすんな……とは言わねえし、言えねえ。だけど、ニーサさんが操られて無理矢理やらされていたのは確かだし、いまこうしてものすごく反省していることも確かだ。ニーサさんのこれからについては、官憲に任せることにするつもりだ」
「…………、はい……」

 顔を上げたニーサが、真剣な顔でうなずく。事態を重く受け止めている彼女に、ルタは言葉を続けた。

「官憲には知り合いがいる。すっげえ真面目なおっさんで信用できる人だ。たぶん、ニーサさんのこともちゃんと判断してくれると思う」
「……お気遣い、ありがとうございます……」

 ニーサはまた頭を下げる。それから二人に向き直って。

「官憲に行く前に、わたしが迷惑を掛けた方々にも謝りに行こうと思っています。店長や、あの三人組の方達に……それと、悪魔に殺されてしまった方のお墓参りにも……」

 健気な態度を見せる彼女にルタが口を挟む。

「いや墓はまだできてねえんじゃねえかな。失踪扱いになってたから」
「あ……」

 気付いたニーサがどうしようという顔をしたが、そこでロウが提案した。

「それなら、その方達が亡くなられた場所に向かいませんか? お墓参りは、お墓ができてから、ということで……」

 その提案にルタが賛同の意を示す。

「そうだな……とりあえずはそうしようか。ニーサさんがそれでいいなら、だけど」

 彼が目を向けると、ニーサもまた強くうなずいた。

「……はい……そうしましょう……」

 そしてニーサはいままで迷惑を掛けた者達の元まで向かって、それぞれに誠心誠意頭を下げていった。ルタとロウはそんな彼女についていって、その様子を見守っていた。
 ニーサのことを疑っていたわけではない。むしろその逆で、心から信じていた。
 ついていったのは、事件に大きく関わった者として、ニーサのことをちゃんと見届けようと思ったからだった。
 そして……。
 官憲のサージへとニーサのことを引き渡したあと、二人は帰路についていた。サージは事の顛末を聞くと真面目な顔でうなずき。

「分かりました。彼女のことは我々に任せてください。ルタさん、ロウさん、今回はお疲れ様でした。本当にありがとうございます」

 そう言ったのだった。
 太陽はすでに傾きつつあり、二人が歩く道はかすかなオレンジ色に染まりつつあった。ふと気になったというように、ルタがロウに尋ねる。

「あんたはこれからどうする? 腹が減ってんならメシでも奢るぜ」
「なんか珍しいですね。ルタさんが奢ってくれるなんて」
「なんかそういう気分になってな」
「…………」

 どこに行こうかと相談したわけではなかったが、二人の足は自然といつも行っている料理屋へと向かっていた。さっき会ったばかりだが、おやっさんは二人を見て、なんと言ってくるだろうか。
 少しの沈黙のあと、おもむろにロウが言った。

「そういえば、あたしのこと名前で呼んでくれましたよね、昨日。悪魔と出会ったとき。あんた呼びじゃなくて」
「そうだっけ? つか、その前も名前で呼んだときくらいあるだろ」
「そうですけど……」
 ロウの耳は少し赤くなっていた。あるいは夕焼けでそう見えただけかもしれない。
「これからも名前で呼んでくれませんか? あたしのこと」
「…………」

 少し考えるような間。沈黙。そして。

「…………、……気が向いたらな……」

 自分の頭の後ろに両手を当てて道の先を見ながら、彼はそう答えた。



【 完 】

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