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もふもふ転生~子犬に転生した王女。もふもふ好きの公爵令息に拾われて溺愛される。やがて正体を知られてしまい~
しおりを挟むとある国に一人の王女がいた。
しかし彼女は病弱であり、王宮侍医の治療も空しく若くして亡くなってしまう。
だが彼女は再び目を覚ます。最初は助かったのかと思ったが、何故か言葉を発せず子犬のような鳴き声を出していた。
自分の手や身体に目を向けてみると、まさに子犬のような手や身体であった。
意味が分からず、彼女は混乱してしまう。周りをよく見てみると、そこはいままでいた王宮ではなく、見知らぬ森の中であった。
すぐそばには泉があり、思わず彼女はその泉を覗き込む。泉の水面に映っていたのは、見紛うことなき子犬の姿そのものだった。
どうしてそうなってしまったのかは分からない。せっかく生きているとはいえ、こんな姿になってどう生きていけば分からずに彼女は悲しみに暮れてしまう。
やがて幾ばくかの時間が経ち、彼女はお腹が空いてくる。悲しさはまだあるものの、それでも死にたくはない。
生きる為に何か食べられる物を探そうとした時、彼女の前に猪が現れた。猪もまた腹が減っているらしく、獰猛な瞳と牙を彼女へと向けて迫ってくる。
彼女が恐怖に怯えて逃げることも出来ずにいた時、彼女の前に一人の男性が現れて、その手に持つ剣で猪をあっという間に倒した。
彼女はその男性に見覚えがあった。隣国の公爵家の令息だったのだ。
彼は大のペット好きとして有名であり、もふもふ公爵令息という異名まで付けられている程だった。普通なら不名誉な異名だと激怒する筈なのだが、温厚な彼はむしろその異名を嬉しく思っていた。
そして子犬となった彼女は心優しき令息に拾われて、彼の住む屋敷で過ごすことになる。
最初のうちは子犬であることに戸惑っていた彼女だったが、美味しい食事と快適な屋敷、及び優しい彼と過ごすうちに、
(これはこれでありかも)
と思うようになっていく。
しかしそんな幸福な生活に、微かな曇りが見え始めてくる。社交パーティーに子犬である彼女を抱いて参加した彼を、他の貴族達が貶めようと画策していたのだ。
彼は気付いておらず、そのことに一早く気付いたのは彼女だった。彼女は幸福な生活を守る為、また大好きになった彼を守る為に、奮闘して悪どい貴族達の策略を粉々に打ち砕いていく。
そしてひょんなことからそのことが彼に知られてしまう。彼女はこんな子犬らしくない自分など彼は嫌いになってしまうと悲しむが、実際はその逆であり、彼は彼女に感謝して一層のこと寵愛、いや溺愛するのだった。
再び幸せな日々が続いていたある日、彼に婚約してはどうかという話が舞い込んでくる。相手は貴族の間でも有力だった家の令嬢であり、容姿端麗、学業優秀、家事万能と非の打ち所のない人物だった。
彼自身は婚約にあまり乗り気ではない様子だったが、両親や勧めてきた者の顔を立てる為に、前向きに検討することを伝える。
その婚約の話は、子犬である王女の耳にも入り、彼女は酷く困惑してしまう。だがいまの自分では彼に釣り合うわけでもなく、また幸せになる彼の邪魔をしたくないという思いから、彼女は身を引いてしまう。
しかしその直後、彼女はその婚約相手の悪どい本心を知ってしまう。子犬の姿である彼女に油断して、その令嬢は側近と、とある策謀について話をしていたのだ。
それは彼、及び彼の両親を暗殺して、彼らが持つ財産を全て手に入れるというものだった。
それを聞いた彼女は、その策謀を阻止するべく再び奮闘する。そしてそれは見事成功し、令嬢の策謀も彼に露見して婚約は破棄されることになる。
令嬢やその協力者は逮捕された。彼と彼の家族は守られた。だがしかし、その際に子犬である彼女は重傷を負ってしまう。
傷付く彼女を悲しむ彼。それを見て彼女もまた悲しんでしまう。そして自分がもう助からないことも悟ってしまう。
やがて大粒の涙を流す彼の腕の中で彼女が息を引き取ろうとした、その瞬間。
奇跡が起きた。彼女の姿は転生する前の人間へと戻り、王女だと分かる服装を身に付けていた。傷も全部治っていた。
どうしてそうなったのか、理由は分からない。だが戸惑いながらもいままでのことを話す彼女を彼は全て信じて、彼女に助けてくれてありがとう、生き残ってくれてありがとうと心からの礼を述べるのだった。
そしてその数年後、二人は正式に結婚して、末長く幸せな日々を送ったのだった。
【終】
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