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第五章

第一話 おじゃま

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 ある日。下校して自宅でくつろいでいると、玄関からチャイムの音がした。
 通販は頼んでいない。誰だ、こんな時間に? 玄関の覗き穴から見てみると、そこにはユキが緊張した面持ちで立っていた。

「ユキ=バースです。レイン=カラー……さんはいらっしゃいますか?」

 どこかぎこちないのは、いまだに戦闘で殺されかけた時のことを引きずっているのだろう。
 無視して部屋へと戻る。ゾディアックに関わるなと言ったのは向こうだ。どうして対応する義務や義理がある?
 すると。

「ユキさん、それでは彼は出てくれませんよ。彼は本当に面倒くさがりで、必要のないことには極力関わろうとしないんです。まあ、ムカついたことには関わるみたいですけど」
「じゃあ、どうすればいいの、サフィさん?」

 どうやらサフィもいたらしい。……。嫌な予感がして、一足飛びで玄関へと戻ろうとして……。
 ドゴッーン! という衝撃音のあとに、バッターン! とドアが倒れる音。サフィが壊したのだ。

「てめえ! よくもやりやがったな!」
「ドアに蚊が止まってたから、つい」
「ウソつけ! 蚊ぐらいでドアまで破壊するバカがいるか」
「ここにいるじゃない。それに蚊を馬鹿にしちゃいけないわ。様々な伝染病を媒介して、世界で一番多く人間を殺しているって言われてるんだから」
「だとしても蚊だけ潰せよ! 直す労力を考えろ!」
「あなただってドア壊したことあるじゃない。というか、居留守をしなければいいでしょ。さ、ユキさん、お邪魔しましょう」

 そう言って、サフィは倒れたドアを乗り越えて進入してくる。ユキはというと、珍しく戸惑ったように。

「あ、あの、ドアを直すの手伝いましょうか? 一応、修復魔法も使えるので……」
「そうするくらいなら帰れ。それが俺にとって一番役に立つ」
「…………っ」

 動揺するユキに、冷蔵庫を勝手に物色していたらしいサフィが顔だけ見せてきて。

「ユキさん、そんなの放っておいて早く入らないと、締め出されますよ。どうしてもしたい話があって来たんですよね」
「……お、お邪魔します……」

 恐る恐るといった様子でユキが入ってくる。くそがっ! 今度からドアに防御魔法でも掛けとくか⁉
 そしてドアを直して部屋に戻ると、テーブルの上にお菓子やジュースを並べて、まるでホームパーティーの様相を呈していた。サフィが顔を向けて言ってくる。

「やっと来たわね。さ、自分の家だと思ってくつろいでいいわよ」
「俺の家だろうが!」
「お菓子も好きなの食べていいからね」
「それも全部俺が買ってたやつだろうが! 勝手に食ってんじゃねえ!」
「ていうか、ソファくらい置いておきなさいよ。相変わらず味気ない部屋だし」
「てめえ……勝手に侵入しておいてよくそんなことが言えるな……!」

 一度殴っておくか?

「ちゃんと正面からお邪魔しますって言ったじゃない。それより、早く用件を終わらせたいならそこに座ったら? ユキさんの話が終わったらすぐに帰るつもりだし。ね、ユキさん」
「…………」

 ユキが心配そうな顔付きで見てくる。それを無視して。

「ちっ。ならさっさと話して帰れ。俺は忙しいんだ」
「家でくつろいでるだけでしょ」
「黙れ」

 サフィに言って、テーブルの前に、どかりと腰を下ろした。

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