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山と古酒
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伊吹くんが動くより先に、茨木さんが走り出します。私を肩に乗せている分、茨木さんの動きは鈍いように思えます。
目の前で2人がぶつかり合って、衝撃で茨木さんは後ろに飛んで着地をしました。早すぎて何が起きているのかわかりません。
「あはは、あんた、この子のこと気になって全然本気出してへんやん。……ちょい、おもんないわ」
「つまらんのなら甘祢をさっさと返せ。そうすれば本気でやり合ってやるよ」
「かなん。嫌や」
伊吹くんの息が荒くなっているのが聞こえます。さっきのダメージが抜けていないのでしょう。しかも、私のせいで動きが制限されているのなら、どうにかしなくてはいけません。
再び茨木さんがジャンプをしつつ動きます。何か鈍い音がして、伊吹くんのうめき声が聞こえました。
「うっ……くそ……何でだよ」
「何でもなんも。あんたが死んでる間ずっと力を溜めとったんやさかい、差ぁ付いてるのんは当たりまえや」
「そういうことじゃねぇよ。何でこんな風になってんだよ、お前」
あ、鬼も、血は赤いんだ。
茨木さんに向かって、なんだか寂しそうな顔で怒る伊吹くんの額から真っ赤な血が流れています。
それを見て、ふと思いました。
伊吹くんも、人間と、私と同じなんだ。ならば、きっと茨木さんも。
「逆に聞きたいわ。あんた。なんで人間に裏切られてばっかなのに、人間を憎まへんのか」
「お前も、人間だろ。元々は。俺だってそうだ」
「普通の人間ではいられへんかったやん。その辺にうようよおる普通の人間は、どうせわてらを疎ましゅう思てるんや。怖がって、自分が被害者側やと信じてる。むかぁしからずっとそう。変えられるわけ、あらへんのや。なら、お望み通り怖がらしたるほうがよろしおすやろ」
「人間でも鬼でも関係無い。ひとまとめにして語んな。わざわざ自分と違う存在を傷つけにいく奴が嫌いなだけだ」
「あんただって女って纏めてみーんな嫌うとったとちがう。……あ、この子だけは別なん?」
「っ……」
「あの」
苦しそうな顔をしている伊吹くんを笑う茨木さんが、私の発した言葉で動きを止めました。気を失っていると思われていたのでしょうか。残念、まだしぶとくなんとか意識は保っています。私、頭は良くないですけど根性はありますので。
「あの、多分ですけど、私は普通の女じゃないですよね」
自意識過剰で言っているのではありません。伊吹くんにとって、私……ではなく、私を通して見ている、あの夢の中の視線の主はきっと、そうだったからです。
「あんた、地味な見た目に反してえらい自己肯定感高い?」
「あ、あの、すみませんそうじゃないんです、私じゃないんです、私じゃないけど、ほら、きっと私の記憶の中に住んでるあの人は、伊吹くんにとって普通の女性じゃないんです。ひどいこと、しないんです。それを、伊吹くんはわかってるんです。だから、あれ、何言いたいんでしたっけ、あの、人間とか鬼とか性別とかそういうの気にしすぎずにいることできないのでしょうかって伊吹くんは言いたいんじゃないかって」
言いたいことも纏まってなくて、というか、痛みと消耗で視界は霞みかけていて意識もぼんやりとし始めている中で喋っても、何も伝わらないかもしれません。
でも、伊吹くんが言いたいことはこういうことなんじゃないかな、と思ったのです。思ったし、邪魔かもしれませんが、私だって言いたいと思ったんです。
だって、夢の中の茨木さんは……あんなにも、楽しそうにしていたのですから。
「ごちゃごちゃうっさいわ。ちょい黙っといてくれる?」
茨木さんに向けられた冷たい目線を見返します。負けるわけにはいきません。力では負けていますが。
「甘祢。お前が何なのか、わかった気がする。でもお前が誰であっても、何であっても」
「っぐぅ、伊吹おまえっ」
私と茨木さんが睨み合っていると、いつの間にか伊吹くんが目の前に来ていました。同時に茨木さんが屈み込みます。見えないけど、きっと何か攻撃を仕掛けたのでしょう。
体勢を崩した茨木さんの肩から私を助け出した伊吹くんは、そのまま大きく後ろに飛んで茨木さんと距離を取りました。
最初と、立ち位置は逆。
伊吹くんが洞窟の奥側、茨木さんが入り口側に立って睨み合います。
私を抱きかかえた伊吹くんは、茨木さんを睨んだまま、腕の力をほんの少しだけ強めました。包み込まれるような安心感と暖かさに、こんな場面なのに安心感で眠くなってしまいそうです。
「多分、俺達にとって……俺にとって、お前は必要な存在なのだと思う、甘祢」
「伊吹くん……」
「ちょい、わてのこと無視しいひんでくれる? 腹立つわぁ。ってことで、そろそろ終わりにしましょか」
茨木さんが力を溜めているのか、空気が震えて肌がビリビリします。
そうだ、早く伝えなきゃです。2人が来る前に私が探していたものを、伊吹くんに。
私は伊吹くんの耳に口を寄せると、小さな声で伝えます。
「伊吹くん、奥。この洞窟の、1番奥の辺りに、何が置いてあったか覚えていますか?」
「奥……? その昔は色々なものを置いていた気がするが……」
なぜだか少し顔を赤くしながら、伊吹くんも小声で答えてくれます。
「あのですね、お酒。覚えていますか? お誕生日の、お酒」
「! ああ……ああ、覚えている」
「私が取ってきます。だから時間を稼いで下さい」
「あれから数百年経っているんだ。妖気を練り込んでいたから無事かもしれないが……この洞窟も荒らされた。もう無いかもしれない」
「あります」
だって、さっき私が見つけましたから。夢の中で、伊吹くんと、夢の中の人が一緒に飲もうと約束した、お酒。
自信満々に言う私を驚いたような顔で見つめてから、伊吹くんは「よし」と頷きました。
「無理はするな」
「はい、行ってきます」
後ろで茨木さんの叫び声と、大きな音が聞こえます。でも振り返るわけにはいきません。私が今すべきことは、伊吹くんを信じて振り返らずに先に進むこと、です。
さっきと同じルートを辿って、さっきよりは明るいとはいえまだ暗い洞窟の最奥をペタペタと触りながら探ります。
「あった! ありましたっ!」
やった、これで。これで伊吹くんは。
よいしょ、と壺を抱えて、私はやっと振り返ります。
次の瞬間。ズガァァァン、と大きな音と共に、伊吹くんが吹き飛ばされてきました。
「伊吹くん!」
「う……甘祢、避けろ、アイツがまた来る……」
「避けません! 逃げません! だって、ほら!」
本当にそれでなんとかなるかなんて確信も無いですけど、今はそんなことを言っている場合ではありません。
壺の蓋に触れると、ふわりと光が発生してひとりでに蓋が開きました。妖気とか、妖術のお陰でしょうか。これは好都合です。
伊吹くんの口に壺のフチを当てて、壺を傾けます。
薄闇の中はっきりは見えませんが、とろりとした液体が流れ出て、伊吹くんがごくりと喉を動かしたのがわかります。やった、飲みました!
「ん……これは……っ!」
1口飲んだ途端に、伊吹くんの体に力が漲っていくのを感じます。だらんと垂れていた腕を上げて、伊吹くんは自分で壺を持ちました。そして、2口、3口とごくごく中身を飲んでいきます。
「どうですか? 元気、出ました? 伊吹くん達はお酒を力にしてると聞いたので、これでなんとかなると思ったのですが……」
「なんとかなる、どころではない」
勢いよく立ち上がった伊吹くんの体から、真っ赤なもやのようなものが出ているように見えます。とても暖かいです。
「全回復だ。ありがとうな、甘祢。お前も少し飲んでおけ」
手渡された壺にそうっと唇をつけて、私も中身を飲んでみます。
とろりとした舌触りと、鼻に抜けるような爽やかな酸味、それにシロップのように甘くて、すこしほろ苦い味。私のボギャブラリーでは言い表せないほど複雑で、美味しい液体が喉を落ちていきます。
お腹の中から、暖かくてキラキラした力が湧き出てくるような気がしてきました。
伊吹くん達と私は違うはずです。でも、お酒を栄養にする、力にする、という意味がわかった気がしました。痛かった肩も背中も、じわじわと暖かくなってラクになっていきます。
「すごい……ありがとうございます」
「お前が取ってきたんだろう。それに、一緒に飲むって約束だったからな。……1度死ぬ前の俺と、お前ではない人間のものだが」
「夢の中の人と私、昔の伊吹くんと今の伊吹くん。同じじゃないかもですが、なんと言えばいいのでしょう……わからないんですけど、その約束が果たされたっていうことを、私は嬉しいなって思います」
「甘祢。……来るぞ」
ほわほわとした空気が急に鋭くなって、どん、と空気が弾けて衝撃が伝わってきます。伊吹くんは私に覆い被さるようにして庇ってくれました。
「効かねぇなあ?」
「……はぁ? 何、何起こってるん? 伊吹? 攻撃喰ろうてなんでピンピンしてはるん?」
歩いてきた茨木さんはびっくりしたのか、震えながら伊吹くんを凝視しています。伊吹くんはそんな茨木さんに向かって豪快に笑いました。
「はっはっは、なぁ、お前も飲むか? さすがオレだ、あの時特別な酒にしようと思って妖気を込めておいたらこんな未来まで保存できていたとはな。さすがに古酒になってたが……」
「酒? ……酒ェ? なんでこないなとこに? ……ここにあったもんは全部壊した筈やのに……まさか……なんで……」
伊吹くんが何か術を使ったのでしょうか。それとも何かがショックだったのでしょうか。茨木さんはなぜか、がくりと膝をついてブツブツと1人で呟き出しました。
「甘祢! 今だ! 行くぞ」
「はい!」
伊吹くんに手を引かれながら茨木さんの脇を走り抜けて、洞窟の入り口へと向かいます。だんだんと明るくなって
「え、あの、な、なにを……」
「ありがとうな、甘祢。オレに掴まっていてくれ」
わけのわからないまま、服が破けて剥き出しになった伊吹くんの肩に掴まらせてもらう。途端に圧が掛かって、気付くと上空に舞い上がっていた。
「結界を張ったから上空でも寒くはないと思うが……一旦帰るぞ」
「は、はい。あの……茨木さんはあのままでいいのでしょうか?」
「しばらく動けなくなる術を掛けておいた。さすがに負けを認めるだろ。昔からあいつ、オレに負けてばっかりだったからな」
「……そう、ですか……」
夢の中の、仲の良さそうな2人の姿を思い出す。2人の付き合いは長いのだろうか。
……あのままほっておいて、いいのでしょうか。
そんな私の思考を余所に、伊吹くんは空のど真ん中の空間を歪ませると、来た時と同じようにその中に入っていきました。
「伊吹さん!! 甘祢さん! 無事でよかったッス!」
「あいつどうなりました?」
空間から抜けると、バーの店内でした。暖かい空気に包まれて、ほっとして力が抜けてしまいます。スパさんとエイコさんがすごい勢いで駆け寄ってくる。
「茨木はしばらく大江山に縫い付けてある。ちったぁ頭も冷えるだろ。それより甘祢が怪我をしている。エイコ、治してくんねぇか」
「いいよ、甘祢ちゃん、上着とか脱いで、奥にあるソファに横になってもらってもいいかな」
「え、そ、そんな大袈裟な、ちょっと打撲した程度ですって。それにお酒飲んだらほぼ治りましたし」
「そんなわけないでしょ? いいから、見せてって」
傷を治すことができるらしいエイコさんに見せる為、伊吹くんに前抱きにされて(私はいいって言ったのに!)運ばれてソファに横になると、私はボロボロになったコートを脱いで、少し戸惑う。着ているのは長袖だ。どこを見せるにしても、一旦服を脱がなくてはいけない。
エイコさんも、伊吹くんも見ている前で。
「あ、あの……脱がなきゃ、ダメ、ですか……?」
「え、あ、いやその、俺はあっちを向いてるから! ……肩、痛かったんだろ。見てもらってほしい」
焦ったようにくるりと背を向けた伊吹くん。優しいんですね。
「じゃあ僕も目を逸らしてるから、一旦服を脱いで、患部以外を隠してから声掛けてね。大丈夫、怖い思いはさせないから」
「すみません、あの、変に気を遣わせてしまって! ただ私の貧相な体見せるのも失礼かなって!」
そういえば、お医者さんは肌を見ることには慣れていますよね。エイコさんはお医者さんのようなものなのでしょう。逆に失礼な態度を取ってしまったかな、と反省しつつ半分パニックになって余計なことまで口走ってしまいます。
気を取り直して、服を脱いで、肩を出して体の前は服で隠します。
「準備できました、エイコさん、お願いします」
「はいはーい、じゃあ見せて……って、あれ? どこも怪我してなくない?」
「そんな筈無い、俺は酒で回復したけど甘祢は怪我をしたまま……」
きょとんとしているエイコさん。
そして私の方を振り返った伊吹くんが固まって、それから肩をじっと見ます。そんなに見られると、ただの肩ですが少し恥ずかしい気がします。
って、問題はそこではなくて。
そう、傷、治っているのです。はじめから何もなかったようにつるりとしています。呆気にとられたような顔をしている伊吹くんと同じくらい、多分、私も驚いていました。
「……ねぇ、もしかしてだけど、甘祢ちゃん……」
「ああ。そうかもしれない。甘祢、お前……」
2人に真剣なトーンで語りかけられます。何のお話が始まるのでしょう。
背筋を伸ばして向き合います。
なんだか緊張して、クラクラしてきます。
と、そのとき。後ろから声を掛けられました。
「甘祢ちゃんに今必要なものはなんだと思う? 少なくとも質問じゃないよね」
「夜都賀さん!」
店の奥から出てきた夜都賀さんは、手に持ったトレイの上に湯気を立てるカップを2つ載せていました。
「はい、紅茶を淹れてきたよ。ひとまず飲んで落ち着いて。というかその前に服をちゃんと着なさい、女の子なんだから」
「す、すみません、あ、ありがとうございます」
慌てて視線を逸らしたり「ごめんね」と言う伊吹くんとエイコさんに、大丈夫です、と返してから服を直して、ソファに座り直しました。
テーブルに置いてもらったマグカップを持ち上げて、暖かい紅茶を一口。
疲れ切った体に染み渡っていく暖かさに、全身の力が抜けていきます。
「はぁ、あったかい……おいしい……」
「ふふ、それはよかった」
伊吹くんも私の隣に座って、紅茶を飲みはじめました。
エイコさんはカウンターにいるスパさんのところに戻って、またお酒を飲んでいるようです。
夜都賀さんは向かいに座って、ニコニコとしながら私と伊吹くんを見守ってくれています。
「……親父」
「なに、イブキちゃん」
「覚えているか? 大江山の洞窟で暮らしていた時のこと」
「覚えてるよ。キミが産まれる前に殺されて、それから復活して、はじめて一緒に暮らせた楽しい時期だし。それに……いや、よそうか」
何かを言いかけて言葉を止めた夜都賀さんは、視線を伊吹くんから私に移しました。
どうしよう、会話を求められているのでしょうか。何か言わなくては。でも、こういう時って何を言っていいのかわからないです。とりあえず、正解かはわかりませんが、頭に浮かんだ疑問を口に出してみました。
「あの、その、私みたいなただの人間にはそういう出来事とか気持ちはわからないですけど……皆さん、茨木さんも含めて、さっきの山で暮らしていたんですか?」
「ああ……見たんだろう、甘祢」
伊吹くんがマグカップをテーブルに置いて、真剣な目で私をじっと見ます。
「はい、見……ました。見て、聞いて……でもあれは私ではなくて、なんで私が見れてしまったのでしょうか」
「わからない。推測でしかないけど、ボクの話も聞いてくれるかい?」
なぜ私があの夢を見たのか。知りたいです。でもなぜかわからないのですが、少し怖いです。
私は頷いてから、ぎゅうとマグカップを握りしめました。
目の前で2人がぶつかり合って、衝撃で茨木さんは後ろに飛んで着地をしました。早すぎて何が起きているのかわかりません。
「あはは、あんた、この子のこと気になって全然本気出してへんやん。……ちょい、おもんないわ」
「つまらんのなら甘祢をさっさと返せ。そうすれば本気でやり合ってやるよ」
「かなん。嫌や」
伊吹くんの息が荒くなっているのが聞こえます。さっきのダメージが抜けていないのでしょう。しかも、私のせいで動きが制限されているのなら、どうにかしなくてはいけません。
再び茨木さんがジャンプをしつつ動きます。何か鈍い音がして、伊吹くんのうめき声が聞こえました。
「うっ……くそ……何でだよ」
「何でもなんも。あんたが死んでる間ずっと力を溜めとったんやさかい、差ぁ付いてるのんは当たりまえや」
「そういうことじゃねぇよ。何でこんな風になってんだよ、お前」
あ、鬼も、血は赤いんだ。
茨木さんに向かって、なんだか寂しそうな顔で怒る伊吹くんの額から真っ赤な血が流れています。
それを見て、ふと思いました。
伊吹くんも、人間と、私と同じなんだ。ならば、きっと茨木さんも。
「逆に聞きたいわ。あんた。なんで人間に裏切られてばっかなのに、人間を憎まへんのか」
「お前も、人間だろ。元々は。俺だってそうだ」
「普通の人間ではいられへんかったやん。その辺にうようよおる普通の人間は、どうせわてらを疎ましゅう思てるんや。怖がって、自分が被害者側やと信じてる。むかぁしからずっとそう。変えられるわけ、あらへんのや。なら、お望み通り怖がらしたるほうがよろしおすやろ」
「人間でも鬼でも関係無い。ひとまとめにして語んな。わざわざ自分と違う存在を傷つけにいく奴が嫌いなだけだ」
「あんただって女って纏めてみーんな嫌うとったとちがう。……あ、この子だけは別なん?」
「っ……」
「あの」
苦しそうな顔をしている伊吹くんを笑う茨木さんが、私の発した言葉で動きを止めました。気を失っていると思われていたのでしょうか。残念、まだしぶとくなんとか意識は保っています。私、頭は良くないですけど根性はありますので。
「あの、多分ですけど、私は普通の女じゃないですよね」
自意識過剰で言っているのではありません。伊吹くんにとって、私……ではなく、私を通して見ている、あの夢の中の視線の主はきっと、そうだったからです。
「あんた、地味な見た目に反してえらい自己肯定感高い?」
「あ、あの、すみませんそうじゃないんです、私じゃないんです、私じゃないけど、ほら、きっと私の記憶の中に住んでるあの人は、伊吹くんにとって普通の女性じゃないんです。ひどいこと、しないんです。それを、伊吹くんはわかってるんです。だから、あれ、何言いたいんでしたっけ、あの、人間とか鬼とか性別とかそういうの気にしすぎずにいることできないのでしょうかって伊吹くんは言いたいんじゃないかって」
言いたいことも纏まってなくて、というか、痛みと消耗で視界は霞みかけていて意識もぼんやりとし始めている中で喋っても、何も伝わらないかもしれません。
でも、伊吹くんが言いたいことはこういうことなんじゃないかな、と思ったのです。思ったし、邪魔かもしれませんが、私だって言いたいと思ったんです。
だって、夢の中の茨木さんは……あんなにも、楽しそうにしていたのですから。
「ごちゃごちゃうっさいわ。ちょい黙っといてくれる?」
茨木さんに向けられた冷たい目線を見返します。負けるわけにはいきません。力では負けていますが。
「甘祢。お前が何なのか、わかった気がする。でもお前が誰であっても、何であっても」
「っぐぅ、伊吹おまえっ」
私と茨木さんが睨み合っていると、いつの間にか伊吹くんが目の前に来ていました。同時に茨木さんが屈み込みます。見えないけど、きっと何か攻撃を仕掛けたのでしょう。
体勢を崩した茨木さんの肩から私を助け出した伊吹くんは、そのまま大きく後ろに飛んで茨木さんと距離を取りました。
最初と、立ち位置は逆。
伊吹くんが洞窟の奥側、茨木さんが入り口側に立って睨み合います。
私を抱きかかえた伊吹くんは、茨木さんを睨んだまま、腕の力をほんの少しだけ強めました。包み込まれるような安心感と暖かさに、こんな場面なのに安心感で眠くなってしまいそうです。
「多分、俺達にとって……俺にとって、お前は必要な存在なのだと思う、甘祢」
「伊吹くん……」
「ちょい、わてのこと無視しいひんでくれる? 腹立つわぁ。ってことで、そろそろ終わりにしましょか」
茨木さんが力を溜めているのか、空気が震えて肌がビリビリします。
そうだ、早く伝えなきゃです。2人が来る前に私が探していたものを、伊吹くんに。
私は伊吹くんの耳に口を寄せると、小さな声で伝えます。
「伊吹くん、奥。この洞窟の、1番奥の辺りに、何が置いてあったか覚えていますか?」
「奥……? その昔は色々なものを置いていた気がするが……」
なぜだか少し顔を赤くしながら、伊吹くんも小声で答えてくれます。
「あのですね、お酒。覚えていますか? お誕生日の、お酒」
「! ああ……ああ、覚えている」
「私が取ってきます。だから時間を稼いで下さい」
「あれから数百年経っているんだ。妖気を練り込んでいたから無事かもしれないが……この洞窟も荒らされた。もう無いかもしれない」
「あります」
だって、さっき私が見つけましたから。夢の中で、伊吹くんと、夢の中の人が一緒に飲もうと約束した、お酒。
自信満々に言う私を驚いたような顔で見つめてから、伊吹くんは「よし」と頷きました。
「無理はするな」
「はい、行ってきます」
後ろで茨木さんの叫び声と、大きな音が聞こえます。でも振り返るわけにはいきません。私が今すべきことは、伊吹くんを信じて振り返らずに先に進むこと、です。
さっきと同じルートを辿って、さっきよりは明るいとはいえまだ暗い洞窟の最奥をペタペタと触りながら探ります。
「あった! ありましたっ!」
やった、これで。これで伊吹くんは。
よいしょ、と壺を抱えて、私はやっと振り返ります。
次の瞬間。ズガァァァン、と大きな音と共に、伊吹くんが吹き飛ばされてきました。
「伊吹くん!」
「う……甘祢、避けろ、アイツがまた来る……」
「避けません! 逃げません! だって、ほら!」
本当にそれでなんとかなるかなんて確信も無いですけど、今はそんなことを言っている場合ではありません。
壺の蓋に触れると、ふわりと光が発生してひとりでに蓋が開きました。妖気とか、妖術のお陰でしょうか。これは好都合です。
伊吹くんの口に壺のフチを当てて、壺を傾けます。
薄闇の中はっきりは見えませんが、とろりとした液体が流れ出て、伊吹くんがごくりと喉を動かしたのがわかります。やった、飲みました!
「ん……これは……っ!」
1口飲んだ途端に、伊吹くんの体に力が漲っていくのを感じます。だらんと垂れていた腕を上げて、伊吹くんは自分で壺を持ちました。そして、2口、3口とごくごく中身を飲んでいきます。
「どうですか? 元気、出ました? 伊吹くん達はお酒を力にしてると聞いたので、これでなんとかなると思ったのですが……」
「なんとかなる、どころではない」
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「甘祢。……来るぞ」
ほわほわとした空気が急に鋭くなって、どん、と空気が弾けて衝撃が伝わってきます。伊吹くんは私に覆い被さるようにして庇ってくれました。
「効かねぇなあ?」
「……はぁ? 何、何起こってるん? 伊吹? 攻撃喰ろうてなんでピンピンしてはるん?」
歩いてきた茨木さんはびっくりしたのか、震えながら伊吹くんを凝視しています。伊吹くんはそんな茨木さんに向かって豪快に笑いました。
「はっはっは、なぁ、お前も飲むか? さすがオレだ、あの時特別な酒にしようと思って妖気を込めておいたらこんな未来まで保存できていたとはな。さすがに古酒になってたが……」
「酒? ……酒ェ? なんでこないなとこに? ……ここにあったもんは全部壊した筈やのに……まさか……なんで……」
伊吹くんが何か術を使ったのでしょうか。それとも何かがショックだったのでしょうか。茨木さんはなぜか、がくりと膝をついてブツブツと1人で呟き出しました。
「甘祢! 今だ! 行くぞ」
「はい!」
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「え、あの、な、なにを……」
「ありがとうな、甘祢。オレに掴まっていてくれ」
わけのわからないまま、服が破けて剥き出しになった伊吹くんの肩に掴まらせてもらう。途端に圧が掛かって、気付くと上空に舞い上がっていた。
「結界を張ったから上空でも寒くはないと思うが……一旦帰るぞ」
「は、はい。あの……茨木さんはあのままでいいのでしょうか?」
「しばらく動けなくなる術を掛けておいた。さすがに負けを認めるだろ。昔からあいつ、オレに負けてばっかりだったからな」
「……そう、ですか……」
夢の中の、仲の良さそうな2人の姿を思い出す。2人の付き合いは長いのだろうか。
……あのままほっておいて、いいのでしょうか。
そんな私の思考を余所に、伊吹くんは空のど真ん中の空間を歪ませると、来た時と同じようにその中に入っていきました。
「伊吹さん!! 甘祢さん! 無事でよかったッス!」
「あいつどうなりました?」
空間から抜けると、バーの店内でした。暖かい空気に包まれて、ほっとして力が抜けてしまいます。スパさんとエイコさんがすごい勢いで駆け寄ってくる。
「茨木はしばらく大江山に縫い付けてある。ちったぁ頭も冷えるだろ。それより甘祢が怪我をしている。エイコ、治してくんねぇか」
「いいよ、甘祢ちゃん、上着とか脱いで、奥にあるソファに横になってもらってもいいかな」
「え、そ、そんな大袈裟な、ちょっと打撲した程度ですって。それにお酒飲んだらほぼ治りましたし」
「そんなわけないでしょ? いいから、見せてって」
傷を治すことができるらしいエイコさんに見せる為、伊吹くんに前抱きにされて(私はいいって言ったのに!)運ばれてソファに横になると、私はボロボロになったコートを脱いで、少し戸惑う。着ているのは長袖だ。どこを見せるにしても、一旦服を脱がなくてはいけない。
エイコさんも、伊吹くんも見ている前で。
「あ、あの……脱がなきゃ、ダメ、ですか……?」
「え、あ、いやその、俺はあっちを向いてるから! ……肩、痛かったんだろ。見てもらってほしい」
焦ったようにくるりと背を向けた伊吹くん。優しいんですね。
「じゃあ僕も目を逸らしてるから、一旦服を脱いで、患部以外を隠してから声掛けてね。大丈夫、怖い思いはさせないから」
「すみません、あの、変に気を遣わせてしまって! ただ私の貧相な体見せるのも失礼かなって!」
そういえば、お医者さんは肌を見ることには慣れていますよね。エイコさんはお医者さんのようなものなのでしょう。逆に失礼な態度を取ってしまったかな、と反省しつつ半分パニックになって余計なことまで口走ってしまいます。
気を取り直して、服を脱いで、肩を出して体の前は服で隠します。
「準備できました、エイコさん、お願いします」
「はいはーい、じゃあ見せて……って、あれ? どこも怪我してなくない?」
「そんな筈無い、俺は酒で回復したけど甘祢は怪我をしたまま……」
きょとんとしているエイコさん。
そして私の方を振り返った伊吹くんが固まって、それから肩をじっと見ます。そんなに見られると、ただの肩ですが少し恥ずかしい気がします。
って、問題はそこではなくて。
そう、傷、治っているのです。はじめから何もなかったようにつるりとしています。呆気にとられたような顔をしている伊吹くんと同じくらい、多分、私も驚いていました。
「……ねぇ、もしかしてだけど、甘祢ちゃん……」
「ああ。そうかもしれない。甘祢、お前……」
2人に真剣なトーンで語りかけられます。何のお話が始まるのでしょう。
背筋を伸ばして向き合います。
なんだか緊張して、クラクラしてきます。
と、そのとき。後ろから声を掛けられました。
「甘祢ちゃんに今必要なものはなんだと思う? 少なくとも質問じゃないよね」
「夜都賀さん!」
店の奥から出てきた夜都賀さんは、手に持ったトレイの上に湯気を立てるカップを2つ載せていました。
「はい、紅茶を淹れてきたよ。ひとまず飲んで落ち着いて。というかその前に服をちゃんと着なさい、女の子なんだから」
「す、すみません、あ、ありがとうございます」
慌てて視線を逸らしたり「ごめんね」と言う伊吹くんとエイコさんに、大丈夫です、と返してから服を直して、ソファに座り直しました。
テーブルに置いてもらったマグカップを持ち上げて、暖かい紅茶を一口。
疲れ切った体に染み渡っていく暖かさに、全身の力が抜けていきます。
「はぁ、あったかい……おいしい……」
「ふふ、それはよかった」
伊吹くんも私の隣に座って、紅茶を飲みはじめました。
エイコさんはカウンターにいるスパさんのところに戻って、またお酒を飲んでいるようです。
夜都賀さんは向かいに座って、ニコニコとしながら私と伊吹くんを見守ってくれています。
「……親父」
「なに、イブキちゃん」
「覚えているか? 大江山の洞窟で暮らしていた時のこと」
「覚えてるよ。キミが産まれる前に殺されて、それから復活して、はじめて一緒に暮らせた楽しい時期だし。それに……いや、よそうか」
何かを言いかけて言葉を止めた夜都賀さんは、視線を伊吹くんから私に移しました。
どうしよう、会話を求められているのでしょうか。何か言わなくては。でも、こういう時って何を言っていいのかわからないです。とりあえず、正解かはわかりませんが、頭に浮かんだ疑問を口に出してみました。
「あの、その、私みたいなただの人間にはそういう出来事とか気持ちはわからないですけど……皆さん、茨木さんも含めて、さっきの山で暮らしていたんですか?」
「ああ……見たんだろう、甘祢」
伊吹くんがマグカップをテーブルに置いて、真剣な目で私をじっと見ます。
「はい、見……ました。見て、聞いて……でもあれは私ではなくて、なんで私が見れてしまったのでしょうか」
「わからない。推測でしかないけど、ボクの話も聞いてくれるかい?」
なぜ私があの夢を見たのか。知りたいです。でもなぜかわからないのですが、少し怖いです。
私は頷いてから、ぎゅうとマグカップを握りしめました。
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