転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア

文字の大きさ
629 / 1,738

627.転売屋は作戦を立てる

しおりを挟む
魔物の襲撃があり予定より時間がかかってしまったため日が暮れてから別荘に到着したのだが、遅い時間にもかかわらず夫人と息子がわざわざ出迎えて挨拶してくれた。

うぅむ、もったいないぐらいの美人だ。

息子も母親に似てなかなかに良い顔をしている。

そりゃあ血眼になってクリムゾンティアを探すわけだな。

ていうか王族って美人多すぎない?

マリーさんは自分の望んだ姿だけど、オリンピア様もなかなかに綺麗だった。

となると母親もまた美人なのかもしれない。

ちなみに到着した別荘は、別荘という名の豪邸だった。

聞けば個人のではなく、王族のみが使用できる場所らしい。

しかも維持する為に使わない時もかなりの人数が常駐しているというから恐れ入る。

いつ使われるかもわからない家を維持するために毎日掃除をしているのだとか。

大変だよなぁ。

家に続きこれまた質素という名の豪華な食事をいただき、各自に用意された部屋へと戻る。

船のベッドも中々に広かったが、少し硬めだった為に少し寝心地が悪かった。

その点ここのベッドはどれもフカフカ。

シーツは清潔で汚れ一つない。

長旅の疲れをいやすべく、早々にシャワーを浴びて俺はベッドの上でくつろいでいた。

一人で寝るのも久々かもしれない。

たまにはこんな日があってもいいだろう。

さすがにミラもアニエスさんもここでは自重するようだ。

と思っていたらコンコンとノックの音が聞こえてくる。

「シロウ様まだ起きておいでですか?」

「お、ミラか。入っていいぞ。」

「失礼します。」

すぐに扉が開き、ミラが部屋に滑り込んでくる。

向こうもシャワーを浴びた後なのか髪の毛をアップにしているのが少し新鮮だ。

「どうした?」

「少し聞いておきたいことがありまして。」

「食事会でのことか?」

「はい。」

「俺相手に取引を持ちかけようとしている貴族が複数人いるらしいが、どう思う?」

「正直に申しまして我々の為にわざわざ儲け話を持ってくるとは思えません。悪意があると考えるべきです。」

「まぁそうだよなぁ。」

「その複数人がグルという可能性もあります、そういうお話が出た場合は出来るだけ時間を伸ばしていただけますでしょうか。本当はお断りしたいところですが、シロウ様はお受けになるのですよね?」

食事会でのことだ。

奥様から大陸の名産などを聞いていた時に、複数の貴族が俺へのアポを取れないかとの打診があったことを教えてくれた。

ひとまずその場は『聞いてみる』とだけ言ってお茶を濁したらしいが、目的は十中八九金だろう。

俺がこっちで儲けを出そうと思っているように、向こうも俺で儲けようとしている。

珍しい品だからとか、絶対に高値で売れるからとか色々言ってくるに違いない。

どう考えてもヤバいだけに早々に断ってもかまわないのだが、イザベラが貴族の間に入って商売しているだけに無下に断るのは難しい。

受ければ地獄、引いても地獄。

なら迎え撃つのが一番だ。

幸いにも俺には相場スキルがあるわけで、下手に安い物とかをつかまされることはないはずだ。

むしろそれをエサに他の優良素材を引き出すという手もある。

食うか食われるか、相手が相手だけに無茶なことはできないが、今回は王族という強いバックがついているのでそれを有効に使わせてもらおう。

「イザベラの仕事を邪魔しない為にもある程度は受ける必要はあるだろう。とはいえ、みすみす損をするつもりはない。食いに来たのならば逆に食ってやるさ。」

「やはりそうなりますよね。」

「心配か?」

「相手が普通の商人であればまだしも、貴族が相手です。無礼だと言って切り掛かってくる可能性もあります。必ず商談には誰かを付けるようにお願いします。」

「もちろん、正々堂々大勢の前で受けるつもりでいる。それを拒むなら断るまでだ。」

「それならば結構です。それで、シロウ様はどうするおつもりですか?」

色々と考えてはいるのだが、できれば一番大きいのを釣り上げたい。

その為の餌はもう手元にあるしな。

「魔石を買い付ける。」

「え?」

「あぁ、もちろん魔石鉱山が国有なのは分かっている。しかし、それを管理しているのはまた別の話。国から委託されるような形で貴族が鉱山を運営しているのは調査済みだ。」

「貴族に委託を?」

「どういう行先かは知らないが、国への奉仕に対する報酬みたいなもんなんだろう。で、貴族は任された鉱山を運営して富を得て、一割ほどを報酬として自分の懐に入れているわけだ。もちろん本当に一割かどうかはしらんけどな。」

「貴族が管理しているとしてもシロウ様に売るでしょうか。」

「嫌でも売ることになる。」

「弱味でも?」

「いやいや、そんな危険な事はしないさ。」

そもそも誰が鉱山を運営しているかも知らないのに弱みなんて握りようがない。

っていうかそんなことしたらマジで命を狙われてしまうだろう。

態々王都に来てまでそんなやばい橋はわたりたくない。

「魔石を売るしかない、という事は何か損失が出るということでしょうか。」

「お、鋭いな。馬車の中でリングさんが魔力結晶について話したのを覚えているか?」

「確か産出量が減っていると・・・。なるほど、理解しました。」

「ローランド様があの手紙に何を書いたかは知らないが、魔力結晶関係であることは間違いないだろう。確か動力としては魔力結晶の方が魔石よりも上なんだよな?」

「はい。特に純度の高い物は結界維持などの国防に関する物にも使われているそうです。」

「しかしながら産出量が少ないから仕方なく魔石で代用しているのが、現状というわけだ。」

「もし結晶が市場に流れれば、魔石の消費は一気に減りますね。」

「減ればもちろん値崩れする。だが、いきなり供給を減らすことはできないだろうからあっという間に魔石の在庫が積みあがっていく。保管するにも金はかかるわけだし、それならば安値でも売ってしまいたいと思うのが普通だ。」

もちろんこれは絵に描いた餅。

この通りになるとはもちろん思っていないが、流れとしてはあり得る話だ。

絡んできた貴族とある程度商談しながら情報を収集、魔石を欲しがっているという情報を向こうに流し管理している貴族を引っ張り出せれば作戦成功。

引っかからなければ持ち込んだ素材を売って終わればいい。

ようは損をしなければいいだけの事、相場スキルさえあればそれを防げるわけだから常に俺が優位に立つのは間違いない。

「ですが向こうも無理を言ってきますよね?」

「その時はディーネの力を借りればいい。王族を庇護している古龍の元嫁だぞ?全員の前で俺達の味方だと最初に誇示してしまえば無茶はいってこないはずだ。」

「そう上手くいくでしょうか。」

「それは始まってみないと何とも言えないだろうな。ま、密談をせず正々堂々商談をすればいいだけの事。なんならアニエスさんに同席してもらえばいい。なんせ監査官様だからな。」

「そう言えばそうでした。」

彼女の前では悪い事は言えない筈、もちろん俺もそうだがそもそもそういう事をするつもりがない。

「安心したか?」

「はい。」

「気をつけるのは百も承知、向こうについたらすぐに情報収集だ。あぁ、王都の美味い店珍しい店もよろしくな。」

「ふふ、お任せください。」

一番の目的は王都観光。

国王陛下からの呼び出しなんてのはおまけみたいなものだ。

美味い店に面白い店、こっちにきても狭い世界しか知らなかった俺が出会う本当の意味での異世界を楽しむためにこんな遠い所まで来たんだ。

下準備はバッチリとしておかないとな。

「とりあえず食い物関係はエリザとディーネの為に必須、アネットの土産に珍しい薬草なんかも見ておきたい。それと調合器具だな。後は街への土産か。」

「王都に到着しましたら取引所の方はお任せください、ハーシェ様と二人で確認しておきます。」

「持って来た品は適当に売り捌いて構わないからな。イザベラの分は別として貴族に売ってやる義理はない。」

「出来れば二倍以上の品を探しておきます。」

「移動には常に護衛をつけるのも忘れずにな。」

「それはシロウ様もですよ。」

「アニエスさんの舞い上がり方から察するに俺は当分王宮にカンヅメだろう。その後は嫌でも護衛がつくさ。」

なにせマリーさんを妊娠させたわけだからなぁ。

王家から出されたとはいえそれは表向きの話。

血のつながりは今もしっかりと残っている。

王家に新しい血筋が生まれるとなれば大騒ぎになるのも致し方ない。

はぁ、例の薬草の件もあるし国王陛下に謁見するのがマジで気が重い。

出来れば会いたくない。

「シロウ様、お顔色が優れませんが。」

「大丈夫だ、ちょっと心の準備をしていただけだから。」

「明日はいよいよ王都です、今日はゆっくりとお休みください。私も失礼致します。」

「おぅ、また明日な。」

頬にキスをしてからミラは部屋を後にした。

案ずるより産むがやすし、か。

まぁなるようになるさ。

そう自分に言い聞かせて、いつもよりも早くベッドにもぐりこむのだった。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...