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631.転売屋は王都でも仕入れる
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心地よい眠りの中、ふと人の気配を感じ目を覚ます。
目を開けた瞬間に見慣れない天井が見え、一瞬どこにいるかわからなくなってしまった。
「おはようございます。」
「ん、もう朝か。」
「食事の支度が出来たとの事ですが、いかがされますか?」
「他の皆は?」
「エリザ様とディーネ様は先に食堂へ行かれました、私とハーシェ様はシロウ様に合わせます。」
上半身を起こし大きく伸びをする。
いや~、昨日は疲れた。
いろんな意味で疲れた。
いい感じに酒も入っていたせいもあり昨夜はベッドに倒れこむなり眠ってしまったようだ。
フカフカなのにやわらかすぎず適度な反発もある。
やばいわこのベッド、もう普通のには戻れない体にされたかもしれない。
「なら俺達も食堂に行くか。」
「畏まりました。10分程でお迎えに上がります。」
「マリーさんとアニエスさんは向こうか。」
「恐らくは。」
「まぁ実家だしな。」
対外的には死んだことになっているが陛下自身も含め家族は皆生きていると知っている。
自分の部屋もあるだろうし、そこでゆっくり休んでいることだろう。
積もる話もあるだろうから当分は向こうで過ごすのかもしれない。
ベッドから降りて手早く着替えを済ませ、用意されていた洗面容器で顔を洗う。
これまたフカフカのタオル。
流石王家、いいものを使ってますねぇ。
『シルクワームのタオル。やわらかな糸を吐き出すシルクワーム、その中でも特にやわらかくかつしなりのあるものをシルクと呼ぶ。それを使っておられた布は、この世のものとは思えないほどのさわり心地になる。最近の平均取引価格は銀貨5枚。最安値銀貨3枚最高値銀貨十枚最終取引日は52日前と記録されています。』
タオル一枚に銀貨5枚て、高級すぎるだろう。
流石に一回で捨てるようなことはしないと思うが、贅沢だよなぁ。
身支度を済ませ部屋を出るとミラとハーシェさんが待っていてくれた。
「悪い、遅くなった。」
「よくお休みになられましたか?」
「おかげさんで。」
「どうぞ此方です。」
ミラの先導で食堂へと向かうのだが、いつの間に場所を把握したんだろうか。
後ろに控えるメイドさんが仕事を奪われすごすごとついてくるのが申し訳ないんだが。
「あ、やっときた。先に食べてるわよ。」
「ここの食事はかなり美味だぞ、早く食べるといい。」
「二人とも朝からそんなに食べて大丈夫か?」
「これでも少ない方よ。ねぇ、ディーネ。」
「うむ。本当ならこの倍はいけるがこの後も色々と食べるようだからな、その分を空けておくのだ。」
二人の横にはどう見ても10人分はあるだろう皿が積み上げられている。
それほどに美味しいのか、楽しみじゃないか。
席に着くなりすぐに料理が運ばれてきた。
白いパンにスープそれとオムレツ的なやつ。
シンプルイズベストとはまさにこのことを言うのだろう。
付け合せにトトマトが添えられているのもポイントが高い。
色目も綺麗で目でも楽しめる。
もちろん味も素晴らしく、ぺろりと平らげてしまった。
まだ食えるがセーブしておいた方がよさそうだ。
食後の香茶を堪能しながら久しぶりにゆっくりとした時間をすごす。
「この後は街に出るのよね?」
「その予定だ。正直カンヅメにされるのかと思ったんだがなぁ。」
「まずはご家族の時間を大切にされるんだと思います、夜にはまた別に内々の食事会があるそうですので早めに戻りましょう。」
「そうなのか?」
「そう伺いました。贈り物を届けるのにはちょうど良いかと、準備しておきます。」
「ならさっさと行ってさっさと帰るか。今日は下調べみたいなものだ、のんびりと行こう。」
まずは取引所とギルド協会に顔を出して、それから散策だな。
護衛は連れて行けとの事だったのだが、誰がついてきてくれるんだろうか。
「皆さん、おはようございます。」
「おはよう。てっきり向こうにいると思ったんだが、違ったみたいだな。」
どうしたもんかと悩んでいると、マリーさんとアニエスさんが食堂に入ってきた。
食事は済ませたのかそのまま此方へやってくる。
「陛下よりシロウ様を護衛するように申し付かっております。」
「街に出られるのであれば案内が必要ですよね?」
「そいつはありがたいが、いいのか?」
「私が行きたいんです。何も気にせず王都を散策できるなんて初めてですから。」
「そうよねぇ、どこに行くにも監視されていく場所も制限されるんだもの。やっぱり自由が一番よ。」
「エリザもそうだったのか?」
「出て行く前はね。」
貴族ってのも大変なんだなぁ。
体外的な部分を気にしてなんだろうけど、つまりは俺も気にしなければならないということだろうか。
「貴族ってのは面倒だな。」
「そんなもんよ。でも良かったの?一代限りの名誉職じゃなく本当の意味での貴族にもなれたのよ?」
「別に貴族になりたいわけじゃないし、俺だけで十分だよ。本当は全部辞退したいぐらいだが、メリットを考えると流石にもったいない。」
「コレまででしたら貴族を相手にした際に平民という一言で片付けられてしまいましたが、名誉職とはいえ貴族は貴族。今後は対等な立場で取引が出来るようになりますね。」
「元々そんな事をいうような奴は相手にしてこなかったんだが、生きている限りは有効に使わせて貰うさ。」
貴族になりたくて頑張ってきたわけじゃないが、せっかく手に入ったんだし有効に使わせて貰おう。
その後、各自準備を済ませて大型の馬車で城下町へと繰り出した。
「昨日も思ったが凄い人だよなぁ。」
「登録されているだけで住民数は30293人、コレに加えて未登録の旅人や冒険者が多数おりますのでこうなるのもいたし方ありません。」
「道行く人の見た目はいつもと変わらなくても、なんとなく凄そうに見えるのは俺が田舎者だからか?」
「そうかもね。」
「ま、せっかく来たんだがら田舎者全開で楽しませて貰うさ。」
ゆっくりと進む馬車から見える景色には思わずため息が漏れる。
まるで大都市のラッシュ時を彷彿とさせる人の量。
この中を案内無しで行くのは自殺行為だな。
「とりあえず俺とミラとハーシェさんで取引所とギルド協会へ行ってくる、マリーさん達はエリザとディーネを宜しくな。昼過ぎに冒険者ギルドに集合しよう。」
「美味い物をたらふく食べて来るぞ。」
「良いのがあったら持ち帰るわね。」
「こっちも適当につまみながら周るからほどほどで宜しく。」
釘を刺しておかないと大変なことになりそうだからな。
ひとまず取引所の前で降ろしてもらい四人と別れる。
もちろん別に護衛はついているので心配無用だ。
「でかいなぁ。」
「こちらもすごい人ですね。」
「これだけの人がいますから必然的に取引量も増えますしね。」
「ミラはダンジョンの素材系、ハーシェさんは交易品の方を宜しく。普段扱っている商材で差額が二倍以上になるものを探してくれ。大きさと量次第ではそれよりも少なくてもいい、その辺は任せる。」
「「はい。」」
「んじゃま俺は魔石関係を調べるか。」
近場なら1.5倍ぐらいでも十分に利益が出るのだが、やはりこれだけの距離があるとかなりの輸送コストになる。
狙い目は小さくて数が多く、でも値段が高く売れるやつ。
扱いが雑でも品質を損なわないやつがあれば最高だ。
受付で魔石関係の取引履歴の載った書類を出してもらって隅の方へと移動する。
素材系はともかく魔石系は中々見せてもらえないことが多いのだが、早速昨日授かった貴族証が役に立った。
特別扱いなんだなぁやっぱり。
えーっと、ここ最近は比較的値段は落ち着いているみたいだな。
魔物から得られる魔石は横ばい、大きい物は多少値動きがあるものの固定買取のように大きな動きはない。
産出される魔石も似たような感じだ。
だが魔力結晶だけは違う。
元々産出量が少ない上に、ダンジョンなどで手に入ることも少ないので値上がり傾向にあるようだ。
去年と比べても一割アップ。
一般的に使われることは少ないとはいえ、これだけ上がってくると投資目的で購入している輩も多そうだな。
さほど大きい物じゃないし、金に余裕があるのであれば置いておくだけで価値が上がる。
置いておくことでさらに供給量が減り、結果として値段が上がるサイクルだ。
だがそこに大量の現物をぶち込んだらどうなるか。
もちろん最初はそこまで値崩れしないだろうが、最終的には去年ぐらいの水準まで下がるだろう。
そして一番あおりを受けるのが、小型の魔石。
触媒に使われるものはそこまで値崩れしないだろうが、燃料に使われるようなやつは暴落間違いなしだ。
今頃あの場にいた貴族は大慌てで在庫処分の指示を出してるだろうなぁ。
そして、そんな奴らが俺の獲物でもある。
「すまん、取引希望なんだがお願いできるか?」
「販売ですか?それとも買取りですか?」
「買取りだ。鉱山系の小型から中型の魔石を一万個程欲しい、値段は小型が銀貨1枚、中型で銀貨3枚で頼む。」
「失礼ですがシロウ様、その値段ではなかなか現れないと思いますが。」
「もちろん集まらなければ諦める、取引手数料は5%だったか?」
「いえ、貴族の皆様は3%となっております。」
「それはいい事を聞いた、しばらくは王城に滞在しているからもし売主が現れたら連絡をくれ。」
絶対に無理ですよと言われながら書類に記入をする。
滞在期間はあと九日。
それまでに売主が現れなくてもかまわない、履歴を残すのが重要なんだ。
掲示をお願いして二人の所へと戻る。
向こうもいい感じの成果があったようだ。
「シロウ様の狙い通り上手くいけば王都との交易も可能かもしれません。」
「安定供給出来ることが前提だが、なんでこんなにダンジョン産の素材が高いんだ?こっちにもあるんだろ?」
「私達がダンジョンのすぐ近くで買取しているからかもしれませんが、それにしても高すぎます。」
「需要が多いからではないでしょうか。ボアやカウ、リザードの革はどんなものにも使われていますから。」
「これだけの人がいればもちろんそれはわかるんだが。ん?」
「あ、お気づきになられましたか。」
ミラが書き出したリストの中に目を引くものがあった。
何でこんなものがこんな値段であるんだ?
「ポリキューブにケミカルパウダー、随分と安いんだな。」
「どちらも工房で加工された残りかすのようです、とはいえそれなりの大きさですので混ぜればアレができます。」
「でも、それはイザベラ様が売り込んでおられるのでは?」
「それはまだ貴族相手だからな、一般販売はしていないはずだ。とはいえ、この値段ならぼろ儲けも良い所だが。売るか?」
「え、でも。」
「厳密にいえば向こうの方が高級品で汚れの落ちもいい。その点こっちは加工してるからどうしても崩れやすく性能もも若干落ちる。とはいえ、これだけ人がいるんだどこにでも需要はあるだろう。よし、売るぞ。」
ポリキューブとケミカルパウダー。
どちらも魔物から取り出された後様々な製品に使用され、そしてゴミとして排出される素材だ。
そのままでは特に使い道のないゴミなのだが、スポンジ状のポリキューブにケミカルパウダーを混ぜた水を吸わせて圧力をかけると元の世界ではおなじみの掃除道具に変身する。
そう、激落ちとか簡単掃除とか色んな名前の付けられたあの四角いスポンジだ。
ケミカルパウダーが水垢や油汚れに反応して溶かし、さらに研磨剤の様に磨いてくれる。
鏡面加工されたものには使用できない難点もあるが、この世界のシンクは板金性が多いのでその辺は心配しなくていい。
素材さえあれば簡単に作れるだけに、てっきりこっちでも使われていると思ったんだがこの感じだと普及してなさそうだ。
だって取引履歴がほとんどない。
「ではどこで加工しましょうか。」
「王城に加工場ぐらいあるだろう、薬品を使うわけじゃない隅の方を借りれば明日には販売できるはずだ。」
「ではお店を出すんですね?」
「あぁ、そのほうが俺らしいだろ?」
王都には観光に来たんだが仕事をしないとは言っていない。
持ち込んだ品も売らないといけないし、せっかくだから王都の市場も体験しておきたい。
「では買い付けは私達に任せてください、それと西方のグラスはかなり高値で売れそうですよ。」
「他にも売れそうなやつは露店で売ってもいいかもな、どんな反応があるか楽しみだ。」
どうせエリザとディーネの二人は明日も食い倒れツアーだろう。
それに俺達が付き合う必要はない。
さて、王都での商売がどんなもんか見せてもらおうじゃないか。
目を開けた瞬間に見慣れない天井が見え、一瞬どこにいるかわからなくなってしまった。
「おはようございます。」
「ん、もう朝か。」
「食事の支度が出来たとの事ですが、いかがされますか?」
「他の皆は?」
「エリザ様とディーネ様は先に食堂へ行かれました、私とハーシェ様はシロウ様に合わせます。」
上半身を起こし大きく伸びをする。
いや~、昨日は疲れた。
いろんな意味で疲れた。
いい感じに酒も入っていたせいもあり昨夜はベッドに倒れこむなり眠ってしまったようだ。
フカフカなのにやわらかすぎず適度な反発もある。
やばいわこのベッド、もう普通のには戻れない体にされたかもしれない。
「なら俺達も食堂に行くか。」
「畏まりました。10分程でお迎えに上がります。」
「マリーさんとアニエスさんは向こうか。」
「恐らくは。」
「まぁ実家だしな。」
対外的には死んだことになっているが陛下自身も含め家族は皆生きていると知っている。
自分の部屋もあるだろうし、そこでゆっくり休んでいることだろう。
積もる話もあるだろうから当分は向こうで過ごすのかもしれない。
ベッドから降りて手早く着替えを済ませ、用意されていた洗面容器で顔を洗う。
これまたフカフカのタオル。
流石王家、いいものを使ってますねぇ。
『シルクワームのタオル。やわらかな糸を吐き出すシルクワーム、その中でも特にやわらかくかつしなりのあるものをシルクと呼ぶ。それを使っておられた布は、この世のものとは思えないほどのさわり心地になる。最近の平均取引価格は銀貨5枚。最安値銀貨3枚最高値銀貨十枚最終取引日は52日前と記録されています。』
タオル一枚に銀貨5枚て、高級すぎるだろう。
流石に一回で捨てるようなことはしないと思うが、贅沢だよなぁ。
身支度を済ませ部屋を出るとミラとハーシェさんが待っていてくれた。
「悪い、遅くなった。」
「よくお休みになられましたか?」
「おかげさんで。」
「どうぞ此方です。」
ミラの先導で食堂へと向かうのだが、いつの間に場所を把握したんだろうか。
後ろに控えるメイドさんが仕事を奪われすごすごとついてくるのが申し訳ないんだが。
「あ、やっときた。先に食べてるわよ。」
「ここの食事はかなり美味だぞ、早く食べるといい。」
「二人とも朝からそんなに食べて大丈夫か?」
「これでも少ない方よ。ねぇ、ディーネ。」
「うむ。本当ならこの倍はいけるがこの後も色々と食べるようだからな、その分を空けておくのだ。」
二人の横にはどう見ても10人分はあるだろう皿が積み上げられている。
それほどに美味しいのか、楽しみじゃないか。
席に着くなりすぐに料理が運ばれてきた。
白いパンにスープそれとオムレツ的なやつ。
シンプルイズベストとはまさにこのことを言うのだろう。
付け合せにトトマトが添えられているのもポイントが高い。
色目も綺麗で目でも楽しめる。
もちろん味も素晴らしく、ぺろりと平らげてしまった。
まだ食えるがセーブしておいた方がよさそうだ。
食後の香茶を堪能しながら久しぶりにゆっくりとした時間をすごす。
「この後は街に出るのよね?」
「その予定だ。正直カンヅメにされるのかと思ったんだがなぁ。」
「まずはご家族の時間を大切にされるんだと思います、夜にはまた別に内々の食事会があるそうですので早めに戻りましょう。」
「そうなのか?」
「そう伺いました。贈り物を届けるのにはちょうど良いかと、準備しておきます。」
「ならさっさと行ってさっさと帰るか。今日は下調べみたいなものだ、のんびりと行こう。」
まずは取引所とギルド協会に顔を出して、それから散策だな。
護衛は連れて行けとの事だったのだが、誰がついてきてくれるんだろうか。
「皆さん、おはようございます。」
「おはよう。てっきり向こうにいると思ったんだが、違ったみたいだな。」
どうしたもんかと悩んでいると、マリーさんとアニエスさんが食堂に入ってきた。
食事は済ませたのかそのまま此方へやってくる。
「陛下よりシロウ様を護衛するように申し付かっております。」
「街に出られるのであれば案内が必要ですよね?」
「そいつはありがたいが、いいのか?」
「私が行きたいんです。何も気にせず王都を散策できるなんて初めてですから。」
「そうよねぇ、どこに行くにも監視されていく場所も制限されるんだもの。やっぱり自由が一番よ。」
「エリザもそうだったのか?」
「出て行く前はね。」
貴族ってのも大変なんだなぁ。
体外的な部分を気にしてなんだろうけど、つまりは俺も気にしなければならないということだろうか。
「貴族ってのは面倒だな。」
「そんなもんよ。でも良かったの?一代限りの名誉職じゃなく本当の意味での貴族にもなれたのよ?」
「別に貴族になりたいわけじゃないし、俺だけで十分だよ。本当は全部辞退したいぐらいだが、メリットを考えると流石にもったいない。」
「コレまででしたら貴族を相手にした際に平民という一言で片付けられてしまいましたが、名誉職とはいえ貴族は貴族。今後は対等な立場で取引が出来るようになりますね。」
「元々そんな事をいうような奴は相手にしてこなかったんだが、生きている限りは有効に使わせて貰うさ。」
貴族になりたくて頑張ってきたわけじゃないが、せっかく手に入ったんだし有効に使わせて貰おう。
その後、各自準備を済ませて大型の馬車で城下町へと繰り出した。
「昨日も思ったが凄い人だよなぁ。」
「登録されているだけで住民数は30293人、コレに加えて未登録の旅人や冒険者が多数おりますのでこうなるのもいたし方ありません。」
「道行く人の見た目はいつもと変わらなくても、なんとなく凄そうに見えるのは俺が田舎者だからか?」
「そうかもね。」
「ま、せっかく来たんだがら田舎者全開で楽しませて貰うさ。」
ゆっくりと進む馬車から見える景色には思わずため息が漏れる。
まるで大都市のラッシュ時を彷彿とさせる人の量。
この中を案内無しで行くのは自殺行為だな。
「とりあえず俺とミラとハーシェさんで取引所とギルド協会へ行ってくる、マリーさん達はエリザとディーネを宜しくな。昼過ぎに冒険者ギルドに集合しよう。」
「美味い物をたらふく食べて来るぞ。」
「良いのがあったら持ち帰るわね。」
「こっちも適当につまみながら周るからほどほどで宜しく。」
釘を刺しておかないと大変なことになりそうだからな。
ひとまず取引所の前で降ろしてもらい四人と別れる。
もちろん別に護衛はついているので心配無用だ。
「でかいなぁ。」
「こちらもすごい人ですね。」
「これだけの人がいますから必然的に取引量も増えますしね。」
「ミラはダンジョンの素材系、ハーシェさんは交易品の方を宜しく。普段扱っている商材で差額が二倍以上になるものを探してくれ。大きさと量次第ではそれよりも少なくてもいい、その辺は任せる。」
「「はい。」」
「んじゃま俺は魔石関係を調べるか。」
近場なら1.5倍ぐらいでも十分に利益が出るのだが、やはりこれだけの距離があるとかなりの輸送コストになる。
狙い目は小さくて数が多く、でも値段が高く売れるやつ。
扱いが雑でも品質を損なわないやつがあれば最高だ。
受付で魔石関係の取引履歴の載った書類を出してもらって隅の方へと移動する。
素材系はともかく魔石系は中々見せてもらえないことが多いのだが、早速昨日授かった貴族証が役に立った。
特別扱いなんだなぁやっぱり。
えーっと、ここ最近は比較的値段は落ち着いているみたいだな。
魔物から得られる魔石は横ばい、大きい物は多少値動きがあるものの固定買取のように大きな動きはない。
産出される魔石も似たような感じだ。
だが魔力結晶だけは違う。
元々産出量が少ない上に、ダンジョンなどで手に入ることも少ないので値上がり傾向にあるようだ。
去年と比べても一割アップ。
一般的に使われることは少ないとはいえ、これだけ上がってくると投資目的で購入している輩も多そうだな。
さほど大きい物じゃないし、金に余裕があるのであれば置いておくだけで価値が上がる。
置いておくことでさらに供給量が減り、結果として値段が上がるサイクルだ。
だがそこに大量の現物をぶち込んだらどうなるか。
もちろん最初はそこまで値崩れしないだろうが、最終的には去年ぐらいの水準まで下がるだろう。
そして一番あおりを受けるのが、小型の魔石。
触媒に使われるものはそこまで値崩れしないだろうが、燃料に使われるようなやつは暴落間違いなしだ。
今頃あの場にいた貴族は大慌てで在庫処分の指示を出してるだろうなぁ。
そして、そんな奴らが俺の獲物でもある。
「すまん、取引希望なんだがお願いできるか?」
「販売ですか?それとも買取りですか?」
「買取りだ。鉱山系の小型から中型の魔石を一万個程欲しい、値段は小型が銀貨1枚、中型で銀貨3枚で頼む。」
「失礼ですがシロウ様、その値段ではなかなか現れないと思いますが。」
「もちろん集まらなければ諦める、取引手数料は5%だったか?」
「いえ、貴族の皆様は3%となっております。」
「それはいい事を聞いた、しばらくは王城に滞在しているからもし売主が現れたら連絡をくれ。」
絶対に無理ですよと言われながら書類に記入をする。
滞在期間はあと九日。
それまでに売主が現れなくてもかまわない、履歴を残すのが重要なんだ。
掲示をお願いして二人の所へと戻る。
向こうもいい感じの成果があったようだ。
「シロウ様の狙い通り上手くいけば王都との交易も可能かもしれません。」
「安定供給出来ることが前提だが、なんでこんなにダンジョン産の素材が高いんだ?こっちにもあるんだろ?」
「私達がダンジョンのすぐ近くで買取しているからかもしれませんが、それにしても高すぎます。」
「需要が多いからではないでしょうか。ボアやカウ、リザードの革はどんなものにも使われていますから。」
「これだけの人がいればもちろんそれはわかるんだが。ん?」
「あ、お気づきになられましたか。」
ミラが書き出したリストの中に目を引くものがあった。
何でこんなものがこんな値段であるんだ?
「ポリキューブにケミカルパウダー、随分と安いんだな。」
「どちらも工房で加工された残りかすのようです、とはいえそれなりの大きさですので混ぜればアレができます。」
「でも、それはイザベラ様が売り込んでおられるのでは?」
「それはまだ貴族相手だからな、一般販売はしていないはずだ。とはいえ、この値段ならぼろ儲けも良い所だが。売るか?」
「え、でも。」
「厳密にいえば向こうの方が高級品で汚れの落ちもいい。その点こっちは加工してるからどうしても崩れやすく性能もも若干落ちる。とはいえ、これだけ人がいるんだどこにでも需要はあるだろう。よし、売るぞ。」
ポリキューブとケミカルパウダー。
どちらも魔物から取り出された後様々な製品に使用され、そしてゴミとして排出される素材だ。
そのままでは特に使い道のないゴミなのだが、スポンジ状のポリキューブにケミカルパウダーを混ぜた水を吸わせて圧力をかけると元の世界ではおなじみの掃除道具に変身する。
そう、激落ちとか簡単掃除とか色んな名前の付けられたあの四角いスポンジだ。
ケミカルパウダーが水垢や油汚れに反応して溶かし、さらに研磨剤の様に磨いてくれる。
鏡面加工されたものには使用できない難点もあるが、この世界のシンクは板金性が多いのでその辺は心配しなくていい。
素材さえあれば簡単に作れるだけに、てっきりこっちでも使われていると思ったんだがこの感じだと普及してなさそうだ。
だって取引履歴がほとんどない。
「ではどこで加工しましょうか。」
「王城に加工場ぐらいあるだろう、薬品を使うわけじゃない隅の方を借りれば明日には販売できるはずだ。」
「ではお店を出すんですね?」
「あぁ、そのほうが俺らしいだろ?」
王都には観光に来たんだが仕事をしないとは言っていない。
持ち込んだ品も売らないといけないし、せっかくだから王都の市場も体験しておきたい。
「では買い付けは私達に任せてください、それと西方のグラスはかなり高値で売れそうですよ。」
「他にも売れそうなやつは露店で売ってもいいかもな、どんな反応があるか楽しみだ。」
どうせエリザとディーネの二人は明日も食い倒れツアーだろう。
それに俺達が付き合う必要はない。
さて、王都での商売がどんなもんか見せてもらおうじゃないか。
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飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
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