転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア

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634.転売屋は貴族を相手に商売をする

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「これは!何と美しい食器だ。」

「王家に献上した品を作った職人の作品だ。これだけの品は中々手に入らないと思っていい。」

「これで飲む酒はさぞうまい事だろう。」

「ワインもいいが、やっぱり西方の酒が良いだろう。この時期ならしっかり冷やしたのをこっちのお猪口に入れて飲むんだ。」

「うぅむ、想像するだけで美味そうだ。いくらだ?」

「一つ銀貨15枚。全部で50個ある、こっちのグラスは銀貨20枚で10個。早い者勝ちだぞ。」

貴族相手の商売ということで、はるばる持ち込んだ品々を全て持って来た。

やはり西方の品はかなり人気なようで、売れるかわからないような掛け軸もなぜか喜ばれる。

こんな事ならあの刀も買っておけばよかった。

中身はともかく骨董品的な扱いで売り込めただろう。

ウィフさん主催の夕食会。

そこに集まった大勢の貴族を前に俺達は自慢の品々を売り込んでいた。

「貴女がフェル様の書いたポスターのモデルね。本物もなかなか綺麗じゃない。」

「お褒めにあずかり光栄です奥様。でも、全部この化粧品のおかげですよ。」

「新しいパックとかいうの、中々に調子がいいわ。今回は新しいのを持って来たのよね?」

「新作として二種類、それに香りが三種類の全部で6種類ございます。特に化粧水の量を1.5倍に増やしたこちらのパックは一晩で10歳は若返る事間違いございません。」

「買うわ!」

「あ、ずるい!私も買うわ!全部ちょうだい!」

「一緒にルティエ工房のアクセサリーも販売しています、よろしければ見て行かれませんか?新作のコバルトスフィア、この夏にぴったりの商品です。」

右隣ではアニエスさんと一緒にマリーさんが化粧品とアクセサリーを売り込んでいる。

さすが元王族だけあって貴族の奥様方を捌くのはお手の物ってかんじだ。

男の時代には色々と浮名を流した・・・ってことはないんだよなぁあの人の場合は。

「こちらの品でしたら銀貨30枚、合わせてでしたら金貨1枚の買い取りとなります。」

「うぅむ、思ったより安いのだな。」

「少々傷が見受けられるのと、これらの品は中々買い手が見つかりません。オークションに出されるのであればもう少し高値でも買い手は見つかると思われます。」

「いや、その手間を考えるとここで手放す方がいい。妻がかなり買い込んでいるようだしな。」

「ではもう銀貨10枚加算させていただきます。」

「助かるよ。」

そして左隣ではミラがダンディな貴族を相手に買取を行っていた。

基本はミラに任せているが、わかりにくい物は俺も手伝っている。

うちで軍資金を稼ぎ、そしてそのお金で買い物をする。

結局は全部俺の所に戻ってくる訳で。

これをぼろもうけと言わずに何という。

さすがイザベラ、集まった貴族は皆最高の客ばかりだ。

「そういや、他の三人はどこ行った?」

「ハーシェ様でしたらイザベラさんと打ち合わせを、エリザ様とディーネ様は・・・あそこですね。」

部屋の奥の方を見ると二人の周りにそれぞれ人だかりができている。

エリザはの周りには主に女性が、ディーネの周りには男性じゃなかった女性も結構多い。

あれ?

あそこにいるのはフェルさんか?

「ディーネはフェルさんに捕まったか。」

「美味しい食事につられて絵のモデルをなさっているようです。エリザ様は思った以上にファンが多いようですね。」

「元貴族ってのもいまだに信じられないんだが。」

「私もです。」

「不倒のエリザは冒険者だけでなく貴族にも人気ですから。オリンピア様も会えるのを楽しみにしていたようですし。」

「何が良いんだ?」

「やはり強さでしょう。それでいて決して威張らず、謙虚で、美しい。」

うぅむ、わからん。

いや、強さはわかるぞ、美しいってのもまぁわかる。

だが威張らず謙虚っていったいどこから出てきたんだ?

離れた場所だからって噂に尾ひれがつき過ぎじゃないだろうか。

「で、そのオリンピア様はどこに?」

「後でこちらに来るそうですわ。」

「お、イザベラ話は終わったか。」

「さすがですね、もう目標の二割を売り上げておいでです。この分ですと解放されるのもすぐかと。」

もうそんなに稼いだのか。

いくら独占商材とはいえ決して単価が高いわけじゃない。

それをしっかりと売り込み、継続して利益を上げる手腕はもはや貴族ではなく商人だろう。

なんて本人に言うと怒られそうなので言わないけど。

あっという間に客がつき、品物はほぼ完売。

買取は継続して行っているが、そろそろこっちも品切れか。

「少しいいだろうか。」

「いらっしゃい、買い取りか?」

「君がこの度栄誉ある名誉男爵の地位を賜った商人だね、思った以上に若くて正直驚いた。」

俺の前にやって来たのは30少し過ぎたぐらいの、この中では比較的若い男だ。

身長は普通、俺より少し低いぐらいか。

さらに言えばここにいる人間の中ではなかなかに細い部類に入るだろう。

この前のチビデブちょいハゲとは真逆のタイプだが、かなり目力が強い。

それはもうバチバチに俺を見て来る。

まっすぐに、目線をそらさず俺の目を見て話してくるタイプは正直珍しい。

ここにいるほとんどは、にわか貴族とか所詮商人だろとか結構さげすんだ感じの見方をしてきたが、この人からはそんな雰囲気を全く感じない。

「そりゃどうも。貴方もこの中では若い方に入るのでは?えぇっと。」

「失礼挨拶が遅れた。ラウドーン家次期当主のストーンだ。子爵だから一応君の上になるんだけどどうか気にしないでほしい。所詮は親の身分だ。」

「シロウだ。貴族と言っても一代限りの名誉職、話し方はどうか勘弁願いたい。しかし自分で次期当主という割には随分と下げた言い方だな。」

「こういっておかないと、代替わりした時に色々と面倒でね。」

「兄弟間で地位を狙い合っているとか?」

「そういうのじゃないさ、それにうちの跡取りは僕だけだから争いは起きないしね。」

「それは失礼した。」

飄々と話す優男、という感じでもないんだよなぁ。

どっちかっていうと硬派な雰囲気を感じる。

リングさんとはまた違うタイプの人間だ。

「今日は挨拶をと思っただけだ、君の様なタイプは正直珍しいからね。」

「50年はいなかったんだったか?」

「あぁ、そもそも名誉貴族なんてのは平民に夢を見させるための餌にしか過ぎない。貴族は尊きもの、そう簡単になられては困る。」

「そういえば前の人もそう言っていたな。そんなに栄誉ある物なのか?」

「陛下のお気に入りである君にはわからないだろうけどね。」

うぅむ、随分と噛みついてくるじゃないか。

最初の印象はそうでもなかったが、急に敵意をむき出しにし始めた。

俺が貴族になったのがよっぽど気に食わないと見える。

「確かにエドワード陛下には懇意にして貰っているが、この地位は自分で勝ち取ったものだと思っている。これで平民だからと舐められることも無くなった。今日もこうやって大勢の客様に喜んでもらったわけだしな。それでストーン子爵、今日はどのようなご用件で?」

「随分と儲けたようだけど、そんなに金が大切かい?」

「あぁ、金で買えない物はない。もっとも、この地位はそれとは関係なく手に入れたものだけどな。貴族の爵位は尊いもの、それこそ金でなんて買えるものじゃないんだろう?」

「その通りだ。」

「大切な金をどう使うかは俺が決める。良い品があれば金を出すし、そうでなければ買わなければいい。欲しい物は沢山あるからコツコツとそれを買って行くつもりだ。」

「それが魔石というわけだね。」

なんでそれを。

いや、取引所には名前も掲示しているから知っていても当然か。

横を見るとマリーさんが心配そうな顔で俺を見ている。

これ以上喧嘩を売るのは止めた方が良さそうだ、いくら貴族になったとはいえ相手はその上。

次期当主とはいえ身分はかわらない。

「もしお持ちならぜひ買わせていただきたいね。」

「生憎と僕の持ち物にはないんだ、済まないね。」

「いや、失礼な事を言ったのは俺の方だ。それではストーン子爵、良い夜を。」

深々と頭を下げて俺はその場を離れエリザとディーネの方へと向かった。

背中にはまだ刺すような視線を感じる。

ラウドーン家か。

あとでマリーさんに詳しく聞いておくとしよう。

その日、販売だけで金貨120枚を稼ぎ出しその他にも大量の品を買い付けて夕食会を後にした。

王都の滞在時間は残り一週間。

明日は仕事を休んで王都観光へとしゃれこむ予定だ。
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