転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア

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783.転売屋は視察に行く

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「話には聞いていましたが船の移動はかなり快適ですね。」

「移動時間が陸路の半分、費用は少々高めだけどそれに見合う快適さよね。魔物にも盗賊にもおびえる心配は無いし、なにより想像以上に揺れないのが最高ね。」

「ここが比較的穏やかな川だからです、流石に急流になるとそういうわけにも行きません。」

船の先端部分で羊男と嫁がいちゃつきながらガレイと話をしている。

船のたびもそろそろ終わり。

もう少しすれば目的地に到着だ。

ローランド様というかエドワード陛下の命令で俺達は港町の拡張計画を視察することになった。

メンバーは総勢10名。

その中に俺とアニエスさん、いちゃつくバカ夫婦が二人含まれている。

ミラたちも参加予定だったのだが、やむにやまれぬ事情があり今回は見送り。

まぁアニエスさんがいれば護衛としても問題は無いだろう。

陛下直々の命令だし監査官もいるんだからさすがのポーラさんもへんなことはしてこないはずだ。

港町の東側を拡張する計画らしく色々と工事も進んでいるそうなので、どういう段取りで工事を行うかなど生の声も色々と聞けるだろう。

なんせ街づくりなんて素人もいい所だ。

一応専門家も参加しているので詳しいことは向こうにお任せして俺は金儲けになりそうな話をしっかりと聞かせてもらおう。

大規模工事って事はそれだけ多くの素材が右から左に流れていく。

一つ一つの儲けは少なくても数をこなせば莫大な儲けになること間違いない。

何を作るのか、何が必要なのか、それを知れば百戦危うからずってか?

「見えてきた!」

「皆さん接岸準備に入りますので船内へお戻りください、後30分ほどで到着いたします。揺れますのでくれぐれもお気をつけを。」

この辺は船長の腕前に依存するらしいが、ガレイの腕は間違いないので毎回そんなに揺れないんだよな。

もちろん今回も大きな揺れも無く静かに港へと到着。

下船するとやはりというか、ポーラさんが俺達を待ち構えていた。

いや、それは言いすぎか。

出迎えてくれたが正しいな、うん。

「皆様、ようこそお越し下さいました。」

「ポーラ様直々の出迎え誠にありがとうございます、私はギルド協会のシープと申します。この度は色々と勉強させていただきたいと思っておりますので、ご教授の程宜しくお願いいたします。」

「こちらこそまだまだ準備段階ではありますがお力になれれば幸いです。長旅お疲れでしょう、まずはこちらで疲れを癒してください。」

俺達を代表して羊男が挨拶をし、ポーラさんがそれを歓迎する。

ひとまず堅苦しい挨拶は終了したようだ。

滞在時間にも限界はあるし、さっさと用事を終わらせてしまいたいんだけどなぁ。

「ガレイ、悪いが後は任せてかまわないな。」

「持ち込んだからには責任を持って搬入いたします、ご安心を。」

「帰りはそんなに大荷物にならないと思うが持ち込んだ先で何か提案されたら適当にやっておいてくれ。」

「適当にですか。」

「大損しなければ問題ない、珍しいものがあれば大歓迎だ。」

荷物の搬入だけでなく買い付けまでさせるのは申し訳ないのだが、今回は視察がメインだけに好き勝手できないんだよなぁ。

いや、時間があればもちろん買い付けもするが先を行く方々がそれを許してくれそうも無い。

致し方なく羊男達を追いかけて坂を上り、到着したのはギルド協会。

ひとまず応接室に案内されたのだが、どうやら羊男はこちらの職員とも面識があるようで何人かと話を始めてしまった。

アニエスさんも到着と同時に奥へ消えてしまい戻ってこない。

他の面々は情報交換に余念が内容で俺とニアだけが取り残された感じになってしまった。

「この時間だし今日は話だけかな。」

「どうだろうな、時間は有限だし今日のうちにある程度は見て回るんじゃないか。」

「えー、私お魚が食べたいんだけどなぁ。」

「エリザみたいなことを言うなよ。」

「だってエリザが美味しい美味しいっていうから、こういう機会が無いとここまでくることなんて無いでしょ。」

「あー、まぁ確かに。」

冒険者ギルドの中でも中々の地位にいるニアは、ダンジョンの中に入ることは多くても街の外に出ることはあまり無い。

もちろん休暇を取って旅行に行ったりは出来るそうだが、本人がそれを求めたらの話だ。

何だかんだ言いながらニアもエリザもあの街が好きだからなぁ。

というかダンジョンか。

戦うことに喜びを感じるタイプだけに好き好んで旅行とか行かないんだろう。

しらんけど。

「皆様お待たせしました、今回のスケジュールをお伝えしますのでどうぞこちらへお集まりください。」

久方ぶりに見る仕事モードのポーラさん。

中央の大きなテーブルに集まり配られた資料に目を通す。

ふむふむなるほど。

時間に限りがあるだけに全員で同じ場所を見て回るのではなくいくつかのグループに分かれて見て回るのか。

まぁそうなるよな。

滞在時間は今日を入れて二日しかないわけだし、その中で話し合いとかもする必要がある。

自由時間はほぼ皆無。

どうやら買い付けはガレイに任せるしかなさそうだ。

さて、俺達の持ち回りは・・・。

「まさか下水道とは。」

「一番重要な場所です、シロウ様が見るのは当然かと。」

「確かに快適な生活には重要だが・・・、思ったより臭くないな。」

「ここはスライム式浄化槽でろ過した水を海に流していますのでそこまで腐臭はしないとおもいます。それにまだ使用していませんので。」

ポーラさん直々に案内されたされたのは拡張予定エリアの地下下水道。

専用の整備用通路から中に入ったのだが、思っている以上に天井が高くなにより臭くない。

ちなみにスライム型浄化槽は王都でも使用されているこの世界ではごくありふれた下水処理システム。

スライムの体内で処理された有機物は無害な水分として排出され、消化できないものが下にたまっていく。

定期的にそういった廃棄物の処理は必要になるのだが、そのために他の場所を広く作ってあるんだろう。

もちろん俺たちの町でも同じシステムが使われていて、新米たちが定期的に掃除をしてくれている。

とはいえあっちは臭いんだよなぁ。

やっぱりすぐに処理された水分をよそに流せないからだろうか。

『石材。採掘場から切り出された形の整ったガンド石。最近の平均取引価格は銀貨1枚、最安値銅貨80枚、最高値銀貨2枚、最終取引日は本日と記録されています。』

「さらに言えばこちらで使われている石材には消臭性の高い接着剤が使われておりますので、そのおかげかもしれません。」

「地下を掘るだけじゃなくしっかりと石材で補強されている、この石はどこから運んできたんだ?」

「北に採石場がありまして、そこから運んでいます。」

「まぁそういう感じだよなぁ。」

「シロウ様の船があれば陸路よりも格段に早く運ぶことが可能ですよ。」

「拡張工事となればこっちでも大量消費するだけに欲を言えば自前で用意したいところなんだが。アニエスさん、ロックゴーレムの胴体ってこれぐらいの大きさだったよな。」

壁に使われている石材は一辺1mぐらいの正方形。

これを運ぶとなるとかなりの重量だし、いくら水路があるとはいえ余り数は運べない。

なら魔物の素材を流用できれば大幅にコストを削減できる上に数も確保できる・・・かもしれない。

「その大きさですと脚ですね。一体から4個取れる計算です。」

「強度はそれなりにあるから問題は重さだな。」

「加工しないことを考えれば労働者をダンジョンに迎え入れて護衛しながら運ぶ手もあるかと。」

護衛をしながらってのが面倒だよなぁ。

出来るなら冒険者に運ばせれば護衛する手間が省けるんだが、彼らがそれを受け入れてくれるかは別問題だ。

「ダンジョンですか、入ったことはありませんが色々な素材が手に入るんですね。」

「手間は掛かるけどな。」

「切り出した石材は下水道だけでなく街の至る所で使われます、ご希望があれば採掘場にもご案内できますが如何されますか?」

「せっかくですので私は見せてもらうべきかと。」

「ふむ、その心は?」

「今のうちに安く買い付けておけば後々儲けが出るのではないでしょうか。腐るものでもありませんし、町外れに積み上げておいても怒られることは無いはずです。」

確かに腐るものじゃないし、おいておく場所はどこにでもある。

何より価格交渉するのに最高の人材が案内してくれるんだ、価格しだいではいい金儲けになるだろう。

「今から行っても大丈夫なのか?」

「さすがに今からは難しいですが明日の朝一番であれば。」

「ならそうするか。とりあえず上に戻ったらここの事業規模と費用の概算なんかを教えてくれ。」

「わかりました。」

さて、視察はまだ始まったばかり。

地下を見たら今度は上に戻って金儲けのネタを探すとしよう。

難しい話は羊男に任せておけばいい。

俺は素材を右から左に転がして儲けを出せればそれで十分だ。

その日は早々にポーラ様から食事会という名の接待を受けることに。

もちろんニアが期待していた魚が大量に出てきたのは言うまでもない。

最初こそ喜んでいたものの後半は微妙な顔をしていたなぁ。

もちろん俺は大満足だ。

肉もいいが魚も食いたいわがまま男なんでね。

歓迎会には港町の有力者もそれなりに出席しており、いろんな意味で有意義な時間を過ごすことが出来た。

特に還年祭関係のネタは非常にうれしい。

なるほどそういうのが流行なのか。

戻ったら急いで仕込をしないと間に合わないかもしれない。

その日は夜遅くまで食事会は続き、翌朝若干の二日酔いのまま採掘場へと向かう馬車に乗り込むことになったのは言うまでも無い。

ちなみに酔い覚ましの薬は忘れた。
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