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791.転売屋は投資をする
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「さて、それじゃあはじめるか。」
「はじめるって俺とお前しかいないだろ。」
「あれ、他の参加者は?」
「いるわけないだろ、あんな話誰が食いつくんだよ。」
昼前の三日月亭は宿泊客もいなくなりがらんとしている。
話し合いをするには好都合ではあるのだが、いた所で困る話でもない。
集まらなかったのはむしろ当然。
俺が噛んでいる話だからという理由で参加するやつがいるかもと思ったのだが、どうやらそんな奴はいなかったようだ。
「金になるかもわからない投資話に食いつくような奴がいなかったのはいい事じゃないか。」
「現物を飲んだのは俺とお前だけ。それに同じ味になるかもわからないときたらそりゃそうだろう。」
「とはいえあの味を無かったことにするのは惜しい話だろ?」
「まぁな。だが本当に出来ると思うのか?」
本当に出来るのかと聞かれても現状で言い切ることは不可能だ。
あくまでも可能性はあるという程度だが、全くの白紙という状況ではないだけに無かったことにするのはもったいない。
分の悪い勝負じゃないだけにそれなら俺は出来る方に賭けたいと思っている。
『西方で作られている幻の酒をこの国でも作ってみないか。』
そんな眉唾物の誘いに誰も乗らなかったのはむしろ当然の結果だが、あの日ジョウジさんが俺とマスターに語った話を聞いて放っておくことは出来なかった。
あの味は俺が望んでいたもの。
この国で珍しいから作るんじゃない、俺が飲みたいから作るんだ。
その為に金がかかるのならば用意するのは当然の事。
もちろん出来た暁にはしかるべき場所に売りだし、それなりの利益を上げるつもりではいる。
本人もそれを了承しているし利権的には問題ないらしい。
一応その辺もモーリスさんを通じて詳しく調べるつもりだが、最悪自前用でも十分だ。
なにも夢物語に金を出そうっていうんじゃない。
現実にありえる話に金を出すんだ。
マスターだってそうだろう。
そうじゃなかったらわざわざ人払いをしてまで店の端を使わせてくれるはずがない。
「あの手の酒は一人の熟練者とそれなりの施設があれば十分可能性がある。そのうちの難しい方が揃ってるんだ、後は残りを作るだけだろ。」
「その為に数百枚の金貨を無駄にする可能性もあるんだぞ。」
「それが怖くて商売できるかよ。まぁこんなこと言えるのも稼いでいるからこそだが、当たればデカい。それこそ数年で元が取れる可能性だってある。」
「確かに可能性はあるだろうが・・・。ま、お前の金だ好きにしろ。」
もちろんそのつもりだよ。
「すみません!お待たせいたしました!」
そんな話をしていると一番大切な人物が息を切らせてやって来た。
「時間ぴったりだ、気にしないでくれ。」
「そんなに息を切らしてくることもなかっただろう、まずは座ってくれ水を持ってくる。」
外はこの冬一番の寒さだったはず。
それなのに何をそんな汗だくになることがあるだろうか。
そんなに広い街でも無いだろうに。
「何かあったのか?」
「途中で馬車が故障しまして、そこから走ってきました。」
「嘘だろ魔物だって出るんだぞ?」
「他の冒険者の方も走ってくれましたので。」
「他の?そんな殊勝なやつがいるのか?」
「ダン様というそうです、後でお礼を言わないといけません。」
「あー、それなら俺から言っておく。」
いきなり走り出す一般人を心配して付き添って走る冒険者、なんていうか出会った時と全く変わってないんだなあいつは。
最近は護衛の仕事ばかりであまり仕事を頼むことも無くなったが、リンカとは何かと縁があるので今度酒でも差し入れてやろう。
なんせ俺の大事な投資先を守ってくれたんだから。
ジョウジさんが落ち着いたところで改めて話に戻る。
きりっとした表情のまま差し出してたのは一枚の紙。
ここにこの場の全てが書かれている。
先に目を通してからそのままマスターへ。
なるほど、そういう感じか。
マスターが読み終わるのを確認すると不安そうな顔でジョウジさんが口を開いた。
「如何でしょうか。」
「正直に言っていいんだよな?」
「ど、どうぞ。」
「まずは事業計画が曖昧過ぎる。金額も、工期も、さらには実際に出来上がる清酒の量も全てが推測。まぁ、当たり前の話ではあるんだがこれを読んで金を出そうなんて人間は普通いないよな。」
「普通はな。」
「そうですよね・・・。」
「まず大前提として本当に製作できるかって所だ。杜氏一人がいれば酒は作れるって聞いたことはあるが、ただ作るにしてもただならぬ労力を必要とするのは想像に易い。さらに言えば酒の命ともいえる水は確保できているのか、材料となる米は滞りなく手に入るのかと言う部分が不明なのは流石になぁ。最終的にいつ出来上がるのか、それがわからないんじゃ出すもんも出せないって感じだ。」
出された紙に書かれていたのは大まかな内容のみ。
地元を離れて酒造りをしようとすればどうしてもこんな風になってしまうんだろうけど、それでも情報が少なすぎる。
最低限の道筋は提示してほしいよなぁ。
「水に関してはふさわしい物を見つけてあります、山奥の湧き水ですがまろやかで酒の味を邪魔しない良い水です。次に米ですが、この国で流通しているコメで問題はありません。欲を言えば使いやすい米はあります、ですがそれを使わずともいい酒は出来ます、いえ作って見せます。本来であれば今から作るべきですが、これから準備するとなると来年の春先になるかと。」
「丸一年か。」
「今から仕込むことが出来れば次の春には生酒が出来ます。ですが火入れをしたりするとなるとどうしても冬まで時間が掛かってしまうんです。今から建物を作りタンクを用意するとなると一年はかかります。」
「そこまで道筋が出来ているなら安心だ。で、その水は勝手に使っていいのか?土地の使用者は?管理者は?どこにあるんだ?」
「えぇ、っとちょっと待ってください。」
企画書にはそういうのも書いてほしいんだが、そもそもそういうのを書く習慣が無ければ無理な話。
羊男なんかは常日頃から書類仕事をしているだけにそういうのは得意なんだよなぁ。
ジョウジさんが大きな地図を取り出したので横の机をくっつけて場所を確認する。
山岳地帯だがそこまで険しい感じではなさそうだ。
一応少し行けば大きな街道も走っているし村もあるので生活には困らないだろう。
米の輸送にも困らないのはいい感じだが・・・。
「港町の管轄になるのか、ここは。」
「そうだな。この峠を越えたらまた別の領主がいるがまだ港町寄りだ。」
「良くないんでしょうか。」
「いや、そういうわけじゃないんだ。むしろ都合がいいのかもしれない、でもなぁ・・・。」
あまり深いかかわりを持ちたくないというのが本音なんだが、ポーラさんの管理下にあるのであれば話は早い。
ちょいと土地を使わせてくれとお願いすれば二つ返事で許可が出るだろう。
その為に俺が何を犠牲にするのかというのは想像したくないが・・・。
ま、向こうは金が入るんだしそれで手打ちにしてもらおう。
そういえばこの前祠を直したのもこの辺だっけ。
「随分と山奥だがよくこんな所に湧き水を見つけたもんだな。」
「本当に偶然なんですが、その付近で一度馬車が故障しまして。時間つぶしに森の奥へ入ったところ偶然見つけたんです。」
「偶然ねぇ。ちなみに祠とかなかったか?」
「いえ、気付きませんでした。」
「何かあるのか?」
「いや、前に陸路で帰るときに見つけたのがこの辺りだったかと思っただけだ。」
偶然にしては話が出来すぎている。
というか二回も馬車が故障するとか幸運どころかむしろ不運なんじゃないだろうか。
「仮にこの場所で酒造りをするとして、建物を立てて機材を準備してとなるとかなり時間が掛かるな。街道から道を作る必要はあるし、森を開くだけじゃなく魔物にも対処しなきゃならない。そうなると冒険者もそれなりの数雇う必要もあるわけで、ざっと見積もっても金貨300~500枚は必要になるか。」
「少なくないか?これから港とこっちで労働力の奪い合いをするんだぞ。」
「あー、そうか。」
「金貨1000枚とまでは言わないがそれに近い金額はかかると考えた方がいい、それだけの金を払って出来ませんでしたじゃ笑い話じゃすまないぞ。」
「き、金貨1000枚。」
「アンタの持ち込んだ話を形にするとそれだけ掛かるってことだ、それも先行投資でな。普通に考えて形にもならない可能性のある事にそんな金を出すやつはいないだろう。」
「普通ならな。」
「まったく、下手に金があるってのも困りもんだぜ。」
なんでマスターが俺の心配をするんだよ。
確かに当初の予定よりも金はかかるが、成功すれば十分に回収できる。
金貨1000枚なんてイザベラを買うのと同じ金額じゃないか。
あいつを買った時も金にならない前提だったし、今の収入から考えると十分やっていける金額ではある。
もちろんやるからには成功してもらわないと困るわけだが。
「一つ聞きたいんだが、酒造りに一番重要なのはなんだ?」
「全てが重要といいたいですが、やはり水です。」
「米じゃないのか。」
「米が同じでも水一つで味が全く違ってしまいます、ですので私は水だと思っています。」
「つまり水があれば問題ない。」
「もちろん寝かす場所や仕込みをする場所などは必要です。特に温度が重要ですので、出来れば天候が穏やかな場所がうれしいですね。」
今の話をまとめれば水さえあれば酒を作ることはできると。
なるほどなるほど。
「シロウ、お前何考えてる。」
「何ってどうやって酒を造るかしかないだろ。」
「お前が作るんじゃないだろ?」
「そりゃそうだ。だが、今の話じゃ水さえあれば酒は作れるわけだろ?そしてその水がどこにあるのかも判明しているうえに誰の物でもないそうじゃないか。なら今の内に確保してしまえば後々面倒がないよな?後はさっきの条件に見合う場所があれば今からでも酒は作れる。」
「え、あの、それはどういう事でしょう。」
「言葉通りだ。大量の水が必要といっても一人で仕込める量には限界があるわけだし、それを運んで来ることが出来れば酒は作れるよな?場所は用意する、水も持ってくる、更には初期投資に使う金も出す。出来るかもわからないものにいきなり金貨1000枚出せってのはさすがに冒険すぎるから、まずは指定した場所で作ってみてその結果を見て先程の場所に投資をしようと思うんだが、どう思う?」
また俺が変なこと言いだしたぞという顔でマスターが俺を見てくる。
別におかしな話じゃない。
水と場所があれば酒は作れるといったのは作る本人だ。
幸いにも俺達には大量の水を確保する技術を持ち合わせているし、更には場所にも心当たりがある。
米が市販のやつでいけるってのがいいよな、今から仕込めばこの春には生酒が飲めるわけだし。
投資するかはそれを見てからでも遅くはないだろう。
後は作る本人がどう判断するか。
さぁて、どう口説き落としてやろうか。
「はじめるって俺とお前しかいないだろ。」
「あれ、他の参加者は?」
「いるわけないだろ、あんな話誰が食いつくんだよ。」
昼前の三日月亭は宿泊客もいなくなりがらんとしている。
話し合いをするには好都合ではあるのだが、いた所で困る話でもない。
集まらなかったのはむしろ当然。
俺が噛んでいる話だからという理由で参加するやつがいるかもと思ったのだが、どうやらそんな奴はいなかったようだ。
「金になるかもわからない投資話に食いつくような奴がいなかったのはいい事じゃないか。」
「現物を飲んだのは俺とお前だけ。それに同じ味になるかもわからないときたらそりゃそうだろう。」
「とはいえあの味を無かったことにするのは惜しい話だろ?」
「まぁな。だが本当に出来ると思うのか?」
本当に出来るのかと聞かれても現状で言い切ることは不可能だ。
あくまでも可能性はあるという程度だが、全くの白紙という状況ではないだけに無かったことにするのはもったいない。
分の悪い勝負じゃないだけにそれなら俺は出来る方に賭けたいと思っている。
『西方で作られている幻の酒をこの国でも作ってみないか。』
そんな眉唾物の誘いに誰も乗らなかったのはむしろ当然の結果だが、あの日ジョウジさんが俺とマスターに語った話を聞いて放っておくことは出来なかった。
あの味は俺が望んでいたもの。
この国で珍しいから作るんじゃない、俺が飲みたいから作るんだ。
その為に金がかかるのならば用意するのは当然の事。
もちろん出来た暁にはしかるべき場所に売りだし、それなりの利益を上げるつもりではいる。
本人もそれを了承しているし利権的には問題ないらしい。
一応その辺もモーリスさんを通じて詳しく調べるつもりだが、最悪自前用でも十分だ。
なにも夢物語に金を出そうっていうんじゃない。
現実にありえる話に金を出すんだ。
マスターだってそうだろう。
そうじゃなかったらわざわざ人払いをしてまで店の端を使わせてくれるはずがない。
「あの手の酒は一人の熟練者とそれなりの施設があれば十分可能性がある。そのうちの難しい方が揃ってるんだ、後は残りを作るだけだろ。」
「その為に数百枚の金貨を無駄にする可能性もあるんだぞ。」
「それが怖くて商売できるかよ。まぁこんなこと言えるのも稼いでいるからこそだが、当たればデカい。それこそ数年で元が取れる可能性だってある。」
「確かに可能性はあるだろうが・・・。ま、お前の金だ好きにしろ。」
もちろんそのつもりだよ。
「すみません!お待たせいたしました!」
そんな話をしていると一番大切な人物が息を切らせてやって来た。
「時間ぴったりだ、気にしないでくれ。」
「そんなに息を切らしてくることもなかっただろう、まずは座ってくれ水を持ってくる。」
外はこの冬一番の寒さだったはず。
それなのに何をそんな汗だくになることがあるだろうか。
そんなに広い街でも無いだろうに。
「何かあったのか?」
「途中で馬車が故障しまして、そこから走ってきました。」
「嘘だろ魔物だって出るんだぞ?」
「他の冒険者の方も走ってくれましたので。」
「他の?そんな殊勝なやつがいるのか?」
「ダン様というそうです、後でお礼を言わないといけません。」
「あー、それなら俺から言っておく。」
いきなり走り出す一般人を心配して付き添って走る冒険者、なんていうか出会った時と全く変わってないんだなあいつは。
最近は護衛の仕事ばかりであまり仕事を頼むことも無くなったが、リンカとは何かと縁があるので今度酒でも差し入れてやろう。
なんせ俺の大事な投資先を守ってくれたんだから。
ジョウジさんが落ち着いたところで改めて話に戻る。
きりっとした表情のまま差し出してたのは一枚の紙。
ここにこの場の全てが書かれている。
先に目を通してからそのままマスターへ。
なるほど、そういう感じか。
マスターが読み終わるのを確認すると不安そうな顔でジョウジさんが口を開いた。
「如何でしょうか。」
「正直に言っていいんだよな?」
「ど、どうぞ。」
「まずは事業計画が曖昧過ぎる。金額も、工期も、さらには実際に出来上がる清酒の量も全てが推測。まぁ、当たり前の話ではあるんだがこれを読んで金を出そうなんて人間は普通いないよな。」
「普通はな。」
「そうですよね・・・。」
「まず大前提として本当に製作できるかって所だ。杜氏一人がいれば酒は作れるって聞いたことはあるが、ただ作るにしてもただならぬ労力を必要とするのは想像に易い。さらに言えば酒の命ともいえる水は確保できているのか、材料となる米は滞りなく手に入るのかと言う部分が不明なのは流石になぁ。最終的にいつ出来上がるのか、それがわからないんじゃ出すもんも出せないって感じだ。」
出された紙に書かれていたのは大まかな内容のみ。
地元を離れて酒造りをしようとすればどうしてもこんな風になってしまうんだろうけど、それでも情報が少なすぎる。
最低限の道筋は提示してほしいよなぁ。
「水に関してはふさわしい物を見つけてあります、山奥の湧き水ですがまろやかで酒の味を邪魔しない良い水です。次に米ですが、この国で流通しているコメで問題はありません。欲を言えば使いやすい米はあります、ですがそれを使わずともいい酒は出来ます、いえ作って見せます。本来であれば今から作るべきですが、これから準備するとなると来年の春先になるかと。」
「丸一年か。」
「今から仕込むことが出来れば次の春には生酒が出来ます。ですが火入れをしたりするとなるとどうしても冬まで時間が掛かってしまうんです。今から建物を作りタンクを用意するとなると一年はかかります。」
「そこまで道筋が出来ているなら安心だ。で、その水は勝手に使っていいのか?土地の使用者は?管理者は?どこにあるんだ?」
「えぇ、っとちょっと待ってください。」
企画書にはそういうのも書いてほしいんだが、そもそもそういうのを書く習慣が無ければ無理な話。
羊男なんかは常日頃から書類仕事をしているだけにそういうのは得意なんだよなぁ。
ジョウジさんが大きな地図を取り出したので横の机をくっつけて場所を確認する。
山岳地帯だがそこまで険しい感じではなさそうだ。
一応少し行けば大きな街道も走っているし村もあるので生活には困らないだろう。
米の輸送にも困らないのはいい感じだが・・・。
「港町の管轄になるのか、ここは。」
「そうだな。この峠を越えたらまた別の領主がいるがまだ港町寄りだ。」
「良くないんでしょうか。」
「いや、そういうわけじゃないんだ。むしろ都合がいいのかもしれない、でもなぁ・・・。」
あまり深いかかわりを持ちたくないというのが本音なんだが、ポーラさんの管理下にあるのであれば話は早い。
ちょいと土地を使わせてくれとお願いすれば二つ返事で許可が出るだろう。
その為に俺が何を犠牲にするのかというのは想像したくないが・・・。
ま、向こうは金が入るんだしそれで手打ちにしてもらおう。
そういえばこの前祠を直したのもこの辺だっけ。
「随分と山奥だがよくこんな所に湧き水を見つけたもんだな。」
「本当に偶然なんですが、その付近で一度馬車が故障しまして。時間つぶしに森の奥へ入ったところ偶然見つけたんです。」
「偶然ねぇ。ちなみに祠とかなかったか?」
「いえ、気付きませんでした。」
「何かあるのか?」
「いや、前に陸路で帰るときに見つけたのがこの辺りだったかと思っただけだ。」
偶然にしては話が出来すぎている。
というか二回も馬車が故障するとか幸運どころかむしろ不運なんじゃないだろうか。
「仮にこの場所で酒造りをするとして、建物を立てて機材を準備してとなるとかなり時間が掛かるな。街道から道を作る必要はあるし、森を開くだけじゃなく魔物にも対処しなきゃならない。そうなると冒険者もそれなりの数雇う必要もあるわけで、ざっと見積もっても金貨300~500枚は必要になるか。」
「少なくないか?これから港とこっちで労働力の奪い合いをするんだぞ。」
「あー、そうか。」
「金貨1000枚とまでは言わないがそれに近い金額はかかると考えた方がいい、それだけの金を払って出来ませんでしたじゃ笑い話じゃすまないぞ。」
「き、金貨1000枚。」
「アンタの持ち込んだ話を形にするとそれだけ掛かるってことだ、それも先行投資でな。普通に考えて形にもならない可能性のある事にそんな金を出すやつはいないだろう。」
「普通ならな。」
「まったく、下手に金があるってのも困りもんだぜ。」
なんでマスターが俺の心配をするんだよ。
確かに当初の予定よりも金はかかるが、成功すれば十分に回収できる。
金貨1000枚なんてイザベラを買うのと同じ金額じゃないか。
あいつを買った時も金にならない前提だったし、今の収入から考えると十分やっていける金額ではある。
もちろんやるからには成功してもらわないと困るわけだが。
「一つ聞きたいんだが、酒造りに一番重要なのはなんだ?」
「全てが重要といいたいですが、やはり水です。」
「米じゃないのか。」
「米が同じでも水一つで味が全く違ってしまいます、ですので私は水だと思っています。」
「つまり水があれば問題ない。」
「もちろん寝かす場所や仕込みをする場所などは必要です。特に温度が重要ですので、出来れば天候が穏やかな場所がうれしいですね。」
今の話をまとめれば水さえあれば酒を作ることはできると。
なるほどなるほど。
「シロウ、お前何考えてる。」
「何ってどうやって酒を造るかしかないだろ。」
「お前が作るんじゃないだろ?」
「そりゃそうだ。だが、今の話じゃ水さえあれば酒は作れるわけだろ?そしてその水がどこにあるのかも判明しているうえに誰の物でもないそうじゃないか。なら今の内に確保してしまえば後々面倒がないよな?後はさっきの条件に見合う場所があれば今からでも酒は作れる。」
「え、あの、それはどういう事でしょう。」
「言葉通りだ。大量の水が必要といっても一人で仕込める量には限界があるわけだし、それを運んで来ることが出来れば酒は作れるよな?場所は用意する、水も持ってくる、更には初期投資に使う金も出す。出来るかもわからないものにいきなり金貨1000枚出せってのはさすがに冒険すぎるから、まずは指定した場所で作ってみてその結果を見て先程の場所に投資をしようと思うんだが、どう思う?」
また俺が変なこと言いだしたぞという顔でマスターが俺を見てくる。
別におかしな話じゃない。
水と場所があれば酒は作れるといったのは作る本人だ。
幸いにも俺達には大量の水を確保する技術を持ち合わせているし、更には場所にも心当たりがある。
米が市販のやつでいけるってのがいいよな、今から仕込めばこの春には生酒が飲めるわけだし。
投資するかはそれを見てからでも遅くはないだろう。
後は作る本人がどう判断するか。
さぁて、どう口説き落としてやろうか。
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