転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア

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913.転売屋は相手をぎゃふんと言わせる

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「これはギルド協会のシープ様、それに冒険者ギルドのニア様。」

「こんにちは!」

突然の来訪者にもかかわらず、魔術師ギルドの二人は特に慌てることなく挨拶をする。

方や来訪者の方は大慌てって感じだが、先客の二人を見てすぐにキリリと引き締まった顔に戻った。

コレが職業病って奴なんだろう。

「なんだ、二人とも同じ顔して。」

「えっと、お邪魔じゃありません?」

「別にかまわないさ。で、その凄いのってのは?」

「見てください!黒水晶、しかも完全体ですよ!凄くないですか!」

「昨日の遺跡で見つかったんだけど、そのまま買い取りに持ち込まれたのよ。」

二人が自慢げにこの間見つかった黒水晶を俺に向かって突き出す。

もちろんコレは仕込みだ。

ここにこの二人がいる事を確認した上で、適当なタイミングで突入してくることになっていた。

もちろん、黒水晶の出所を証明する為に。

「え、ダンジョンで見つかったんですか!?」

「そうよ、昨日遺跡に突入したアニエス監査官が見つけて、発見者に所有権があるから返却するって言ったんだけどギルドに放出してくれたの。」

流石に今話題に上がっていたブツが目の前に出てきたら驚きもするだろう。

だが、反応したのは助手のワトソン君だけで美人のスミスさんは無反応。

いや、多少は反応しているのかもしれないがその涼やかな美貌に変化は見られなかった。

「それを証明することは?」

「証明?それなら遺跡探索の報告書に詳しく書いてありますけど。お読みになりますか?」

「えぇ、是非。」

さも当たり前という感じで書類を受け取り、静かに目を通していく。

それとは対照的に、ワトソン君は信じられないという顔のまま固まってしまっていた。

わざわざギルドにまで出向いて、ダンジョンから黒水晶が産出されていないことを突き詰めた二人。

もちろんそれは正しい。

俺はダンジョンではなく別の方法で仕入れていたのだから、それを追及されればこんな余裕のある気持ちでいられなかっただろう。

一体どういうシナリオで俺を追い込むつもりだったのかは知らないが、俺達はそれに立ち向かうべく行動を起こし、そして運を味方につけてこの状況を作り出した。

つまり、これは俺達の勝利といえる。

「あ、シロウさんも報告書・・・は要らないか。」

「いや、あるなら読ませろよ。」

「だって何が遺跡で発見されたか全部知ってるじゃないですか。はぁ、アニエスさんのようにギルドに流してくれたらいいのに、みーんなここで売るんですから。そのせいでどこで何が発見されているかギルドが把握できないんですよ、まったく。」

「それは俺に言うんじゃなくて冒険者に言えよ。っていうか買取価格が安すぎるんだよ、ギルドは。」

「仕方ないじゃない。シロウさんみたいにすぐにお金に替えられるならいいけど、私達はそうじゃないんだから。高値で買い取っても換金するまでには時間がかかるし、その間にもお金は右から左で火の車。もちろん、これも他の商材同様に高値で買い取ってくれるのよね?」

「いくらギルドの依頼とはいえ買取価格は平等だ。そうだな、金貨5枚って所か。」

「え、安!」

「ぼったくりです!」

わざとギャーギャー騒ぐ俺達に反応することなくスミスさんは無言で報告書を読み続けている。

アレは正式な書類なのでもちろん嘘は書いていない。

何がどこでどんな風に発見されたのか、それがしっかりと記入されている。

しかしながら、今回の参加者についてまでは書かれていないので俺がその場にいたことはわからない。

加えて参加者には俺がいた事は伏せるように強くお願いしてある。

彼らが俺の上顧客であるように、俺もまた彼らにとっては無くてはならない存在だ。

口を滑らせるようなことはないだろう。

それに、参加者がわからない以上問い詰める事も出来ないだろうしな。

「ふぅ、ありがとうございました。確かにダンジョンで発見されたようですね。」

「欠片はいくらでも手に入るけど、これだけ綺麗なのは初めてだわ。」

「俺は前から知っていたがギルドはそうだろうな。それで納得してもらえたか?」

「え、何かあったんですか?」

「ちょっとな。」

向こうの面子もあるので揉めているとは言わないが、もちろん羊男達もそれは把握している。

っというか、ぎゃふんと言わせてやろうってのが俺達の共通認識だし、そもそも遺跡調査が行われたのもそのためだ。

「納得はしていませんが、証拠がある以上出所に関してこれ以上言うことはありません。ですが、出荷先についてまだご返答いただいていません。誰に売っているのか教えていただけますね?」

「おいおい、黒水晶の出所を教えろって話じゃなかったのか?」

「それはそれです。それとも、言えないような相手に危険な魔術道具を販売しているのですか?」

まだ終わってないぞといわんばかりの追求。

だが、それも想定の範囲内だ。

残念だったな。

「はぁ、先方に文句を言われたらあんたらの名前を出すからな。」

仕方がないという感じを出しながら、裏の戸棚から書類の束を取り出して書類を引き抜く。

もちろんコレも本物の書類だ。

「拝見します!えぇ・・・と、え!聖騎士団!?それに王宮や魔術師ギルドまで!えぇ!?」

「ちょっと貸して!」

お、さっきまでのポーカーフェイスはどこへやら、慌てた様子で助手から書類を奪い取り中身に目を通す。

そう、俺が買い取った魔術道具や素材はドレイク船長によって王都へと運ばれ、船長を始めとした信頼できる商人やイザベラを通じて王都の至る所に売られている。

イザベラの人脈と俺の人脈があれば貴族をはじめ各ギルドの偉いさんにまで直接声をかけられるので、結果として彼らの所属する魔術師ギルドの名前も登録されているというわけだ。

金儲けの為なら使えるコネはなんでも使う。

その結果がまさかこんな所で役に立つと、はさすがの俺もびっくりだ。

「どうかしたのか?」

「そんな、ここの商材をギルド本部が買い取っているなんて。」

「シロウさんは国王陛下をはじめ、多くの人とつながりがありますからねぇ。」

「さすがに陛下と直接取引したことはないけどな。せいぜい亡きロバート殿下ぐらいだ。」

「それでも十分すごいと思うけど。」

「もう一度聞く、納得してもらえたか?」

信じられないという顔のまま固まっているのに美人は美人のままなんだな。

俺の声にハッと我に帰るも動揺の色は隠せない。

「・・・失礼を致しました、シロウ名誉男爵様。」

「申し訳ありませんでした!」

書類を手にしたまま二人が深々と頭を下げる。

本人に見えないのをいい事に、後ろの二人がドヤ顔でその様子をみつめていた。

悪い顔だなぁ。

「ひとまず誤解が晴れたのならなによりだ。相手を疑う大変な仕事だとは思うが、次からは何でも決めつけて行動するのは慎むべきだな。それを不快に思うやつは大勢いる、無実でもそうやって疑われたら気分は良くないだろ。」

「はい、申し訳ありませんでした。」

「でだ。」

誤解が解けてはいよかったね、で終わらせると思うなよ?

せっかくダメージを与えて追い込んだんだ、それを美味く利用しない手はないだろう。

誰を敵に回した・・・じゃなかった、喧嘩を売ったかよく理解してもらおうじゃないか。

「魔術師ギルドは後ろに転がっているような道具を買い取っているんだったよな?せっかくここまで来たんだ、発見されたばかりの上物をたっぷり見ていってくれ。もちろんこの前みたいに沢山買ってくれるんだろ?」

信じられないという顔をする二人に向かって、満面の笑みを浮かべながら俺はプレゼンを始めるのだった
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