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959.転売屋は勝負を申し込む
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冷凍肉のおかげでひとまずは肉不足の危機から脱することが出来た。
皮膜で包むことにより肉そのものの劣化はある程度防ぐことが出来たのだが、やはり鮮度は少し落ちてしまう。
なのでこれらの肉は味付け肉用にまわし、串焼きなどは引き続きダンジョンからの供給でまかなうことが決定。
とりあえず新造した氷室にはたんまりと肉を入れ、更には果物や野菜なんかも貯蔵しているのでちょっとしたトラブルにも十分対処できそうだ。
肉、野菜と来て残るは酒。
こっちに関してはマスターがいるしギルド協会もそれなりに溜め込んでいるので問題ないはずなんだが・・・。
「酒あまり?」
「あぁ、俺は俺で仕入れていたんだがギルド協会が思いのほか大量に仕入れたせいで酒が思いのほか売れ残っているらしい。まぁ、うちの酒は少し高めの設定だから致し方ないのかもしれないが、ギルド協会のほうでもあまりが出てるってのはよろしくないだろう。それなりに日持ちするし足りないよりかはいいんだろうが、どうしたもんか。」
「マスターが弱音を吐くなんて珍しいじゃないか。」
「お前と違って余るほど金を持っているわけじゃないんでね。仕入れ値を回収する為にも後在庫半分は売らんとなぁ。」
マスターの扱う品だけに味は間違いないのだが、その分単価も高いので出店なんかのファーストフード的な店には合わないんだよなぁ。
かといってギルド協会のほうでもあまりが出ているって話だし、相変わらず加減を知らないのかあの連中は。
いくら冒険者が酒飲みだからって限度ってもんがあるとおもうぞ俺は。
「マスターも店を出して売るのはどうだ?聞けば会場にも貴族席はあるって話だし、そこ用にいい酒を出せば勝手に売れるだろ。」
「それを加味してもあまってるんだよ。そんなにいうならお前がやったらどうだ?」
「俺が?無理無理、当日は何種類か掛け持ちしてるしこれ以上増やしたら死んじまうって。」
「実際何出すんだ?」
「カキ氷と味噌漬け肉とそれから・・・。」
「そりゃいくらなんでもやりすぎだな。」
俺もここまでやるつもりはなかったんだが、アレもいいコレもいいと考えているとどんどん話が大きくなってしまい引くに引けなくなってしまった。
目の前に確実に成功する儲け話があるのに、それをしない理由はやっぱりない。
俺は金が好きだからな、みすみす金を逃すのが嫌なんだ。
「ってことで酒は自分で何とかしてくれ。」
「仕方ないそうしよう。」
マスターが盛大な溜息をつき俺はそれを笑いながらグラスの酒を一息に飲み干す。
たまには昼から飲む酒も悪くない。
エリザはダンジョンに行っているので無理やり飲まされる心配がないってのもいいもんだ。
そのときだった。
カランカランとベルがなり客が入ってきたことを告げる。
この時間から客とは珍しい。
チェックインにはまだ時間があるので酒場を利用する客なんだろうけど。
「失礼、店長様はおいでか?」
「ん?この店の主人は俺だが、なんのようだ?」
「ギルド協会の紹介で参った。ここでは上質な酒をお客に提供しているとか、是非うちの酒もその一部に加えていただきたい。」
「悪いが酒は今間に合ってるんだ、他を当たってくれ。」
「とりあえず一杯だけでいい、飲んでから決めてもらえんか。遠路遥々やってきて門前払いは職人に合わす顔がない。」
「とりあえず飲ませてもらったらどうだ?それで気に入らなければ仕入れなくてもいいんだろ?」
入って来たはマスターぐらいの年齢にみえる男性。
若すぎず老けすぎず、一番脂の乗っている年代がちょうどこのぐらいだろう。
話し方は少し癖があるが、どっちかっていうと西方系だろうか。
向こうの商人がこのタイミングで来るとは考えにくいだけに、西方に近い地域に済んでいると考えるのが妥当だろう。
はてさてどんな酒を出してくるのやら。
「もちろん、気に入らない酒を無理やり買われる位なら素直にあきらめるとしよう。」
「いい条件じゃないか、よかったな。」
「おまえなぁ、勝手に話を進めるんじゃねぇよ。」
「なんだダメだったか?」
「うちが在庫を抱えてるって話、聞いてなかったのか?」
「聞いてたがそれとコレとは話が別だろ?とりあえず飲むだけ飲んでみようぜ。」
せっかくタダ酒が飲めるチャンスなんだ、コレを逃す手はないだろう。
納得しない感じのマスターをなだめつつ、男性に目配せをすると小さくうなずいて一度店を出てすぐに戻ってきた。
手には青いガラス製の入れ物が握られている。
ボトルの色だけではどんな酒か確認することは出来ないのだが、見た感じ清酒とは違うようだ。
流石にうちのライバルをわざわざ仕入れる必要はないからな、その辺は考えるつもりだ。
カウンターの上に置かれたシュウが作った切子グラスに静かに液体が注がれる。
色は・・・え、緑?
「珍しい色だな。」
「メロンメロンの果汁をふんだんに使った濃縮酒だ。このまま飲むのではなく色々な酒と混ぜるようにして飲むと考えてもらえばいい。他にも様々な果実の濃縮酒を用意しているから、それらを混ぜ合わせて新しい酒にすることも出来るだろう。」
「なるほど、カクテルか。」
「なんだ知ってるのか?」
「どっちかっていうとガッツリ飲むんじゃなくて軽く飲むタイプの酒だな。原液の酒精は高めだが・・・まぁ飲めば分かるさ。」
グラスを手に取り口に近づけると、濃厚なメロンメロンの甘い香りが襲ってきた。
わずかに口に入れると、まるで果実をそのまま飲んでいるような強烈な甘さの後にガツンとアルコール分を感じる。
甘い。
それに尽きる。
「何だコリャ!酒か?」
「酒だって。だからそのまま飲むんじゃなくて、発泡水や果実水で割ったりして飲むもんだ。」
「どう考えてもうちの客層には合わないだろ。」
「そうでもないと思うがなぁ。」
「ほぉ、そちらの方は話がよく分かるようだ。貴方も酒を?」
「嗜む程度だしマスターみたいにコレで商売しているわけでもない。とはいえ、興味が無いわけじゃないんだが・・・。」
そんな俺の反応を見て男はわずかに口角を上げた。
このままじゃ飲めたもんじゃないといわれた酒も、割ればそれなりの味になる。
たしかに三日月亭のような高級路線の店にはワインや火酒、琥珀酒などがお似合いかもしれないが、ここに来る客全員がそういうのを求めているわけじゃないはずだ。
少なからず女性客は居るし、彼女たちも飲みたい気持ちを抑えているかもしれない。
そんな相手に見た目も可愛らしく飲みやすい酒があったらどうだろうか。
喜んで飲んでくれるだけでなく、その反応を見たいが為に若い女性を連れてくる客も出てくるだろう。
もちろんここをキャバクラにする気はないのだけどそういう客を取り込むのもまた商売。
さぁて、どうしたもんかな。
「マスター、勝負をしないか?」
「勝負?」
「この酒を同じ本数仕入れて、どっちが先に売り切れるか勝負するんだ。マスターが勝ったらさっき言っていた余った酒を俺が全部買い上げよう。」
「じゃあお前が勝ったら?」
「この酒を店に置いてくれ。もちろん大量に仕入れろとは言ってない、適量を仕入れて売ってくれればいい。あぁ、俺が欲しいときには分けてもらえると助かる。」
この酒は金になる。
だが、酒をメインで扱う商売ではないだけに大量に仕入れてももてあますのは目に見えている。
それならばしっかり扱える人に預かってもらうのが一番だ。
とはいえ、このままではこの男が全部丸儲け。
それは流石によろしくないよな。
「勝負をする前から結果は見えているが、お前があえて挑んでくるあたりなにか勝算があるんだろう。まぁどっちに転んでも俺に損はない、いいだろうその勝負乗ってやる。」
「そうこなくっちゃ。ってことで、この酒を仕入れたいと思うんだが・・・。言いたい事はわかるよな?」
「仕入れてもらえるあれば文句はない。通常一本銀貨15枚だがここは銀貨10枚でお譲りしよう。ただし、10本は仕入れてくれ。」
「それは一種類か?」
「レレモン・メロンメロン・ポメロそれとリビーズの四種類用意している。各10本、合計40本で金貨4枚でいかがかな。」
「十分だ。もちろん継続仕入れになったら今後もこの値段なんだよな?」
「それは勝負の結果を見届けてから考えさせてくれ。」
くそ、金貨4枚分売れた後だけにちょっとは引っかかってくれるかなと期待したんだが、どうやらそううまくはいかないようだ。
ひとまず俺が代金を支払い、マスターに半分渡す。
「勝敗の付け方は?」
「どっちが先に10本売るかでどうだ?二種類に絞ってもよし、全種類の合計でも良し。勝負開始は明日の昼から、それまでにしっかり作戦を練ってくれ。」
「いいだろう。お前がどんな手を使おうと、俺のプライドにかけてお前に酒を買わせてみせる。」
「俺だって金儲けにかけては誰にも負けないって自負がある。この酒は売れるぞ、覚悟しろよ。」
こうして始まった酒の販売勝負。
本職相手だけに俺も本気を出さなければならないわけだが、ぶっちゃけ飲んだ瞬間に何をするか決めたんだよな。
この時期ならでは、そしてこの街ならではの相手を客に迎えて一気に勝利をもぎ取ろうじゃないか。
翌夕方。
いつものように市場に店を出し、カキ氷作成マシーンを設置。
いつもはエリザお手製のシロップなのだが、今日に限っては今回仕入れた酒の出番というわけだ。
この時間は店も片づけをはじめる店が多くなるが、ダンジョン帰りの冒険者がフラフラし始める時間でもある。
それはマスターの所も同じ。
朝から売り始める手もあったのだが、公平にやったほうが面白いだろ。
「さぁ、今日のかき氷はちょっと違うぞ。ダンジョン帰りの疲れた体に甘い酒はどうだ?冷たくて甘い、なのにガツンと強い酒精が味わえるぞ。一杯銅貨30枚、追加が欲しければ遠慮なく言ってくれ!」
「え、かき氷なのにお酒なの?」
「あぁ、見ためも綺麗だろ?味見するか?」
「するする!」
ダンジョン帰りと思われる女性冒険者二人組。
年はアネットぐらいだろうか、十代後半から二十歳位の若い二人組が見た目の可愛らしさにつられてやって来た。
かき氷の良い所はこのカラフルな色だよな。
でもそれだけじゃいつもと代わり映えしないので,今日はそこにもうひと手間加えている。
「わ、この果物凍ってる!」
「皮は剥いてあるからそのまま食べていいぞ。」
「すごい、シャリシャリ!あ、でも結構きついかも。」
「ほんとだ、甘いからって油断してるとすぐ酔っちゃいそう。なにこれ、不思議~!」
前に作った冷凍させた果物を雪妖精の結晶を入れた保冷箱に入れて運んできている。
それをトッピングすることで見た目の可愛らしさだけでなく珍しさも加えてさらに売り上げを伸ばそうという作戦だ。
酒もそれなりに受け入れられているようで、あっという間に最初の氷が売り切れた。
「シロウさん、このお酒このまま飲めないの?」
「飲めるぞ。お勧めは発泡水割り、もしくは果実水で割るのもありだ。」
「え、面白そう!」
「酒は一杯銅貨10枚でいいぞ、向こうのテーブルで注文できるから飲んで帰ってくれ。それと、周りの冒険者に宣伝宜しく。」
「オッケー任せて!」
氷は原価が高いが酒だけならそんなに高くない上に原液を割るタイプなのでこの金額でも十分利益を出せる。
後はトッピングで稼げばそれなりの儲けになるだろう。
加えて冒険者の宣伝力。
マスターには悪いがこの勝負は貰ったな。
こうしてかき氷とバーカウンター、二種類の販売力でその日のうちにノルマの半分を達成することが出来た。
明日にはノルマは完売。
さぁマスターがどんな感じかちょっと見に行ってみるとするか。
店の片づけを済ませると、俺はドヤ顔で三日月亭へと向かったのだった。
皮膜で包むことにより肉そのものの劣化はある程度防ぐことが出来たのだが、やはり鮮度は少し落ちてしまう。
なのでこれらの肉は味付け肉用にまわし、串焼きなどは引き続きダンジョンからの供給でまかなうことが決定。
とりあえず新造した氷室にはたんまりと肉を入れ、更には果物や野菜なんかも貯蔵しているのでちょっとしたトラブルにも十分対処できそうだ。
肉、野菜と来て残るは酒。
こっちに関してはマスターがいるしギルド協会もそれなりに溜め込んでいるので問題ないはずなんだが・・・。
「酒あまり?」
「あぁ、俺は俺で仕入れていたんだがギルド協会が思いのほか大量に仕入れたせいで酒が思いのほか売れ残っているらしい。まぁ、うちの酒は少し高めの設定だから致し方ないのかもしれないが、ギルド協会のほうでもあまりが出てるってのはよろしくないだろう。それなりに日持ちするし足りないよりかはいいんだろうが、どうしたもんか。」
「マスターが弱音を吐くなんて珍しいじゃないか。」
「お前と違って余るほど金を持っているわけじゃないんでね。仕入れ値を回収する為にも後在庫半分は売らんとなぁ。」
マスターの扱う品だけに味は間違いないのだが、その分単価も高いので出店なんかのファーストフード的な店には合わないんだよなぁ。
かといってギルド協会のほうでもあまりが出ているって話だし、相変わらず加減を知らないのかあの連中は。
いくら冒険者が酒飲みだからって限度ってもんがあるとおもうぞ俺は。
「マスターも店を出して売るのはどうだ?聞けば会場にも貴族席はあるって話だし、そこ用にいい酒を出せば勝手に売れるだろ。」
「それを加味してもあまってるんだよ。そんなにいうならお前がやったらどうだ?」
「俺が?無理無理、当日は何種類か掛け持ちしてるしこれ以上増やしたら死んじまうって。」
「実際何出すんだ?」
「カキ氷と味噌漬け肉とそれから・・・。」
「そりゃいくらなんでもやりすぎだな。」
俺もここまでやるつもりはなかったんだが、アレもいいコレもいいと考えているとどんどん話が大きくなってしまい引くに引けなくなってしまった。
目の前に確実に成功する儲け話があるのに、それをしない理由はやっぱりない。
俺は金が好きだからな、みすみす金を逃すのが嫌なんだ。
「ってことで酒は自分で何とかしてくれ。」
「仕方ないそうしよう。」
マスターが盛大な溜息をつき俺はそれを笑いながらグラスの酒を一息に飲み干す。
たまには昼から飲む酒も悪くない。
エリザはダンジョンに行っているので無理やり飲まされる心配がないってのもいいもんだ。
そのときだった。
カランカランとベルがなり客が入ってきたことを告げる。
この時間から客とは珍しい。
チェックインにはまだ時間があるので酒場を利用する客なんだろうけど。
「失礼、店長様はおいでか?」
「ん?この店の主人は俺だが、なんのようだ?」
「ギルド協会の紹介で参った。ここでは上質な酒をお客に提供しているとか、是非うちの酒もその一部に加えていただきたい。」
「悪いが酒は今間に合ってるんだ、他を当たってくれ。」
「とりあえず一杯だけでいい、飲んでから決めてもらえんか。遠路遥々やってきて門前払いは職人に合わす顔がない。」
「とりあえず飲ませてもらったらどうだ?それで気に入らなければ仕入れなくてもいいんだろ?」
入って来たはマスターぐらいの年齢にみえる男性。
若すぎず老けすぎず、一番脂の乗っている年代がちょうどこのぐらいだろう。
話し方は少し癖があるが、どっちかっていうと西方系だろうか。
向こうの商人がこのタイミングで来るとは考えにくいだけに、西方に近い地域に済んでいると考えるのが妥当だろう。
はてさてどんな酒を出してくるのやら。
「もちろん、気に入らない酒を無理やり買われる位なら素直にあきらめるとしよう。」
「いい条件じゃないか、よかったな。」
「おまえなぁ、勝手に話を進めるんじゃねぇよ。」
「なんだダメだったか?」
「うちが在庫を抱えてるって話、聞いてなかったのか?」
「聞いてたがそれとコレとは話が別だろ?とりあえず飲むだけ飲んでみようぜ。」
せっかくタダ酒が飲めるチャンスなんだ、コレを逃す手はないだろう。
納得しない感じのマスターをなだめつつ、男性に目配せをすると小さくうなずいて一度店を出てすぐに戻ってきた。
手には青いガラス製の入れ物が握られている。
ボトルの色だけではどんな酒か確認することは出来ないのだが、見た感じ清酒とは違うようだ。
流石にうちのライバルをわざわざ仕入れる必要はないからな、その辺は考えるつもりだ。
カウンターの上に置かれたシュウが作った切子グラスに静かに液体が注がれる。
色は・・・え、緑?
「珍しい色だな。」
「メロンメロンの果汁をふんだんに使った濃縮酒だ。このまま飲むのではなく色々な酒と混ぜるようにして飲むと考えてもらえばいい。他にも様々な果実の濃縮酒を用意しているから、それらを混ぜ合わせて新しい酒にすることも出来るだろう。」
「なるほど、カクテルか。」
「なんだ知ってるのか?」
「どっちかっていうとガッツリ飲むんじゃなくて軽く飲むタイプの酒だな。原液の酒精は高めだが・・・まぁ飲めば分かるさ。」
グラスを手に取り口に近づけると、濃厚なメロンメロンの甘い香りが襲ってきた。
わずかに口に入れると、まるで果実をそのまま飲んでいるような強烈な甘さの後にガツンとアルコール分を感じる。
甘い。
それに尽きる。
「何だコリャ!酒か?」
「酒だって。だからそのまま飲むんじゃなくて、発泡水や果実水で割ったりして飲むもんだ。」
「どう考えてもうちの客層には合わないだろ。」
「そうでもないと思うがなぁ。」
「ほぉ、そちらの方は話がよく分かるようだ。貴方も酒を?」
「嗜む程度だしマスターみたいにコレで商売しているわけでもない。とはいえ、興味が無いわけじゃないんだが・・・。」
そんな俺の反応を見て男はわずかに口角を上げた。
このままじゃ飲めたもんじゃないといわれた酒も、割ればそれなりの味になる。
たしかに三日月亭のような高級路線の店にはワインや火酒、琥珀酒などがお似合いかもしれないが、ここに来る客全員がそういうのを求めているわけじゃないはずだ。
少なからず女性客は居るし、彼女たちも飲みたい気持ちを抑えているかもしれない。
そんな相手に見た目も可愛らしく飲みやすい酒があったらどうだろうか。
喜んで飲んでくれるだけでなく、その反応を見たいが為に若い女性を連れてくる客も出てくるだろう。
もちろんここをキャバクラにする気はないのだけどそういう客を取り込むのもまた商売。
さぁて、どうしたもんかな。
「マスター、勝負をしないか?」
「勝負?」
「この酒を同じ本数仕入れて、どっちが先に売り切れるか勝負するんだ。マスターが勝ったらさっき言っていた余った酒を俺が全部買い上げよう。」
「じゃあお前が勝ったら?」
「この酒を店に置いてくれ。もちろん大量に仕入れろとは言ってない、適量を仕入れて売ってくれればいい。あぁ、俺が欲しいときには分けてもらえると助かる。」
この酒は金になる。
だが、酒をメインで扱う商売ではないだけに大量に仕入れてももてあますのは目に見えている。
それならばしっかり扱える人に預かってもらうのが一番だ。
とはいえ、このままではこの男が全部丸儲け。
それは流石によろしくないよな。
「勝負をする前から結果は見えているが、お前があえて挑んでくるあたりなにか勝算があるんだろう。まぁどっちに転んでも俺に損はない、いいだろうその勝負乗ってやる。」
「そうこなくっちゃ。ってことで、この酒を仕入れたいと思うんだが・・・。言いたい事はわかるよな?」
「仕入れてもらえるあれば文句はない。通常一本銀貨15枚だがここは銀貨10枚でお譲りしよう。ただし、10本は仕入れてくれ。」
「それは一種類か?」
「レレモン・メロンメロン・ポメロそれとリビーズの四種類用意している。各10本、合計40本で金貨4枚でいかがかな。」
「十分だ。もちろん継続仕入れになったら今後もこの値段なんだよな?」
「それは勝負の結果を見届けてから考えさせてくれ。」
くそ、金貨4枚分売れた後だけにちょっとは引っかかってくれるかなと期待したんだが、どうやらそううまくはいかないようだ。
ひとまず俺が代金を支払い、マスターに半分渡す。
「勝敗の付け方は?」
「どっちが先に10本売るかでどうだ?二種類に絞ってもよし、全種類の合計でも良し。勝負開始は明日の昼から、それまでにしっかり作戦を練ってくれ。」
「いいだろう。お前がどんな手を使おうと、俺のプライドにかけてお前に酒を買わせてみせる。」
「俺だって金儲けにかけては誰にも負けないって自負がある。この酒は売れるぞ、覚悟しろよ。」
こうして始まった酒の販売勝負。
本職相手だけに俺も本気を出さなければならないわけだが、ぶっちゃけ飲んだ瞬間に何をするか決めたんだよな。
この時期ならでは、そしてこの街ならではの相手を客に迎えて一気に勝利をもぎ取ろうじゃないか。
翌夕方。
いつものように市場に店を出し、カキ氷作成マシーンを設置。
いつもはエリザお手製のシロップなのだが、今日に限っては今回仕入れた酒の出番というわけだ。
この時間は店も片づけをはじめる店が多くなるが、ダンジョン帰りの冒険者がフラフラし始める時間でもある。
それはマスターの所も同じ。
朝から売り始める手もあったのだが、公平にやったほうが面白いだろ。
「さぁ、今日のかき氷はちょっと違うぞ。ダンジョン帰りの疲れた体に甘い酒はどうだ?冷たくて甘い、なのにガツンと強い酒精が味わえるぞ。一杯銅貨30枚、追加が欲しければ遠慮なく言ってくれ!」
「え、かき氷なのにお酒なの?」
「あぁ、見ためも綺麗だろ?味見するか?」
「するする!」
ダンジョン帰りと思われる女性冒険者二人組。
年はアネットぐらいだろうか、十代後半から二十歳位の若い二人組が見た目の可愛らしさにつられてやって来た。
かき氷の良い所はこのカラフルな色だよな。
でもそれだけじゃいつもと代わり映えしないので,今日はそこにもうひと手間加えている。
「わ、この果物凍ってる!」
「皮は剥いてあるからそのまま食べていいぞ。」
「すごい、シャリシャリ!あ、でも結構きついかも。」
「ほんとだ、甘いからって油断してるとすぐ酔っちゃいそう。なにこれ、不思議~!」
前に作った冷凍させた果物を雪妖精の結晶を入れた保冷箱に入れて運んできている。
それをトッピングすることで見た目の可愛らしさだけでなく珍しさも加えてさらに売り上げを伸ばそうという作戦だ。
酒もそれなりに受け入れられているようで、あっという間に最初の氷が売り切れた。
「シロウさん、このお酒このまま飲めないの?」
「飲めるぞ。お勧めは発泡水割り、もしくは果実水で割るのもありだ。」
「え、面白そう!」
「酒は一杯銅貨10枚でいいぞ、向こうのテーブルで注文できるから飲んで帰ってくれ。それと、周りの冒険者に宣伝宜しく。」
「オッケー任せて!」
氷は原価が高いが酒だけならそんなに高くない上に原液を割るタイプなのでこの金額でも十分利益を出せる。
後はトッピングで稼げばそれなりの儲けになるだろう。
加えて冒険者の宣伝力。
マスターには悪いがこの勝負は貰ったな。
こうしてかき氷とバーカウンター、二種類の販売力でその日のうちにノルマの半分を達成することが出来た。
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清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
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