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982.転売屋は魔物コインを売り出す
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「なぁ、この間のやつ何が出た?」
「へへ、グレイウルフがやっと出たんだ。」
「マジかよ!羨ましいなぁ、俺なんてまたワイルドボアだぜ。」
「いいじゃねぇか、美味いんだから。」
「味の問題じゃねぇんだよ。」
横で食事をしている冒険者からそんな会話が聞こえてくる。
よしよし、少しずつだが広まっているみたいだな。
街を歩いていてもこの間のワッペンのように、カバンにぶら下げている冒険者を時々見かける。
この短期間でこの普及率はなかなかのものだろう。
後は一気に火が付くのを待つだけか。
「はい、お待ちどう。」
「お、今日のも美味そうだ。」
「お屋敷の料理人にはまだまだ負けてられないからね。」
「俺はイライザさんの飯も好きだぞ。」
「そんな嬉しいこと言ってもオマケは無いからね。」
別にオマケ欲しさで行ったんじゃないんだけどなぁ。
今日のランチは横で話していた冒険者の話題にも出ていた、みんな大好きワイルドボアの角煮丼。
砂糖と醤油多めの少し甘辛い感じがお気に入りだ。
強く噛まなくても肉が口の中でほろほろと崩れ、ご飯と一緒にかき込めばそれはもう言葉に出せない美味さが口いっぱいに広がる。
うーん、今日も美味い。
「これ、今日の分ね。」
「ん?」
「他の人には内緒だから。あ、いらっしゃい奥の席開いてるよ。」
片づけついでに俺の傍にやって来たイライザさんがそっと机の上にブツを置いて再び去っていく。
オマケはしないって言ってたのに、こういう所があるから通いたくなってしまうわけで。
置かれたのは10cm四方ぐらいの小さい封筒。
厚みのある何かが入ってるのか真ん中は膨らんでいる。
上部を切り取って傾けると中に入っていたものが掌に滑り落ちて来た。
「すげぇ!ブルードラゴン!初めてみた!」
「マジか!」
「シロウさんちょっと見せてくださいよ!」
「俺も俺も!」
滑りだしてきたのはコインタートルの甲羅に書かれた一枚の絵。
デフォルメされながらも威厳たっぷりのブルードラゴンが青い炎を吐いている。
まさか一番のレア物が出て来るとは、イライザさんなかなかやるな。
って、まぁ渡した本人も何が入っていたのか知らないはずだから本当に偶然なんだろうけど。
群がってくる冒険者に甲羅を渡して、その隙にどんぶりの中身を胃に収める。
今一角亭では銀貨3枚以上の食事を行うとランダムで一枚、魔物の絵が描かれたコインタートルの甲羅をプレゼントしている。
甲羅に描かれた魔物は何種類もあり、お目当ての魔物が描かれた甲羅を手に入れようと冒険者が昼間から押し寄せて店は満員御礼。
一人での会計ではなく一回の会計なので、複数人で食べに来ては袋を開けて一喜一憂している感じだ。
目当ての魔物ではなかった場合は欲しい人同士でトレードするか、売買するかしてお目当の甲羅を手に入れるらしい。
因みにうちの店でも買取を行っており、初めから欲しいものを買いに来る客も結構な数いる。
この企画が始まってまだ二日、にもかかわらずこれだけの人気が出ているのは俺の想像以上だった。
「そろそろ返せ、俺のだぞ。」
「それ、高いんですよね。」
「俺も初めて手に入れたが、封入率10%未満の魔物は買取銀貨10枚以上。これは古龍だから銀貨50枚でも売れるかもな。」
「すげぇ銀貨50枚だってよ!」
「ここで出たってことはまた出るかもだよな、イライザさん追加でステーキ!それとエール!」
「あ、俺も俺も!」
「はいはい、すぐ持っていくから。シロウさんまた来てね。」
幸運の女神ことイライザさんに感謝をしつつ大盛り上がりする一角亭を後にした。
はぁ、腹いっぱいだ。
「お、シロウじゃねぇか。」
「ダン、久々だな。戻ってたのか。」
満腹になった胃を上から撫でつつ店に向かっていると、前から見覚えのある男が歩いてきた。
そいつは俺を見るなり強引に俺の肩に手を回して顔を近づけてくる。
「街がなんか面白いことになっているのはお前が原因か?」
「さぁ、何のことだか。」
「まったく、一週間街を空けるだけでこれだよ。危なく流行りに乗り遅れる所だったじゃねぇか。」
「なんだ、こういうの好きだったのか?」
「冒険者なら嫌いなわけないだろ。これがあれば当たりを引けるかもしれないんだ、俺も今からダンジョンに潜ってくる。」
「何が当たったんだ?」
「これだよこれ、ジュエルマウス。暗視ゴーグルと魔寄せはもう予約してあるから、一発当てて家族に美味いもん食わせてやるつもりだ。」
そう言いながら懐から甲羅をチラッと見せて来た。
書かれていたのは額に宝石のついた巨大な鼠。
歩く宝石とも言われる魔物で、今回のレーティングで言うと俺のドラゴンに次ぐ珍しさのはずだ。
『狙っている魔物の絵や素材を持っていると同じ魔物に出会える確率が上がる。』
そんな冒険者のおまじないを利用した企画だったのだが、帰ってきてすぐにこれを引いたのなら中々の幸運だと言えるだろう。
「あんまり無茶するなよ。」
「わかってるって、それじゃあまたな!」
ポンポンと俺の肩を叩いて、勇ましい足取りでダンジョンの方へと歩いて行ってしまった。
あの甲羅一つでここまでテンション上がって行動に移してくれるのであれば、作者冥利に尽きるってもんだろうなぁ。
「ただいま。」
「おかえりなさい!ちょうどビビさんが来ていますよ、二階で待っておられます。」
「お、すぐに行く。」
「後でお茶持っていきますね~。」
店に戻るとメルディが客が来ていると教えてくれた。
今この街で一番話題になっているであろう人物に、早速ダンの話を伝えるとしよう。
二階に上がると前まで俺達が食事に使っていたテーブルにビビがガッチガチに緊張した感じで座っていた。
「悪い、待たせたな。」
「だだ、大丈夫です!」
「顔色が良くないが、まさか寝てないとか言わないよな?」
「寝てます!昨日はちゃんと夜更かしせずに寝ました!」
「それは何よりだ、寝不足はいい仕事と美容の敵だからな。若いからって油断してると一気に出るぞ、今度うちの化粧品を持ってくるからよかったら使ってくれ。」
若いとはいえ今からしっかりケアしておかないと後々になって後悔するぞ、何て脅しをかけて化粧品を売る事はしないが、それが嘘ではないだけにうちの商品で美しさが保たれるのなら喜んで提供させてもらおう。
なんせ、この街で今一番熱い魔物コインの作者様なんだから。
「そんな、すっごい高いやつですよね!この前貰ったハンドクリームもすごい調子よくて、ほんと有難うございます。」
「お礼を言うのは俺の方。見てくれ、さっきこれが出たんだ。」
「わ!ガルグリンダム様じゃないですか!一枚しか描いてないのに、これはもう運命ですね。」
「それなら俺はディーネのが欲しかった。」
「ディネストリファ様は今回の分にちゃんと入れておきましたよ。抜いておきますか?」
「いやいやズルはよくない、こういうのは自力で引いてこそ価値があるもんだ。もっとも、買取で持ち込まれたらしっかり回収するけどな。」
今回、この企画を行うにあたり各納品ごとに一枚だけ目玉となる魔物を封入してもらっている。
一日の納品数は100枚。
今では取引の申し込みが後を絶たないのだが、一人ではこの枚数が限界なのでむやみに増やせないのが悔しい所だ。
「これ、今日の納品分です。封入割合はこっちに書いてあるので確認できたらサインをお願いします。」
「この納品数で大丈夫か?」
「はい、これぐらいなら問題ありません。っていうか、私の絵がこんなに人気になるなんて、そっちの方が信じられなくて。」
「冒険者なら嫌いになるやつはいないって、ジュエルマウスのコインを持った知り合いが言ってたぞ。今から道具を借りて狩りに行くんだとさ。」
「嬉しいです。出るといいなぁ。」
「確かに納品を確認した。これが今日の分の銀貨30枚、今度はこっちを確認してくれ。」
納品されたコインタートルの甲羅を確認してから用意しておいた報酬をトレイに入れて差し出す。
報酬は甲羅一枚につき銅貨30枚。
もちろん素材はこちら持ちなので、普通に売っていた時よりも手元に残るお金は格段に多くなっているはずだ。
いい仕事にはいい報酬を、もう少し報酬を上げる事も提案したんだが向こうから今の金額でいいと言ってきた。
倍の値段で買ってもらえるんだから驚いてしまうのも仕方が無いが、欲の無い事だ。
ちなみに俺はそれを一枚銅貨50枚で各納品先へ出荷、その後は向こうの好きなように値段設定をして配布している。
一角亭の場合は普通に商売するよりも銅貨50枚も経費が掛かるが、それで最低銀貨3枚の売り上げを確保できるので決して高い買い物ではないとイライザさんは喜んでいた。
報酬が積み上げられ、喜び同時に不安そうな複雑な顔でそれを見つめるビビ。
「どうした?」
「なんていうかまだ信じられなくて。ついこの間まで誰も私の絵を気にしてなかったのに、いまでは街中の人が私の絵を持っているんです。それも何枚も。」
「冒険者好みの絵だからなぁ。」
「あの時シロウさんに買ってもらって声をかけてもらわなかったら、こんなに楽しく絵を掛けなかったと思います。私、今すっごく楽しいんです!紹介してもらった魔物の図鑑もすっごくて、それと!今度エリザ様がダンジョンに連れて行ってくれるんですよ!生で魔物を見れるなんて、すっごい楽しみです!」
すごいすごいを連発して喜びを爆発させる様はまるでアイドルに出会ったファンのようだ。
エリザの事様付けするぐらいだし、余程好きなんだろう。
ってか、ダンジョンに連れて行くのは構わないが大先生にケガさせないようしっかりと言いつけておかないと。
「ケガをしない程度に楽しんでくれ、それと絵の方も無理をしない程度にな。」
「描く方は楽しいので大丈夫です!まだまだ描いた事の無い魔物もいっぱいいますし、楽しみにしていてくださいね!」
「あぁ、これからもよろしく。そうだ、新しい部屋だが足りないものは無いか?」
「むしろあんなに凄い部屋、本当にいいんでしょうか。マスターもすっごいいい人で、ご飯もお腹いっぱい食べられるなんて夢見たいです。」
ちなみに今滞在してもらっているのは、三日月亭の一室。
俺がこの世界に来た時のように長期間部屋を借り上げ、そこで生活してもらうようにお願いした。
元々流れで安宿を渡り歩きながら商売をしていたらしく、荷物が少なかったのもあって引越しは本当に簡単だった。
三日月亭なら客の質はいいし、面倒ごとが起きてもマスターにしっかり対応してもらえる。
今や大人気絵師なわけだが、本人があまり表立ってチヤホヤされたくないらしく相談の結果正体を隠すことで利害が一致。
すぐに部屋を確保する事となった。
「拡張工事が終わるまでは安全に仕事ができる家を提供できそうにないから、暫くはそこで我慢してくれ。今はこの人気だし、出来るだけ正体がバレないように頼むな。」
「そこは気を付けるようにします。」
「ま、何かあってもエリザがいるし俺の名前を出せば大丈夫だから。」
「はい!」
こうして魔物コインは爆発的な人気になり、俺は卸しだけでなく買取と販売の方でもがっつりと利益をだすのだった。
コレクション系ってどの世界でも人気が出るもんなんだなぁ。
「へへ、グレイウルフがやっと出たんだ。」
「マジかよ!羨ましいなぁ、俺なんてまたワイルドボアだぜ。」
「いいじゃねぇか、美味いんだから。」
「味の問題じゃねぇんだよ。」
横で食事をしている冒険者からそんな会話が聞こえてくる。
よしよし、少しずつだが広まっているみたいだな。
街を歩いていてもこの間のワッペンのように、カバンにぶら下げている冒険者を時々見かける。
この短期間でこの普及率はなかなかのものだろう。
後は一気に火が付くのを待つだけか。
「はい、お待ちどう。」
「お、今日のも美味そうだ。」
「お屋敷の料理人にはまだまだ負けてられないからね。」
「俺はイライザさんの飯も好きだぞ。」
「そんな嬉しいこと言ってもオマケは無いからね。」
別にオマケ欲しさで行ったんじゃないんだけどなぁ。
今日のランチは横で話していた冒険者の話題にも出ていた、みんな大好きワイルドボアの角煮丼。
砂糖と醤油多めの少し甘辛い感じがお気に入りだ。
強く噛まなくても肉が口の中でほろほろと崩れ、ご飯と一緒にかき込めばそれはもう言葉に出せない美味さが口いっぱいに広がる。
うーん、今日も美味い。
「これ、今日の分ね。」
「ん?」
「他の人には内緒だから。あ、いらっしゃい奥の席開いてるよ。」
片づけついでに俺の傍にやって来たイライザさんがそっと机の上にブツを置いて再び去っていく。
オマケはしないって言ってたのに、こういう所があるから通いたくなってしまうわけで。
置かれたのは10cm四方ぐらいの小さい封筒。
厚みのある何かが入ってるのか真ん中は膨らんでいる。
上部を切り取って傾けると中に入っていたものが掌に滑り落ちて来た。
「すげぇ!ブルードラゴン!初めてみた!」
「マジか!」
「シロウさんちょっと見せてくださいよ!」
「俺も俺も!」
滑りだしてきたのはコインタートルの甲羅に書かれた一枚の絵。
デフォルメされながらも威厳たっぷりのブルードラゴンが青い炎を吐いている。
まさか一番のレア物が出て来るとは、イライザさんなかなかやるな。
って、まぁ渡した本人も何が入っていたのか知らないはずだから本当に偶然なんだろうけど。
群がってくる冒険者に甲羅を渡して、その隙にどんぶりの中身を胃に収める。
今一角亭では銀貨3枚以上の食事を行うとランダムで一枚、魔物の絵が描かれたコインタートルの甲羅をプレゼントしている。
甲羅に描かれた魔物は何種類もあり、お目当ての魔物が描かれた甲羅を手に入れようと冒険者が昼間から押し寄せて店は満員御礼。
一人での会計ではなく一回の会計なので、複数人で食べに来ては袋を開けて一喜一憂している感じだ。
目当ての魔物ではなかった場合は欲しい人同士でトレードするか、売買するかしてお目当の甲羅を手に入れるらしい。
因みにうちの店でも買取を行っており、初めから欲しいものを買いに来る客も結構な数いる。
この企画が始まってまだ二日、にもかかわらずこれだけの人気が出ているのは俺の想像以上だった。
「そろそろ返せ、俺のだぞ。」
「それ、高いんですよね。」
「俺も初めて手に入れたが、封入率10%未満の魔物は買取銀貨10枚以上。これは古龍だから銀貨50枚でも売れるかもな。」
「すげぇ銀貨50枚だってよ!」
「ここで出たってことはまた出るかもだよな、イライザさん追加でステーキ!それとエール!」
「あ、俺も俺も!」
「はいはい、すぐ持っていくから。シロウさんまた来てね。」
幸運の女神ことイライザさんに感謝をしつつ大盛り上がりする一角亭を後にした。
はぁ、腹いっぱいだ。
「お、シロウじゃねぇか。」
「ダン、久々だな。戻ってたのか。」
満腹になった胃を上から撫でつつ店に向かっていると、前から見覚えのある男が歩いてきた。
そいつは俺を見るなり強引に俺の肩に手を回して顔を近づけてくる。
「街がなんか面白いことになっているのはお前が原因か?」
「さぁ、何のことだか。」
「まったく、一週間街を空けるだけでこれだよ。危なく流行りに乗り遅れる所だったじゃねぇか。」
「なんだ、こういうの好きだったのか?」
「冒険者なら嫌いなわけないだろ。これがあれば当たりを引けるかもしれないんだ、俺も今からダンジョンに潜ってくる。」
「何が当たったんだ?」
「これだよこれ、ジュエルマウス。暗視ゴーグルと魔寄せはもう予約してあるから、一発当てて家族に美味いもん食わせてやるつもりだ。」
そう言いながら懐から甲羅をチラッと見せて来た。
書かれていたのは額に宝石のついた巨大な鼠。
歩く宝石とも言われる魔物で、今回のレーティングで言うと俺のドラゴンに次ぐ珍しさのはずだ。
『狙っている魔物の絵や素材を持っていると同じ魔物に出会える確率が上がる。』
そんな冒険者のおまじないを利用した企画だったのだが、帰ってきてすぐにこれを引いたのなら中々の幸運だと言えるだろう。
「あんまり無茶するなよ。」
「わかってるって、それじゃあまたな!」
ポンポンと俺の肩を叩いて、勇ましい足取りでダンジョンの方へと歩いて行ってしまった。
あの甲羅一つでここまでテンション上がって行動に移してくれるのであれば、作者冥利に尽きるってもんだろうなぁ。
「ただいま。」
「おかえりなさい!ちょうどビビさんが来ていますよ、二階で待っておられます。」
「お、すぐに行く。」
「後でお茶持っていきますね~。」
店に戻るとメルディが客が来ていると教えてくれた。
今この街で一番話題になっているであろう人物に、早速ダンの話を伝えるとしよう。
二階に上がると前まで俺達が食事に使っていたテーブルにビビがガッチガチに緊張した感じで座っていた。
「悪い、待たせたな。」
「だだ、大丈夫です!」
「顔色が良くないが、まさか寝てないとか言わないよな?」
「寝てます!昨日はちゃんと夜更かしせずに寝ました!」
「それは何よりだ、寝不足はいい仕事と美容の敵だからな。若いからって油断してると一気に出るぞ、今度うちの化粧品を持ってくるからよかったら使ってくれ。」
若いとはいえ今からしっかりケアしておかないと後々になって後悔するぞ、何て脅しをかけて化粧品を売る事はしないが、それが嘘ではないだけにうちの商品で美しさが保たれるのなら喜んで提供させてもらおう。
なんせ、この街で今一番熱い魔物コインの作者様なんだから。
「そんな、すっごい高いやつですよね!この前貰ったハンドクリームもすごい調子よくて、ほんと有難うございます。」
「お礼を言うのは俺の方。見てくれ、さっきこれが出たんだ。」
「わ!ガルグリンダム様じゃないですか!一枚しか描いてないのに、これはもう運命ですね。」
「それなら俺はディーネのが欲しかった。」
「ディネストリファ様は今回の分にちゃんと入れておきましたよ。抜いておきますか?」
「いやいやズルはよくない、こういうのは自力で引いてこそ価値があるもんだ。もっとも、買取で持ち込まれたらしっかり回収するけどな。」
今回、この企画を行うにあたり各納品ごとに一枚だけ目玉となる魔物を封入してもらっている。
一日の納品数は100枚。
今では取引の申し込みが後を絶たないのだが、一人ではこの枚数が限界なのでむやみに増やせないのが悔しい所だ。
「これ、今日の納品分です。封入割合はこっちに書いてあるので確認できたらサインをお願いします。」
「この納品数で大丈夫か?」
「はい、これぐらいなら問題ありません。っていうか、私の絵がこんなに人気になるなんて、そっちの方が信じられなくて。」
「冒険者なら嫌いになるやつはいないって、ジュエルマウスのコインを持った知り合いが言ってたぞ。今から道具を借りて狩りに行くんだとさ。」
「嬉しいです。出るといいなぁ。」
「確かに納品を確認した。これが今日の分の銀貨30枚、今度はこっちを確認してくれ。」
納品されたコインタートルの甲羅を確認してから用意しておいた報酬をトレイに入れて差し出す。
報酬は甲羅一枚につき銅貨30枚。
もちろん素材はこちら持ちなので、普通に売っていた時よりも手元に残るお金は格段に多くなっているはずだ。
いい仕事にはいい報酬を、もう少し報酬を上げる事も提案したんだが向こうから今の金額でいいと言ってきた。
倍の値段で買ってもらえるんだから驚いてしまうのも仕方が無いが、欲の無い事だ。
ちなみに俺はそれを一枚銅貨50枚で各納品先へ出荷、その後は向こうの好きなように値段設定をして配布している。
一角亭の場合は普通に商売するよりも銅貨50枚も経費が掛かるが、それで最低銀貨3枚の売り上げを確保できるので決して高い買い物ではないとイライザさんは喜んでいた。
報酬が積み上げられ、喜び同時に不安そうな複雑な顔でそれを見つめるビビ。
「どうした?」
「なんていうかまだ信じられなくて。ついこの間まで誰も私の絵を気にしてなかったのに、いまでは街中の人が私の絵を持っているんです。それも何枚も。」
「冒険者好みの絵だからなぁ。」
「あの時シロウさんに買ってもらって声をかけてもらわなかったら、こんなに楽しく絵を掛けなかったと思います。私、今すっごく楽しいんです!紹介してもらった魔物の図鑑もすっごくて、それと!今度エリザ様がダンジョンに連れて行ってくれるんですよ!生で魔物を見れるなんて、すっごい楽しみです!」
すごいすごいを連発して喜びを爆発させる様はまるでアイドルに出会ったファンのようだ。
エリザの事様付けするぐらいだし、余程好きなんだろう。
ってか、ダンジョンに連れて行くのは構わないが大先生にケガさせないようしっかりと言いつけておかないと。
「ケガをしない程度に楽しんでくれ、それと絵の方も無理をしない程度にな。」
「描く方は楽しいので大丈夫です!まだまだ描いた事の無い魔物もいっぱいいますし、楽しみにしていてくださいね!」
「あぁ、これからもよろしく。そうだ、新しい部屋だが足りないものは無いか?」
「むしろあんなに凄い部屋、本当にいいんでしょうか。マスターもすっごいいい人で、ご飯もお腹いっぱい食べられるなんて夢見たいです。」
ちなみに今滞在してもらっているのは、三日月亭の一室。
俺がこの世界に来た時のように長期間部屋を借り上げ、そこで生活してもらうようにお願いした。
元々流れで安宿を渡り歩きながら商売をしていたらしく、荷物が少なかったのもあって引越しは本当に簡単だった。
三日月亭なら客の質はいいし、面倒ごとが起きてもマスターにしっかり対応してもらえる。
今や大人気絵師なわけだが、本人があまり表立ってチヤホヤされたくないらしく相談の結果正体を隠すことで利害が一致。
すぐに部屋を確保する事となった。
「拡張工事が終わるまでは安全に仕事ができる家を提供できそうにないから、暫くはそこで我慢してくれ。今はこの人気だし、出来るだけ正体がバレないように頼むな。」
「そこは気を付けるようにします。」
「ま、何かあってもエリザがいるし俺の名前を出せば大丈夫だから。」
「はい!」
こうして魔物コインは爆発的な人気になり、俺は卸しだけでなく買取と販売の方でもがっつりと利益をだすのだった。
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