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1059.転売屋は妻の笑顔のために奔走する
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マスターの所で偶然知り合ったラーフラさん。
彼女から教えてもらった花の保存についてどういった素材を使うかは残念ながら教えてもらえなかったのだが、別れた後その足で向かった図書館でおおよその目星がついてしまった。
加えてキキにも事情を説明して情報を収集。
アレン少年の索引能力にキキの知識が加われば怖いものなしだな。
「なんであんな素材が持ち込まれるのか疑問だったんだが、その理由が今日分かった。なるほど、そういう使い道があったのか。」
「私もまさかそのような形で使われているとは知りませんでしたが、中身を考えれば納得です。」
「てっきり戦利品を飾りたがっているだけかと思ったけどそうじゃないのね。」
北側の倉庫にしまわれていた素材を前にして、エリザとキキが納得したようにうなずいている。
おかれていたのは1m程の水槽。
いや、正確には水槽ではないようなのだが主にそういう用途で使われることが多いようだ。
『タンクルの水槽。ダンジョンの遺跡内部で遭遇する非常に珍しい魔物。一見するとゴーレムのようだがその腹部にはガラスのように透明な箱が埋め込まれている。箱の中は透明な液体で満たされており、その中に捕まえたと思しき魔物等を保管している。大抵は魔物が入っているのだが稀に倒された冒険者が腐敗することなく保管されていることがある。最近の平均取引価格は銀貨20枚。最安値銀貨14枚最高値銀貨50枚、最終取引日は128日前と記録されています。』
タンクルはダンジョン内の遺跡を徘徊している珍しいゴーレム。
その腹部には透明な箱が仕込まれており、遺跡に侵入した不届き者を晒しているとも言われている。
そんなゴーレムの腹部に仕込まれているのが俺達の前に置かれた水槽。
でも、今回狙っているのはこの水槽ではなくその中身の方だ。
獲物を腐らせることなく元の状態を維持できる保存液。
その性能はかなりのもので、十年以上たっているであろう物でも当時のまま保存されていたそうだ。
ホルマリンみたいな感じだが毒性は一切なく取り扱いには危険はないらしい。
保存液の効果を知っている人がそれを利用して色々な物を作っているのだろう。
で、うちに運ばれてくるのはその残骸。
まぁ、使い道はあるから決してゴミではないんだが本当の価値はその内部に満たされた液体だったようだ。
「これを満たす保存液となるとなかなかの量だが、ぶっちゃけ手に入るのか?」
「んー、なんとも言えないわね。遺跡の中で出会ったのなんて一回あるかないかぐらいじゃないかしら。それにお金になるって話は聞いたことなかったから、出会ってもやり過ごしたはずよ。見つかるとずっと追いかけてくるんだもん。」
「体内に獲物を有している場合は追いかけてくることもないそうですが、新しい獲物として認識されると中身を捨ててずっと追いかけてくるんです。」
「ずっと?」
「はい、遺跡の外まで。」
そりゃ怖い。
普通遺跡系の魔物は遺跡の外まで出てくることはないので、そこまで逃げだせば問題ないといわれている。
でもそのセオリーを破ってまで追いかけてくるとか、ホラー以外の何物でもないな。
キキの話じゃかなり硬くて、動力源である魔石まで攻撃を届けるのは大変らしい。
あのエリザでも難しいと言うぐらいだ、よほどの材質なんだろう。
むしろその材質の方が効果あるんじゃなかろうか。
「ともかく目的を達するためにはそいつの保存液が必要だ。とりあえず冒険者に依頼をかけつつ、別の方向でもアプローチをかけていこう。さっき話した条件に合う素材、何か見つかったか?」
「花を入れるための入れ物ね。透明でできるだけコンパクト、更には落としたぐらいでは割れない程度の強度がある素材なんてそんなに都合よく見つからないものだけど。」
「それがあるんですよねぇ。」
今回探しているのは花を長期間保存するための方法だ。
そしてその方法が見つかった以上次に探すのは保存するための入れ物。
出来るだけ花の邪魔をせず、かといって無機質な感じでもない。
机の上などにおける大きさで、落としても保存液が漏れ出さない程度の強度が欲しい。
そんな俺の都合をギュッと凝縮したような素材なんてエリザのいうように都合よく見つかるはずがないのだが、それを見つけてしまうのがうちのキキ大明神様なんだよなぁ。
というか存在していることの方が驚きなんだが。
「どんな素材だ?」
「ボトルプラントと言いまして花瓶ぐらいの大きさをした食魔植物です。透明な体が特徴で、比較的丈夫なので入れ物に使ったりするんですよ。」
「食魔ってことは魔物を食うのか。」
「はい。透明な体の中で獲物を少しずつ溶かします。」
方や長期間保存する液体を有した巨大な動く石像で方や短期間で溶かしてしまう液体を用いる植物。
本来であれば相反する二つの素材を用いて新しいものを作ろうっていうんだ、世の中面白いもんだなぁ。
「ボトルプラントなら比較的簡単に手に入るわよ。値段もそんなに高くないし、先に集めておいたら?」
「植物とはいえ体の部分は消化液を満たせるぐらいには頑丈なので保存にも問題ありません。問題はやっぱり保存液の方ですね。」
「どのぐらいかかると思う?」
「早くて一週間、長くて一か月というところでしょうか。」
「そんなにかかるか。」
となると売り出しは冬になるか。
すぐにでもと思ったがそうは問屋が卸してくれないらしい。
別に冬でも構わないといえば構わないのだが、やることが多い時に売り出すのは気が引ける。
今まではそこまで気にしていなかったが仕事が重なって大変な思いをするのは俺だけじゃないんだよなぁ。
ミラのように無理をして倒れられても困るし、その辺は俺がコントロールしなければならないだろう。
花を見れば少しは笑顔になるかと思ったのだがそれはもう少しお預けのようだ。
「仕方ないわよ、珍しい魔物だもの。」
「それもそうだな。」
「一体見つかればそれなりの量が取れるはずですし、ここ以外のダンジョンでも募集されるのはいかがですか?確か港町の近くにもダンジョン出来ましたよね?」
「そういえばそんなのもあったな。」
「遺跡もあったって聞いてるし、可能性は上がるわね。」
「それじゃあちょっと向こうの話を聞いてくるか。二人には悪いがこっちは任せた。」
何もうちの街だけで探す必要はない。
可能性があるのであればそれを目指して動けばいいだけのこと。
急ぎバーンの背に乗り港町へと向かい、現地の冒険者ギルドで依頼を出す。
今のところタンクルが見つかったという報告はないそうだが、逆を言えば誰にも倒されていないということになる。
つまり可能性は高いということだ。
来たついでに魚や塩など足りなくなっていた物を注文しつつ、ヘルメースさんに挨拶をしておく。
ルティエがいないと露骨に不機嫌になるので今度本人を連れてくると約束すると、途端に上機嫌になり、作ったばかりのリングをいくつか仕入れる事ができた。
ルティエ自身もヘルメースさんが気になるようだし、同じ職人同士切磋琢磨してもらうとしよう。
最後に港町で西方の情報を仕入れていると向こうからポーラさんが歩いてくるのが見える。
やばい、そう思ったもののバーンは別の場所にいるので逃げ出すことができなかった。
仕方ない、今回は話をしてやるか。
「シロウさん!やっと見つけました。」
「ポーラさんじゃないか、こんなところまで息を切らして俺に何か用か?」
「最近僕のこと避けてません?」
「最近じゃなくても避けてるぞ。」
「なんでですか!」
怒ったような言い方だが、その顔には喜びがあふれ出ている。
そんなに俺に会えたのがうれしいんだろうか。
街長としての仕事も忙しいだろうし本人からすれば息抜きの一つなんだろうけど、こうも露骨に好意を向けられると逆に嫌になってしまうんだよなぁ。
頭の回転は速いくせにこういうのに気づかない当たり残念なんだよな。
「なぜって言わなくてもわかるだろ。」
「わからないから聞いてるんです。こんなにシロウさんのことが好きなのにどうして僕の思いに応えてくれないのかなぁ。」
「だからそういうところだっての。」
「そんなこと言っていいんですか?折角お探しの物を持ってきてあげたのに。」
「探し物?」
「さっき冒険者ギルドでタンクルの保存液を依頼されてましたよね?少しだけなんですけど、屋敷の倉庫にあったので持ってきたんです。譲ってほしいのなら僕と一緒にデートを・・・。」
そう言いながらポーラさんはカバンから500mlペットボトルぐらいの入れ物を取り出す。
入れ物が透明じゃないので中身は確認できないが、わざわざ嘘を言うために俺を探して走り回ったりはしないだろう。
前言撤回、やっぱりこの女は頭が回る。
これを切り札にすれば俺とうまく交渉ができる、そう踏んで急ぎ探し出したんだろう。
恐るべき執念、恐るべき行動力。
ただ飯を食って少しの買い物に付き合えばこれが手に入る。
が、まだそれを信じるわけにはいかない。
「本物なのか?」
「もちろんです!」
「ならちょっと見せてくれ、なに触るだけでいい。」
「え~、どうしようかな~。」
「ん?あれはなんだ?」
「え?」
勿体ぶって俺を揺さぶってきたので、長期戦になる前に勝負に出る事にした。
明後日の方向を指さしその隙を狙うという古典的な手段だが、こういう簡単な奴の方が案外反応がいい。
案の定俺の作戦にはまり明後日の方向を向いたポーラさんの隙をついてボトルに触れることに成功した。
『タンクルの保存液。体の中に仕込んだ水槽を満たす保存液は、中に入れられたものをいつまでも同じ状態に保つことができる。無味無臭無毒な為、標本や薬の保存などに使われることが多い。タンクルそのものが珍しい魔物の為希少性が高い。最近の平均取引価格は銀貨50枚。最安値銀貨41枚最高値銀貨80枚、最終取引日は51日前と記録されています。』
間違いない、保存液だ。
ポーラさんは慌てた様子で入れ物を抱きかかえ、恨めしそうな目を向けてくる。
いくら欲しいとはいえさすがに奪い取ったりはしないぞ?
むしろここからが俺の本気の見せ所。
ブツを手に入れるのは簡単だが、出来るだけ被害を最小限に抑える必要がある。
これも心の平穏の為。
なによりミラの喜ぶ顔を見るためだ。
さぁて、もう一頑張りしようじゃないか。
彼女から教えてもらった花の保存についてどういった素材を使うかは残念ながら教えてもらえなかったのだが、別れた後その足で向かった図書館でおおよその目星がついてしまった。
加えてキキにも事情を説明して情報を収集。
アレン少年の索引能力にキキの知識が加われば怖いものなしだな。
「なんであんな素材が持ち込まれるのか疑問だったんだが、その理由が今日分かった。なるほど、そういう使い道があったのか。」
「私もまさかそのような形で使われているとは知りませんでしたが、中身を考えれば納得です。」
「てっきり戦利品を飾りたがっているだけかと思ったけどそうじゃないのね。」
北側の倉庫にしまわれていた素材を前にして、エリザとキキが納得したようにうなずいている。
おかれていたのは1m程の水槽。
いや、正確には水槽ではないようなのだが主にそういう用途で使われることが多いようだ。
『タンクルの水槽。ダンジョンの遺跡内部で遭遇する非常に珍しい魔物。一見するとゴーレムのようだがその腹部にはガラスのように透明な箱が埋め込まれている。箱の中は透明な液体で満たされており、その中に捕まえたと思しき魔物等を保管している。大抵は魔物が入っているのだが稀に倒された冒険者が腐敗することなく保管されていることがある。最近の平均取引価格は銀貨20枚。最安値銀貨14枚最高値銀貨50枚、最終取引日は128日前と記録されています。』
タンクルはダンジョン内の遺跡を徘徊している珍しいゴーレム。
その腹部には透明な箱が仕込まれており、遺跡に侵入した不届き者を晒しているとも言われている。
そんなゴーレムの腹部に仕込まれているのが俺達の前に置かれた水槽。
でも、今回狙っているのはこの水槽ではなくその中身の方だ。
獲物を腐らせることなく元の状態を維持できる保存液。
その性能はかなりのもので、十年以上たっているであろう物でも当時のまま保存されていたそうだ。
ホルマリンみたいな感じだが毒性は一切なく取り扱いには危険はないらしい。
保存液の効果を知っている人がそれを利用して色々な物を作っているのだろう。
で、うちに運ばれてくるのはその残骸。
まぁ、使い道はあるから決してゴミではないんだが本当の価値はその内部に満たされた液体だったようだ。
「これを満たす保存液となるとなかなかの量だが、ぶっちゃけ手に入るのか?」
「んー、なんとも言えないわね。遺跡の中で出会ったのなんて一回あるかないかぐらいじゃないかしら。それにお金になるって話は聞いたことなかったから、出会ってもやり過ごしたはずよ。見つかるとずっと追いかけてくるんだもん。」
「体内に獲物を有している場合は追いかけてくることもないそうですが、新しい獲物として認識されると中身を捨ててずっと追いかけてくるんです。」
「ずっと?」
「はい、遺跡の外まで。」
そりゃ怖い。
普通遺跡系の魔物は遺跡の外まで出てくることはないので、そこまで逃げだせば問題ないといわれている。
でもそのセオリーを破ってまで追いかけてくるとか、ホラー以外の何物でもないな。
キキの話じゃかなり硬くて、動力源である魔石まで攻撃を届けるのは大変らしい。
あのエリザでも難しいと言うぐらいだ、よほどの材質なんだろう。
むしろその材質の方が効果あるんじゃなかろうか。
「ともかく目的を達するためにはそいつの保存液が必要だ。とりあえず冒険者に依頼をかけつつ、別の方向でもアプローチをかけていこう。さっき話した条件に合う素材、何か見つかったか?」
「花を入れるための入れ物ね。透明でできるだけコンパクト、更には落としたぐらいでは割れない程度の強度がある素材なんてそんなに都合よく見つからないものだけど。」
「それがあるんですよねぇ。」
今回探しているのは花を長期間保存するための方法だ。
そしてその方法が見つかった以上次に探すのは保存するための入れ物。
出来るだけ花の邪魔をせず、かといって無機質な感じでもない。
机の上などにおける大きさで、落としても保存液が漏れ出さない程度の強度が欲しい。
そんな俺の都合をギュッと凝縮したような素材なんてエリザのいうように都合よく見つかるはずがないのだが、それを見つけてしまうのがうちのキキ大明神様なんだよなぁ。
というか存在していることの方が驚きなんだが。
「どんな素材だ?」
「ボトルプラントと言いまして花瓶ぐらいの大きさをした食魔植物です。透明な体が特徴で、比較的丈夫なので入れ物に使ったりするんですよ。」
「食魔ってことは魔物を食うのか。」
「はい。透明な体の中で獲物を少しずつ溶かします。」
方や長期間保存する液体を有した巨大な動く石像で方や短期間で溶かしてしまう液体を用いる植物。
本来であれば相反する二つの素材を用いて新しいものを作ろうっていうんだ、世の中面白いもんだなぁ。
「ボトルプラントなら比較的簡単に手に入るわよ。値段もそんなに高くないし、先に集めておいたら?」
「植物とはいえ体の部分は消化液を満たせるぐらいには頑丈なので保存にも問題ありません。問題はやっぱり保存液の方ですね。」
「どのぐらいかかると思う?」
「早くて一週間、長くて一か月というところでしょうか。」
「そんなにかかるか。」
となると売り出しは冬になるか。
すぐにでもと思ったがそうは問屋が卸してくれないらしい。
別に冬でも構わないといえば構わないのだが、やることが多い時に売り出すのは気が引ける。
今まではそこまで気にしていなかったが仕事が重なって大変な思いをするのは俺だけじゃないんだよなぁ。
ミラのように無理をして倒れられても困るし、その辺は俺がコントロールしなければならないだろう。
花を見れば少しは笑顔になるかと思ったのだがそれはもう少しお預けのようだ。
「仕方ないわよ、珍しい魔物だもの。」
「それもそうだな。」
「一体見つかればそれなりの量が取れるはずですし、ここ以外のダンジョンでも募集されるのはいかがですか?確か港町の近くにもダンジョン出来ましたよね?」
「そういえばそんなのもあったな。」
「遺跡もあったって聞いてるし、可能性は上がるわね。」
「それじゃあちょっと向こうの話を聞いてくるか。二人には悪いがこっちは任せた。」
何もうちの街だけで探す必要はない。
可能性があるのであればそれを目指して動けばいいだけのこと。
急ぎバーンの背に乗り港町へと向かい、現地の冒険者ギルドで依頼を出す。
今のところタンクルが見つかったという報告はないそうだが、逆を言えば誰にも倒されていないということになる。
つまり可能性は高いということだ。
来たついでに魚や塩など足りなくなっていた物を注文しつつ、ヘルメースさんに挨拶をしておく。
ルティエがいないと露骨に不機嫌になるので今度本人を連れてくると約束すると、途端に上機嫌になり、作ったばかりのリングをいくつか仕入れる事ができた。
ルティエ自身もヘルメースさんが気になるようだし、同じ職人同士切磋琢磨してもらうとしよう。
最後に港町で西方の情報を仕入れていると向こうからポーラさんが歩いてくるのが見える。
やばい、そう思ったもののバーンは別の場所にいるので逃げ出すことができなかった。
仕方ない、今回は話をしてやるか。
「シロウさん!やっと見つけました。」
「ポーラさんじゃないか、こんなところまで息を切らして俺に何か用か?」
「最近僕のこと避けてません?」
「最近じゃなくても避けてるぞ。」
「なんでですか!」
怒ったような言い方だが、その顔には喜びがあふれ出ている。
そんなに俺に会えたのがうれしいんだろうか。
街長としての仕事も忙しいだろうし本人からすれば息抜きの一つなんだろうけど、こうも露骨に好意を向けられると逆に嫌になってしまうんだよなぁ。
頭の回転は速いくせにこういうのに気づかない当たり残念なんだよな。
「なぜって言わなくてもわかるだろ。」
「わからないから聞いてるんです。こんなにシロウさんのことが好きなのにどうして僕の思いに応えてくれないのかなぁ。」
「だからそういうところだっての。」
「そんなこと言っていいんですか?折角お探しの物を持ってきてあげたのに。」
「探し物?」
「さっき冒険者ギルドでタンクルの保存液を依頼されてましたよね?少しだけなんですけど、屋敷の倉庫にあったので持ってきたんです。譲ってほしいのなら僕と一緒にデートを・・・。」
そう言いながらポーラさんはカバンから500mlペットボトルぐらいの入れ物を取り出す。
入れ物が透明じゃないので中身は確認できないが、わざわざ嘘を言うために俺を探して走り回ったりはしないだろう。
前言撤回、やっぱりこの女は頭が回る。
これを切り札にすれば俺とうまく交渉ができる、そう踏んで急ぎ探し出したんだろう。
恐るべき執念、恐るべき行動力。
ただ飯を食って少しの買い物に付き合えばこれが手に入る。
が、まだそれを信じるわけにはいかない。
「本物なのか?」
「もちろんです!」
「ならちょっと見せてくれ、なに触るだけでいい。」
「え~、どうしようかな~。」
「ん?あれはなんだ?」
「え?」
勿体ぶって俺を揺さぶってきたので、長期戦になる前に勝負に出る事にした。
明後日の方向を指さしその隙を狙うという古典的な手段だが、こういう簡単な奴の方が案外反応がいい。
案の定俺の作戦にはまり明後日の方向を向いたポーラさんの隙をついてボトルに触れることに成功した。
『タンクルの保存液。体の中に仕込んだ水槽を満たす保存液は、中に入れられたものをいつまでも同じ状態に保つことができる。無味無臭無毒な為、標本や薬の保存などに使われることが多い。タンクルそのものが珍しい魔物の為希少性が高い。最近の平均取引価格は銀貨50枚。最安値銀貨41枚最高値銀貨80枚、最終取引日は51日前と記録されています。』
間違いない、保存液だ。
ポーラさんは慌てた様子で入れ物を抱きかかえ、恨めしそうな目を向けてくる。
いくら欲しいとはいえさすがに奪い取ったりはしないぞ?
むしろここからが俺の本気の見せ所。
ブツを手に入れるのは簡単だが、出来るだけ被害を最小限に抑える必要がある。
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【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
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「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」
選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。
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