転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア

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1084.転売屋は遺跡から帰還する

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二日間にわたる遺跡探索を終えて街に戻ってきたのはその日の夕方。

帰還後すぐに街から探索について報告を求められたので、エリザとアニエスさん以外は先に帰ってもらって説明をすることになった。

とはいえ報告といっても難しい話ではなく何をしてたかを聞かれただけ。

遺跡の封鎖区画を二つ開けて最奥の部屋で宝物を回収、祭壇のようなものがあったからまた確認しておく方がいいと助言だけしておいた。

まさか閉鎖区画がを開けられると思っていなかったのかひどく驚いた顔をしていたが、最奥まで探索して何もなかったという事で納得してもらっている。

今後改めて調査や研究が入るかもしれないが、さすがにそれで彼女が出ていったことはわからないだろう。

皆を一緒に帰したのも彼女の姿を見られないようにするため。

発見した宝物なんかも報告を求められただけで約束通り回収されなかったのでとりあえず第一段階は突破出来たな。

「と、言うことで一緒に帰ってきたウンチュミーことグランマだ。」

「わえのことはグランマと呼ぶがよいぞ。それにしても女子が多いと思ったが、まだこんなに隠しておったか。」

「別に隠していたわけじゃない、俺がいない間に色々と動いてもらっていただけだ。」

「初めましてグランマ様、どうぞよろしくお願いいたします。」

宿に戻り遺跡での出来事を簡単に説明しながらグランマをミラたちに紹介する。

神様だと聞いた瞬間は驚いた表情を浮かべたが、すぐにニコニコと挨拶をする辺り肝が座っていると言うかなんというか。

普通はもっと驚くところだよな、だって神様だぞ?と思いながらも、ディーネやバーンが居るんだからそういうのもありなのかもしれない。

そもそも俺が別の世界から来ている時点で普通とは違うか、なんて一人で納得してしまった。

「皆さんお疲れでしょう、まずはゆっくり休んでください。」

「そうしよっかな。キキ、お風呂行きましょ。」

「エリザ様、私もご一緒していいでしょうか?」

「もちろんハルカさんも、三人も入るわよね?」

「いきま~す!」

遺跡探索組は荷物を置いて宿の大きな風呂にぞろぞろと向かっていく。

ここの風呂は大きいのが自慢のようだが、残念ながら湯船一つしかないので男女別に入るしかない。

あの人数だと上がってくるのにかなりの時間がかかるだろうし、それまではこっちの話を聞いて待つとしよう。

ケイゴさんとウーラさんもそれを理解しているので、各々好きなように休憩するようだ。

「グランマは行かなくていいのか?」

「わえはバーンと共に何かつまんでくるとするかの。」

「食堂はこっちだよ!」

戻って来て早々に食堂とは、ずっと眠っていたこともあるから食べ物に対する欲求が随分と強くなっているのかもしれない。

後でたくさん料理を作ってくれと言われているのでみんなが風呂から上がってくる前に仕込みもしておかないと。

ってことで残った俺は二日ぶりの子供達を堪能しつつミラ達から不在時の報告を受ける。

二人には主にジャムづくりをお願いしていたのだが、こちらも思ってもみなかった状況になっていたようだ。

「は?完売?」

「はい。匂いにつられてきた年配の方に一つ販売すると、あっという間にうわさが広まってしまいまして。」

「でも200個だぞ?しかもこっちじゃごくありふれた果物だし、それが即日完売?」

「一つ銀貨1枚と銅貨50枚というわざと高い値段をお伝えしたんですが。」

ハーシェさんが申し訳なさそうにジャムについて報告をしてくれた。

予定売価は銀貨1枚。

それでも十分に利益を出せる値段設定にしていたのだが、まさかそれを上回る値段で完売するとは思ってもみなかった。

だってこっちではごくありふれた食材なわけだし、ジャムだって普通に加工されているはず。

にもかかわらず完売とはそれだけ美味しかったってことなんだろう。

つまりは俺達の街ならもう少し高く売れる可能性があるわけで、それなら仕入れ値が上がってもいいので数を手配して再度作るのもありか。

「よっぽど美味かったんだろうなぁ。うーむ、こんなことならもっと買い付けておけばよかった。」

「それとですね、試しに作っていたグラススラグなんですが・・・。」

「まさかそれもだなんて言わないよな?海なんて半日あればつくんだぞ?」

「さすがに完売とまでは言いませんが、持ち込んだ100個分が完売してしまいました。こちらは予定通り一つ銅貨50枚なんですが、もう少し高くても売れる可能性があります。思った以上に綺麗な仕上がりで、私も欲しくなってしまいました。」

今度はミラが申し訳なさそうな顔をする。

いやまぁ売れるのはいいことなんだしそんな顔しなくてもいいんだぞ?

今売るのも後で売るのも同じことだし、ようはしっかりと利益が残ればいいんだから。

しかしあれだな、ジャムもスラグの欠片もまさか地元でこんなに売れるとは思ってもみなかった。

もちろんいつまでも売れ続けるようなものではないだろうけど、俺が思っている以上にわずか半日の距離はここに住む人たちにとってはかなり遠く感じるのかもしれない。

元の世界と違って半日の移動とはいえ魔物の襲撃や盗賊など危険が全くないわけじゃないからなぁ。

そういう意味でももう少し考えを改めた方がいいかもしれない。

「うーむ、これは仕入れを増やす必要があるか。できれば今すぐ動きたい所ではあるんだが、フレイがいればなぁ。」

「フレイ君でしたら今頃素材を集めに走り回ってくれているはずです。」

「え、マジで?」

「アナタならそうすると思いまして、新しい瓶と果物を手配している所です。問題はどこで作るかなんですけど、どうしましょう。」

さすができる女は違うなぁ。

そこまでしてくれているのならばあとは俺の仕事だ。

皆が風呂から上がってくる前に情報を整理しつつ次の一手を準備しようじゃないか。

なんだかんだこういうのを考えているときが一番楽しい気がする。

尾羽の他に持ち込んだ素材は不在の間に各ギルドを通じてそれなりの値段で売却出来ているようで、遺跡で回収した素材も報告ついでに冒険者ギルドに提出しておいたから後で詳しい明細が流れてくることだろう。

ここぞとばかりに名誉男爵の地位を出して売却させてもらっているが、それを悪用しているわけではないのでたまには許してもらいたい。

その他口頭と書面で報告を受けていると、そこに新たな人物がやって来た。

「失礼します。あ!シロウ様お帰りなさい!」

「俺がいない間に色々と動いてくれているそうじゃないか。祭りは終わったってのに助かるよ、ありがとう。」

部屋に入ってきたフレイが俺を見るなり姿勢を正して勢い良く頭を下げる。

別にそこまでかしこまらなくてもいいのだが、彼は彼なりに思う所があるんだろう。

俺としては不在の間にあれこれ動いてくれているだけで大助かりなんだが。

「フレイ様、果物の方はどうでしたか?」

「少し無茶を言いましたが、二日ほどで用意してくださるそうです。ガラスも驚いてはいましたが大急ぎで作ってくれるとの事でした。」

「そうか、そっちは何とかなりそうか。」

「でもあまり傷んでいないものも使うので値段は少し高くなってしまうそうなんですけど、大丈夫ですか?」

「大丈夫だろうけど、とりあえず明細を見せてくれ。」

急いで走り回ったのか肩で息をするフレイから走り書きのメモを貰い価格を確認。

最初よりも二割ほど値段が高くなったようだが、五割増しでも完売した実績があるのでむしろこの値段で済んだのなら十分すぎる成果だ。

グラスも緊急の依頼にも関わらず価格は据え置き、これも今までの彼の功績というやつだろう。

親しくもない人にこんな無茶を言われたら普通は断るか値段をかなり吹っ掛けられる。

つまりそうしないだけの関係が築けていたという証拠だ。

「これぐらいなら問題ない、むしろよくこの値段で出してもらえたなって感じだ。今後も期待できそうだな。」

「え、今後ですか?」

「今回の結果を踏まえてジャムの増産を考えているんだが、知っての通り俺達は旅行でここに来ている。だから別の場所でそれを作ってそれを出荷してもらえないかって考えているんだ。場所の候補はあるんだが、まだ先方の許可はもらっていない。もしそれを受け入れてもらった時には・・・フレイ、君にこの事業を任せたいと思うんだがどうだ?」

「え、え、えぇぇぇぇ!?」

うーん、なかなかフレッシュな反応だ。

元の街じゃこんな無茶ぶりが当たり前すぎてみんなハイハイ、って感じなんだもんなぁ。

若いって素晴らしい。

確か羽追い祭りであの金投げ男に勝ったら幼馴染をどうのこうのって話だったし、収入が安定するのは悪い話じゃないと思うんだが。

中々のリアクションにミラもハーシェさんもニコニコしている。

さて、どんな返事が返ってくるのやら。

「どうだ?」

「えっと、とても光栄な話ではあるんですけど・・・。」

「けど?」

「この前のお祭りであいつに目をつけられたんで、街を出ようかって話を幼馴染としているんです。あまり遠くには行くつもりはないんですけど、静かな所でのんびりできる場所でやり直すつもりなんです。」

「まぁ、金は持ってそうだったし。そうか、街を出るのか。」

「予定ですけどね、でも早いうちに決断するつもりです。なのでそれまでで良ければお手伝いさせてください!その、お金もいるので・・・。」

あははは、と笑いながらも申し訳なさそうな空気を出すフレイ。

確かにあの金投げ男めんどくさそうだったもんなぁ。

下手にちょっかいをかけ続けられるのならば、新天地で心機一転頑張るのもありだろう。

それが出来るだけの若さは十分にある。

それで断るのじゃなく、お金が欲しいからやらせてください!っていう前向きさも高評価だ。

やっぱり彼になら任せてもいい、いや彼にこそ任せたいと思う。

「わかった、ならこうしよう。街を出てやり直すって言うのならそれにぴったりな新天地を紹介させてくれ。先方には話をつけておくからもしそこが気に入ったのならばそこで俺の代わりに働いてもらいたい。仕事は今やってもらってるジャムの作製とグラススラグの瓶を指揮して、それを俺に出荷する事。といっても作製は向こうでしてもらうから材料の確保と出荷の管理がメインになるかな。出荷する商材の原価に10%乗せた分が自分の取り分だと思ってもらえばいい。ジャムの他にも酒と砂糖の仕入れもしてるからそれの出荷も管理してくれたら同じく10%乗せていいぞ。」

「アナタ、いきなり全部言ってもわかりませんよ?」

「おっと、それもそうか。とりあえず紙に書くからそこに座ってくれ、悪いようにはしないつもりだ。」

いつもの癖で一気に話をしたらハーシェさんに咎められてしまった。

反省反省。

俺の悪い癖なんだよな、思いつくまま色々言ってしまうの。

促されるまま呆然とした感じのフレイがテーブルに着く。

「あの、どうしてここまでしてくれるんですか?」

「どうしてって、任せられると思ったからだが?」

「それだけですか?僕が悪い事をするとは思わないんですか?」

「するのか?そんな事。」

「しませんけど・・・。」

「つまりそういう事だ。悪い事をしようってやつはわざわざそんなこと言わないんだよ。そうやって正直に話してくれるから俺は安心して仕事を任せられる。まぁ、多少悪い事をされても別に困らないし、それがわかったらそれ相応の罰を受けてもらうだけだしな。」

ニヤリと笑う俺を見てフレイがごくりと生唾を飲むのが見えた。

そんなにビビらなくてもそこまでしないから安心してほしい。

せいぜい損失を補填してもらうまでタダ働きしてもらうぐらいだ。

「もちろん急な事だしその幼馴染って人の意見も聞くべきだろう。俺も先方の許可は取れてないしまだまだ未知数の話ではある。が、俺は出来ると信じてる。だから考えてもらえないか?」

「・・・わかりました、明日まで時間を貰えますか?」

「いい返事を期待してる。今日の分は別に報酬を出すから後でもらって帰ってくれ。ミラ、よろしく頼む。」

「かしこまりました、フレイ様こちらへどうぞ。」

ミラに促されるようにフレイが部屋を後にする。

とりあえず言うべきことは言ったので後は本人がどうするかだけだ。

「どう思いますか?」

「さぁな、でもいい返事をもらえると思っている。」

「そうだといいですね。」

「さて、後は先方にどう言うかだ。もう少し自分の考えを煮詰めたいから付き合ってもらえるか?」

「もちろんです。」

やっぱり頭の中で考えるよりも口に出して誰かの意見を聞く方が考えがまとまる。

南方旅行もいよいよ大詰め。

ここに来るまでに色々仕入れができただけでなく、遺跡でもたくさんのレアものを発見できた。

それを転がせば一体どれだけの儲けになるんだろうか。

加えて今回の件が決まればもっと多くの儲けが出る。

楽しみすぎて子供には見せられないような笑みが浮かんでしまった。

さて、本番は明日。

本当は街に戻る日なんだけども、最後にもうひと働きするとしよう。
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