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第四階層編
34 鉄躯
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34 鉄躯
緩やかにカーブした広い階段の終わり。そこには、これまでと同じように、巨大な石造りの扉が待ち構えていた。
エルフィールを包むスライム鎧の手が、扉の中央にある鈍い光を放つ宝石にそっと触れる。
ゴゴゴゴ……。
重々しい音と共に、第四階層への扉がゆっくりと内側に向かって開いていった。
ひやりとした空気が流れ込む。それはひどく乾いていて、どこか錆びついた鉄のような匂いがした。
エルフィール:
「うわ…なんか、鉄臭い…? ここは何?」
ルルディア:
「…なんだか、嫌な雰囲気だね」
通路の壁は、くすんだ黄土色。まるで乾いた大地をそのまま切り取ってきたような、
無機質な色の石で造られている。
所々に埋め込まれた紫色の鉱石だけが、ぼんやりと妖しい光を放っていた。
カション、……カション……。
何か硬いものが、規則正しくぶつかり合うような、冷たい金属音が遠くから聞こえてくる。
なんだろう、この音。気味が悪いな…。
一行は、まず入口のすぐそばにあった「泉の間」を確認した。
中を覗き込むと、そこはいつものように男女別の絵で入り口が分かれており、見慣れた光景に少しだけほっとする。
後ろからついてきていたプリンセスが、通路の奥を覗き込み、心底つまらなそうに言った。
プリンセス:
「なーんか、変なとこね、ここ。さっきから変な音もするし」
メイドB:
「姫様、あれをご覧ください」
メイドBが指差す通路の奥。そこに、ゆっくりと動く影があった。
金属でできたゴーレムのような、あるいは、たくさんの足と車輪がついた、機械の塊。
そいつが動くたびに、カション、カション、とあの金属音が鳴っている。
ルルディア:
「……あれは…古代の機械…? 学院の資料で見たことがあります」
その分析を聞き、メイドAが一行の方に向き直って深々と頭を下げた。
メイドA:
「申し訳ございません。自動人形のようなお相手では、我々の能力は役に立ちません。
後ろからついて行くだけにさせてくださいませ」
メイドB:
「性欲処理だけでお願いします」
スライム:
「あなた方は、戦闘手段がないのですか?」
メイドA:
「はい、申し訳ありません。相手の性的な欲求を刺激することに特化しております」
スライム:
「階層主である、サキュバスプリンセスもですか?」
その問いかけに、プリンセスは得意げに胸を張った。
プリンセス:
「うん、まあ、まあ、たしかに……たしかに戦えないけど、
人差し指と中指と薬指が伸び縮みして、
絡み合ってピストン運動とか出来るわよ」
スライム:
「それが、何の役に立つと言うのですか?」
プリンセス:
「は?これ凄いんだから!もうルルディア様なんか、
よだれたらして、ひぃひぃ言っちゃっ――ぐふっ!」
ルルディアの平手が横っ面に、そしてメイドBの拳がどてっぱらに、
寸分の狂いもなく同時にめり込む。
プリンセス:
「おごげぇぇッ!?」
床をのたうち回り、涙ながらに絶叫する。
プリンセス:
「なんでアンタまで殴るのよ、メイドBぃぃぃッ!」
メイドA:
「フロアボスとは言え姫様は頭がおかしいので戦力として考えないでくださいませ」
スライム:
「仕方ありません。足手まといになる可能性が高いので、あなた方はここで待機していてください。
この階層の主との話がつけば、呼びに来ます」
プリンセス:
「えー! つまんないー!」
メイドA&B:
「承知いたしました」
カション、カション……。
黄土色の通路を進むと、前方に三体の機械兵器が姿を現した。
多脚に車輪、金属の塊でできた体に、レンズのような赤い単眼が光っている。
ガウとクゥが素早くルルディアの前に立ち、
低い姿勢で機械兵器を威嚇する。
スライムは、一歩前に進み出た。
スライム:
「止まりなさい。我々は戦闘を望んでいません」
機械兵器たちは、その言葉に反応を示さない。
スライム:
「こちらは緊急事態です。この者は正規のマスターではない。階層の主への取り次ぎを」
その呼びかけも虚しく、三体は赤い単眼を点滅させた。
次の瞬間、寸分の狂いもない完璧なタイミングで、三つの影が同時に床を蹴った。
エルフィール:
「ひぃっ! きたっ!」
ガギィィン!
正面、飛び込みからの打ち下ろしを盾が受け止める。
間髪入れず、左へと流れた二体目が、横薙ぎの斬撃。
左腕の刃がそれを受け流す、その火花の向こう側。
斬撃の死角を突き、最後の一体がスライムの背後を窺う。
その刹那――
ルルディア:
「――フロスト・アロー!」
鋭い氷の矢が、スライムさんの背後に迫る一体の関節部分を正確に撃ち抜いた。
機械兵器はバランスを崩し、ガション!と大きな音を立ててその場に転倒する。
ルルディア:
「スライムさん! 関節が弱点です!」
その声に応え、スライムは正面と側面の敵に集中する。
盾と刃で、二体の脚部の関節をガキン、ガキンと殴りつけ、破壊する。
そして、体勢を崩した二体めがけて体から触手を伸ばすと、
薙ぎ払うようにして通路の壁へと吹き飛ばした。
二体の機械兵器は、壁に叩きつけられ、火花を散らしながらよろめいている。
ルルディア:
「質量の高い攻撃で衝撃を与えてください!」
その指示に、スライムは即座に反応する。
まず狙いを定めたのは、ルルディアが転倒させた一体。
スライムは右腕を、巨大で重々しいクリスタルの槌へと変形させ、
それを力の限り振り下ろした。
ゴッ!!!
鈍い破壊音と共に、機械兵器は一撃で沈黙する。
次に、壁際でよろめいていた二体目に、盾を構えたまま突進。
強烈なシールドバッシュを叩き込み、通路のさらに奥へと吹き飛ばした。
これで、残るは一体。
正面に立ちはだかる最後の機械兵器が、刃を振りかざして襲いかかってくる。
スライムは、その突撃をひらりとかわすと、すれ違いざまに刃で脚部の関節を破壊した。
ガション、と音を立てて、機械兵器がふらつく。
その隙を逃さず、スライムは敵の体を踏み台にするように高く跳躍した。
そして、落下しながら、ふらつく一体の頭上へ、再び形成した槌を叩きつける。
最後に、先ほどシールドバッシュで吹き飛ばした、最後の一体に向き直る。
念のため、とでも言うように。
何度も、何度も、まるで機械の息の根を完全に止めるかのように、無慈悲な槌を振り下ろし続けた。
もう動かなくなった鉄の塊から、無数の部品が派手に飛び散っていた。
ぺしゃんこになった機械兵器の残骸が転がる中、一行はようやく安堵の息をついた。
しかし、スライムだけは休むことなく、エルフィールを包む鎧の形態のまま、
残骸の一つに触手を伸ばし、その構造を検分し始めた。
スライム:
「…ふむ。不可解な構造です」
ルルディア:
「衝撃を与えて内部構造を破壊するのが有効です。学院の資料にもありました」
エルフィール:
「それにしても、これ、なんなの?」
ルルディア:
「『世界の記憶』から生成された魔物。古代の兵器なんだって。
何か違う理で動く機械人形らしいよ」
エルフィール:
「ちがう、ことわり?」
ルルディア:
「うん。サンダーみたいなエネルギーで動いてるんだって…だから雷系の魔法を使うと動きが止まりやすいの」
エルフィール:
「そうなんだ?」
ルルディア:
「次は先制で雷系の魔法を試します。動きを止めますから、その隙にコアの破壊をお願いできますか?」
スライム:
「承知しました。他に、注意すべき点はありますか?」
ルルディア:
「はい。以前、他国へのダンジョン災害協力派遣で、これと同じような魔物と交戦したことがあるんです。
その戦術は、極めて厄介でした」
スライム:
「厄介、ですか」
ルルディア:
「彼らには、命を失うという恐怖がありません。
だからこそ、自己犠牲を前提とした損得抜きの攻撃を、何の躊躇もなく仕掛けてきます。
中には、仲間ごと巻き込む自爆攻撃を仕掛けてくるタイプもいました。
本当に、気をつけてください」
スライム:
「…なるほど」
ルルディア:
「そして、最大の脅威は連携です。
息の合った騎士でも、複数人で同時に違う場所を狙うのは難しい。
でも、彼らはそれを、いつでも、どの個体とでも、完璧なタイミングでやってのけるんです。
囲まれたら、まず防ぎきれません」
スライム:
「ふむ、同時攻撃ですか…わかりました。」
説明を聞き終えたエルフィールが、ふと残骸の方に視線を移す。
そこでは、警戒を解いたガウが、ぺしゃんこになった機械兵器の残骸に近づき、
くんくんと匂いを嗅いでいた。
やがて、ガウは一番大きな残骸に、がりっ、と歯を立てる。
しかし、硬い金属の装甲はびくともしない。
何度か試すうちに、ガウは諦めたように「くぅん…」と情けない声を漏らし、
その場にぺたんと座り込んでしまった。
エルフィール:
「あはは、ガウ、それは食べられないみたいだよ。硬そうだもんね」
誰も興味を示さなくなった機械兵器の残骸が、淡い光を放ち始める。
そして、まるで砂の城が崩れるように、キラキラとした光の粒子となって霧散し、
その跡には――ぽつん、と三枚の銀貨が残された。
エルフィール:
「あっ!銀貨だ!」
エルフィールが駆け寄り、落ちていた銀貨を拾い上げる。
ひんやりとした金属の感触。
これで食料の心配がまた一つ減った、と喜んだのも束の間。
通路の暗闇から、再びあの音が聞こえてきた。
カション、カション、カション……。
それは、先ほど倒した三体だけの音ではない。
もっと多く、もっと重く、統率された金属の響き。
護衛に戻っていたガウとクゥが、再び全身の毛を逆立て、暗闇に向かって唸り声を上げる。
ルルディア:
「…来ます。スライムさん、エルちゃん、備えて!数が…多い!」
顔色を変えたルルディアの隣で、エルフィールは拾い上げたばかりの銀貨を強く握りしめ、
音のする暗闇の先を、ただ見つめることしかできなかった。
緩やかにカーブした広い階段の終わり。そこには、これまでと同じように、巨大な石造りの扉が待ち構えていた。
エルフィールを包むスライム鎧の手が、扉の中央にある鈍い光を放つ宝石にそっと触れる。
ゴゴゴゴ……。
重々しい音と共に、第四階層への扉がゆっくりと内側に向かって開いていった。
ひやりとした空気が流れ込む。それはひどく乾いていて、どこか錆びついた鉄のような匂いがした。
エルフィール:
「うわ…なんか、鉄臭い…? ここは何?」
ルルディア:
「…なんだか、嫌な雰囲気だね」
通路の壁は、くすんだ黄土色。まるで乾いた大地をそのまま切り取ってきたような、
無機質な色の石で造られている。
所々に埋め込まれた紫色の鉱石だけが、ぼんやりと妖しい光を放っていた。
カション、……カション……。
何か硬いものが、規則正しくぶつかり合うような、冷たい金属音が遠くから聞こえてくる。
なんだろう、この音。気味が悪いな…。
一行は、まず入口のすぐそばにあった「泉の間」を確認した。
中を覗き込むと、そこはいつものように男女別の絵で入り口が分かれており、見慣れた光景に少しだけほっとする。
後ろからついてきていたプリンセスが、通路の奥を覗き込み、心底つまらなそうに言った。
プリンセス:
「なーんか、変なとこね、ここ。さっきから変な音もするし」
メイドB:
「姫様、あれをご覧ください」
メイドBが指差す通路の奥。そこに、ゆっくりと動く影があった。
金属でできたゴーレムのような、あるいは、たくさんの足と車輪がついた、機械の塊。
そいつが動くたびに、カション、カション、とあの金属音が鳴っている。
ルルディア:
「……あれは…古代の機械…? 学院の資料で見たことがあります」
その分析を聞き、メイドAが一行の方に向き直って深々と頭を下げた。
メイドA:
「申し訳ございません。自動人形のようなお相手では、我々の能力は役に立ちません。
後ろからついて行くだけにさせてくださいませ」
メイドB:
「性欲処理だけでお願いします」
スライム:
「あなた方は、戦闘手段がないのですか?」
メイドA:
「はい、申し訳ありません。相手の性的な欲求を刺激することに特化しております」
スライム:
「階層主である、サキュバスプリンセスもですか?」
その問いかけに、プリンセスは得意げに胸を張った。
プリンセス:
「うん、まあ、まあ、たしかに……たしかに戦えないけど、
人差し指と中指と薬指が伸び縮みして、
絡み合ってピストン運動とか出来るわよ」
スライム:
「それが、何の役に立つと言うのですか?」
プリンセス:
「は?これ凄いんだから!もうルルディア様なんか、
よだれたらして、ひぃひぃ言っちゃっ――ぐふっ!」
ルルディアの平手が横っ面に、そしてメイドBの拳がどてっぱらに、
寸分の狂いもなく同時にめり込む。
プリンセス:
「おごげぇぇッ!?」
床をのたうち回り、涙ながらに絶叫する。
プリンセス:
「なんでアンタまで殴るのよ、メイドBぃぃぃッ!」
メイドA:
「フロアボスとは言え姫様は頭がおかしいので戦力として考えないでくださいませ」
スライム:
「仕方ありません。足手まといになる可能性が高いので、あなた方はここで待機していてください。
この階層の主との話がつけば、呼びに来ます」
プリンセス:
「えー! つまんないー!」
メイドA&B:
「承知いたしました」
カション、カション……。
黄土色の通路を進むと、前方に三体の機械兵器が姿を現した。
多脚に車輪、金属の塊でできた体に、レンズのような赤い単眼が光っている。
ガウとクゥが素早くルルディアの前に立ち、
低い姿勢で機械兵器を威嚇する。
スライムは、一歩前に進み出た。
スライム:
「止まりなさい。我々は戦闘を望んでいません」
機械兵器たちは、その言葉に反応を示さない。
スライム:
「こちらは緊急事態です。この者は正規のマスターではない。階層の主への取り次ぎを」
その呼びかけも虚しく、三体は赤い単眼を点滅させた。
次の瞬間、寸分の狂いもない完璧なタイミングで、三つの影が同時に床を蹴った。
エルフィール:
「ひぃっ! きたっ!」
ガギィィン!
正面、飛び込みからの打ち下ろしを盾が受け止める。
間髪入れず、左へと流れた二体目が、横薙ぎの斬撃。
左腕の刃がそれを受け流す、その火花の向こう側。
斬撃の死角を突き、最後の一体がスライムの背後を窺う。
その刹那――
ルルディア:
「――フロスト・アロー!」
鋭い氷の矢が、スライムさんの背後に迫る一体の関節部分を正確に撃ち抜いた。
機械兵器はバランスを崩し、ガション!と大きな音を立ててその場に転倒する。
ルルディア:
「スライムさん! 関節が弱点です!」
その声に応え、スライムは正面と側面の敵に集中する。
盾と刃で、二体の脚部の関節をガキン、ガキンと殴りつけ、破壊する。
そして、体勢を崩した二体めがけて体から触手を伸ばすと、
薙ぎ払うようにして通路の壁へと吹き飛ばした。
二体の機械兵器は、壁に叩きつけられ、火花を散らしながらよろめいている。
ルルディア:
「質量の高い攻撃で衝撃を与えてください!」
その指示に、スライムは即座に反応する。
まず狙いを定めたのは、ルルディアが転倒させた一体。
スライムは右腕を、巨大で重々しいクリスタルの槌へと変形させ、
それを力の限り振り下ろした。
ゴッ!!!
鈍い破壊音と共に、機械兵器は一撃で沈黙する。
次に、壁際でよろめいていた二体目に、盾を構えたまま突進。
強烈なシールドバッシュを叩き込み、通路のさらに奥へと吹き飛ばした。
これで、残るは一体。
正面に立ちはだかる最後の機械兵器が、刃を振りかざして襲いかかってくる。
スライムは、その突撃をひらりとかわすと、すれ違いざまに刃で脚部の関節を破壊した。
ガション、と音を立てて、機械兵器がふらつく。
その隙を逃さず、スライムは敵の体を踏み台にするように高く跳躍した。
そして、落下しながら、ふらつく一体の頭上へ、再び形成した槌を叩きつける。
最後に、先ほどシールドバッシュで吹き飛ばした、最後の一体に向き直る。
念のため、とでも言うように。
何度も、何度も、まるで機械の息の根を完全に止めるかのように、無慈悲な槌を振り下ろし続けた。
もう動かなくなった鉄の塊から、無数の部品が派手に飛び散っていた。
ぺしゃんこになった機械兵器の残骸が転がる中、一行はようやく安堵の息をついた。
しかし、スライムだけは休むことなく、エルフィールを包む鎧の形態のまま、
残骸の一つに触手を伸ばし、その構造を検分し始めた。
スライム:
「…ふむ。不可解な構造です」
ルルディア:
「衝撃を与えて内部構造を破壊するのが有効です。学院の資料にもありました」
エルフィール:
「それにしても、これ、なんなの?」
ルルディア:
「『世界の記憶』から生成された魔物。古代の兵器なんだって。
何か違う理で動く機械人形らしいよ」
エルフィール:
「ちがう、ことわり?」
ルルディア:
「うん。サンダーみたいなエネルギーで動いてるんだって…だから雷系の魔法を使うと動きが止まりやすいの」
エルフィール:
「そうなんだ?」
ルルディア:
「次は先制で雷系の魔法を試します。動きを止めますから、その隙にコアの破壊をお願いできますか?」
スライム:
「承知しました。他に、注意すべき点はありますか?」
ルルディア:
「はい。以前、他国へのダンジョン災害協力派遣で、これと同じような魔物と交戦したことがあるんです。
その戦術は、極めて厄介でした」
スライム:
「厄介、ですか」
ルルディア:
「彼らには、命を失うという恐怖がありません。
だからこそ、自己犠牲を前提とした損得抜きの攻撃を、何の躊躇もなく仕掛けてきます。
中には、仲間ごと巻き込む自爆攻撃を仕掛けてくるタイプもいました。
本当に、気をつけてください」
スライム:
「…なるほど」
ルルディア:
「そして、最大の脅威は連携です。
息の合った騎士でも、複数人で同時に違う場所を狙うのは難しい。
でも、彼らはそれを、いつでも、どの個体とでも、完璧なタイミングでやってのけるんです。
囲まれたら、まず防ぎきれません」
スライム:
「ふむ、同時攻撃ですか…わかりました。」
説明を聞き終えたエルフィールが、ふと残骸の方に視線を移す。
そこでは、警戒を解いたガウが、ぺしゃんこになった機械兵器の残骸に近づき、
くんくんと匂いを嗅いでいた。
やがて、ガウは一番大きな残骸に、がりっ、と歯を立てる。
しかし、硬い金属の装甲はびくともしない。
何度か試すうちに、ガウは諦めたように「くぅん…」と情けない声を漏らし、
その場にぺたんと座り込んでしまった。
エルフィール:
「あはは、ガウ、それは食べられないみたいだよ。硬そうだもんね」
誰も興味を示さなくなった機械兵器の残骸が、淡い光を放ち始める。
そして、まるで砂の城が崩れるように、キラキラとした光の粒子となって霧散し、
その跡には――ぽつん、と三枚の銀貨が残された。
エルフィール:
「あっ!銀貨だ!」
エルフィールが駆け寄り、落ちていた銀貨を拾い上げる。
ひんやりとした金属の感触。
これで食料の心配がまた一つ減った、と喜んだのも束の間。
通路の暗闇から、再びあの音が聞こえてきた。
カション、カション、カション……。
それは、先ほど倒した三体だけの音ではない。
もっと多く、もっと重く、統率された金属の響き。
護衛に戻っていたガウとクゥが、再び全身の毛を逆立て、暗闇に向かって唸り声を上げる。
ルルディア:
「…来ます。スライムさん、エルちゃん、備えて!数が…多い!」
顔色を変えたルルディアの隣で、エルフィールは拾い上げたばかりの銀貨を強く握りしめ、
音のする暗闇の先を、ただ見つめることしかできなかった。
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