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国内編
第四話 潜む影
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傾木先生の説明が終わると今日はこれで解散とのこと。
説明を受けたうえで校舎内を見学するのもよし。ワンコインで食べられる食堂を利用するのもよし。閉館時間までこのまま教室に残って友達と雑談をするのもよし。
私は荷物を持ってそのまま直帰する選択を取ることにした。
「おや、もう帰るのかい?」
ゼロに声を掛けられる。
「人と馴れ合う暇なんてない。友達だっていらないし。帰って修行しないと」
「意外と冷たいんだね。君はそういうのを好む性格かと思ったけど」
「気が変わったのよ」
「ふーん。ところでさ、今から家に帰るんだよね?」
「それがなに?」
「ワタシのことを家に泊めてくれない?」
「はぁ?」
「ダメ?」
目をうるうるとし、ぶりっ子アピールしながら懇願してくるゼロ。
まるで捨てられたペットが拾ってくださいとお願いをしているかのよう。
「絶対に嫌」
しかしアリスの冷たい眼差しに色が変化することはなかった。
「そこをなんとかさ。ね? お願い」
「他を当たって」
「それが難しいからアリスに頼んでいるんじゃないか。隣の席同士だしさ・お願いっ」
「どういう理屈よ! 嫌って言っているでしょ! 他がダメなら野宿でもすれば!? これ以上私に話しかけないでッ!」
有無を言わせずにズカズカと教室から出て行くアリス。
「あちゃ~。やっぱりダメかぁ」
「ねぇねぇアリスって人ちょっと怖くない?」
「ホントそれ。いきなり先生に突っかかるしマジでヒヤヒヤした」
「アリスってあの伝説の勇者の娘なんでしょ? 見かけによらず案外弱そうだよね。性格も子供っぽいし。あれで本当に戦えるのかな?」
「伝説の勇者の娘ってだけで調子に乗っているだけでしょ。温室育ちな子供はあれだから困るよねぇ~」
アリスの姿が完全に消えたところで、各々が心に想っていた愚痴や不満を撒き散らかす。
基本人に興味がないゼロでも現時点で周りから見たアリスへの評価は悪いことぐらいはすぐに分かった。
(文句があるなら直接言えばいいのに)
ゼロは教室内から見える雲の広がった青空をボーッと眺める。
特にすることがないゼロは肘を立て、顎を乗せた。
(さーて、これからどうしよっかな~♪)
★
「はぁ……はぁ……」
17時。
林の中で修行をしていたアリスは日が沈み始める頃を基準に帰る支度に取り掛かる。
「……全然だめだ」
試験管のアレックスに言われたセリフを思い返す。
『君の能力はまだ浅い。いくつかの形態に変えて能力を使えるのは評価ポイントだが、中身が薄っぺらい。『気』がしっかりと込められていないから容易く防がれる。それとも体力に自信がなくて『気』を使うことをためらっていたのかな?』
「っ」
初めはそんなことはないと思っていた。
ただアレックスの力が人間離れしているだけで自分の能力に問題があるわけじゃないって。
『気』だって最初から使っていた。それも結構な量を。
おかげで体力の消耗による疲労感に襲われかけていたが、それも体力がないからと言われたらそれまでだ。
あのときアレックスが隙を見せることがなかったら、アリスは確実に不合格だっただろう。
「そういえば、あのとき何があったんだろう?」
悲鳴はゼロのいる部屋から聞こえてきた。
ゼロのいた部屋は7番。
8番の部屋から聞こえてきた可能性も捨てきれないが、声量や響きからして隣で起こったものだと推測できる。
合格と言い渡されたそのあと部屋の前をさりげなく通ってみたけど部屋は閉ざされたままで中を確認することができなかった。
唯一近しい人物でそのときの状況を証言してくれるのはゼロだけ。
頭の片隅では気になって消化しきれていないこの疑問を解消したい気持ちでくすぶるばかりだが、相手も相手だ。
母親を殺したあの悪魔神に話しかけてまで聞くことじゃない。
聞いたからといって何か得られるわけでもない。
であるなら、時間が解決してくれることを待てばいいだけ。
そう自己解決させ、無理やり気持ちを整理させた。
「帰って早く夕ご飯を作らなきゃ」
「やぁ」
「きゃああああああ!? ゼ、ゼロ!?」
突然木陰からひょいっと前に現れたものだから思わず尻餅ついてしまう。
「そんなに驚かなくたっていいじゃないか」
「いきなり現れたら誰だってびっくりするわよ! しかもなんであんたがこんなところにいるのよ!」
「暇だったからアリスを探しに来たんだよ。近くを歩いていたら『気』を感じから来てみれば君がいたのさ」
「っ!」
「こんなところで修行をしているだね。確かにここは人もいないし一人で修行をするにはもってこいだね」
「……いつからここにいたの?」
「30分前ぐらいかな。来てそんなに経ってないよ」
「逆に言えば、30分間私の修行を見ていたってこと?」
「そうだね♪」
「そうだね、じゃないわよ! 何コソコソ隠れて見ているわけ!? 来てるなら一言声をかけなさいよ! 恥ずかしいじゃない!」
「いや~アリスの修行の邪魔をしちゃいけないなと思って。それに君が言ったんじゃないか。話しかけるなって」
「あっ……」
「どうしたい? そんな悲しそうな顔をして」
「いや、なんでもない。じゃあ私、帰るから」
「アリス」
「何よ」
「これから夕食を作るんだって?」
「それが何?」
「ワタシの分も作って♡」
「誰があんたの分なんかっ…………そういえば、住む当ては見つかったの?」
「それが見つかってないんだよ~」
トホホと落ち込むゼロ。
するとお腹までもが鳴りはじめる。
「……1時間だけ」
「ん?」
「1時間だけ、特別に招いてあげるわ。夕食付きでね」
「……いいのかい?」
「教室でペンダントを取り返してくれたでしょ? それのお礼よ」
「それは嬉しいね♪ ありがとう、アリス」
「でも勘違いはしないでね。私はあんたを許したわけじゃない」
「はいはい♪」
前を歩いていくアリスの後をゼロは付いて行った。
★
歩いて15分が経過し、住宅街に突入。
ある一軒家の前で歩いていたアリスの足が止まる。
「ここが私の家よ」
「わ~お。随分と立派なお家じゃないか」
入り口から家全体まで完全なログハウス。
犬が自由に走り回れるほどの広々とした庭に、大人数でバーベキューが楽しめそうなバルコニー。
一番の衝撃は住宅街に並ぶ他の家に比べると、アリスの家はその2倍以上大きいということだろう。
「私の家といってもママが所有者の家だけどね」
「ああなるほど」
アリスに意識が持ってかれ、てっきりアリスが購入したものかと思ったけど全部アリアの財産によるものだったか。
「さ、入るわよ。くれぐれも大人しくするようにね」
「分かってるよ♪」
アリスが玄関ドアを開け、靴を脱いで中へ上がる。
ゼロもそれに習う。
リビングもやはりとは思っていたがイメージは的中。
サンタクロースが出入りしそうな暖炉。ハワイで見かける天井から吊るされたハンモック。
高級の毛皮や材質で作られていそうなソファにテーブルと椅子。
部屋の全体が落ち着いた内装に仕上げられ統一感もバッチリ。
部屋全体が自然で造り上げられた空間は体と心に安らぎを与え緊張をほぐし、ホッと落ち着かせてくれる。
「素晴らしい。こんな立派な家に住んでいたなんて」
「褒めるならママを褒めて。全てはママの財力によるものだから」
「うん。でもここまで綺麗に保たれているってことはアリスが普段から綺麗にしているからでしょ?」
「それは綺麗にするわよ。不潔なのは嫌だから」
「じゃあアリスも褒められるべきじゃないか。今こうして綺麗なのはアリスのおかげってことだし」
「……そうかもね」
アリスは、アリアが1ヶ月以上家に帰ってきていないと言っていた。
であるならば、少なくとも家の清潔さが保たれているのは言うまでもなくアリスの日頃の行いによるもの。
褒められる資格があるのは当然だ。
「とりあえずそこのソファに座ってて。今からカレーを作るから」
「カレーか。いいね♪」
「食べられないものとかある?」
「特にない」
「そ」
キッチンの前に立ち、エプロンを付け始めるアリス。
事前に研いておいたお米に水を張り、炊飯釜のスイッチをオンにする。
そしてまな板と包丁を用意。
じゃがいも、にんじん、玉ねぎなどの下処理を始める。
手際よく皮を剥き、一口サイズにカット。
トントントンとリズムカルに音を立てながらカットしていく姿は様になっている。
「随分と慣れているんだね」
「幼い頃から料理はしていたからね。今になってもママの代わりに私が料理を作っていたし」
「へ~、そうなんだ。アリアは料理できるの?」
「家庭料理は一通りできていたわ。卵焼きに肉じゃが、それこそカレーとかね。あと味噌汁に唐揚げなんかも作っていたわね」
「ごめん。知らない料理を連発されて頭がこんがらがっちゃった。卵焼きに肉じゃが? あと味噌汁と唐揚げってなに?」
「あんた本気で言っているの!? カレーを知っていてなんで他の料理を知らないのよ」
「ワタシは元々異国に住んでいたからね。普段の食事といえばモンスターに人肉さ。カレーを知っているのはある日味に飽きて、ルーを人から恵んでもらったことがきっかけなんだ」
「ちょっと待って。今……人肉って言った?」
「言ったよ?」
「……あんた、人を殺していたのね。それも食料にして」
「何か問題でも?」
「あるに決まっているでしょ! 人を殺して食べるなんて、あんたやっぱり悪魔だ! 正気じゃないッ!」
「そう? 肉をたべたいと思うのは生物なら普通のことだと思うよ。君たち人間だって豚肉とか食べるだろ?」
「それはそうだけど……人の肉は違うでしょ!」
「君たち人間が豚肉を食べるようにワタシも人肉を食べているだけ。やっていることは同じなのにどうして人肉だけはダメなんだい?」
「っ」
「分かっているさ。同じ人間だからでしょ? 共食いをしたくないのは生物として当たり前のこと。ワタシだって悪魔神の肉を食べる気になるかといったら答えはノーだ」
アリスは険しい表情を浮かべながらも料理を進める。
「それに誤解をしないで欲しいから言っておくけど、ワタシだって片っ端から人を殺して肉を食べていたわけじゃない。その犠牲のほとんどはワタシに喧嘩を売ってきた野蛮人であって、あくまでも返り討ちの延長さ」
「ほとんどってことは、数名は意図的に殺したってこと?」
「生きるためには仕方がなかった。あのときはワタシも必死だったからね」
「…………」
アリスは何も答えない。
下処理が終わった野菜をボールに入れる。
次に油を熱した深鍋でコマ切れの牛肉を炒め始めた。
「あんたはあんたで苦労していたのね」
「ああ。アリアを殺すことだけを目標に自分を追い込む毎日だったからね。アリスには申し訳ないけど、そのおかげで今のワタシがいる」
「っ」
キッと睨みつけるアリスに対し、ゼロは臆ともせず平然としていた。
ボールに移していた野菜も一緒に炒め始める。
「私は心のどこかで、あんたは嘘をついていると信じたかった……」
母親を殺したと口にしても、自らの目で死体を確認したわけじゃない。
ただ自分を挑発に乗せるための口車だと思いたかった。
最初に殺したと言われたときは思わず熱くなっちゃったけど、冷静になってその可能性があることに希望を持ち始めた。
「でも、あんたのその感じだと、あんたは本当にママを殺したんだよね」
「ああ。正真正銘ワタシが殺した。嘘でも冗談でもない。事実だ」
炒めていた鍋に水を張り、蓋をする。
あとは水を沸騰させ、アクを取り、ルーが完全に溶ければ完成。
そこまでの数十分の間、二人の間に会話が交わされることはなかった。
出来立てのカレーとご飯が出来上がる。
アリスは一人分のカレー皿によそい、福神漬けを添えてスプーンと共にテーブルまで運ぶ。
「できたわ。冷めないうちに食べなさい」
「お~!」
鼻を突き抜けるスパイシーな香り。
ほかほかの湯気に隠れたツヤツヤのご飯。
二つの香りが、ゼロの空腹と唾液の分泌量を加速させる。
「あれ? アリスは食べないの?」
「後で食べる」
「そうかい。じゃあお先に失礼するよ」
スプーンを手にし、食事にかかろうとしたとき。
「待って。食事をする前には両手を合わせていただきますをしなさい」
「なんで?」
「世の中には食べられない人だっているの。それに命だって頂いている。だからこうして両手を合わせて、感謝の言葉を告げる。それが食事のマナーなのよ」
「なるほど。感謝ね」
ゼロは文句一つ垂れることなく、アリスの言われた通りに両手を合わせる。
「いただきます。これでいい?」
「ええ。どうぞ召し上がれ」
今度こそスプーンでご飯とカレーをすくい、口に入れる。
「っ! ……な、なんだこの美味さは……」
続けて二口目。
あまりの美味しさに目を開き、スプーンの手が止まってしまう。
「これ、本当にカレーなのかい? ワタシの食べたカレーとは比べ物にならない美味しさなんだけど……」
「大袈裟ね。大した材料も使ってないし、ルーだってスーパーに売られているものよ。レシピ通りに作れば誰だって作れるわ」
「ワタシのときは若干臭みがあったんだけどね」
「それ、多分単に下処理をしていないからよ。血抜きをしてお酒やハーブに漬け込めば臭みは取り除けるわ」
臭みの種類にもよるが、大体はこの辺で解消できる。
「な、なるほど。下処理するだけでこんなにも違うのか」
その後ゼロは無言でカレーをかき込むように食べ、あっという間にぺろっと完食をしてしまう。
「ありがとう、アリス。とても美味しかったよ」
「そ。あと食事のマナーだけど、食べ終わったあとは両手を合わせて今度はごちそうさまっていうの」
「ごちそうさま」
「そう。これから食事をするときはこのぐらいのマナーを守りなさいよ。じゃないと次からは食べさせないからね」
「また食べにきてもいいの?」
「ち、違う! そういう意味で言ったんじゃない!」
「じゃあどういう意味?」
「うるさい! 食べ終わったならさっさと出て行って!」
「1時間まであと10分ほどあるんだけど」
「~~! ……じゃあ、ちょっと聞いてもいいかしら?」
「いいよ。なんでも聞いて」
「試験のとき、あんたの部屋の方から悲鳴が聞こえたんだけど、あれってあんたの仕業?」
「ああ、あれか。うん、多分合ってるよ♪」
「……あの部屋で何が合ったの?」
「大したことじゃない。ただ相手が死んだだけ」
「!? 相手ってまさか、試験管のこと!?」
「そうだけど」
(……あの試験管を殺した!? 嘘でしょ!? あのアレックスほどの実力者を!?)
攻撃が一切通用せず、絶望を感じさせられたあの試験管レベルを殺すなど信じられる話ではない。
だが、この悪魔神……もといゼロなら話は別か。
勇者育成機関の創立の根源は悪魔神と戦えるほどの人材育成を目的としている。
アリアに選抜された運営側のトップクラスであれば太刀打ちできる実力者。
しかし試験管として選ばれたものたちはトップクラスより下に位置付けられる。
そんな人たちが悪魔神の相手になるはずがないことは明白。
アリスが合格したあと後ろからゼロは現れた。
そこから察するに、前半は弄んで制限時間ギリギリのところで殺したという線が妥当か。
ことの詳細についてアリスは追求することはしない。
気分が害するだけのことは目に見えているし、この後の食事にも影響が出てしまうから。
「答えてくれてありがとう。おかげでスッキリした」
「お礼を言われることはしてないと思うんだけどね」
「ついでに聞きたいんだけど、あなたの能力ってなんなの?」
せっかくの機会なので聞いてみる。
いずれ殺す必要がある悪魔神だ。
ここで能力を把握しておくことは特になる。
「ひ・み・つ♡」
ゼロは明かさない。
色っぽく口元に人差し指を当て、ウィンクを決めるゼロ。
人をおちょくった態度にイラッとするものの、アリスはすぐに気を沈める。
(まぁいい。いずれ分かることだろうし)
勇者育成機関で過ごしていれば能力を披露する機会はあるはず。
そのときに見させてもらえば問題ない。
「そろそろ1時間ね。もう帰る用意して」
「ついでに今晩だけでも泊めてもらうのは」
「ダメよ」
「だよねー」
ほんの少しでも可能性があるならと思ってみたが予想通りの結果に。
それでも1時間だけでも家に招いてもらえたのと、食事までごちそうになれたのだから御の字とも言える。
アリスの住んでいる場所も知ることができたのも大きい。
アリスは玄関先までゼロを見送る。
靴を履き終えたゼロは改めてアリスにお礼を告げた。
「今日は本当にありがとね♪ カレーもごちそうしてくれて」
「別にお礼はいいわ。これが最初で最後の私からのおもてなしだから」
「え~、またおもてなししてよ~」
「今回はあくまでもペンダントを取り返してくれたお礼。あなたは自分が何の罪を犯したのか一生忘れないことね」
「ふふっ」
「さ、もう帰って。明日も朝早いんだから」
「分かったよ。じゃあまた明日ね♪」
笑顔で手を振りながら家を出たゼロに対し、アリスは無言で見つめる。
リビングに戻り、カーテンの隙間からゼロが立ち去ったかどうかを確認。
ゼロは軽い足取りで確かにこの住宅街から去って行った。
「私も早く食べよ」
料理は出来立てが一番。
ゼロと同じようにご飯とカレーをよそい、テーブルまで運んで行く。
「いただきます」
椅子に座り両手を合わせたあと、アリスは一口目を口に入れた。
「今日のカレー、いつもより美味しい」
普段と同じ材料、同じ作り方なのにいつもより美味しく感じたカレーに、不思議に思うアリスだった。
★
日本のとある地下室。
冷たいコンクリートの壁で覆われた閉塞感のある空間。
中心部分には会議用で使われる長テーブルに、その周りに背もたれの長い椅子が7つ置かれている。
今この場では上座を除く、計4名による会議が行われていた。
「皆さん、お集まり頂き、ありがとうございます。本日皆さんをお呼びしたのは勇者育成機関の入学試験、その合格者リストが届いたためお知らせするためです」
手元に持っていた7枚の紙のうち、3枚を他のみんなに配り始める少女。
艶のあるさらさらとした銀髪をツーサイドアップに仕上げた可愛らしい姿とは裏腹に、キリッとした顔つきには凛々しさもあった。
「毎年定例で行われていることなので細かい説明は省きますが、情報によれば今年も優れた功績を持つ合格者が現れたそうです」
「えー、また~? 毎年毎年よくこうも現れるものだね」
「それだけ世界は広いってことだよ。今年は不合格の人でも来年は分からない。スキルや才能は突然目覚めることだってあるしね」
「そうかもだけどさぁ……」
「お前たち、無駄話はそこまでにしろ。アリルが困っている」
「あ、ごめん……」
「いえいえ。お気持ちは分かりますので。では話を続けさせて頂きます」
全員が無言で頷く。
「手元のリスト通り、今回の合格者数は全部で33人。そして今回、そのなかでも注目すべきなのは2名。一人目は『ゼロ』。二人目が『アリス・マーガレット』という方です」
「アリス・マーガレットって……アリルとほぼ一緒の名前じゃん!」
「ああ。名前からしても日本人ではないな。単に外国人か、それともアリルと同じ異国出身か」
「それに、顔もどことなく似ている」
顔写真付きの合格者リストを見て、全員がアリルとアリスを交互に見比べる。
「私も最初は似ていると思いましたが恐らく偶然でしょう。世の中には自分と同じ顔の人が2~3人いると言いますし」
「だとしても名前までも似ているってすごくない!? どんな確率よ」
「確かに。もしかして生き別れの姉妹だったりして」
「もう冗談はよしてください。私は確かに父子家庭で育ってきましたが、お父様からはたったひとりの娘だと言われているんですから」
「じゃあ隠し子だ」
「流くん? そろそろ怒りますよ?」
「ごめんなさい……」
アリルがジト目を向けると流はすぐに頭を下げた。
「この際だから言っておきますが、仮にこのアリスという方が何かしら私と縁がある方だったとしても気に病む必要はありません。彼女は勇者育成機関に所属するもの。即ち敵であることに変わりはないのですから」
「分かった。アリルがそこまで言うならもう何も言わない」
他の二人も頷く。
「ありがとうございます。それでターゲットの処置についてですが、今回は『アリス・マーガレット』のみに絞ってください」
「なんで? ターゲットは全員が対象だろ?」
「はい、その通りです。今までは与えられた情報を元にすぐに片付けられる方たちでしたが、今回のおふたりに限っては例年稀に見る特殊な方たちのようなんです」
「特殊?」
「まずアリス・マーガレット。彼女は体術と能力、共に秘めているポテンシャルは高いものの、現時点での総合力は私たちが気に掛ける必要は一切ないレベルだそうです」
「おかしな話だな。そんな奴がターゲットに選ばれるということはそれなりの理由があるのだろう?」
「はい。ここからは落ち着いて聞いてください。どうやら彼女はあの伝説の勇者アリア・マーガレットの娘さんのようです」
「「「!!」」」
アリル以外の全員が目を見開く。
「うっそ……。あの伝説の勇者の……ていうか子供いたんだ!」
「確かに、それは特殊だな。実態は知らないけどポテンシャルを秘めているというのも納得できる」
「だが現時点では気に掛ける必要はないと言っていた。つまり花が咲く前に芽を摘むということだな?」
「その通りです。流くんが仰っていたようにいつスキルや才能に目覚めるかも分かりません。脅威に備え、早めに芽を摘んでおいた方がいいでしょう」
「だが現時点で脅威じゃないなら焦る必要はなさそうだな」
「ですが、問題はもうひとりです……」
ここで初めてアリルは雲行きを怪しくする。
「このゼロという方ですが、どうやら試験管を殺してしまうほどの実力者のようです」
「なにっ? 確か試験管は機関のなかでもトップクラスの実力者のはず。そんな人が受験者に殺されるなんてあり得るのか!?」
「そうよ! だとしたらそいつ、相当強いということになるよ!?」
「仮にそのゼロという奴が試験管と同レベルならまだしも、それ以上の実力者だったらいくら俺たちでも一筋縄ではいかない。ここは慎重になって情報を探るのが先決だろう」
「はい。なので今回はゼロを相手にすることはひとまず避け、対象をアリスのみに絞りたいと思います」
「それならこっちがやられる心配はなさそうだね」
「安心している場合じゃないぞ、杏里。そのゼロっていう奴が勇者育成機関に所属している限り、いずれ誰かが戦わないといけないわけだからな」
「わ、分かってるよ……!」
「それと杏里。アリスさんに関してですが、あなたに任せてもよろしいですか?」
「えぇ! なんで私!?」
「今回はアリスさんの処置に加え、+αゼロさんの探りにも注力して頂きたいのです。このなかで隠密行動に適しているのは杏里、あなたですから」
「意外と陰も薄いしな」
「うっさい!」
杏里からチョップを喰らう流の頭にたんこぶが出来上がる。
「んもぉ、しょうがないんだから。分かったわ」
「ありがとうございます」
杏里に頭を下げるアリル。
「報告はこれで以上となります。今回もラーレ様に代わり私がこの場を仕切らせて頂きました。皆さん、貴重なお時間とご協力のほどありがとうございます」
アリルが改めて深々と頭を下げると、他のみんなも軽く頭を下げた。
「アリル、ラーレ様は今どこに?」
「いつもの教会にいますよ。今日も人々の平和のために神に祈りを捧げないとのことです」
「そうか。たまには会議に参加して情報を共有してもらいたいのだが、それは難しそうか」
「はい。神への祈りに時間を注げば注ぐほどその想いは揺るぎの無い確かのものとなり、神はその願いを必ず叶えてくれるとのことですから。そのためにも今は会議に参加する時間も惜しいとのことです」
「まぁあとでまとめてお伝えすればいいのだろうが、どうも疎外しているような気がしてちょっとな」
「今はそっとしておきましょう。それがラーレ様への最高の気遣いだと思います。私たちがこうして生きているのもラーレ様の祈りがあってこそだと思いますので」
「ああ。そうだな。ラーレ様のためにも、いや、人類のためにも必ず叶えてみせよう」
「はい、もちろんです」
勇者育成機関の滅びこそ平和への第一歩。
国など当てにならない。
階級社会によるこの国は上級国民だけが優遇され続け、その貧困差は年々に増して酷いものとなっている。
仕事で得た給料から税金は約3割ほど国に吸い取られ、政府のカモとなっている。
貧困者はさらに貧困していき、生きる希望を見失ったものは自殺者で溢れかえり加速が止まることはない。
政府は、国は、いつだって口先だけだ。
国民のため、子供達のため、将来のためだと正義感ぶって何かと口にするが、実際は綺麗事を並べているだけの偽善者。
国民が苦しんでいる現状に目も向けず、自分たちが良ければそれでいいと物語っているだけの詐欺師。
ここ数年と国の経済は回復するどころか、徐々に悪化している。
経済だけではない。
十分な所得を得られないことによる不安が重なり、今は能力を使った犯罪件数も大幅に増え、街の治安も悪くなっている。
国民たちも我慢の限界に来ているのだろう。
このまま好き勝手にやらせたらまずい。
政府が動く気がないのなら、自分たちが動くしかない。
この腐った国には革命を起こす必要がある。
綺麗事を並べるだけなら奴らと同じだ。そこには行動で証明する必要がある。
腐った世の中を一蹴し、国を再構築する何かを。
弱者にも確かな生きる希望を持たせ、手を差し伸べられる世の中にする。そのために必要なのは––––––。
政府全員の抹殺。そしてその席を自分たちが乗っ取ること。
そのために手っ取り早いのが能力による制圧だ。
財力で革命は起こせないが能力では革命を起こせる。それおほどの力を自分たちは持っている。
そのためには能力による犯罪を取り締まる専門機関『防衛隊』と、悪魔神への対抗策として勇者の人材を作り出す『勇者育成機関』が邪魔だ。
まずは焦らず、確実に人数を減らしていく必要がある。
その手始めとして、比較的力が劣る防衛隊から進めるとしよう。
もちろん勇者育成機関の監視も怠らない。
(必ず叶えて見せる!)
それがラーレ様率いる、私たち『異教徒』の託された使命なのだから。
説明を受けたうえで校舎内を見学するのもよし。ワンコインで食べられる食堂を利用するのもよし。閉館時間までこのまま教室に残って友達と雑談をするのもよし。
私は荷物を持ってそのまま直帰する選択を取ることにした。
「おや、もう帰るのかい?」
ゼロに声を掛けられる。
「人と馴れ合う暇なんてない。友達だっていらないし。帰って修行しないと」
「意外と冷たいんだね。君はそういうのを好む性格かと思ったけど」
「気が変わったのよ」
「ふーん。ところでさ、今から家に帰るんだよね?」
「それがなに?」
「ワタシのことを家に泊めてくれない?」
「はぁ?」
「ダメ?」
目をうるうるとし、ぶりっ子アピールしながら懇願してくるゼロ。
まるで捨てられたペットが拾ってくださいとお願いをしているかのよう。
「絶対に嫌」
しかしアリスの冷たい眼差しに色が変化することはなかった。
「そこをなんとかさ。ね? お願い」
「他を当たって」
「それが難しいからアリスに頼んでいるんじゃないか。隣の席同士だしさ・お願いっ」
「どういう理屈よ! 嫌って言っているでしょ! 他がダメなら野宿でもすれば!? これ以上私に話しかけないでッ!」
有無を言わせずにズカズカと教室から出て行くアリス。
「あちゃ~。やっぱりダメかぁ」
「ねぇねぇアリスって人ちょっと怖くない?」
「ホントそれ。いきなり先生に突っかかるしマジでヒヤヒヤした」
「アリスってあの伝説の勇者の娘なんでしょ? 見かけによらず案外弱そうだよね。性格も子供っぽいし。あれで本当に戦えるのかな?」
「伝説の勇者の娘ってだけで調子に乗っているだけでしょ。温室育ちな子供はあれだから困るよねぇ~」
アリスの姿が完全に消えたところで、各々が心に想っていた愚痴や不満を撒き散らかす。
基本人に興味がないゼロでも現時点で周りから見たアリスへの評価は悪いことぐらいはすぐに分かった。
(文句があるなら直接言えばいいのに)
ゼロは教室内から見える雲の広がった青空をボーッと眺める。
特にすることがないゼロは肘を立て、顎を乗せた。
(さーて、これからどうしよっかな~♪)
★
「はぁ……はぁ……」
17時。
林の中で修行をしていたアリスは日が沈み始める頃を基準に帰る支度に取り掛かる。
「……全然だめだ」
試験管のアレックスに言われたセリフを思い返す。
『君の能力はまだ浅い。いくつかの形態に変えて能力を使えるのは評価ポイントだが、中身が薄っぺらい。『気』がしっかりと込められていないから容易く防がれる。それとも体力に自信がなくて『気』を使うことをためらっていたのかな?』
「っ」
初めはそんなことはないと思っていた。
ただアレックスの力が人間離れしているだけで自分の能力に問題があるわけじゃないって。
『気』だって最初から使っていた。それも結構な量を。
おかげで体力の消耗による疲労感に襲われかけていたが、それも体力がないからと言われたらそれまでだ。
あのときアレックスが隙を見せることがなかったら、アリスは確実に不合格だっただろう。
「そういえば、あのとき何があったんだろう?」
悲鳴はゼロのいる部屋から聞こえてきた。
ゼロのいた部屋は7番。
8番の部屋から聞こえてきた可能性も捨てきれないが、声量や響きからして隣で起こったものだと推測できる。
合格と言い渡されたそのあと部屋の前をさりげなく通ってみたけど部屋は閉ざされたままで中を確認することができなかった。
唯一近しい人物でそのときの状況を証言してくれるのはゼロだけ。
頭の片隅では気になって消化しきれていないこの疑問を解消したい気持ちでくすぶるばかりだが、相手も相手だ。
母親を殺したあの悪魔神に話しかけてまで聞くことじゃない。
聞いたからといって何か得られるわけでもない。
であるなら、時間が解決してくれることを待てばいいだけ。
そう自己解決させ、無理やり気持ちを整理させた。
「帰って早く夕ご飯を作らなきゃ」
「やぁ」
「きゃああああああ!? ゼ、ゼロ!?」
突然木陰からひょいっと前に現れたものだから思わず尻餅ついてしまう。
「そんなに驚かなくたっていいじゃないか」
「いきなり現れたら誰だってびっくりするわよ! しかもなんであんたがこんなところにいるのよ!」
「暇だったからアリスを探しに来たんだよ。近くを歩いていたら『気』を感じから来てみれば君がいたのさ」
「っ!」
「こんなところで修行をしているだね。確かにここは人もいないし一人で修行をするにはもってこいだね」
「……いつからここにいたの?」
「30分前ぐらいかな。来てそんなに経ってないよ」
「逆に言えば、30分間私の修行を見ていたってこと?」
「そうだね♪」
「そうだね、じゃないわよ! 何コソコソ隠れて見ているわけ!? 来てるなら一言声をかけなさいよ! 恥ずかしいじゃない!」
「いや~アリスの修行の邪魔をしちゃいけないなと思って。それに君が言ったんじゃないか。話しかけるなって」
「あっ……」
「どうしたい? そんな悲しそうな顔をして」
「いや、なんでもない。じゃあ私、帰るから」
「アリス」
「何よ」
「これから夕食を作るんだって?」
「それが何?」
「ワタシの分も作って♡」
「誰があんたの分なんかっ…………そういえば、住む当ては見つかったの?」
「それが見つかってないんだよ~」
トホホと落ち込むゼロ。
するとお腹までもが鳴りはじめる。
「……1時間だけ」
「ん?」
「1時間だけ、特別に招いてあげるわ。夕食付きでね」
「……いいのかい?」
「教室でペンダントを取り返してくれたでしょ? それのお礼よ」
「それは嬉しいね♪ ありがとう、アリス」
「でも勘違いはしないでね。私はあんたを許したわけじゃない」
「はいはい♪」
前を歩いていくアリスの後をゼロは付いて行った。
★
歩いて15分が経過し、住宅街に突入。
ある一軒家の前で歩いていたアリスの足が止まる。
「ここが私の家よ」
「わ~お。随分と立派なお家じゃないか」
入り口から家全体まで完全なログハウス。
犬が自由に走り回れるほどの広々とした庭に、大人数でバーベキューが楽しめそうなバルコニー。
一番の衝撃は住宅街に並ぶ他の家に比べると、アリスの家はその2倍以上大きいということだろう。
「私の家といってもママが所有者の家だけどね」
「ああなるほど」
アリスに意識が持ってかれ、てっきりアリスが購入したものかと思ったけど全部アリアの財産によるものだったか。
「さ、入るわよ。くれぐれも大人しくするようにね」
「分かってるよ♪」
アリスが玄関ドアを開け、靴を脱いで中へ上がる。
ゼロもそれに習う。
リビングもやはりとは思っていたがイメージは的中。
サンタクロースが出入りしそうな暖炉。ハワイで見かける天井から吊るされたハンモック。
高級の毛皮や材質で作られていそうなソファにテーブルと椅子。
部屋の全体が落ち着いた内装に仕上げられ統一感もバッチリ。
部屋全体が自然で造り上げられた空間は体と心に安らぎを与え緊張をほぐし、ホッと落ち着かせてくれる。
「素晴らしい。こんな立派な家に住んでいたなんて」
「褒めるならママを褒めて。全てはママの財力によるものだから」
「うん。でもここまで綺麗に保たれているってことはアリスが普段から綺麗にしているからでしょ?」
「それは綺麗にするわよ。不潔なのは嫌だから」
「じゃあアリスも褒められるべきじゃないか。今こうして綺麗なのはアリスのおかげってことだし」
「……そうかもね」
アリスは、アリアが1ヶ月以上家に帰ってきていないと言っていた。
であるならば、少なくとも家の清潔さが保たれているのは言うまでもなくアリスの日頃の行いによるもの。
褒められる資格があるのは当然だ。
「とりあえずそこのソファに座ってて。今からカレーを作るから」
「カレーか。いいね♪」
「食べられないものとかある?」
「特にない」
「そ」
キッチンの前に立ち、エプロンを付け始めるアリス。
事前に研いておいたお米に水を張り、炊飯釜のスイッチをオンにする。
そしてまな板と包丁を用意。
じゃがいも、にんじん、玉ねぎなどの下処理を始める。
手際よく皮を剥き、一口サイズにカット。
トントントンとリズムカルに音を立てながらカットしていく姿は様になっている。
「随分と慣れているんだね」
「幼い頃から料理はしていたからね。今になってもママの代わりに私が料理を作っていたし」
「へ~、そうなんだ。アリアは料理できるの?」
「家庭料理は一通りできていたわ。卵焼きに肉じゃが、それこそカレーとかね。あと味噌汁に唐揚げなんかも作っていたわね」
「ごめん。知らない料理を連発されて頭がこんがらがっちゃった。卵焼きに肉じゃが? あと味噌汁と唐揚げってなに?」
「あんた本気で言っているの!? カレーを知っていてなんで他の料理を知らないのよ」
「ワタシは元々異国に住んでいたからね。普段の食事といえばモンスターに人肉さ。カレーを知っているのはある日味に飽きて、ルーを人から恵んでもらったことがきっかけなんだ」
「ちょっと待って。今……人肉って言った?」
「言ったよ?」
「……あんた、人を殺していたのね。それも食料にして」
「何か問題でも?」
「あるに決まっているでしょ! 人を殺して食べるなんて、あんたやっぱり悪魔だ! 正気じゃないッ!」
「そう? 肉をたべたいと思うのは生物なら普通のことだと思うよ。君たち人間だって豚肉とか食べるだろ?」
「それはそうだけど……人の肉は違うでしょ!」
「君たち人間が豚肉を食べるようにワタシも人肉を食べているだけ。やっていることは同じなのにどうして人肉だけはダメなんだい?」
「っ」
「分かっているさ。同じ人間だからでしょ? 共食いをしたくないのは生物として当たり前のこと。ワタシだって悪魔神の肉を食べる気になるかといったら答えはノーだ」
アリスは険しい表情を浮かべながらも料理を進める。
「それに誤解をしないで欲しいから言っておくけど、ワタシだって片っ端から人を殺して肉を食べていたわけじゃない。その犠牲のほとんどはワタシに喧嘩を売ってきた野蛮人であって、あくまでも返り討ちの延長さ」
「ほとんどってことは、数名は意図的に殺したってこと?」
「生きるためには仕方がなかった。あのときはワタシも必死だったからね」
「…………」
アリスは何も答えない。
下処理が終わった野菜をボールに入れる。
次に油を熱した深鍋でコマ切れの牛肉を炒め始めた。
「あんたはあんたで苦労していたのね」
「ああ。アリアを殺すことだけを目標に自分を追い込む毎日だったからね。アリスには申し訳ないけど、そのおかげで今のワタシがいる」
「っ」
キッと睨みつけるアリスに対し、ゼロは臆ともせず平然としていた。
ボールに移していた野菜も一緒に炒め始める。
「私は心のどこかで、あんたは嘘をついていると信じたかった……」
母親を殺したと口にしても、自らの目で死体を確認したわけじゃない。
ただ自分を挑発に乗せるための口車だと思いたかった。
最初に殺したと言われたときは思わず熱くなっちゃったけど、冷静になってその可能性があることに希望を持ち始めた。
「でも、あんたのその感じだと、あんたは本当にママを殺したんだよね」
「ああ。正真正銘ワタシが殺した。嘘でも冗談でもない。事実だ」
炒めていた鍋に水を張り、蓋をする。
あとは水を沸騰させ、アクを取り、ルーが完全に溶ければ完成。
そこまでの数十分の間、二人の間に会話が交わされることはなかった。
出来立てのカレーとご飯が出来上がる。
アリスは一人分のカレー皿によそい、福神漬けを添えてスプーンと共にテーブルまで運ぶ。
「できたわ。冷めないうちに食べなさい」
「お~!」
鼻を突き抜けるスパイシーな香り。
ほかほかの湯気に隠れたツヤツヤのご飯。
二つの香りが、ゼロの空腹と唾液の分泌量を加速させる。
「あれ? アリスは食べないの?」
「後で食べる」
「そうかい。じゃあお先に失礼するよ」
スプーンを手にし、食事にかかろうとしたとき。
「待って。食事をする前には両手を合わせていただきますをしなさい」
「なんで?」
「世の中には食べられない人だっているの。それに命だって頂いている。だからこうして両手を合わせて、感謝の言葉を告げる。それが食事のマナーなのよ」
「なるほど。感謝ね」
ゼロは文句一つ垂れることなく、アリスの言われた通りに両手を合わせる。
「いただきます。これでいい?」
「ええ。どうぞ召し上がれ」
今度こそスプーンでご飯とカレーをすくい、口に入れる。
「っ! ……な、なんだこの美味さは……」
続けて二口目。
あまりの美味しさに目を開き、スプーンの手が止まってしまう。
「これ、本当にカレーなのかい? ワタシの食べたカレーとは比べ物にならない美味しさなんだけど……」
「大袈裟ね。大した材料も使ってないし、ルーだってスーパーに売られているものよ。レシピ通りに作れば誰だって作れるわ」
「ワタシのときは若干臭みがあったんだけどね」
「それ、多分単に下処理をしていないからよ。血抜きをしてお酒やハーブに漬け込めば臭みは取り除けるわ」
臭みの種類にもよるが、大体はこの辺で解消できる。
「な、なるほど。下処理するだけでこんなにも違うのか」
その後ゼロは無言でカレーをかき込むように食べ、あっという間にぺろっと完食をしてしまう。
「ありがとう、アリス。とても美味しかったよ」
「そ。あと食事のマナーだけど、食べ終わったあとは両手を合わせて今度はごちそうさまっていうの」
「ごちそうさま」
「そう。これから食事をするときはこのぐらいのマナーを守りなさいよ。じゃないと次からは食べさせないからね」
「また食べにきてもいいの?」
「ち、違う! そういう意味で言ったんじゃない!」
「じゃあどういう意味?」
「うるさい! 食べ終わったならさっさと出て行って!」
「1時間まであと10分ほどあるんだけど」
「~~! ……じゃあ、ちょっと聞いてもいいかしら?」
「いいよ。なんでも聞いて」
「試験のとき、あんたの部屋の方から悲鳴が聞こえたんだけど、あれってあんたの仕業?」
「ああ、あれか。うん、多分合ってるよ♪」
「……あの部屋で何が合ったの?」
「大したことじゃない。ただ相手が死んだだけ」
「!? 相手ってまさか、試験管のこと!?」
「そうだけど」
(……あの試験管を殺した!? 嘘でしょ!? あのアレックスほどの実力者を!?)
攻撃が一切通用せず、絶望を感じさせられたあの試験管レベルを殺すなど信じられる話ではない。
だが、この悪魔神……もといゼロなら話は別か。
勇者育成機関の創立の根源は悪魔神と戦えるほどの人材育成を目的としている。
アリアに選抜された運営側のトップクラスであれば太刀打ちできる実力者。
しかし試験管として選ばれたものたちはトップクラスより下に位置付けられる。
そんな人たちが悪魔神の相手になるはずがないことは明白。
アリスが合格したあと後ろからゼロは現れた。
そこから察するに、前半は弄んで制限時間ギリギリのところで殺したという線が妥当か。
ことの詳細についてアリスは追求することはしない。
気分が害するだけのことは目に見えているし、この後の食事にも影響が出てしまうから。
「答えてくれてありがとう。おかげでスッキリした」
「お礼を言われることはしてないと思うんだけどね」
「ついでに聞きたいんだけど、あなたの能力ってなんなの?」
せっかくの機会なので聞いてみる。
いずれ殺す必要がある悪魔神だ。
ここで能力を把握しておくことは特になる。
「ひ・み・つ♡」
ゼロは明かさない。
色っぽく口元に人差し指を当て、ウィンクを決めるゼロ。
人をおちょくった態度にイラッとするものの、アリスはすぐに気を沈める。
(まぁいい。いずれ分かることだろうし)
勇者育成機関で過ごしていれば能力を披露する機会はあるはず。
そのときに見させてもらえば問題ない。
「そろそろ1時間ね。もう帰る用意して」
「ついでに今晩だけでも泊めてもらうのは」
「ダメよ」
「だよねー」
ほんの少しでも可能性があるならと思ってみたが予想通りの結果に。
それでも1時間だけでも家に招いてもらえたのと、食事までごちそうになれたのだから御の字とも言える。
アリスの住んでいる場所も知ることができたのも大きい。
アリスは玄関先までゼロを見送る。
靴を履き終えたゼロは改めてアリスにお礼を告げた。
「今日は本当にありがとね♪ カレーもごちそうしてくれて」
「別にお礼はいいわ。これが最初で最後の私からのおもてなしだから」
「え~、またおもてなししてよ~」
「今回はあくまでもペンダントを取り返してくれたお礼。あなたは自分が何の罪を犯したのか一生忘れないことね」
「ふふっ」
「さ、もう帰って。明日も朝早いんだから」
「分かったよ。じゃあまた明日ね♪」
笑顔で手を振りながら家を出たゼロに対し、アリスは無言で見つめる。
リビングに戻り、カーテンの隙間からゼロが立ち去ったかどうかを確認。
ゼロは軽い足取りで確かにこの住宅街から去って行った。
「私も早く食べよ」
料理は出来立てが一番。
ゼロと同じようにご飯とカレーをよそい、テーブルまで運んで行く。
「いただきます」
椅子に座り両手を合わせたあと、アリスは一口目を口に入れた。
「今日のカレー、いつもより美味しい」
普段と同じ材料、同じ作り方なのにいつもより美味しく感じたカレーに、不思議に思うアリスだった。
★
日本のとある地下室。
冷たいコンクリートの壁で覆われた閉塞感のある空間。
中心部分には会議用で使われる長テーブルに、その周りに背もたれの長い椅子が7つ置かれている。
今この場では上座を除く、計4名による会議が行われていた。
「皆さん、お集まり頂き、ありがとうございます。本日皆さんをお呼びしたのは勇者育成機関の入学試験、その合格者リストが届いたためお知らせするためです」
手元に持っていた7枚の紙のうち、3枚を他のみんなに配り始める少女。
艶のあるさらさらとした銀髪をツーサイドアップに仕上げた可愛らしい姿とは裏腹に、キリッとした顔つきには凛々しさもあった。
「毎年定例で行われていることなので細かい説明は省きますが、情報によれば今年も優れた功績を持つ合格者が現れたそうです」
「えー、また~? 毎年毎年よくこうも現れるものだね」
「それだけ世界は広いってことだよ。今年は不合格の人でも来年は分からない。スキルや才能は突然目覚めることだってあるしね」
「そうかもだけどさぁ……」
「お前たち、無駄話はそこまでにしろ。アリルが困っている」
「あ、ごめん……」
「いえいえ。お気持ちは分かりますので。では話を続けさせて頂きます」
全員が無言で頷く。
「手元のリスト通り、今回の合格者数は全部で33人。そして今回、そのなかでも注目すべきなのは2名。一人目は『ゼロ』。二人目が『アリス・マーガレット』という方です」
「アリス・マーガレットって……アリルとほぼ一緒の名前じゃん!」
「ああ。名前からしても日本人ではないな。単に外国人か、それともアリルと同じ異国出身か」
「それに、顔もどことなく似ている」
顔写真付きの合格者リストを見て、全員がアリルとアリスを交互に見比べる。
「私も最初は似ていると思いましたが恐らく偶然でしょう。世の中には自分と同じ顔の人が2~3人いると言いますし」
「だとしても名前までも似ているってすごくない!? どんな確率よ」
「確かに。もしかして生き別れの姉妹だったりして」
「もう冗談はよしてください。私は確かに父子家庭で育ってきましたが、お父様からはたったひとりの娘だと言われているんですから」
「じゃあ隠し子だ」
「流くん? そろそろ怒りますよ?」
「ごめんなさい……」
アリルがジト目を向けると流はすぐに頭を下げた。
「この際だから言っておきますが、仮にこのアリスという方が何かしら私と縁がある方だったとしても気に病む必要はありません。彼女は勇者育成機関に所属するもの。即ち敵であることに変わりはないのですから」
「分かった。アリルがそこまで言うならもう何も言わない」
他の二人も頷く。
「ありがとうございます。それでターゲットの処置についてですが、今回は『アリス・マーガレット』のみに絞ってください」
「なんで? ターゲットは全員が対象だろ?」
「はい、その通りです。今までは与えられた情報を元にすぐに片付けられる方たちでしたが、今回のおふたりに限っては例年稀に見る特殊な方たちのようなんです」
「特殊?」
「まずアリス・マーガレット。彼女は体術と能力、共に秘めているポテンシャルは高いものの、現時点での総合力は私たちが気に掛ける必要は一切ないレベルだそうです」
「おかしな話だな。そんな奴がターゲットに選ばれるということはそれなりの理由があるのだろう?」
「はい。ここからは落ち着いて聞いてください。どうやら彼女はあの伝説の勇者アリア・マーガレットの娘さんのようです」
「「「!!」」」
アリル以外の全員が目を見開く。
「うっそ……。あの伝説の勇者の……ていうか子供いたんだ!」
「確かに、それは特殊だな。実態は知らないけどポテンシャルを秘めているというのも納得できる」
「だが現時点では気に掛ける必要はないと言っていた。つまり花が咲く前に芽を摘むということだな?」
「その通りです。流くんが仰っていたようにいつスキルや才能に目覚めるかも分かりません。脅威に備え、早めに芽を摘んでおいた方がいいでしょう」
「だが現時点で脅威じゃないなら焦る必要はなさそうだな」
「ですが、問題はもうひとりです……」
ここで初めてアリルは雲行きを怪しくする。
「このゼロという方ですが、どうやら試験管を殺してしまうほどの実力者のようです」
「なにっ? 確か試験管は機関のなかでもトップクラスの実力者のはず。そんな人が受験者に殺されるなんてあり得るのか!?」
「そうよ! だとしたらそいつ、相当強いということになるよ!?」
「仮にそのゼロという奴が試験管と同レベルならまだしも、それ以上の実力者だったらいくら俺たちでも一筋縄ではいかない。ここは慎重になって情報を探るのが先決だろう」
「はい。なので今回はゼロを相手にすることはひとまず避け、対象をアリスのみに絞りたいと思います」
「それならこっちがやられる心配はなさそうだね」
「安心している場合じゃないぞ、杏里。そのゼロっていう奴が勇者育成機関に所属している限り、いずれ誰かが戦わないといけないわけだからな」
「わ、分かってるよ……!」
「それと杏里。アリスさんに関してですが、あなたに任せてもよろしいですか?」
「えぇ! なんで私!?」
「今回はアリスさんの処置に加え、+αゼロさんの探りにも注力して頂きたいのです。このなかで隠密行動に適しているのは杏里、あなたですから」
「意外と陰も薄いしな」
「うっさい!」
杏里からチョップを喰らう流の頭にたんこぶが出来上がる。
「んもぉ、しょうがないんだから。分かったわ」
「ありがとうございます」
杏里に頭を下げるアリル。
「報告はこれで以上となります。今回もラーレ様に代わり私がこの場を仕切らせて頂きました。皆さん、貴重なお時間とご協力のほどありがとうございます」
アリルが改めて深々と頭を下げると、他のみんなも軽く頭を下げた。
「アリル、ラーレ様は今どこに?」
「いつもの教会にいますよ。今日も人々の平和のために神に祈りを捧げないとのことです」
「そうか。たまには会議に参加して情報を共有してもらいたいのだが、それは難しそうか」
「はい。神への祈りに時間を注げば注ぐほどその想いは揺るぎの無い確かのものとなり、神はその願いを必ず叶えてくれるとのことですから。そのためにも今は会議に参加する時間も惜しいとのことです」
「まぁあとでまとめてお伝えすればいいのだろうが、どうも疎外しているような気がしてちょっとな」
「今はそっとしておきましょう。それがラーレ様への最高の気遣いだと思います。私たちがこうして生きているのもラーレ様の祈りがあってこそだと思いますので」
「ああ。そうだな。ラーレ様のためにも、いや、人類のためにも必ず叶えてみせよう」
「はい、もちろんです」
勇者育成機関の滅びこそ平和への第一歩。
国など当てにならない。
階級社会によるこの国は上級国民だけが優遇され続け、その貧困差は年々に増して酷いものとなっている。
仕事で得た給料から税金は約3割ほど国に吸い取られ、政府のカモとなっている。
貧困者はさらに貧困していき、生きる希望を見失ったものは自殺者で溢れかえり加速が止まることはない。
政府は、国は、いつだって口先だけだ。
国民のため、子供達のため、将来のためだと正義感ぶって何かと口にするが、実際は綺麗事を並べているだけの偽善者。
国民が苦しんでいる現状に目も向けず、自分たちが良ければそれでいいと物語っているだけの詐欺師。
ここ数年と国の経済は回復するどころか、徐々に悪化している。
経済だけではない。
十分な所得を得られないことによる不安が重なり、今は能力を使った犯罪件数も大幅に増え、街の治安も悪くなっている。
国民たちも我慢の限界に来ているのだろう。
このまま好き勝手にやらせたらまずい。
政府が動く気がないのなら、自分たちが動くしかない。
この腐った国には革命を起こす必要がある。
綺麗事を並べるだけなら奴らと同じだ。そこには行動で証明する必要がある。
腐った世の中を一蹴し、国を再構築する何かを。
弱者にも確かな生きる希望を持たせ、手を差し伸べられる世の中にする。そのために必要なのは––––––。
政府全員の抹殺。そしてその席を自分たちが乗っ取ること。
そのために手っ取り早いのが能力による制圧だ。
財力で革命は起こせないが能力では革命を起こせる。それおほどの力を自分たちは持っている。
そのためには能力による犯罪を取り締まる専門機関『防衛隊』と、悪魔神への対抗策として勇者の人材を作り出す『勇者育成機関』が邪魔だ。
まずは焦らず、確実に人数を減らしていく必要がある。
その手始めとして、比較的力が劣る防衛隊から進めるとしよう。
もちろん勇者育成機関の監視も怠らない。
(必ず叶えて見せる!)
それがラーレ様率いる、私たち『異教徒』の託された使命なのだから。
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