もっと甘やかして! ~人間だけど猫に変身できるのは秘密です~

いずみず

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86話 「噂の新人冒険者 その4」

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 次は、父が僕に質問する番です。

 父の手には僕が見たことのない魔道具を持っています。使い方や効果などを長々と説明しますよ。これ全然質問じゃないです。でも気になっちゃうのは仕方がないよね!

 トマ兄さんは手を上げます。正の感情ですね。うん、スキルチェックは正確な判断をしてます。


「はっはっは、メンテは興味津々だな!」
「本当に分かっているのかしらね。ただ単にパパの顔が面白かっただけかもしれないわよ?」
「パパはそれでもかまわないさ。はっはっは!」
「きゃきゃ!」


 言葉を理解しすぎると怪しまれますね。僕は名前だけ分かるようになったという赤ちゃん設定でした。仕方ないのでパパ変な顔してる~と笑って誤魔化しました。


 ◆


 父の次はイブシじいじです。

 オーラで僕を抱っこしたり、オーラで顔を隠していないいないばあをしたりと遊んでくれました。トマ兄さんは手を上げます。正の感情ですね。


「ふむ。メンテはオーラが好きかの?」
「きゃきゃ!」
「……それなら安心じゃわい」
「うぐぅ~」スリスリ


 イブシじいじはにっこり微笑みます。僕おじいちゃんっ子だから! とほっぺをスリスリして甘えておきました。

 ついでに顔を舐めようとしたらオーラでガードされちゃいました。ちゃっかりしてますね。


 ◆ 


 今度はタクシーさんですね。僕に質問をしてきます。


「メンテ様、ベビーカーの魔法は満足ですか?」
「きゃきゃ!」
「ほほっ、良かったです」


 今度は僕の耳元で皆に聞こえないようにささやきます。


「破壊魔法は良かったですかな?」
「きゃきゃ!」
「最高でしたか。もちろん魔物は見ていませんな?」
「きゃきゃきゃ!」←嘘で笑ってるメンテ
「ほほっ、魔物は知らないようですね」
「きゃきゃきゃ!」
「もっと笑ってくれたら防犯システムが派手にパワーアップするかもしれませんな」チラッ
「きゃきゃきゃきゃきゃーーーーーーーーーー!」←全力で笑うメンテ
「ほほっ、メンテ様は可愛いですなあ」


 大きな声でしゃべってはいけない内容ですね。このタイミングでこの質問をする。これはタクシーさんが何かを狙っているようです。


「タクシーさん、メンテが笑ってるけど何を話してたの? 隠してないで俺にも教えてよ~」


 コソコソ話が気になった兄貴が近づいてきましたね。どうやら話の内容は聞こえていないみたいで安心しました。


「ほほっ、メンテ様にベビーカーに新しい魔法を付けてほしいか聞いていただけですよ。改良しますか? と聞いたところ大喜びでしたな」
「えー、それだけ?」
「そうですぞ。そういえばメンテ様が一番笑っていたのは”防犯システム”という言葉でしたな」


 そう仕向けられたので! タクシーさんはチラリと視線を父に向けます。父にうまく伝わるのかな?


「もしかしてメンテはあの爆裂魔法をもっと見たいのかな? でもあれ禁止されてるよね。ちょっと無理なんじゃないかな」←アニーキ―
「はっはっは、メンテはあれをもっと見たいのか。だが使えないんだよ。う~む、困ったなあ」チラッ


 父も何かを察したので参戦です! わざとらしい演技をしてタクシーさんと話を合わせ始めました。


「そうですな。新しい魔法を開発するのはどうでしょうか?」
「さすがだなタクシー。私もそう思っていたところだ」
「え?! あれ以上にすごい魔法が使えるようになるの?!」
「はっはっは、そうなるようにしたいところだ。周囲に被害が出ない魔法であればいいんだろう? ママもそれなら良いと思わないかな? 防犯面でも役立つと思うがね」
「そうねえ、安全面を考えて欲しいわね。本当に」
「ならそういう魔法を組み込めばいいな。では時間があったら少し考えてみよう」


 父が勢いで母に聞いたら許可が出ちゃいました。


「父さん、完成したら見せてね!」
「はっはっは、分かったよ」
「ほほっ、これから忙しくなりそうですな」
「はっはっは!」「ほほっ!」「きゃきゃきゃー!」


 こうしてベビーカーの秘密を隠さなくてよくなったのですよ。破壊魔法も普通に使えるようになったのです。もちろん結果は……ね。


 いや~、今日のタクシーさんは本当に優秀な執事ですね!


 トマ兄さんは僕とタクシーさんの会話中、ずっと手を上げていました。正の感情ですね。やっぱりスキルチェックは正確ですな。素晴らしいスキルです。


 ◆


 最後に母ですが……。


「メンテちゃん、これが何か分かるかしら?」
「んぐぅ……」


 どーん! と置かれたのは哺乳瓶でした。


「これ”ほにゅうびん”っていうの」
「あぐぅ?」
「この中に飲み物が入っているのよ」
「うぐぅ?」
「この部分を吸うと飲めるのよ。やってみる?」
「……」


 急にラスボスが現れました。


 母はトマト兄弟を見ますがどちらも手を上げません。何も反応していないようです。それもそのはず。別に哺乳瓶が嫌いという気持ちはないのですよ。だから哺乳瓶を見ただけでは何も思いませんし。


「ほら、中にあるのはジュースよ。ミルクじゃないわよ?」
「……?」←よく分からないのという顔をするメンテ
「メンテちゃんの大好きなジュースよ。ほら、これで飲んでみて。きっとおいしいわよ」
「えぐぐ?」


 これを飲むのは罠です。母ならこれでおっぱいは卒業ね! と言い出しかねません。おっぱいタイムの存続のため、僕は断固拒否します。


 これだけは絶対に譲ることの出来ない戦いです。よし、久々に全力の暴れよう!


「哺乳瓶は嫌いじゃないのかしら? ミルクが嫌なのかもしれないわね」
「はっはっは。そうかもしれないな。試しにそのジュースを飲ませてみたらどうだい?」
「メンテちゃん、飲んでみようか?」





 バシッ!





「……メンテちゃん?」


 バシバシッ!


「ほら、少しでいいからね」
「えぐぅううううううううううううう!」


 バシバシバシッ!


 母はトマト兄弟を見ると二人とも手を上げていました。そうだ、もっと伝えるんだこの感情を!


「うわ、感情がむちゃくちゃですよ?!」←兄のトマ
「私も訳が分らないの。起伏が激しすぎてうまく読めないにゃ……」←妹のマト
「これはパニック状態? かもしれません。僕の経験だとそれが一番近いですね」
「えぐぐぐぐぐうぐ! あぐぐぅうううううううううう!」
「落ち着いてメンテくん。にゃ~、どうしたんだろう? 何か嫌なことがあったの……?」
「そうなのね……」


 嫌がる理由に少し心当たりのあるレディー。最初に吐いたことをまだ覚えているのかしらと思うのであった。だが、本当の理由はひどいものであった。



「だああああーー、んぐぅ! えっぐうううううううううう!」バシバシッ



 これがメンテのスキル”暴走”による影響だと分かる者は誰もいなかったという。

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