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109話 「猫と交流する その5」
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「ねえ、あれ食べていいの?」
「ぱあい(自分の好きな料理を選んで食べるんだよ)」
「ここは天国?!」
「ぱーい(僕のお家だよ)」
シロ先生は目が輝いています。いつも僕が大人に媚びるときのあの可愛い目ですな。やはり小さい生き物がやると可愛く見えるのですよ。僕もどんどん使いましょう!
「おぱぁー(でも独り占めはダメだよ)」
「どうして?」
「ぱいぱい。おぱぁーい(あれは一人分じゃなくてみんなで分け合うの。一人で食べたらお行儀が悪い子だと嫌われちゃうよ)」
「この家のルールはみんなで仲良く分け合う、勝手に食べちゃダメってことかしら?」
「ぱい(そういうこと)」
「ぱぱぱぱい(他にも……)」
シロ先生がマナーを守らないクソ猫と思われないようにいろいろ教えます。もしタクシーさんに処分されたら明日の料理の材料になるよと大げさにね。もちろん嘘ですがシロ先生には効果的でした。
「……だいたい分かったわ。私、いっぱい食べたいから絶対ルール守るわ!」
「おぱいぱいぱい(そろそろママが僕を呼ぶと思うから手筈通りによろしくね)」
「了解よ」
「メンテちゃん、こっちよー」
「ぱぁーい!」
母に呼ばれたので僕はいつもの机に座ります。シロ先生は僕の横で待機です。問題を起こさない賢い猫を演じるようにアドバイスしたのです。そうしたら勝手に食べ物を持って来てくれるよとね。
「メンテ様どうぞ。今日のお食事ですよ」
「きゃきゃ!」
カフェさんが僕のために料理を持って来てくれました。
「マネキさんも準備しますね」
「にゃ!」
「ぱいぱい(良かったね)」
「本当に持って来てくれるのね。カフェっていい人間ね!」
シロ先生は嬉しいのかしっぽをふりふりしています。幸せそうな表情ですね。暴れずに食べ物を待つことが出来る賢い猫なのです。
「はい、どうぞ」どーん!
「にゃ……、にゃあっ?!」
シロ先生の顔がよく分からない顔になりました。そのまま感情が抜けたような表情になっていきます。もうただの真顔です。よーく見ると目が死んでいますね。いったいどうしたのかな?
「教会でいつも食べている餌について教えてもらいました。いっぱい食べてくださいね」
「……」←シロ先生
「……」←メンテ
ニコっと笑ってカフェさんが去ってゆきます。
「……」
「……」
僕とシロ先生は無言で見つめ合います。
「……」
「……」
お互い何とも言えなさそうな顔で見つめ合います。
「……」
「……」
シロ先生が泣きそうな顔をしながら僕と見つめ合います。
「……ねえ、メンテ」
「ぱ、ぱい?」
「私、何か悪いことしたのかしら……」
「メンテちゃんよそ見しちゃだめよ。はい、あーん」
「あ~もぐもぐ」
僕は口を動かしながらシロ先生と見つめ合います。
「……」
「もぐもぐ」
「……」
「もぐぐ(どうしよう?)」
「あの匂いを嗅ぎながらこれ食べろって……。私、いじめられてるのかしら? ここはタクシーの一族が支配する地獄なのね。もうただの拷問よ」
「……もぐもぐもぐ(……なんかごめん)」
これはカフェさんが優秀すぎたので悪いのです。これではシロ先生に最悪な家庭だと思われてしまいます。お詫びとかどこにいったのでしょう。今日はシロ先生に楽しんで貰いたいのに。
よし、僕の出番だね!
「ごっくん。おぱーい!(僕に任せて!)」
「本当……?」
「メンテちゃん、あーんして」
「あーもぐもぐもぐ」
「……」←とても悲しそうなシロ先生
「も、もぐもぐっ(ちょ、ちょっと待ってね)」
飲み込んだら行動に移すからちょっと待っててね。
「ぱい(こっち来て)」
「……わかった」
「ぱぱぱい(作戦はこうね)」
シロ先生を僕の膝にのせます。ひそひそと作戦会議です。
「ごほ、ごほっ」
「ちょ、口から物出てるから。にゃあああ」バタバタ
「ぱあい(あ、ごめん)」
しゃべったら口から物が出たけどしょうがないよね!
「ちょっと、メンテちゃん食べながら遊んじゃダメよ。今その子をこっち来いと呼んだのママ見てたわよ!!」
「ぱ、ぱいぱい(し、してないよ)」
母に見られてたようです。何でもお見通しなのは怖いですね。まあ今回はバレバレだったのでしょうがないかもしれませんが。丁度良いので母に訴えかけますよ。
「ぱーい」指プイ
「あっちがどうしたの?」
「ぱいぱい(あれあれ)」
「あれは食べれないわよ。メンテちゃんにはまだ早いの。我慢してね」
「ぱーい……」
撃沈しました……。
「メンテ、私を叩きながら伝えるのよ!」
「ぱぁい!(そうか!)」
「そうよ、私が欲しいって伝えなくちゃ。私、何でもするから!!」
シロ先生から熱い魂を感じます。なのでもう一度やってみます。
「ぱいぱい!」指プイ
「ダメよ」
「ぱあああああーい」バシバシバシバシッ!
僕は右手お肉を指差し、左手でシロ先生を叩きます。
「痛い、いたたたたた、痛いわ」
「ぱい(我慢して)」
「じゃあもっと強く叩くのよ! もっとアピールしなさい!! あのお肉食べたいの!!!」
「ぱーい(了解)」
僕たちは必死です。これは僕じゃなくてシロ先生が食べたいのを伝えるアピール。シロ先生のため全力で叩きますよ!
「メンテちゃんじゃなくてその子が食べたいの?」
「ぱいぱい(そうそう)」バシバシッ!
「でも餌は残っているわね。お腹が空いてないのかしら?」
「ぱあい(違うよ)」バシバシッ!
「きっとメンテちゃんがその子の食事の邪魔をしているのが原因ね。メンテちゃんは食事中に遊ぶ悪い子なの? 早くその子を戻しましょうね」
「ぱぁーい……」
「ちょっと、諦めちゃダメよ。もっと私を叩いて!」
母には伝わりませんでした。逆に遊ぶなと怒られました。とても悲しいです。今日はおっぱいタイムが長引くでしょう。
「はっはっは。これが新しいお友達かい?」
「ぱあーい(そうだよ)」
「誰?」
「ぱぱい(僕のパパ)」
遅れてやって来たのは父なのです。丁度良いです、母には全然伝わらなかったので父に訴えかけますよ!
「……なるほど。お友達はこのお肉を食べたい、メンテはそう言っているのかな?」
「ぱあい」←目がキラキラと輝くメンテ
「パパ違うわ。メンテちゃんが抱き着いて離さないからその子が食べれないのよ」
「ぱいぱい(違うよ)」
「メンテ、あの人たちが何言ってるか分らないけど私を叩いてアピールしなさい! 今はチャンスなんでしょ!!」
「ぱあい!」バシバシッ!
「はっはっは。そういうことか」
と言って父はシロ先生を抱きかかます。そして、床に下ろしました。……あれ?
「仲が良いのはいいことだが、食べ終わってから遊ぶんだぞ。はっはっは!」
「……」
「……」
また僕とシロ先生は無言で見つめ合います。
「ぱあい(失敗しちゃった)」
「そうね……」
「ぱい(どうすればいいんだろう)」
「……」
そのときです。
「ほほっ」
「にゃ?!」
「ぱいぱーい(あ、タクシー)」
最後の刺客がやってきました。なんだかシロ先生にとどめ差しちゃいそうです。シロ先生が震えだしました。もうダメだぁ……って表情になっちゃってます。僕もあちゃ~ってなってますもん。
「ほほっ、これをお食べなさい」
「……にゃ?!」
ごとっと置かれたのはお肉の山盛りセットでした。並べられた料理の中から肉料理をいっぱい詰め込んだ夢のゴージャスお肉セットです。しかも猫が食べやすいサイズになっていますね。シロ先生は驚きすぎて固まっています。
「にゃあああああ……」
「今日はいつもの餌ではなくナンス家自慢の料理でも楽しんでみませんかな? どれが好みなのか分らないのでいろいろな肉料理を載せておきましたぞ。あなたはメンテ様の新しいお友達ですからな。遠慮せず食べてもいいのですよ。これからもメンテ様と仲良い関係を築いていけるとよいですなあ。ほほっ」
そして、教会の餌を持って去ってゆくタクシー。僕とシロ先生はタクシーの後ろ姿を見守ります。なんかいつもよりカッコよく見えるのは気のせいかな?
「今何って? 私を太らせて食べられちゃうの……」
「おぱい(えっとね……)」
僕は今タクシーが言ったことをそのまま伝えました。するとシロ先生の顔が輝きだしましたね。
「タクシーって……」
「ぱい?」
「タクシーって神なの? タクシー様って呼んだ方がいいのかしら」
「ぱいぱーい(ただの優秀なポンコツ執事だよ)」
こうしてシロ先生のトラウマはあっさり消えました。
◆
シロ先生はお肉の匂いを嗅ぎます。しっぽがぶんぶん揺れています。
「初めて嗅ぐ匂いね。これは何のお肉なのかしら? それとこれの上にあるのは何なの……?」
お肉にタレがついているのです。人間の作った料理を初めてみたのでしょうね。シロ先生はおそるおそる口に入れます。
「――?!」
「ぱい?(どう?)」
「う、うますぎる……。何なのこのお肉?! むしゃむしゃ」
シロは衝撃を受けた。お肉ってこんなにおいしくなるの?!
今まで食べていたお肉とは比較できない程うまみがある。味付けされたお肉を食べるのは今日が初めてなのだ。さらに普段食べる肉とは違い温かい。そのため触感も柔らかく別物のように感じるのだ。
こんなおいしい肉は初めてだわ! 何をどうすればここまで劇的に味が変わるの? 教会では子供の残り物やら味の薄いお肉なら出て来たわね。もしかして教会の子供たちはこんなおいしい状態のお肉を食べていたのかしら? そうだとするとずるい! 私も一緒なの食べたいわ!
「ぱーい(お肉食べれてよかったね)」
「本当よ。すごいわね。特にお肉の上にのっている味が変わる液体。これがあるだけで味がころっと変わるじゃないの! いったい何なのかしら?」
「ぱい(それはタレだね)」
「これタレっていうのね。人間はこんなものまで作り出してすごいわ。英知の結晶っていうのかしら。私みたいなただの猫には真似出来ないわ。……今まで食べていたお肉はゴミだったのかしら。教会なんてクソ肉のゴミ味よ。あの気持ち悪い人間がいるから食べ物がまずいくなるのよ。そうに違いないわ。ここに住むのもありよね……」
シロ先生はグルメキャラでも目指しているのかな? と思ったら急に教会を貶し始めました。気持ち悪い人間は、きっとお金大好きなあの人でしょうね。まあそこはスルーします。シロ先生は味の好き嫌いだけじゃなく、人間の好き嫌いも激しいみたいです。
ここに住むのは冗談かなと思いましたが、目は笑っていませんでした。すごい真剣でしたよ。まあ明日帰るって結論になりましたが。
「ぱーい(先生?)」
「むしゃむしゃ」
「ぱいぱい(シロ先生?)」
「がぶがぶがぶ。ぐがあああ」
もはや僕の言葉など聞こえていませんね。でもいっぱい食べられて満足気な顔をしています。この様子なら僕のお詫びも出来たよね。
「ぱい、おっ、ぱぁーい!」
「はいはい、メンテちゃんが食べ終わってからね」
「おっぱーい!」
◆
食後は一緒に遊んでからお風呂に入りました。嫌がるシロ先生に、汚いともうお肉食べれないと言うとおとなしくなりました。チョロい猫です。
「えぐえっぐ(じゃあ夜中に起こしてね)」
「わかったわ」
「ぐ~すぴ~」
「え、早すぎない?! こういうところはただの赤ちゃんね……」
今日は早く寝ます。そして、夜中にシロ先生と一緒に”猫魂”を調べますよ!
「ぱあい(自分の好きな料理を選んで食べるんだよ)」
「ここは天国?!」
「ぱーい(僕のお家だよ)」
シロ先生は目が輝いています。いつも僕が大人に媚びるときのあの可愛い目ですな。やはり小さい生き物がやると可愛く見えるのですよ。僕もどんどん使いましょう!
「おぱぁー(でも独り占めはダメだよ)」
「どうして?」
「ぱいぱい。おぱぁーい(あれは一人分じゃなくてみんなで分け合うの。一人で食べたらお行儀が悪い子だと嫌われちゃうよ)」
「この家のルールはみんなで仲良く分け合う、勝手に食べちゃダメってことかしら?」
「ぱい(そういうこと)」
「ぱぱぱぱい(他にも……)」
シロ先生がマナーを守らないクソ猫と思われないようにいろいろ教えます。もしタクシーさんに処分されたら明日の料理の材料になるよと大げさにね。もちろん嘘ですがシロ先生には効果的でした。
「……だいたい分かったわ。私、いっぱい食べたいから絶対ルール守るわ!」
「おぱいぱいぱい(そろそろママが僕を呼ぶと思うから手筈通りによろしくね)」
「了解よ」
「メンテちゃん、こっちよー」
「ぱぁーい!」
母に呼ばれたので僕はいつもの机に座ります。シロ先生は僕の横で待機です。問題を起こさない賢い猫を演じるようにアドバイスしたのです。そうしたら勝手に食べ物を持って来てくれるよとね。
「メンテ様どうぞ。今日のお食事ですよ」
「きゃきゃ!」
カフェさんが僕のために料理を持って来てくれました。
「マネキさんも準備しますね」
「にゃ!」
「ぱいぱい(良かったね)」
「本当に持って来てくれるのね。カフェっていい人間ね!」
シロ先生は嬉しいのかしっぽをふりふりしています。幸せそうな表情ですね。暴れずに食べ物を待つことが出来る賢い猫なのです。
「はい、どうぞ」どーん!
「にゃ……、にゃあっ?!」
シロ先生の顔がよく分からない顔になりました。そのまま感情が抜けたような表情になっていきます。もうただの真顔です。よーく見ると目が死んでいますね。いったいどうしたのかな?
「教会でいつも食べている餌について教えてもらいました。いっぱい食べてくださいね」
「……」←シロ先生
「……」←メンテ
ニコっと笑ってカフェさんが去ってゆきます。
「……」
「……」
僕とシロ先生は無言で見つめ合います。
「……」
「……」
お互い何とも言えなさそうな顔で見つめ合います。
「……」
「……」
シロ先生が泣きそうな顔をしながら僕と見つめ合います。
「……ねえ、メンテ」
「ぱ、ぱい?」
「私、何か悪いことしたのかしら……」
「メンテちゃんよそ見しちゃだめよ。はい、あーん」
「あ~もぐもぐ」
僕は口を動かしながらシロ先生と見つめ合います。
「……」
「もぐもぐ」
「……」
「もぐぐ(どうしよう?)」
「あの匂いを嗅ぎながらこれ食べろって……。私、いじめられてるのかしら? ここはタクシーの一族が支配する地獄なのね。もうただの拷問よ」
「……もぐもぐもぐ(……なんかごめん)」
これはカフェさんが優秀すぎたので悪いのです。これではシロ先生に最悪な家庭だと思われてしまいます。お詫びとかどこにいったのでしょう。今日はシロ先生に楽しんで貰いたいのに。
よし、僕の出番だね!
「ごっくん。おぱーい!(僕に任せて!)」
「本当……?」
「メンテちゃん、あーんして」
「あーもぐもぐもぐ」
「……」←とても悲しそうなシロ先生
「も、もぐもぐっ(ちょ、ちょっと待ってね)」
飲み込んだら行動に移すからちょっと待っててね。
「ぱい(こっち来て)」
「……わかった」
「ぱぱぱい(作戦はこうね)」
シロ先生を僕の膝にのせます。ひそひそと作戦会議です。
「ごほ、ごほっ」
「ちょ、口から物出てるから。にゃあああ」バタバタ
「ぱあい(あ、ごめん)」
しゃべったら口から物が出たけどしょうがないよね!
「ちょっと、メンテちゃん食べながら遊んじゃダメよ。今その子をこっち来いと呼んだのママ見てたわよ!!」
「ぱ、ぱいぱい(し、してないよ)」
母に見られてたようです。何でもお見通しなのは怖いですね。まあ今回はバレバレだったのでしょうがないかもしれませんが。丁度良いので母に訴えかけますよ。
「ぱーい」指プイ
「あっちがどうしたの?」
「ぱいぱい(あれあれ)」
「あれは食べれないわよ。メンテちゃんにはまだ早いの。我慢してね」
「ぱーい……」
撃沈しました……。
「メンテ、私を叩きながら伝えるのよ!」
「ぱぁい!(そうか!)」
「そうよ、私が欲しいって伝えなくちゃ。私、何でもするから!!」
シロ先生から熱い魂を感じます。なのでもう一度やってみます。
「ぱいぱい!」指プイ
「ダメよ」
「ぱあああああーい」バシバシバシバシッ!
僕は右手お肉を指差し、左手でシロ先生を叩きます。
「痛い、いたたたたた、痛いわ」
「ぱい(我慢して)」
「じゃあもっと強く叩くのよ! もっとアピールしなさい!! あのお肉食べたいの!!!」
「ぱーい(了解)」
僕たちは必死です。これは僕じゃなくてシロ先生が食べたいのを伝えるアピール。シロ先生のため全力で叩きますよ!
「メンテちゃんじゃなくてその子が食べたいの?」
「ぱいぱい(そうそう)」バシバシッ!
「でも餌は残っているわね。お腹が空いてないのかしら?」
「ぱあい(違うよ)」バシバシッ!
「きっとメンテちゃんがその子の食事の邪魔をしているのが原因ね。メンテちゃんは食事中に遊ぶ悪い子なの? 早くその子を戻しましょうね」
「ぱぁーい……」
「ちょっと、諦めちゃダメよ。もっと私を叩いて!」
母には伝わりませんでした。逆に遊ぶなと怒られました。とても悲しいです。今日はおっぱいタイムが長引くでしょう。
「はっはっは。これが新しいお友達かい?」
「ぱあーい(そうだよ)」
「誰?」
「ぱぱい(僕のパパ)」
遅れてやって来たのは父なのです。丁度良いです、母には全然伝わらなかったので父に訴えかけますよ!
「……なるほど。お友達はこのお肉を食べたい、メンテはそう言っているのかな?」
「ぱあい」←目がキラキラと輝くメンテ
「パパ違うわ。メンテちゃんが抱き着いて離さないからその子が食べれないのよ」
「ぱいぱい(違うよ)」
「メンテ、あの人たちが何言ってるか分らないけど私を叩いてアピールしなさい! 今はチャンスなんでしょ!!」
「ぱあい!」バシバシッ!
「はっはっは。そういうことか」
と言って父はシロ先生を抱きかかます。そして、床に下ろしました。……あれ?
「仲が良いのはいいことだが、食べ終わってから遊ぶんだぞ。はっはっは!」
「……」
「……」
また僕とシロ先生は無言で見つめ合います。
「ぱあい(失敗しちゃった)」
「そうね……」
「ぱい(どうすればいいんだろう)」
「……」
そのときです。
「ほほっ」
「にゃ?!」
「ぱいぱーい(あ、タクシー)」
最後の刺客がやってきました。なんだかシロ先生にとどめ差しちゃいそうです。シロ先生が震えだしました。もうダメだぁ……って表情になっちゃってます。僕もあちゃ~ってなってますもん。
「ほほっ、これをお食べなさい」
「……にゃ?!」
ごとっと置かれたのはお肉の山盛りセットでした。並べられた料理の中から肉料理をいっぱい詰め込んだ夢のゴージャスお肉セットです。しかも猫が食べやすいサイズになっていますね。シロ先生は驚きすぎて固まっています。
「にゃあああああ……」
「今日はいつもの餌ではなくナンス家自慢の料理でも楽しんでみませんかな? どれが好みなのか分らないのでいろいろな肉料理を載せておきましたぞ。あなたはメンテ様の新しいお友達ですからな。遠慮せず食べてもいいのですよ。これからもメンテ様と仲良い関係を築いていけるとよいですなあ。ほほっ」
そして、教会の餌を持って去ってゆくタクシー。僕とシロ先生はタクシーの後ろ姿を見守ります。なんかいつもよりカッコよく見えるのは気のせいかな?
「今何って? 私を太らせて食べられちゃうの……」
「おぱい(えっとね……)」
僕は今タクシーが言ったことをそのまま伝えました。するとシロ先生の顔が輝きだしましたね。
「タクシーって……」
「ぱい?」
「タクシーって神なの? タクシー様って呼んだ方がいいのかしら」
「ぱいぱーい(ただの優秀なポンコツ執事だよ)」
こうしてシロ先生のトラウマはあっさり消えました。
◆
シロ先生はお肉の匂いを嗅ぎます。しっぽがぶんぶん揺れています。
「初めて嗅ぐ匂いね。これは何のお肉なのかしら? それとこれの上にあるのは何なの……?」
お肉にタレがついているのです。人間の作った料理を初めてみたのでしょうね。シロ先生はおそるおそる口に入れます。
「――?!」
「ぱい?(どう?)」
「う、うますぎる……。何なのこのお肉?! むしゃむしゃ」
シロは衝撃を受けた。お肉ってこんなにおいしくなるの?!
今まで食べていたお肉とは比較できない程うまみがある。味付けされたお肉を食べるのは今日が初めてなのだ。さらに普段食べる肉とは違い温かい。そのため触感も柔らかく別物のように感じるのだ。
こんなおいしい肉は初めてだわ! 何をどうすればここまで劇的に味が変わるの? 教会では子供の残り物やら味の薄いお肉なら出て来たわね。もしかして教会の子供たちはこんなおいしい状態のお肉を食べていたのかしら? そうだとするとずるい! 私も一緒なの食べたいわ!
「ぱーい(お肉食べれてよかったね)」
「本当よ。すごいわね。特にお肉の上にのっている味が変わる液体。これがあるだけで味がころっと変わるじゃないの! いったい何なのかしら?」
「ぱい(それはタレだね)」
「これタレっていうのね。人間はこんなものまで作り出してすごいわ。英知の結晶っていうのかしら。私みたいなただの猫には真似出来ないわ。……今まで食べていたお肉はゴミだったのかしら。教会なんてクソ肉のゴミ味よ。あの気持ち悪い人間がいるから食べ物がまずいくなるのよ。そうに違いないわ。ここに住むのもありよね……」
シロ先生はグルメキャラでも目指しているのかな? と思ったら急に教会を貶し始めました。気持ち悪い人間は、きっとお金大好きなあの人でしょうね。まあそこはスルーします。シロ先生は味の好き嫌いだけじゃなく、人間の好き嫌いも激しいみたいです。
ここに住むのは冗談かなと思いましたが、目は笑っていませんでした。すごい真剣でしたよ。まあ明日帰るって結論になりましたが。
「ぱーい(先生?)」
「むしゃむしゃ」
「ぱいぱい(シロ先生?)」
「がぶがぶがぶ。ぐがあああ」
もはや僕の言葉など聞こえていませんね。でもいっぱい食べられて満足気な顔をしています。この様子なら僕のお詫びも出来たよね。
「ぱい、おっ、ぱぁーい!」
「はいはい、メンテちゃんが食べ終わってからね」
「おっぱーい!」
◆
食後は一緒に遊んでからお風呂に入りました。嫌がるシロ先生に、汚いともうお肉食べれないと言うとおとなしくなりました。チョロい猫です。
「えぐえっぐ(じゃあ夜中に起こしてね)」
「わかったわ」
「ぐ~すぴ~」
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本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
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