もっと甘やかして! ~人間だけど猫に変身できるのは秘密です~

いずみず

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191話 「学園の過去と未来と今の話 その2」

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「お客様の前では大人しくするのよ。出来なかったら違うお部屋に連れて行くからね。これはママとの約束ですよ。分かりましたか?」
「えっぐ」ぎゅ
「フフッ、メンテちゃんはいい子ね。赤ちゃんらしくしているのよ。じゃあお客様を迎えに行きましょうか」
「はーい!」


 僕メンテ。今日はナンス家にお客様が来るんだって。母の腕にくっつき、片腕で抱っこされながら外に移動します。ばぶー。


「あら? 地面が濡れているわね。さっきまで雨でも降っていたのかしら? それと焦げ臭いような気もするわ」
「えぐぅ~?」
「フフッ。こんなに晴れているのに雨なんて降るわけないわよね。行くわよメンテちゃん」
「はーい!」


 外に出てしばらく歩くとお客さんらしき人がいました。なぜか道の真ん中で寝っ転がってます。……土が好きすぎて全身で感じたいタイプの人かな?


「メンテちゃんあの人がお客様よ。……なんであそこで寝ているのかしら」
「えぐぅ?」


 お客様の周りはやたらと土が凸凹してるような気がしますね。土いじりでもしてたのかな? あと馬車で来たんだろうけどボロボロの安物だね。馬は元気そうだけどなあと考えていると、こちらに気付いたのかゆっくりとお客様が起き上がりました。本当に何してるのこの人?


「やあ。久しぶりだねレディーくんと……、君はメンテくんかな?」
「んぐぅ?」じぃー


 僕はこの人誰だったかなあという視線を向けます。本当は覚えていますがね。この男の人はアニーキーが通う予定の学園の先生なのです。確か名前は俺が講師だぜ! みたいな人でしたね。年齢は30後半ですが見た目は若いです。体格もガッチリしてますね。


「フフッ。さすがに覚えてないわよね。彼は私が学生だったころのコーシ先生よ。何回かこの家に来てるのよ」
「えぐ~?」


 本当は覚えているのですが、ここはえぐえぐ言って知らないふりです。


「まあ小さい子が覚えてないのは無理もない話さ。ではあらためて。私の名前はコーシでちゅよ、よろちくね~」
「はーい!」


 そうそう、この人の名前はコーシ先生。僕は元気よく挨拶します。僕に赤ちゃん言葉を使う人は大抵チョロいです。


「ちょっと服が汚れてしまったから失礼するよ。クリーン!」


 コーシさんの魔法で体や服がきれいになっていきました。あれは軽い汚れを落とす魔法です。急にファンタジー感を出して来ましたね!


「レディーくんの子供たちは元気だねえ。アニーキーくんとアーネくんだっけ? さっきまでそこで一緒に遊んでいたけど疲れて倒れちゃったよ。年かな? ははは」


 母があえて触れなかったことを自ら語るコーシさん。心の中で変な人とか思ってたけど僕の兄弟のせいでした。土が好きな変人だと思ってごめんね。


「それにしても二人ともレディーくんにそっくりだったよ。魔法の使い方が子供とは思えないほど上手だったねえ」
「フフッ、そうかしら?」
「何より魔法を使っているときの雰囲気がレディーくんに似ていると思ったよ。ところでメンテくんは今何歳だっけ? 久しぶりだから忘れちゃったよ。この前会ったときより大きくなった気がするんだけど」
「今は1歳よ(そろそろ2歳になるけどね)。そうよねメンテちゃん」
「ああ、1歳になったのか。本当に大きくなったねえ(まだ1歳になったばかりなのか。小さくて可愛いねえ)」
「えぐぅ~?」


 微妙に1歳のとらえ方が違うのだがそれはメンテの体の大きさと服装のせいである。小さいので1歳になったばかりと間違えられてもおかしくないのだ。

 ずっと抱っこされているのは母親から離れたくないせいかな? とコーシは考えた。そのためメンテがいても特に気にせず会話を始めたという。この時点でレディーの作戦通り。この親子からチョロい先生だと思われていたのは秘密である。


「いやあ、さっきはとても手荒い歓迎だったよ。ちょっと様子を見ていたらこっちに魔法が飛んでくるんだからねえ。荷物が全部吹き飛んで本当に大変だったよ。まあそれはさておき、あれはどこ置いたっけなあ……。あったあった。はい、頼まれてた新しい教科書」


 馬車から教科書を持って来て僕たちに見せるコーシさん。


「入学前からアニーキ―くんは勉強熱心なんだね。学園では勉強嫌いって子が多いから珍しいよ。他の荷物はあとでいいかな?」
「ありがとうございます。昔からアニーキ―は魔法は大好きでね。何か知りたくなると調べつくしちゃうのよ。きっと喜びますわ」
「さっきまでアニーキーくんの魔法の練習している姿を見ていたんだ。一緒にいたのはアーネくんかな? 二人ともあの歳ですごい魔法が上手なんだねえ。どんどん上手になっていくから本当にびっくりしたよ。どちらかというとアーネくん、いや最初はアニーキーくんが上手だったというか何というか……。もう何が起こったのか説明するのが難しいよ。二人とも色々な魔法を使えるところを見るとレディーくんが教えたんだろう?」
「フフッ。私はあまり教えてはいませんよ。二人とも魔法に興味があるみたいなのは確かね」
「いやあ、本当に上手だったよ。あれなら学園でもトップクラスの才能だと思うよ。さっきまで私と遊んでいたんだけど今は二人でどこかに遊びに行ったのかな? やっぱり子供は体力がすごいねえ。全然ついていけないよ」


 それから僕にはどうでもいい話が続きました。二人の話を聞く限り、今日コーシ先生が来たのは授業で使う魔力ボールといった魔道具の発注。そして、教科書や服といった学園で使う荷物を渡すことだって。

 そういえば兄貴はそろそろ学園に行くんだっけ? その準備とかの話を色々していますよ。まあ兄貴は魔法を僕に見せつけてくるほど大好きだからね。学園で色々学ぶことを楽しんでそうな姿が目に浮かびます。


 そんな話を聞きながら僕達はお家の中に入っていきました。


 ◆


 家の中に入りました。今僕は母の膝の上にいます。ばぶーっと赤ちゃん感を出しながら話を聞きます。


「最近の学園はどんな様子なんですか?」
「今の学園は平和だね。これといった事件もないし熱心に勉強している生徒が多いよ」
「それなら安心ですわね」
「最近まで入試試験とかあったんだけど今はなくなったよ。学びたい人がいれば誰でも来てくれ構わないというのが今の学園の方針だね。それでもこの国の子供が全員来るわけじゃないからねえ。私としてはそこをどうにかしたいと思っているよ」


 僕でも簡単に入学出来そうだね。母とコーシ先生の会話が続きます。


「コーシ先生は今どんな授業をしているのですか?」
「私は魔力操作の基礎だね。今も昔も魔法の使い方を教える立場さ!」
「えぐ?!」


 コーシさんが右手を開くと空中に何か四角い物体が出てきます。


「お、メンテくんがびっくりしてる。これはブロック魔法だよ」
「えぐえぐ?!」
「こらこら、暴れないの。メンテちゃん魔法に興味を持ったみたいね」
「あはは。好奇心旺盛だね。このブロック魔法は僕のスキルなんだ。魔法を色々な形で出すことに適しているね。形や大きさだけでなく、材質や属性を変えたりと色々出来るんだ。こういったところは魔法の基礎に役立つからね。それで私は先生になりたいと思ったんだよ」
「えぐうううううう!」


 僕の前で色々な形の魔法を見せるコーシさん。


「ブロック魔法は一度作れば残り続けるんだ。魔力がなくなると効果がなくなる魔法とは違ってね。こうやって材質を木にすれば積み木になるね。遊んでみるかい?」
「えっぐ!」


 僕は小さなブロックを持って本当に木なのか確かめてみます。う~ん、このザラザラ感は本物ですね。この世界の魔法って自由ですねえ。味はどうかな?


「フフッ、メンテちゃん気に入ったみたいね」
「……かぷかぷ~」
「お口に入れちゃダメよ、メンテちゃん」
「あはは、可愛いねえ。他にもブロック魔法で属性を付与して火に強く出来たりとね。このスキルがあれば家や防壁を作る職人になれるよ」


 初めて見たけど便利な魔法だなと思いました。


「今の学園は個人の持つスキルを伸ばす教育になっているよ。昔はスキルのことを考えずにこれが出来ないとダメ、なぜそんな簡単なことが出来ないと適切な評価をしてくれなかったからね。今はいい時代になったよ」
「えぐえぐ(なるほど)」


 その後、子供達にはこういうことを学ばせたいと母が質問すればコーシさんが答えてくれました。そこらへんは長くなるので省略っと。で、今はアニーキーこと僕の兄貴の話をしています。


「……なのよ。もう全部教科書は読んじゃったらしいわ。最近はメンテちゃんが教科書を使っているわよ」
「なんとメンテくんがその歳で読んでいるのか?! それはすごいな……」
「フフッ。ほらメンテちゃん」


 母が兄貴から貰った教科書を僕の前に出します。急に僕の出番が来たようですね! 母から教科書を受け取ると中身をぺらぺらと見ます。これは読んだふりです。ここは1歳らしくおバカちゃんアピールでもしましょう。なめちゃうぞ!


「あぐあぐ。ちゅぱぱぁ~」
「……おー、確かに使っているねえ。メンテくんはまだまだ可愛いでちゅなあ」
「えぐぅ~?」
「可愛い……」


 可愛い顔と声でコーシさんをメロメロにします。チョロい先生だね。


「でも本をそんな使い方をしたらアニーキーくんが怒るんじゃないかなあ」
「もう全部覚えたから大丈夫って言ってたわ。子供って何でもすぐに覚えちゃうのよね」
「それはすごい。アニーキーくんは思った以上に真面目な子なんだねえ」


 コーシさんの兄貴の評価はなかなか良さそうだね。


「いや~、メンテくんを見ていたら急にダンディくんを思い出したよ。ダンディくんは教科書は実験道具とか言ってたからなあ」
「そうだったわね。昔のパパは何でも魔道具の実験に使っていたわ」
「えぐ?!」


 急に父の昔話が始まりました。


「ダンディくんはね、昔から魔道具に関しては飛びぬけていたよ。それ以外は平均的な生徒だったが人気者だったよ」
「そうね。昔からパパは魔道具一筋でカッコ良かったのよ!」


 今もそうじゃない? と僕は思います。


「あははは、なつかしい。毎日毎日事件があって先生も大変だったよ」
「あの頃のパパは事件しか起こさなかったわね。でも楽しかったわ。今は子供が出来たからか昔よりは落ち着いたわね」


 え、今も問題ばっかり起こしてない??


「それにしてもあのときのダンディくんの暴走はすごかったなあ。今でも思い出すよ」
「えぐ?!」ぴくっ
「あら、どうしたのメンテちゃん? もっとお話を聞きたいのかしら?」
「はーい。えぐえぐー」ぎゅっ


 暴走に関しては知りたいことが多いのです。よし、もっと知りたいアピールだ!

 僕は母に抱き着いてほっぺをすりすりして甘えます。そして、コーシ先生をキラキラした瞳で見つめます。僕その話をもっと聞きたいんだという雰囲気を出し、魅惑の赤ちゃんボイスでコーシさんを虜にします。くらえー!

「えぐぅ~。えぐえぐぐ」
「可愛いなあ。メンテくんはいろいろ興味を持つんだなあ。よ~し、コーシ先生がなつかしい話でも聞かせてあげよう」
「きゃきゃー!」


 チョロかったです。そして、コーシ先生が話し始めました。


「正直メンテくんのパパはね、問題ばかり起こす生徒だったよ。もう山ほどにね。その中で赤ちゃんにでも分かる話はあるかな……」
「どうせあまり分かってないから何でもいいわよ。メンテちゃんは特定の単語にしか反応しないの。今はきっと”暴走”という言葉に反応しただけよ。まだ赤ちゃんだからね」
「へえ、そうなのかい? ……ってこの子にも暴走スキルがあるのかい?!」
「今のところ暴走したことは全くないわよ。子供たちはみんな”暴走”のスキルがあるけど、パパと違って暴れたり問題を起こしたことはないのよ。制御出来るってアニーキ―は言ってたから苦労はしてないわね。アーネも似たようなものだしメンテちゃんもそうだといいわね」
「――! そういう事かあ。さっきの二人はそういう状態だったのかな? あれで本気じゃないとしたらとんでもない実力、いや手加減していたのかもしれないね。ずっと笑っていたから私は遊ばれていたということになるねえ。こっちは魔力切れしそうなぐらい全力だったんだがねえ……」


 急にコーシさんが悩み始めました。どうしたんだろう?


「えぐぅ~?」
「ん? 何でもないよ。もしかして心配してくれたのかな? ありがとうメンテくん」
「はーい!」
「制御出来ているようなら学園で問題もなさそうだね。そう学園長にもそう伝えておくよ」
「私の子だから問題なんて起こさないわよ」
「確かに。レディーくんが言うと説得力が違うよ。今の言葉がダンディくんだったら信じないだろうね。もちろん私もだけど」
「ははは」「フフッ」


 父と母では信用の差がすごいみたいです。正直僕も父の大丈夫と母の大丈夫なら母を選びますね。


「こーち! はあく」バンバン
「おやおや、待たせちゃったかな? ごめんね」
「こーち。こーち」
「もしかしてそれは僕の名前かな? コーシだよコーシ。ははは、名前を呼んでくれるなんて嬉しいよ」


 コーシさんのご機嫌をとるとすぐ父の過去話が始まりました。次回に続くっと。


=================

「ふう、ナンス家に着いたぞ」
「「やー!」」
「あぶなっ?! 子供の魔法が飛んで来た。ブロック魔法で防ごう」
「「てやー!」」
「あれ、また飛んで来た。なんかこっち狙ってるような……?」
「「りゃー!」」
「ストップ、ストーップ!!」
「「うりゃー!」」
「ちょ?! 待ってくれ」
「「とりゃー」」
「ば、馬車が吹っ飛んだ?!」
「「せいやー」」
「死ぬ死ぬ―?!」

 数分後。

「「あの人動かんくなったからあっちで遊ぼうっと」」
「助かったけど動けない……」


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