もっと甘やかして! ~人間だけど猫に変身できるのは秘密です~

いずみず

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215話 「季節魔道具 冷房編」

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「あつーい。暑すぎる。昨日と今日で違いすぎじゃない?」


 今日は35度を超える真夏日。暑すぎて汗が止まらないのだ。そんな日に友達と遊びに外出していたアニーキー。だがあまりの暑さに早めに帰宅し、一年中快適な温度の子供部屋を目指して家の中を走り出したという。


「ん?」


 子供部屋に着いたアニーキー。中に入ろうと思ったが、子供部屋のドアの前には先客がいるようだ。


「入らないの?」
「あ、お兄ちゃん」


 彼女の名前はアーネ。アニーキーの妹である。それと隣にはメイドのカフェが一緒に立っていた。どうやら中に入りたいのだけど入れないようだ。


「……ね?」←アーネ
「そうですね」←カフェ
「??」


 アーネとカフェは目を見て頷き合う。だがアニーキーには意味がさっぱり分からなかった。何を隠しているのだろうか。


「あ、もしかして今おっぱいおっぱいうるさい? メンテの頭がおかしいから二人は避難してた?」
「違うよー。でもメンテかな」
「アニーキー様。ゆっくり開けて中を覗いて見たら分かりますよ」
「そう??」

 ガチャ。……バタン。

「え? 多くない??」
「そだね~」
「そだね~じゃないよ。何でこんないっぱい猫がいるんの」
「さあ」
「カフェさんは何か知ってる?」
「いいえ。気が付いた時にはもうこの状態でした」
「……そっか。パっと見ただけで30匹以上いると思うんだけど」


 そう。猫である。猫が子供部屋を占領していたのだ! あまりの多さに部屋に入りづらいとアーネとカフェは部屋に入るのをためらっていたという。


「とりあえず入らない? これぐらいなら俺の部屋にもよく来るし」
「え?! こんなにお兄ちゃんの部屋に猫入れてるの??」
「俺が入れたくて入れてるんじゃないから。メンテが勝手に連れて来るだけだからね! この前なんてドア閉まらなかったし……」
「アニーキー様も苦労しているのですね」


 アニーキーはメンテのせいで猫に慣れていた。


「まあこれぐらいなら大丈夫。怖くないって。俺暑いから先に入るよ」
「あ、待ってー」


 ゆっくりとドアを開けて子供部屋に入る3人。するといつもと部屋の様子が変わっていた。


「ああ涼し……涼しくない? というか猫だけじゃなくて物も増えてるような気がする」
「こんなのあったっけー?」
「朝来たときはありませんでした。そういえば猫グッズが完成したから近々試したいと連絡がありましたね。それが今日だったのかもしれません」


 ナンス家で販売している猫グッズ。それは基本的にメンテの連れて来た猫達によって試され、好評だったものだけを売ることにしている。よって子供部屋には色々と猫グッズの新作が来るのだ。


「みんなリラックスしてるなあ」
「見て、この子寝てるよー」
「新作グッズはどれもすごい心地が良さそうですね。売れそうな気がします」


 今回は暑い日でも猫が休めるようなグッズがたくさん集まっていた。ハンモックのようなものだったり、通気性のよいペットハウスやキャットタワーだったりと。そこらじゅうの床や壁に置かれており、全ての新作グッズに猫が居座っていた。

 初めて見る新作グッズにすぐ対応する猫達。だらしない恰好でぐて~っとしていた。全く警戒せず野性味もの欠片もない。そんな猫の楽園が広がっていたという。


「あ、そういえばメンテは??」
「いたよー」
「どこ?」
「あっちー」


 アーネの指差した方向にあるのは魔道具。それは部屋の温度を一定に保ち、快適な空間を実現するものだ。皆からは空気をコントロールするとう意味で季節魔道具”エアコン”と呼ばれている。

 この”エアコン”は使用する魔石によって冷房か暖房かを使い分けることが出来き、使う魔石の数や大きさによって効果が変化する。ナンス家の主力商品のひとつだ。

 ちなみに地球ではエアー・コンディショニングやエアー・コンディションがエアコンの略でエアコンだぞ。たまたま略したら同じ名前が付いただけ。決して作者が面倒だから同じ名前にしたとかそういうわけではないのだ!!


「うわあ、エアコンの真ん前にいるよ」
「メンテの周りに猫がいっぱいいるねー」
「あそこが一番涼しいとメンテ様も猫達も分かっているようですね」


 本能のままに行動する赤ちゃんと猫達がいたという。


「てかメンテも猫も一歩も動こうとしないじゃん」
「さっきね、外にメンテを連れ出そうとしたら玄関で外に出る前にバテたのー」
「メンテ様にはこの暑さにやられたようです。私とアーネ様が外から戻って来たときにはもうあそこで涼んでいましたね。猫達と共に」
「あー、だからあそこにいるんだ。う~ん。猫が思った以上に多いからかな? この部屋涼しくないよね? ちょっと温度下げようかな」
「アニーキー様、エアコン用の魔石なら机に置いてありますよ」
「あ、本当だ。ありがとうカフェさん。お、これ何の魔力でもいいやつじゃん。思いっきり力込めようっと」
「高いので壊さないようにお願いします」
「分かってるよ。ギリギリで止めるからさ」


 机に置いてある魔石を手に持つアニーキー。この魔石は少し特殊で何らかの魔力を込めれば冷房用の魔石へと変化する。通常であれば魔石に氷魔法を込めるところだが、氷魔法は誰でも使えるものではない。そこで魔石作りのプロであるダンディがこの特殊な魔石を作り、冷房用と暖房用を誰でも簡単に使えるようにしたのだ。

 こうした努力のおかげで魔力があれば誰でもエアコンを使えるようになった。こうして季節定番の魔道具になったという。サイズによるがお値段は高めである。


「よ~し出来た。ちょっと前通るね」
「しゃー!!!!!!」バシバシ
「いたっ?! 待って待って。違うから! 俺この場所奪いに来たわけじゃないからね?!」


 アニーキーがエアコンに近づくと暴れ始める猫達。誰もがこの快適な場所を死守すべく荒ぶり始める。


「「「しゃああああ!!」」」
「この魔石をエアコンに使うだけだからちょっと我慢してよ。いてっ?!」
「大変そうですね」←カフェ
「だねー」←アーネ
「二人とも笑ってないで助けてよ?! うおっ、何か足にぶつかったぞ」


 柔らかい何かを踏むアニーキー。


「うわあ、誰か血まみれで倒れてるぞ?!」
「あ、お兄ちゃんミスネ踏んだよー」
「ミスネ可哀そうですね」
「ミスネ……? うわ、ミスネが白目向いて倒れてるよ。 ……ん??! 何で二人はミスネって分かったんだ? …………あー?!」


 アーネとカフェが何かを示し合わせたかのような反応。それによってアニーキーは真実にたどり着く。

 この部屋の前で待っていたのは誰かにエアコンの温度を下げさせようとしたから。猫がエアコンを取り囲んでおり、近づくと攻撃される。多分ミスネがボコボコにされるのを見ていたのだろう。危険な役目を押し付けようと何も知らない演技をしていたんじゃないか。俺は恐るべき策にハマったのだと。


「くそ、騙されたああああ」
「お兄ちゃん頑張ってー」
「アニーキー様、頑張ってください」
「「「「「しゃああああああ」」」」」バシバシバシ
「二人とも笑ってないで手伝ってよ?! いてっ」


 ハメられたアニーキーであった。だがなんとかエアコンの温度を下げることに成功したという。


「ちょっと涼しくなったねー。お兄ちゃんありがとう!」
「アニーキー様、助かりました。無事ミスネも救出することが出来ました」
「それはいいけどさ。これからはちゃんと事前に説明してね。あとカフェさんは仕事しようよ」
「アーネ様が怖がっていたので心の支えになることもメイドの大事なお仕事です」
「ものはいいようだよ……」


 今回の騒動は一件落着と思ったそのときである。




 ブボッ、ブボボボボボ。プリプリィィイイイ!!




「「「……?!」」」


 すさまじく嫌な音がメンテのお尻から放たれる。


「うわあ……」
「メンテうんちしたー?!」
「うんちっていうかこれ下痢の音だね」
「見てお兄ちゃん、猫達が一斉にエアコンの前から離れていくよ?!」
「本当だね。おかげで涼しい空気がこっちに流れて来…………くっさあああああ?! 猫は臭くて離れただけだよね?!!」
「ちょっとメンテそこに立たないでー?! こっちに臭いの来るからー!!」


 パニックになるアーネとアニーキー。


「どうやらメンテ様のお腹が冷えすぎたようですね。暑さにも寒さにもメンテ様は弱いみたいです」
「赤ちゃんだ。とんでもない赤ちゃんがいたよ。猫よりヤバいよ」
「メンテ臭いからエアコンの前にいないで―!!」
「すごくいい顔をしていますね」
「あれはスッキリした顔だよ。なんて笑顔なんだろ……」


 ナンス家は今日も平和であった。なおオムツ交換の後もメンテと猫達の場所の独占は続いたという。
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