もっと甘やかして! ~人間だけど猫に変身できるのは秘密です~

いずみず

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250話 「相談相手間違って……あってた」

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 やあ。初めて見る顔だ。

 何か困っているようだね。聞きたいことがあるのかい?

 ふむふむ、誰にも言葉が分からないし通じない? それは大変だ。

 でも俺には君の言葉が届いている。安心するんだ。そういえば自己紹介がまだだったね。

 俺の名前は”アルティメット・ハンサム・キャット・テンシ・メンテ・ナンス”。世界で一番カッコいい猫で人間でもあり、誰かとおしゃべりしたい天使さ!

 HA HA HA! 今日は迷える猫を導いてあげよう。返事は「にゃー」だぞ。


「にゃー。にゃー?!」


 ダメだ。もっと猫っぽく言うんだ。心を込めて。


「にゃー!」


 そうそう、いい感じ。君は猫なんだから猫語で返事をするんだ。


「にゃーにゃー!」


 こら、恥ずかしがらない。みんなに分かってもらうにはこれしかないのさ。


「にゃー。にゃーにゃーにゃー!!」」


 HA HA HA! 文句は受け付けないよ。

 さあ特訓を続けようか。出来るようになるまで目覚めることは禁止だ。俺は優しいから最後まで手伝うよ。立派な猫になれば君の悩みも解決さ!


「にゃー?! にゃにゃー! にゃああああああああああああああああ!!」






 ん?! ……立ちながら寝てたのか。変な夢だったなあ。

 こんなに精神がすり減る夢は見たことがない。何か月閉じ込められたのだろうっていう疲労感だ。

 確か誰かに相談してたような気がする。その後のことはよく覚えていないが、何か間違ったことをしてしまった感覚のある夢だった。


「qwertyuiop@」
「asdfghjkl;:]」


 ……そういえばこの人達の話が長過ぎてウトウトしてたのだった。俺抜きで勝手に激論し始めたんだよなあ。帰ろうとしたら止められるし、仕方なく話が終わるまで待っていたんだ。

 多分目の前にいる人は、王とか領主とか貴族だとかそんな感じのお偉いさんだろう。あとはその関係者らしき人達や俺が助けた女の人もいる。でかい城に連れて来られて何かしゃべっているんだよな。いちいちこっちを見るけど何を求めているのだか。


「sbno54wbs」
「n,y934hbva」
「……?」


 理解出来ないものは出来ないのだ。返事もどうすればいいのか分からない。俺は目の前にいる人達から視線を逸らして過去のことを思い出す。

 俺が季節は2回は巡っている。

 この国、いやこの大陸? になぜ来たのか分からない。気が付いたらいたのだ。

 言葉は通じないし、常識も違う完全に別の世界。見たことがない大きな生き物がいたり、人々が変な力を使っている。見よう見まねでやってみると出来たり出来なかったり。そんな不思議な場所。

 ここから元いた場所までの帰り方は分からない。しばらく住んでいたら別に帰らなくてもいいかなと思った。前いたところにあまり未練はないし、新しいことを始めるには丁度良いかなって。


「mbtaiohptaagr」
「bma04u」


 で、問題はこれ。

 誰とも言葉が通じないのだ。声は聞こえる。何か伝えたいんだなってのも分かる。でも肝心の中身が分からないので会話にならない。

 かれこれ1年か2年ぐらい経っているはず。それなのに言葉を覚えられないし、こっちがしゃべっても相手は理解してくれない。さらに文字の意味すら勉強しても分かりようがないという。このように言語の壁がすごい。高校を卒業して大学に通っていたんだけどなあ。

 ん? なんか目の前の女の人が訴えてくる。雪で動けなくなった馬車を助け、動物の襲撃を退かせたときからやたら距離が近い。さっきから圧が強すぎる。さて、どうするべきか。


「にゃー」
「「「「「……」」」」」


 なんか自然と言葉が出て来た。……待て待て待て、俺は何を言っちまったんだ?!

 寝起きなせいか頭が回っていなかったのだろう。言葉が分からない俺でも空気が凍おりついたのが分かった。

 その後、何か可哀そうなものを見る目をされた。話し合いは終了し、俺は解放された。城から外に出て自由になった俺は、顔を手で隠してしばらく動けなかった。


「……ぁあああああ!!」


 恥ずかしすぎて死にたい。いっそこの国を出ようかなと思った。

 この国は冬が長い。暖かい場所に行くのもありだろう。あれ、案外良いアイディアではないか?

 それから数日が経ち、旅立つ準備を終えた。言葉が分からない俺にも優しくしてくれてありがとう。この国は俺みたいな外国人でも偏見なく受け入れてくれたのだ。感謝しかない。


「hn4wnbsj9q3!!」
「……?」


 町を出ようとすると、門番か城の人? だか誰か分からないが城まで来て欲しいとか言ってる気がする。でも言葉が分からないのでさっさと行ってしまおう。面倒ごとは御免だ。

 これからしばらく自由に旅をしよう。元の場所に帰る手掛かりは念のため欲しいし、誰か知ってる人がいるかもしれない。定住する場所を探すのもありだな。



 旅の移動は大変だった。歩いたり馬車に乗ったり、空を飛んだり船に乗ったりと。様々な場所を見て行った。さながら気持ちはバックパッカーだ。

 気候も違えば文化も違う。見たことのない生き物や食べ物もあった。俺には珍しいものばかりで新鮮だ。旅行の楽しさに目覚めたのかもしれない。色々な国を見て行った。

 だいたいどの国に行っても同じ店がある。倒した動物を持って行くとお金が貰えるのだ。これで旅費は困らない。あと身分証明書? みたいのが貰えて助かっている。便利な店である。

 残念ながら未だに同郷の人と会ったことはない。せめて言葉が分かる国があれば良いのだが……。


「次はここか……」


 便利な店で買った地図によると、ここは大きい国だ。あと色々な人に聞いて回った結果、いつも俺が使っている道具を作成している国ということは分かった。こっちの世界に来てから身振り手振りが上達したと思う。言葉が通じなくてもなんとかなるものだ。


「おお、賑わってる」


 ここは国の首都に向かう途中に寄った大きめの町だ。なんとなくこっちの国に来る前の街並みに似ている。ファッションや店で売っている食べ物に見覚えがある。多分だが俺の元居た国、いや元居た世界と交流があるのではないだろうか。

 これは期待出来そうだと大通りに向かおうとしたとき、俺は数年ぶりに効き馴染みのある言葉が聞こえた。それはもうハッキリと。


「bma943gt4wqa;p」
「sjhqu3g04」
「ママは?」
「ma4qnbw5qgj54l」
「09itwmblpnkq:」


「――?!」


 ハッと振り返ると、そこは子供がたくさんいた。

 今しゃべったのはどの子だ? と探すが、人数が多すぎて特定出来なかった。皆動き回るし、叫びまくるのだ。俺には見分けがつかない。

 ここは幼稚園だろうか? 大人は……二人いるな。おばさんと若い女の人が。若い女の人は綺麗だけどすごい恰好をしている。あれはここの仕事着だろう。この国の幼稚園はすごいな。

 ジロジロ見ていたからだろうか。若い女の人と目が合った。

 あ、ヤバい。あれは不審者を見る目だ。何か言ってるけど言葉は分からなかった。あの人は故郷と関係なさそうだ。


「すみません、人違いでした。不審者じゃないです。俺バイク。故郷の人探している旅をしてるんです」


 あやうく勘違いされそうだったので頭を下げて逃げた。だが手掛かりを掴めた。この国に俺としゃべれる相手がいるのだと。あとで幼稚園にいた職員の人に話を聞いてみるか。

 やっとまともに会話出来る人がいると希望を持ち、俺はこの町を見て回るのだった。


「食事でも誘ってみようかな……」



 ◆


「なんだったのでしょうねあの人」
「ホソボソ……」
「どうかしましたかメンテ様?」
「のりもにょ……?!(名前が乗り物だと……?!)」
「の、のり? ちょっと私には難しい発音ですね」
「まちゃかのこいをかんじう(まさかの恋の予感を感じる)」
「えっと……、はい。とりあえず帰りましょうか(ここは分かったフリでもしておきましょう)。アニーキー様、メンテ様が待ってますので早く帰りますよ」

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