もっと甘やかして! ~人間だけど猫に変身できるのは秘密です~

いずみず

文字の大きさ
252 / 262

252話 「手紙 その2」

しおりを挟む
「念のため魔法で防音しませんか? 私苦手なので誰か得意な方お願いします」
「私やります。害虫はどこに潜んでるか分かりませんからね。層魔法・空気の断層!」
「娘の相手を知りたい有害物質は追い出さないと……」
「関わるだけでろくな事起きないでしょうし」
「あのじじい知ったら妨害してきますよ。娘は渡さんぞーって」
「今もドアの前で聞き耳立ててるに違いありません!」
「恋バナで父親が出ていいのは最後の最後だけで十分ですよね」


 厳戒態勢の中、女性達の話は進んでいく。

 ひとりひとり手紙を確認するがもちろん誰も読めない。ならどうするのか。調べるにもその方法は? また誰がそれをやるのか。そういうことがすごいスピードで決まっていく。あの執事が何かをする前にさっさと終わらせようと真剣な表情で。

 なおカフェだけはまだ続けるのですか? と不服そうな顔をしていたという。この話の主役はあなただぞ。


「……というわけでアニーキー様に調べさせましょう!」
「暴走すれば誰も近寄れなくなるので丁度良いはず」
「せめて何語かだけでも知りたいものですね」
「「「「「賛成!」」」」」


 そして、すごい早さで部屋に連れて来られるアニーキー。ついでに何してるのと一緒について来たアーネもいたという。


「……あのじじい、先回りして子供達を部屋の前まで連れて待機してましたよ」
「ドアを開けた瞬間、探そうとしていた子供達がいてびっくりしましたね」
「しれっと子供達と一緒に入ろうとしましたよ。みんなでブロックしましたが」
「くっ、こういうときだけ先読み正確すぎるでしょう?!」
「娘のことが知りたいからってねえ」
「迷惑すぎる」


 タクシーは基本的に有能な執事である。こういう大事なときはやらかすことはないのだ!


「俺に用があるって? タクシーから聞いたんだけど」
「何でみんな集まってるのー? あ、メンテもいる」


 アーネが来ることは予定外だが、一緒に来るのはあり得ることだと皆が思っていた。面白そうだからとついて来ることはよくあるので。

 まあアーネも一緒に話をしても大丈夫だろう。女性達は話し合った通りの展開に持ち込むため、子供達の前に手紙を持って話しかけた。


「アニーキー様。アーネ様。この手紙の言葉が分かりますか?」
「ん、これ文字なの? 絵じゃなくて?」
「よめないよー」
「ですよね。みんな集まったのに誰も分からないんですよ。誰もねえ」
「そうです。誰ひとりも読めないんですよ。難しすぎて誰ひとりも」
「こんな文字見た事ありませんよねえ。人生で一度も」
「知りたいなあ。どこかの国の魔法の言葉かなあ」
「何か知れるっていいよねえ。やってくれるような人いるかなあ」
「――!!」


 誰も知らないこと? なにそれと知識欲をそそる言葉をわざとアニーキーに伝える女性達。

 あくまで手紙に書かれた文字の意味を知りたいから集まっているだけ。ラブレターの情報だけ伏せることで子供達から男どもへの情報が漏れるのを阻止する。全部伝えないけど嘘をついているわけではないので綻びは生じない。これが女性達のくだした最適な判断だった。


「ふーん。どこの国の言葉なんだろうね」
「ミミズじゃないのー?」
「これでも文字なんだって。絵じゃないみたいだよ」
「へー、そうなんだ。お兄ちゃんも全然知らない字なのー?」
「だね。初めて見たし。魔法の可能性もあるし調べてみようかな」
「じゃあ分かったら教えてねー」
「いいよ」


 そして、このアニーキーに勝手にやらせよう作戦は成功したといえる結果になった。興味を持ったアニーキーなら皆がやりたくない地味で面倒な作業も楽しんで取り組むだろう。それとアーネが案外ナイスな動きをしていた。女性達は皆アーネのアシストを心の中で褒めていたという。

 やはりこの兄弟は仲が良い。女性達はナンス家の子供達を見てほっこりしていた。あとは待つだけ。それでラブレターか仕事の依頼かどっちか判断できるというものだ。

 しめしめと皆に利用されるアニーキー。そんなアニーキーはカフェの膝の上に座るメンテの元に近づいていった。なんだかメンテがこの手紙を気にしている気がしたのだ。そして、それは大きく当たることとなる。


「んー。どこの国の文字かも地方すら絞り込めないなあ。メンテも見て見る? まあ見ても分からないだろうけど……」
「はーい! ……おれの、なまえは、ばいく」


「「「「「――――――――?!」」」」」←女性達


 アニーキーが何気なく手紙の中をメンテに見せた瞬間、メンテが何かをしゃべり始めた。

 最初こそメンテくんおしゃべり出来てカワイイねえ。何喋ってるのかは分からないけど……だったが、皆違和感に気付いた。メンテは絶対に"俺"なんて言葉は使わないこと。そして、誰も知らない謎の人物の名前が出て来たことに。

 女性達は目を見開き、アニーキーとメンテの会話に聞き耳を立てるのであった。


「え? 今これを読んだの??」
「はーい!」
「ふーん。じゃあここは?」
「おれの、なまえは、ばいく」
「へえ。この手紙を書いた人の名前がバイクって言うんだ……待って、何でメンテ読めるの?!」
「えぐ~?」
「いや、そこはえぐ~じゃないからね?!」


 この二人の会話に女性達は仰天することとなる。まさか一番手紙に縁がないだろうと思っていたメンテが読めたのだ。灯台下暗しとはまさにこのことだろう。


「メンテは見たことある文字なのかな? そういえば母さんがよく仕事に連れて行っていたなあ。交渉するときに赤ちゃんいるとなごむから便利って言ってたし。そのとき覚えたのかな?」
「えぐ?」
「あとで母さんに聞けばいいか。メンテ、ここも読める?」
「おれの、なまえは、ばいく」
「いや、最初から読まなくていいからね。こっちだよ、ここからね」


 ゆっくりとだが確実に文章を読み解くメンテとアニーキー。その様子を見ていたカフェは思った。最初からレディー様に相談していればよかったなあと。それに対し、女性達は静かな声で盛り上がっていたという。下記のように。


「殿方の名前はバイク様!」
「人を探しているんですって」
「言い回し的に恋人探しね」
「高貴な方かしら?」
「なんてロマンチックな内容」
「「「「「きゃー!!」」」」」
 

 それからしばらく。手紙の半分ぐらい読めたぐらいだろうか。メンテの体に異変が起こる。


「メンテこっちは?」
「……」
「ん? 反応がないなあ。どうしたの」
「……」
「あ?! メンテの顔が赤くなってる!」
「お兄ちゃん、メンテの目死んでるよー」←アーネ
「熱がありますね」←メンテのおでこを触るカフェ


 アニーキーがメンテの顔を覗き込むと、とても赤い顔をしていたという。アニーキーの声に反応した女性達はすぐに動き出す。


「た、大変よ。メンテ様がオーバーヒートなされたわ!」
「「「「「オーバーヒート?!」」」」」
「メンテ様は考えすぎて熱を出してしまわれたの!」
「なるほど、知恵熱ってやつか」
「小さな体では持たなかったようね」
「メンテくん体力ないもんなあ」

「お兄ちゃん、知恵熱ってなにー?」←アーネ
「頭使いすぎて疲れたんだよ」←アニーキー
「そっかー」


 急いで行われる応急処置。部屋を冷やして飲み物を飲ませてクールダウンさせるのよと女性達は動き回る。


「次はあれでしょ」
「早く奥様の元へ!!」
「仕事中だけど押しかけますよ。カフェちゃんのために!」
「「「「「カフェちゃんのためにー!!」」」」」
「いや、止めて貰えませんか?」←カフェ


 手紙を読めるメンテに何かあったら大変だと過保護すぎる対応をとる女性達。手紙の続きというか肝心の部分を聞きたいがために動いているだけなのだ! やましいことなんてなにもない。みんな渡れば怖くない理論である。

 道を作るわよと休憩室から出ると、そこには凄まじい数の猫とタクシーがひとりいたという。こういう事態になることを予測していたのだろう。メンテがすぐ実行出来るように猫達を連れて来ていたようだ。手回しが早い。とても優秀な執事の証拠である。彼が出て来るだけでギャグ感が増すのは気にしてはならないぞ!


「ほほっ。呼びましたかな?」
「きゃあああ?! まだいるわ」
「こ、こんなときに限って邪魔が入るなんて?!」
「先読みしなくてもいいんですよ?!」
「無駄に力を使わないで下さい」
「排除―!!」
「猫とメンテくんは絶対近寄らせないように!」
「メンテくんが暴れる前に急ぐわよー!」
「「「「「カフェちゃんのためにー!!」」」」」
「その掛け声止めてくれませんかね」←カフェ


 こうした女性達の活躍によりメンテが暴れることなく母親の元にたどり着いたという。団結した乙女たちの力は強かった。


しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...