さようならリリア~名無しの銅級冒険者は失踪した悲運の侯爵令嬢を追う。

一ノ瀬 薫

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第33話 奪うものと奪われるもの

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 俺はリリアに言った。
「もしもあんなことが起きず、あのまま侯爵家の令嬢として過ごしていたら、あなたはその方が良かったのですか」
 突然なにを言い出すのかというように、リリアは俺を見た。
「たぶんオットーはあなたが殺したわけではない。あなたを護衛していたというイルムさんの手の者がやったのでしょう。しかし、オットーが帝国に帰れず他国で死んだのは事実です。彼にしてみれば、あなたに会いさえしなければこんなことにはなっていない。あなたにとってオットーは忌むべき存在だったかもしれないが、そうしたのはあなたです。そうではないのですか」
 静かに俺はそう言ったが、いくら言っても言い足らない苛立ちを感じていた。

 リリアはうろたえながら力なく呟いた。
「私はそんなことはしていません」
 俺は静かな怒りの中で語り続けた。
「彼は犬のように死んだ。恋人にも家族にも捨てられて。リリアさん、自分が何をしたかを思い出すのです。あなたが縛られているものは何ですか。本当は、帝国に帰れないのも、イルムさんに弱みを握られているからだけではないでしょう」
 恐ろしいものを見るようにリリアは俺を見ていた。
 たぶん彼女には俺が悪魔のように見えただろうが、俺にはリリアが悪魔に見えた。
「あなたには私の言うことが理解できないかもしれない。しかし、それはあなたが未熟だからだ。あなたには自分というものがなかったということなのです。
 リリアは呆然として焦点の合わない瞳で床を見つめていた。

 俺は呆然としているリリアの手を取り、上着のポケットの中から侯爵から預かった指輪を取り出すと、彼女の指にはめた。
 それはすぐに彼女の指に収まった。
 リリアはそれに気づくとハッとして顔を上げると叫ぶように言った。
「これは何ですか!」
「魔力封じの指輪です。これであなたはもう魔術は使えない」
「どうしてこんなものを」
 リリアは外そうとしたが、外れるわけがない。
「あなたは魔術を使ってはいけないのです」
 俺は部屋に結界を張った。

「私が帰ってくるまで、おとなしくしていてください」
「私をどうするつもりなのですか」
 どうするかは考えていなかったが、俺はリリアに告げた。
「あなた次第ですが、最悪の場合生かしておくわけにはいきません。私はこれから行かねばならない所がある。帰ってくるまで考えるのです。これまであなたがやってきたことと、これからどうするかということを」
 
 部屋を出ると、俺はこれから出会うだろう厄介なことを考えながら、静かに階下に降りて外に出た。
 そして自分に言い聞かせるしかなかった。
 首を突っ込んだ以上は、後始末はしなければならないと。
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