さようならリリア~名無しの銅級冒険者は失踪した悲運の侯爵令嬢を追う。

一ノ瀬 薫

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第37話 王国冒険者組合

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 俺はダイン公爵の屋敷を出ると、宿に戻った。
 明日も色々とやることはあるが、とりあえず眠りたかった。
 着かえもせずそのままベッドに身を投げ、目を閉じると何かを考える間もなく意識を失った。
 気が付くとカーテンから漏れる日の光を感じた。

 大使館に行くため軍服に着換えると、俺は宿を出て冒険者組合に顔を出した。
 受付に向かい、そこにいた若者にヤードを見なかったかと訊ねた。
「ヤードさんは今、組合長と会っております」
「悪いが急用なので、すぐに来てもらえないかと伝えてほしいのだが」
 念のため、こういう者だと身分証を見せると緊張した面持ちで
「しばらくお待ちください」
と言うと後ろにいた女性に受付を任せ、階段を駆け上って行った。
 まもなくさっきの若者が降りてきて俺に言った。
「組合長もお会いしたいというので、こちらにどうぞ」
 そう言って案内してくれた。

 二階の奥の部屋の前まで来ると、若者がノックした。
 どうぞ、と声が聞こえた。
 ドアを開けて中に入ると、ヤードとブロンドの髪を綺麗に纏め上げた淑女が向かい合わせに座ってこちらを見た。
 俺は一礼し、身分と名前を伝えた。
 淑女は立ち上がると軽く頭を下た。
「初めまして、組合長のヘレン・マンスフィールドです」
 そちらにおかけになって、とヤードの横を勧められた。
「おっと、その前にヤードのモノを解除します」
 俺はヤードに施した死の首輪デスネックレスを解除した。

 ヘレンが何を、という顔で俺を見ていた。彼女には何も見えていないのでその反応は仕方がない。
「昨日、彼が眠っているのをそのままにしておくのは危険だったので」
 ヤードはようやく解放されたというように首を回した。
「朝になって変なものが首に嵌っているのでビクビクしながら帰った。これはなんだ」
 そういうので、とりあえず説明した。

「それは死の首輪デスネックレスと言って私の魔力で作り出したものです。それを掛けられた者は術者である私しか殺すことができません。主に重要な証人に使う魔術具ですが、守護の魔術具としても使えます」
 ヤードとヘレンは驚いて顔を見合わせていた。
「さすがヤードを一撃で倒すだけのことはある方ですね」
 俺は首を振って笑った。
「いえ、彼に言わせればズルをされた感じでしょう」
 ヤードは苦笑して言った。
「私の身体強化を瞬時に奪って、それを自分に装備して一撃。いくら私でもあれじゃ、どうにもなりません」

「少し前にレイモンドさんから連絡がありました。うちの銅級が依頼でそちらに行くので、何かあったらよろしくと。銅級とお聞きしたので依頼もそれほどのものではないと思っていましたが」
 ヘレンはヤードに目配せをした。
「それでダイン公爵とは話ができたのか」
 俺は頷いた。
「特に何事もなくうまくいった。色々と互いに説明は必要だったがね」
「それは何よりですわ。ヤードから昨夜の報告を受けてどうなることかと気を揉んでいたところです」
 そこでドアをノックする音がして、先ほど受付にいた女性がお茶を持って入ってきた。
 そしてこれを、とヤードに報酬の入った袋を渡した。 
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