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第7話 勇者は誓う
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痛っ、と体を起こすと激痛が走り、勇者クレイの顔が歪んだ。
「まだ、ダメですよ。しばらくは体をしっかり治すことだけを考えてください」
聖女アンヌがクレイの体を支えて寝かせた。
「全く届かなかった。鍛え直しだな」
そうクレイは天井をじっと見つめてつぶやいた。
「いいえ、リヒトは自分が攻撃した後で、あなたが聖剣で攻撃していればと悔やんでいました」
「どうだろうか。俺はそれで成功したとは到底思えない。〈神聖魔法散弾〉を放ったとしても、魔王に障壁を作られては、俺の攻撃は通用しなかっただろう」
これにアンヌは納得いかない様子で言った。
「私がそれに重ねて神聖魔法を展開していれば、聖剣は届いていたのではないでしょうか」
クレイは首を横に振った。
そして、実はと話した。
「出発する前の晩に皇帝陛下は魔王は初めから本気では来ない、どこまでやれる相手かを見極めてから、対応してくる、と言われた」
「では、あの時、魔王は私たちの能力を見極めていたというのですか」
アンヌは信じられないというようにクレイを見た。
「陛下が勇者として向かった折に、魔王に一太刀浴びせながらも撤退せざるを得なかったのは、自分も瀕死の重傷を負わされたからだと言われた」
「魔法学院の授業で魔王は強大な魔法を用いることを聞いたことがあります」
アンヌが師事していた教授は、若いころに皇帝陛下が学院を訪れた際、教授ら全員を集めると「決して魔王や魔族の能力を侮るような発言はしてはならない」と厳しく申し渡されたと語っていたのを思い出していた。
「皇帝陛下の話では魔王は自らが負ったダメージを即座に相手に与える魔法を使えると言われた。だが、その魔法を発動させるためには、相手に自分を攻撃させる必要がある。皇帝陛下はそこまで魔王を追い詰めたのだ。
その話を聞いた後だと俺は魔王に相手すらされていなかったことがわかる。だから君らは後悔する必要はない。
どんな支援があっても、やはり勇者の力が足らねば魔王は倒せない」
「今の話では、もしも皇帝陛下が魔王をもしも倒していいたら、自らも死んでいたということではないですか」
「勇者として、魔王を倒して死ぬのなら本望だろう」
「それはダメです。死んではいけません」
アンヌは必死な表情でそう告げた。
しかし、その言葉にクレイは黙ったままだった。
「アンヌさんの言う通りですよ」
病室の入り口からそういう声が聞こえ、クレイとアンヌは声の方を見ると、魔術師リヒトがこちらに歩いて来るところだった。
「お邪魔でしたか」
と、リヒトはアンヌをみてニヤニヤした。
「何を、バカなことを言っているのですか」
アンヌは顔を赤くして怒った。それを見てクレイはしばし癒された。
「確かにリヒトの言う通り、これほどの美女に看病されれば、俺も思い残すことはないかな」
クレイはリヒトのアンヌへのからかいに乗ったが、半ばは正直な気持ちでもあった。
「うらやましいですが、できれば痛い思いはしたくないですね」
リヒトは肩をすくめ、アンヌにからかって済みません、と頭を下げた。
「でも、アンヌさんの言われたように、死ぬのはダメです。皇帝も必ず生きて帰って来いと言われていましたし」
「そうですよ。今回はあの四天王を足止めして、魔王に直接攻撃ができたということが大きな成果です。それだけの能力が帝国にあることを魔王陣営にわからせただけでも、十分成果と言えます」
彼らの言葉を聞きながら、クレイはわずかだが納得したように肯いた。
「そうだな、焦ったところで対策が十分でなければ、我々だけでなく帝国兵が無駄に死ぬだけだ。それにはやはり俺自身がもっと強くなるしかない」
単純だが、それしかない。せめて魔王と痛み分けになった皇帝と肩を並べられるくらいの力が無ければ魔王に相手にすらされないのだ。
目指すところは高く厳しいが、それを成し遂げるしか他に方法はないのだと勇者クレイは心に誓うのだった。
「まだ、ダメですよ。しばらくは体をしっかり治すことだけを考えてください」
聖女アンヌがクレイの体を支えて寝かせた。
「全く届かなかった。鍛え直しだな」
そうクレイは天井をじっと見つめてつぶやいた。
「いいえ、リヒトは自分が攻撃した後で、あなたが聖剣で攻撃していればと悔やんでいました」
「どうだろうか。俺はそれで成功したとは到底思えない。〈神聖魔法散弾〉を放ったとしても、魔王に障壁を作られては、俺の攻撃は通用しなかっただろう」
これにアンヌは納得いかない様子で言った。
「私がそれに重ねて神聖魔法を展開していれば、聖剣は届いていたのではないでしょうか」
クレイは首を横に振った。
そして、実はと話した。
「出発する前の晩に皇帝陛下は魔王は初めから本気では来ない、どこまでやれる相手かを見極めてから、対応してくる、と言われた」
「では、あの時、魔王は私たちの能力を見極めていたというのですか」
アンヌは信じられないというようにクレイを見た。
「陛下が勇者として向かった折に、魔王に一太刀浴びせながらも撤退せざるを得なかったのは、自分も瀕死の重傷を負わされたからだと言われた」
「魔法学院の授業で魔王は強大な魔法を用いることを聞いたことがあります」
アンヌが師事していた教授は、若いころに皇帝陛下が学院を訪れた際、教授ら全員を集めると「決して魔王や魔族の能力を侮るような発言はしてはならない」と厳しく申し渡されたと語っていたのを思い出していた。
「皇帝陛下の話では魔王は自らが負ったダメージを即座に相手に与える魔法を使えると言われた。だが、その魔法を発動させるためには、相手に自分を攻撃させる必要がある。皇帝陛下はそこまで魔王を追い詰めたのだ。
その話を聞いた後だと俺は魔王に相手すらされていなかったことがわかる。だから君らは後悔する必要はない。
どんな支援があっても、やはり勇者の力が足らねば魔王は倒せない」
「今の話では、もしも皇帝陛下が魔王をもしも倒していいたら、自らも死んでいたということではないですか」
「勇者として、魔王を倒して死ぬのなら本望だろう」
「それはダメです。死んではいけません」
アンヌは必死な表情でそう告げた。
しかし、その言葉にクレイは黙ったままだった。
「アンヌさんの言う通りですよ」
病室の入り口からそういう声が聞こえ、クレイとアンヌは声の方を見ると、魔術師リヒトがこちらに歩いて来るところだった。
「お邪魔でしたか」
と、リヒトはアンヌをみてニヤニヤした。
「何を、バカなことを言っているのですか」
アンヌは顔を赤くして怒った。それを見てクレイはしばし癒された。
「確かにリヒトの言う通り、これほどの美女に看病されれば、俺も思い残すことはないかな」
クレイはリヒトのアンヌへのからかいに乗ったが、半ばは正直な気持ちでもあった。
「うらやましいですが、できれば痛い思いはしたくないですね」
リヒトは肩をすくめ、アンヌにからかって済みません、と頭を下げた。
「でも、アンヌさんの言われたように、死ぬのはダメです。皇帝も必ず生きて帰って来いと言われていましたし」
「そうですよ。今回はあの四天王を足止めして、魔王に直接攻撃ができたということが大きな成果です。それだけの能力が帝国にあることを魔王陣営にわからせただけでも、十分成果と言えます」
彼らの言葉を聞きながら、クレイはわずかだが納得したように肯いた。
「そうだな、焦ったところで対策が十分でなければ、我々だけでなく帝国兵が無駄に死ぬだけだ。それにはやはり俺自身がもっと強くなるしかない」
単純だが、それしかない。せめて魔王と痛み分けになった皇帝と肩を並べられるくらいの力が無ければ魔王に相手にすらされないのだ。
目指すところは高く厳しいが、それを成し遂げるしか他に方法はないのだと勇者クレイは心に誓うのだった。
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