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第26話 開戦
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四天王カイルは、事前に魔王から森を出ると物理防壁は頼れないことを聞いていたが、王国は軍を擁しないため、王国への侵攻も視野に入れていた。
ここまで電撃作戦がうまくいっていることにカイルは喜びを感じていたが、同時に帝国軍の動きがない事に不安も感じていた。
だが、その不安を振り払い、王国国境を越え進軍をするよう命じた。
その時、先頭の兵に異変が起こった。
まばゆい光が全面から襲い、その光を浴びた魔族兵がバタバタと倒れ始めたのである。
カイルは魔術防壁を纏っているためダメージは無かったが、倒れた兵たちに回復魔法を施すと、下がるように命じ、同時に可能な限りの兵に魔術障壁を施した。
先頭に出てみると、帝国兵の一団が見え、その先頭には勇者がおり、そのすぐ後ろには聖女が神聖魔法を展開していた。
炎馬《フランマエクウス》にまたがったカイルは彼らに告げた。
「命が惜しくば、去れ」
カイルはそう告げると神聖魔法を剣で切り割き、聖女に炎《フランマ》を放った。
これを勇者クレイはガウンを広げてこれを防いだ。
「その言葉、そのまま返す」
というが否や、カイルの目前にクレイの刃が躍るように襲った。
異変に気付いたのはギールの部隊だった。森の物理防壁の一部から光が漏れていたのである。
慌てて伝令がギールの下に走ったが、その光は黄金の輝きを放ち、森の闇を破るように広がった。
伝令の知らせに駆け付けると、光の中から帝国兵が雄たけびを上げながら突進してきた。
撃て!撃て!とギールは兵たちに魔法弾を発するように命じながら前に進むと、青い光に包まれた青年が馬と共に突進してきた。
ギールは一撃をかわすと魔王直伝の対神聖魔法を展開した。
そして『去《エキシテ》』と青い光に包まれた青年に向かって叫んだ。
青年はこれに『神聖盾《サクレッドシールド》』と呟き、勢いを鎮めた。
この間にギールは傍らの兵に「デントに知らせよ。防壁が破られた」と告げた。
しかしギールが最も恐れたのはラーラのことだった。
何とか第二軍に知らせる兵を送らねばと前に進んだ。
真っ先に森に侵入したロレーヌは、持久力を付与した愛馬を駆り、単騎で四天王ラーラを求めて第二軍の魔族兵を蹴散らしながら進んだ。
ロレーヌはリヒトから渡された探索器《サーチグラス》を掛け、強大な魔力を感知すると、その方向に全力で馬を走らせた。
間もなくロレーヌの目前に、燃え立つような赤い光が見えた。
あれだ、とロレーヌは呟き、左右の魔族兵を剣でなぎ倒し、剣を拝み撃ちにした。
するとそこには光の道が伸びて行き、ロレーヌはそこを一直線に駆け抜けた。
伝令がラーラの下にたどり着き、物理防壁が破られ、金色の騎士が第二軍を攻撃しながらやってきていると告げた。
周囲の兵はラーラを守るように十重二十重に囲んだ。
ラーラはカイルが国境で勇者と遭遇したことを知っており、第二軍と自分は勇者と闘うカイルの盾となって背後を守る、それだけを考えていた。
そして帝国兵を待ち構え、前だけを見つめるとラーラは魔力防御を最大にした。
そこは深紅の炎が燃え立ち、輝きを放って魔族兵と自分を覆った。
しかし、突然光の矢のようなものが走ったと見るや、轟音が鳴り響くと目前に黄金の騎士が迫っていた。
速い!とラーラは何とか騎士の放った頭上の剣を盾でしのぐと、魔炎槍を横に薙ぎ払った。
黄金の騎士の動きは一瞬止まったが、すぐに次の攻撃がラーラの頭上を襲った。
両手で槍の柄でこれを防いだが、次の瞬間、魔法防御をしているはずのラーラの左の脇腹に衝撃が走った。
あっ、と声を上げたラーラの目の前には防ぐ間もなく、黄金に輝く剣が振り下ろされていた。
リヒトから間もなく限界が来ます、と知らせを受けたカールは周囲の帝国兵に「引け!引け!」と大声で告げた。
光の裂け目から次々と退却を始めた帝国兵を見ながら、背後にやって来たリヒトにカールは、
「ロレーヌ様はまだか」
とギール率いる魔族兵の攻撃をしのぎながら叫んだ。
「もう見えています。しかし破壊した魔王の物理防壁が、修復を始めています。カール様も早く撤退を」
「そんなことができるか、俺が殿を務める。
ロレーヌ様が出るまで意地でもそこを開けて置け、これはお前と魔王の魔法の一騎打ちのようなものだぞ」
と、カールはリヒトを励ますように叫んだ。
ギールは帝国兵が去っていくのを見たが、青い騎士の背後に光の矢のようなものは見え、しばらくすると、黄金に輝く騎士がラーラを抱えているのを見つけた。
ギールはそれに向かおうと青の騎士に猛然と襲い掛かったが、その一撃は跳ね返された。
みると、すでに黄金の騎士は見えなくなっていた。
さらば、四天王ギール。
そう声が聞こえたのを最後に青い騎士の姿も消えていた。
ロレーヌがラーラを確保した。エスペランザよ、停戦だ。
その声が伝わるとエスペランザは答えた。
うむ、わかった。
国境で勇者と闘うカイルは後方の伝令から停戦の命令を聞くと「なんだと!」と憤怒を露わにしたが、その直後に帝国にラーラが捕らえられた聞くと、声を上げて天を仰いだ。
ここまで電撃作戦がうまくいっていることにカイルは喜びを感じていたが、同時に帝国軍の動きがない事に不安も感じていた。
だが、その不安を振り払い、王国国境を越え進軍をするよう命じた。
その時、先頭の兵に異変が起こった。
まばゆい光が全面から襲い、その光を浴びた魔族兵がバタバタと倒れ始めたのである。
カイルは魔術防壁を纏っているためダメージは無かったが、倒れた兵たちに回復魔法を施すと、下がるように命じ、同時に可能な限りの兵に魔術障壁を施した。
先頭に出てみると、帝国兵の一団が見え、その先頭には勇者がおり、そのすぐ後ろには聖女が神聖魔法を展開していた。
炎馬《フランマエクウス》にまたがったカイルは彼らに告げた。
「命が惜しくば、去れ」
カイルはそう告げると神聖魔法を剣で切り割き、聖女に炎《フランマ》を放った。
これを勇者クレイはガウンを広げてこれを防いだ。
「その言葉、そのまま返す」
というが否や、カイルの目前にクレイの刃が躍るように襲った。
異変に気付いたのはギールの部隊だった。森の物理防壁の一部から光が漏れていたのである。
慌てて伝令がギールの下に走ったが、その光は黄金の輝きを放ち、森の闇を破るように広がった。
伝令の知らせに駆け付けると、光の中から帝国兵が雄たけびを上げながら突進してきた。
撃て!撃て!とギールは兵たちに魔法弾を発するように命じながら前に進むと、青い光に包まれた青年が馬と共に突進してきた。
ギールは一撃をかわすと魔王直伝の対神聖魔法を展開した。
そして『去《エキシテ》』と青い光に包まれた青年に向かって叫んだ。
青年はこれに『神聖盾《サクレッドシールド》』と呟き、勢いを鎮めた。
この間にギールは傍らの兵に「デントに知らせよ。防壁が破られた」と告げた。
しかしギールが最も恐れたのはラーラのことだった。
何とか第二軍に知らせる兵を送らねばと前に進んだ。
真っ先に森に侵入したロレーヌは、持久力を付与した愛馬を駆り、単騎で四天王ラーラを求めて第二軍の魔族兵を蹴散らしながら進んだ。
ロレーヌはリヒトから渡された探索器《サーチグラス》を掛け、強大な魔力を感知すると、その方向に全力で馬を走らせた。
間もなくロレーヌの目前に、燃え立つような赤い光が見えた。
あれだ、とロレーヌは呟き、左右の魔族兵を剣でなぎ倒し、剣を拝み撃ちにした。
するとそこには光の道が伸びて行き、ロレーヌはそこを一直線に駆け抜けた。
伝令がラーラの下にたどり着き、物理防壁が破られ、金色の騎士が第二軍を攻撃しながらやってきていると告げた。
周囲の兵はラーラを守るように十重二十重に囲んだ。
ラーラはカイルが国境で勇者と遭遇したことを知っており、第二軍と自分は勇者と闘うカイルの盾となって背後を守る、それだけを考えていた。
そして帝国兵を待ち構え、前だけを見つめるとラーラは魔力防御を最大にした。
そこは深紅の炎が燃え立ち、輝きを放って魔族兵と自分を覆った。
しかし、突然光の矢のようなものが走ったと見るや、轟音が鳴り響くと目前に黄金の騎士が迫っていた。
速い!とラーラは何とか騎士の放った頭上の剣を盾でしのぐと、魔炎槍を横に薙ぎ払った。
黄金の騎士の動きは一瞬止まったが、すぐに次の攻撃がラーラの頭上を襲った。
両手で槍の柄でこれを防いだが、次の瞬間、魔法防御をしているはずのラーラの左の脇腹に衝撃が走った。
あっ、と声を上げたラーラの目の前には防ぐ間もなく、黄金に輝く剣が振り下ろされていた。
リヒトから間もなく限界が来ます、と知らせを受けたカールは周囲の帝国兵に「引け!引け!」と大声で告げた。
光の裂け目から次々と退却を始めた帝国兵を見ながら、背後にやって来たリヒトにカールは、
「ロレーヌ様はまだか」
とギール率いる魔族兵の攻撃をしのぎながら叫んだ。
「もう見えています。しかし破壊した魔王の物理防壁が、修復を始めています。カール様も早く撤退を」
「そんなことができるか、俺が殿を務める。
ロレーヌ様が出るまで意地でもそこを開けて置け、これはお前と魔王の魔法の一騎打ちのようなものだぞ」
と、カールはリヒトを励ますように叫んだ。
ギールは帝国兵が去っていくのを見たが、青い騎士の背後に光の矢のようなものは見え、しばらくすると、黄金に輝く騎士がラーラを抱えているのを見つけた。
ギールはそれに向かおうと青の騎士に猛然と襲い掛かったが、その一撃は跳ね返された。
みると、すでに黄金の騎士は見えなくなっていた。
さらば、四天王ギール。
そう声が聞こえたのを最後に青い騎士の姿も消えていた。
ロレーヌがラーラを確保した。エスペランザよ、停戦だ。
その声が伝わるとエスペランザは答えた。
うむ、わかった。
国境で勇者と闘うカイルは後方の伝令から停戦の命令を聞くと「なんだと!」と憤怒を露わにしたが、その直後に帝国にラーラが捕らえられた聞くと、声を上げて天を仰いだ。
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