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第32話 該当者は一人
確かにロアンが言う通り、不用心かもしれない。
俺はどうせフラフラするだろうし、若い奴が一人くらいいたところで、手練れをよこされればひとたまりもない。
グリーンはあれで結構使えるやつだから、何かあると困る。
「確かに不用心か。であれば娼館にちょうどいいのがいるから、そいつを呼ぼう。あっちはもうだいぶ落ち着いているし、レッドも首無し騎士もいることだしな」
「それが良いと思います。ところで先日依頼された件ですが」
「おお、仕事が早いな」
「貴族は暇なんで、いつもどこかでなんかやっていますから」
「どこの世界でも金持ちはそういうもんなんだな」
「税をごまかした金で遊ぶか、保身のために有力貴族への貢物をする。貢がれた貴族はその金で妻や娘に無駄遣いさせるわけです」
「どうしようもない豚どもだ」
「そんなわけで、豚になって豚の宴巡りに精を出しました」
「お前はどこから見ても豚には見えないがな」
どっちかというと羊の皮をかぶった狼だろう。
「では、キツネくらいにしておきますか。博打で豚を食い物にしていますからね。と、そんなことより例の件です」
おう、と俺は頷いた。
「マサト様が言った条件の貴族は何人かいましたが、念のため裏取りをして、該当する貴族が一名だけいました。当主ではなく、子弟ですが」
「当主ではないとはどういうことだ」
「そのことですが、母に社交界に復帰してもらって、私をだしに令嬢たちを観察してもらいました」
「そう言えばロアンはまだ独身だったな」
「はい、スバル男爵家はあれが当主でしたから、お世辞にも評判は良いとは言えなかったので、この年までどこからもそういう話がありませんでした」
この年って言ってもレッドと大して変わらない十六、七だぞ。
「で、話を戻しますが、母の実家は前も話したように武辺の家で貧しかったのです。それで母は若いころに貴族令嬢たちの衣装を手掛ける商会に出入りして、デザインやお針子の内職をしていたようなのです。ですから、今でも服にはかなりうるさくて、私もこのとおり服に関しては母任せです」
ロアンはそう言って、服を見せるように手を広げた。
「なるほど、それでロアンのお袋さんは見かけだけではなく、質の良し悪しがわかるということか」
「貴族には厳しい格式があって装飾の形式や色などにもそれぞれ制限がありますが、品質には制限がありませんので、そこに経済的な差ができるのです」
「それは俺にはわからないな」
前世じゃ吊るしのスーツ一辺倒だったし、服のセンスを問われるような連中との付き合いは無かったからな。
ロアンも苦笑しながら俺の言葉に同意した。
「ええ、私もです。そこで母に、爵位の割に質が良いものを使っていて、その上、流行を密かに取り入れたものを身に着けているような方を、探してもらいました」
「うむ、それでどうだった」
「該当する方は何人かはいたのですが、それらの方々の家を調べたところ意外なことがわかりました」
「意外なことって、なんだ」
「一人だけ、家の実入りとそぐわないご令嬢がいたのです。上位貴族の子弟と婚約でもしているのなら話は別ですが、そういうわけでもない。となると、その令嬢本人が自らその衣装に掛ける金を調達しているとしか考えられないのです」
俺はどうせフラフラするだろうし、若い奴が一人くらいいたところで、手練れをよこされればひとたまりもない。
グリーンはあれで結構使えるやつだから、何かあると困る。
「確かに不用心か。であれば娼館にちょうどいいのがいるから、そいつを呼ぼう。あっちはもうだいぶ落ち着いているし、レッドも首無し騎士もいることだしな」
「それが良いと思います。ところで先日依頼された件ですが」
「おお、仕事が早いな」
「貴族は暇なんで、いつもどこかでなんかやっていますから」
「どこの世界でも金持ちはそういうもんなんだな」
「税をごまかした金で遊ぶか、保身のために有力貴族への貢物をする。貢がれた貴族はその金で妻や娘に無駄遣いさせるわけです」
「どうしようもない豚どもだ」
「そんなわけで、豚になって豚の宴巡りに精を出しました」
「お前はどこから見ても豚には見えないがな」
どっちかというと羊の皮をかぶった狼だろう。
「では、キツネくらいにしておきますか。博打で豚を食い物にしていますからね。と、そんなことより例の件です」
おう、と俺は頷いた。
「マサト様が言った条件の貴族は何人かいましたが、念のため裏取りをして、該当する貴族が一名だけいました。当主ではなく、子弟ですが」
「当主ではないとはどういうことだ」
「そのことですが、母に社交界に復帰してもらって、私をだしに令嬢たちを観察してもらいました」
「そう言えばロアンはまだ独身だったな」
「はい、スバル男爵家はあれが当主でしたから、お世辞にも評判は良いとは言えなかったので、この年までどこからもそういう話がありませんでした」
この年って言ってもレッドと大して変わらない十六、七だぞ。
「で、話を戻しますが、母の実家は前も話したように武辺の家で貧しかったのです。それで母は若いころに貴族令嬢たちの衣装を手掛ける商会に出入りして、デザインやお針子の内職をしていたようなのです。ですから、今でも服にはかなりうるさくて、私もこのとおり服に関しては母任せです」
ロアンはそう言って、服を見せるように手を広げた。
「なるほど、それでロアンのお袋さんは見かけだけではなく、質の良し悪しがわかるということか」
「貴族には厳しい格式があって装飾の形式や色などにもそれぞれ制限がありますが、品質には制限がありませんので、そこに経済的な差ができるのです」
「それは俺にはわからないな」
前世じゃ吊るしのスーツ一辺倒だったし、服のセンスを問われるような連中との付き合いは無かったからな。
ロアンも苦笑しながら俺の言葉に同意した。
「ええ、私もです。そこで母に、爵位の割に質が良いものを使っていて、その上、流行を密かに取り入れたものを身に着けているような方を、探してもらいました」
「うむ、それでどうだった」
「該当する方は何人かはいたのですが、それらの方々の家を調べたところ意外なことがわかりました」
「意外なことって、なんだ」
「一人だけ、家の実入りとそぐわないご令嬢がいたのです。上位貴族の子弟と婚約でもしているのなら話は別ですが、そういうわけでもない。となると、その令嬢本人が自らその衣装に掛ける金を調達しているとしか考えられないのです」
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