2 王への元献上品と、その元調教師

華山富士鷹

文字の大きさ
5 / 25

波風風斗が鬼畜になった理由

しおりを挟む
思えば、俺の性癖が歪んでしまったのは先王である父親が原因だったかに思う。
父はよく、王妃である母親に手を上げたものだが、俺はそんな光景を目の当たりにして『女に手を上げる奴は最低だ』と反面教師にしてきた。蝶や花は脆く、優しくしてあげなければならないと心に誓ったものだ。
では、どうして、何処で俺の人生の歯車が狂ってしまったのか?

それはある献上品の女の子がきっかけだった。


彼女に出会ったのは俺がまだ中学の頃で、その時に初めて王室の献上品制度というものを聞かされ、よく解らないまま『トライアル』という名目で側近から彼女を紹介された。彼女は器量も良く、明るくお喋りが上手な3つ歳上の女性。なんでも俺をリードしてくれるとても魅力的なお姉さんだった。名を花梨(カリン)と言い、その人が俺の初めての相手になった。
毎夜、花梨は俺に愛を囁き、俺もその愛に応え、2人は他の献上品の女性達を寄せ付けない程熱く燃え上がっていた。

と、思っていた。

けれどある日、花梨が自身の調教師とこっそり逢びきしている姿を目撃し、俺は愕然とした。
あれだけ毎晩愛し合い、俺の事を愛していると言ってくれていた花梨が、何故、俺を裏切ったのか──
花梨は愛を囁いたその口で他の男とキスをして、俺に献上した筈の自身の体をその男に捧げていた。
いつから?
一体、いつから花梨は俺を裏切っていたのか?
花梨は6年もの間、間男である調教師と寝食を共にしてきた。花梨が俺に献上されてから2人が意識し合ったとは考えにくい。
そうなると──

花梨は始めから俺の事を愛してなどいなかったのではないか、という疑惑が浮かんだ。
それを裏付けるかのように、花梨は相変わらず俺に愛を囁き続ける一方で、調教師の男と関係を持ち続けた。
何が本当で、何が嘘なのか、全く解らない。全てが嘘なのか、俺は誰を、何を信じていいか解らなくなり、花梨どころか側近や周りの使用人達すら信用出来なくなっていた。

そんな折、城で謀反が起こった。

長年王室に仕えていた王室付きの料理長が先王の料理に毒を盛ったのだ。
幸い、その料理は先王の口に入る事はなかったが、王室にはとてつもない激震がはしった。
最初は料理長も容疑を否定し続けていたものの、過酷な拷問を受けるうちに口を割り、真実を白状し、罪を認めた。
結局、彼は打首にされ、その家族もまた故郷を追われる事となった。
俺はそんな王室の惨劇を傍観し、自分の中で何かが変わるような大きなショックを受けていた。

人は、窮地に追い込まれると真実を吐露するのか。

決して、必ずしもそうとは限らないのかもしれないけれど、この一件は俺の性癖に多大な影響を与えるには充分過ぎる程センセーショナルであった。

その日から、いや、その夜から俺は変わってしまった。

花梨の事は本当に愛していたが、拷問で彼女が本当の気持ちを口にした時、俺の中の彼女への想いは冷めきってしまった。彼女によると『献上品は生活の為に仕方なくしていただけで、愛を囁いたのは出世の為、仕事と割り切っての事』だと言う。言われてみれば、献上品なんてものは、女性が地位を確立する為にはうってつけの役職なのだ。献上品の募集要項にも、不貞行為の禁止は書かれていたものの、王への愛情に関する記述は何処にも無い。だから、もし、花梨が不貞を働いていなかったとしても、俺が彼女から愛されていた保証は無いという事になる。

その後、彼女とその調教師の不貞は裁判沙汰になり、2人は然るべき処罰を受けて……その後どうなったかは知らない。正直、無責任な話、俺は知るのが怖くて耳を塞いでいた。確かに不貞を働いた2人は罪人だけれど、献上品制度というものは、献上品や調教師の気持ちを無視した非人道的な制度だ。こういった結果を招いたのは、何も2人だけのせいではない気がして、俺は今でも気が咎めている。

だからと言ってはなんだが、それ以来、俺は献上品を抱く際、必ずちゃんと確認(拷問)して気持ちを確かめている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

処理中です...