妹に悪役令嬢にされて隣国の聖女になりました

りんりん

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54、これからは2人で

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 心配しないで。

 あなたを1人ぼっちではいかせないから。

 最後にもう1度だけ、フラン様の顔を拝ましてもらいましょう。 

 そう思って顔から手は離した瞬間、目の前に現れた信じられない光景に、息が止まりそうなほど驚いた。

「いつのまにこんなことに」

 あちこちに花、葉、茎すべてが黄金色に輝く花が咲き乱れているのだ。

「きっとこれは本物のゴールデンローズだ。
 優しいアイリーンの流した涙から生まれたんだから。
 感動した……」

 ブランチさんはメガネの奥にある瞳をうるませた。

「たかが貸本屋のオヤジになにがわかるって言うのよ。
 どうせあの花も偽物に決まってるわ。
 さあ。お姉様。
 本物かどうか早く試してみなさいよ」

 足をひろげて、胸の前で両手を組んだマリーンがツンと顎をあげる。

「だまれブス。
 花の心配よりカーラの心配をしろよ」

「ミーナ。
 マリーンはそういう人よ。
 いくら言ってもムダ。
 疲れるだけだからほっときましょ。
 それよりフランよ」

 私は手前にある花を折って、フラン様の目の前に差し出した。

「フラン。お願いだから目をあけて」 

「その声はアイリーンだね。
 よかった。無事なんだ」

「私だけ無事でもしかたがないでしょ。
 私達は2人一緒でないと意味ないんだから。 フランのバカ。
 どうしてあんな事をしたのよ」 

「そんな事もわからないのかい。
 鈍感なアイリーン。
 それは僕が君を愛しているから」

 フラン様はそう言うと、うっすらと目を開く。

「アイリーン。
 まさかそれは本物のゴールデンローズなのかい」

 驚きの声をあげながら、フラン様は力をふりしぼってキラキラと輝く花にそっと手をそえる。

 とたんに花の光が、フラン様の指をつたってフラン様の身体へとながれてゆく。

 そしてあっというまにフラン様は元気な姿をとりもどしたのだ。

「凄いぞ!」

 どこからともなく、割れるような拍手と歓声がおこる。

 その音はフラン様の胸の中でうっとりと目を閉じる私の耳には、遠くでなる海なりのように聞こえた。

「またアイリーンに命をすくわれた。
 今度は一生かかってお礼をさせてもらいたい」

 フラン様が甘い声で耳元でささやく。

「一生かかって?
 それって、もしかして」

 結婚っていう言葉を口にするのが恥ずかしくて、真っ赤になってうつむいた。

「もしかして、結婚だよ。
 もうアイリーンと離ればなれで暮らすのは無理だから。
 毎日毎日、こうやって抱きしめていたい。
 いいかな」

 フラン様の言葉にコクンと首をたてにふる。

 その瞬間様々な声がおこった。

「やったね。
 これでアイリーンはサクラダの王女様だよ。 ミーナも最高に幸せ!」

「おめでたいクマね。
 お姉様はね。
 貧乏人の妻になるだけでしょ」

「そうざます。
 それにしても、どうしてマリーンは、ゴールデンローズを咲かせるのに失敗したのかしら。
 せっかくワタクシがいい方法を授けてやったのに。
 やっぱり本物のバカだったざんすね」

「お母様。
 そこにあるゴールデンローズを全部ひっぬいて逃げよう。
 これでオレ達は大金もちだ。
 ハハハハ」

「さすがアラン。
 勉強はてんでダメだったけど、そういう頭だけはいいのね」

「フラン。たいへんよ。
 アラン様が」

 言いかけようとしていると、フラン様のキスが唇にふってきた。

「アイリーンの好きな所その1。
 あんな嫌なヤツの事でも、絶対に呼び捨てなんかにしないところ」

「ええ?」

 思いがけない事を言われて首を傾げていたら、
「その顔。可愛すぎるよ。僕を殺す気?」
と言って、フラン様は私の髪を優しくなでる。

「好きな所その2も聞きたい?」

「うん」 
 
「その言い方もたまらなく可愛い」

 フラン様はそう言って、私を抱く腕にギュッと力をこめた。

「フランったら」

 幸せすぎて、私の頭はフラン様で一杯になる。

 もうマリーンもアラン様もどうでもいい。

 これからは好きな人と前だけを向いていくのよ。
 

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