お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます

りんりん

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十、氷の王子1

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「グラス。お茶会は野外でしたいの。
村で一番大きな、あの木の下なんかどうかしら」

窓枠に手をかけて、川のほとりにそびえる枝振りの良い木に視線をむける。

「わかりました。
では当日までに、テーブルと椅子を移動しておきます」

背中でグラスの声をきく。

「グラスが運ばなくてもいいのよ。
本宮の力持ちの使用人に、声をかけておくから」

「大丈夫ですよ。
テーブルの一つや二つ軽いもんですよ」

きっと後ろでグラスは、手でガッツポーズをつくっていることだろう。

こういう時の彼女のくせなのだ。

「爽やかなお茶会になりそうですね」

グラスの弾んだ声がする。

「そうね」

本宮のたくさんの窓に一つ一つ視線を移しながら、生返事をした。

「氷の王子と出会ったのは、マーガレットお姉様の結婚の祝宴だったわね。
もう何年前になるのかしら」

ポツリと呟く。

祝宴は大広間で行われた。

会場のいたるところは花で飾られ、ズラリと並んだテーブルには、各国からきた来賓の口にあうように工夫された、様々な料理が並べられていた。

天井には幾つもの豪華なシャンデリア、王立楽団が奏でる軽やかな音楽にあわせて踊る人々。

そして、ひときわ美しい主役のマーガレットお姉様。

その夜はとても華やかだった。

ただ一人。

私にかぎっては、気の滅入る夜だったけれど......。

「まあ。あれが噂の第三王女様なのね。
確かに、薄いピンクの髪と瞳をしているわ」

「不思議でしょ。
金髪碧眼じゃない王女様って、聞いたことがないのよねー」

「女王様と、ククス宰相の間にできた子供って言うのは本当ざますかしら」

「ありえるわね。
だって、あの王女様は生活魔法しか使えないらしいんですもの。
他の王女様たちと違いすぎるわ」

「しっ。声が大きいですことよ。
不敬罪で罰せられるわよ」

会場は、好奇な視線、ひそひそと囁かれる噂話であふれていた。

一応王女というのに、誰も話しかけてくる者はいない。

「それに比べて、第四王女のダリア様は、とても綺麗な金髪碧眼をなさっているわね」

「そうだね。
そのうえ火魔法を扱えるという。 
ぜひ、我が国の王子の嫁にしたいものだ」

「そちらになんて、とんでもないですわ。
ダリア王女様は、わが国にお輿入れしていただきたいと考えているざまあす」

私をおとしめる声と同じくらい聞こえてきたのは、ダリアへの賞賛だった。

ダリアは、マーガレットお姉様の次に注目されていたのだ。

年子の妹と比較されて、惨めな気持ちがつのっていった。

「王家の評判を落とす私なんて、ここにいない方がましよね。
しょせん私は、優秀な姉と妹の間にはさまれた谷間の王女なのよ」

長いため息をついた時、偶然ダリアと視線があう。

大勢の取り巻きに囲まれたダリアは、勝ち誇った笑みを見せた。

「気にしない。気にしない。
私は私よ」

いくら強がっても、悔しさと情けなさで
顔がこわばる。

「出席したのが間違いだっだわ」

近くのテーブルにあったオレンジ色のカクテルに手を伸ばし一気に飲みほす。

「あら、美味しいじゃない」

甘味と酸味がほどよくミックスされたそれは、今まで飲んだ中で一番口当たりがよかった。

「もう少し、いただくわ」

なんて言いながら、気がつけばテーブルの上のカクテルを全部飲み干していたのだ。

「ご馳走さまでした」

空っぽになったグラスに、丁寧に手をあわせてから、ドレスの裾をつまみ庭園へ飛びだした。
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