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六十六、生きていた王妃 2
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「そうだ、ローズ様。
そのワンピースはたしか」
そこまで言うと、グラスは先ほど私には地味だと評したワンピースに視線を移す。
「エレーナ王妃様のお召し物だった。
これを見たら、王妃様の記憶が戻られるかも、でしょ」
グラスの言いたかったことを、代弁する。
そんな簡単にいくとは思われない。
けど、だめもとで試してみよう。
ひょとしたら、見知らぬ私を王妃様はすぐに拒絶するかもしれない。
ゴクリと唾を飲み込んでから、一歩一歩王妃様の方へ近づいてゆく。
部屋はとても狭い。
玄関からベッドの距離なんて、たかがしれてい
るのに、とても遠く感じられたのだ。
「初めまして。
私はローズウッドと申します」
そう言うとカーテシをとる。
「初めまして。
あなたの髪と瞳の色は、とても可愛いわね」
エレーナ王妃は、とても人なつこい微笑みをうかべた。
「ありがとうございます。
さっそくですが、一つお聞きしてよろしいか」
「なんでしょうか。
なんでも聞いてくれて、かまわないのよ。
なぜかしら。
初対面のあなたに、とても親しみを感じてしまうのよ」
王妃はゆっくりと小首を傾げる。
「今日のこのワンピースのことなんです。
私には地味すぎませんか。
正直におっしゃって下さい」
「いいえ。よく似合っているわよ」
「そう言ってもらえたら喜しいです。
これはね。
元々は主人のお母様のワンピースなんです」
「そうなの。
本当に素敵なワンピースよ。
地味というより、落ちついたという言葉がぴったりだわ。
あなたも、とても品良く見えるわよ。
まるで王妃様のようだわ」
元々はお洋服が大好きな王妃様らしく、興味ぶかそうにじっくりとワンピースを眺めた後に、柔らかく微笑む。
「特に、この襟がお気に入りなのです。
こんな刺繍が、ほどこされているんですもの」
王妃様が見やすいように、身体を斜めに倒してゆく。
黒い襟には、王家の紋章が刺繍されている。
黒糸でつくられた紋章は、決して目立たない。
けれど糸はシルクなのだろうか。
近くでみると、光沢した紋章が浮かび上がるのだ。
きっとエレーナ王妃様だって、何度も目にしたはずよ。
「まあ。とても綺麗な刺繍ね。
この図案、私もどこかで見たことがあるわ。 一体どこだったかしら」
王妃様は額に手をあてて、しばらく考えていたが、最後はあきらめたように首を横にふった。
「駄目ね。
やはり思い出せないわ。
実はね、私は記憶喪失なの。
なんらかの事故にあって、ある村の渓谷で気を失っていたらしいの。
そこを運良く村人に発見されて、今はここで暮らしているのよ。
一生懸命、記憶を取り戻そうとしたのだけれど、全然うまくいかなくて。
最近はあきらめているのよ。
あとの人生、名無しの女で、生きていかなければならないわ」
王妃様はそう言うと、しょんぼりと細い肩を落とす。
レオ王そっくりのエメラルド色の瞳には、涙がうかんでいた。
まるで王様が悲しんでいるみたいね。
そう思うやいなや、勝手に身体が動きだした。
「お願いです。
私に記憶を取り戻すお手伝いを、させて下さい」
気がつけばエレーナ王妃様の肩を両手で、しっかりと抱きしめていたのだ。
そのワンピースはたしか」
そこまで言うと、グラスは先ほど私には地味だと評したワンピースに視線を移す。
「エレーナ王妃様のお召し物だった。
これを見たら、王妃様の記憶が戻られるかも、でしょ」
グラスの言いたかったことを、代弁する。
そんな簡単にいくとは思われない。
けど、だめもとで試してみよう。
ひょとしたら、見知らぬ私を王妃様はすぐに拒絶するかもしれない。
ゴクリと唾を飲み込んでから、一歩一歩王妃様の方へ近づいてゆく。
部屋はとても狭い。
玄関からベッドの距離なんて、たかがしれてい
るのに、とても遠く感じられたのだ。
「初めまして。
私はローズウッドと申します」
そう言うとカーテシをとる。
「初めまして。
あなたの髪と瞳の色は、とても可愛いわね」
エレーナ王妃は、とても人なつこい微笑みをうかべた。
「ありがとうございます。
さっそくですが、一つお聞きしてよろしいか」
「なんでしょうか。
なんでも聞いてくれて、かまわないのよ。
なぜかしら。
初対面のあなたに、とても親しみを感じてしまうのよ」
王妃はゆっくりと小首を傾げる。
「今日のこのワンピースのことなんです。
私には地味すぎませんか。
正直におっしゃって下さい」
「いいえ。よく似合っているわよ」
「そう言ってもらえたら喜しいです。
これはね。
元々は主人のお母様のワンピースなんです」
「そうなの。
本当に素敵なワンピースよ。
地味というより、落ちついたという言葉がぴったりだわ。
あなたも、とても品良く見えるわよ。
まるで王妃様のようだわ」
元々はお洋服が大好きな王妃様らしく、興味ぶかそうにじっくりとワンピースを眺めた後に、柔らかく微笑む。
「特に、この襟がお気に入りなのです。
こんな刺繍が、ほどこされているんですもの」
王妃様が見やすいように、身体を斜めに倒してゆく。
黒い襟には、王家の紋章が刺繍されている。
黒糸でつくられた紋章は、決して目立たない。
けれど糸はシルクなのだろうか。
近くでみると、光沢した紋章が浮かび上がるのだ。
きっとエレーナ王妃様だって、何度も目にしたはずよ。
「まあ。とても綺麗な刺繍ね。
この図案、私もどこかで見たことがあるわ。 一体どこだったかしら」
王妃様は額に手をあてて、しばらく考えていたが、最後はあきらめたように首を横にふった。
「駄目ね。
やはり思い出せないわ。
実はね、私は記憶喪失なの。
なんらかの事故にあって、ある村の渓谷で気を失っていたらしいの。
そこを運良く村人に発見されて、今はここで暮らしているのよ。
一生懸命、記憶を取り戻そうとしたのだけれど、全然うまくいかなくて。
最近はあきらめているのよ。
あとの人生、名無しの女で、生きていかなければならないわ」
王妃様はそう言うと、しょんぼりと細い肩を落とす。
レオ王そっくりのエメラルド色の瞳には、涙がうかんでいた。
まるで王様が悲しんでいるみたいね。
そう思うやいなや、勝手に身体が動きだした。
「お願いです。
私に記憶を取り戻すお手伝いを、させて下さい」
気がつけばエレーナ王妃様の肩を両手で、しっかりと抱きしめていたのだ。
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