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6夜 : 女性の名前
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女王ミレファの肖像画……
そこに描かれていたのは”私”だった。
「………どうして私の顔が…」
思いあたる所なんてなかった。
でもやっぱり彼女は私じゃない。
瞳の色が違うから。
一度見たら目が離せなくなるような…何かを彼女は持っていた。
彼女は長い髪をゆるく縛り、王女にしては簡素な服だった。ドレスでも、着物でもない民族衣装。
「あ、引き出しの中にあった冠…」
ミレファは触れることが出来なかったあの冠をつけていた。
「…………」
その時、背後から声が聞こえた。
『なぜこの部屋に入ってこられた…』
「え……」
振り向くと、昨日見たあの女の人が私を睨みつけていた。
「……あなたは…?」
『この城の守り人。とでも言っておこうか』
「やっぱり住人なの?」
『………』
彼女は何も言わなかった。
「あ、あなたが私達をここへ?」
『妾ではない。ここへ来た意味はおのずと分かるであろう。』
「…………どうして私と瓜二つなの…この肖像画。」
女の人はミレファの肖像画を見上げた。
それから私に向き直り、低い声で言った。
『そなたこそ……何故お前がミレファ様と瓜二つなのか…』
「え……」
それきり彼女は何も言わなかった。
気まずい沈黙が流れ、彼女が口を開いた。
『そろそろ戻りなさい。もうすぐ朝がくる。』
「え、もうそんな時間?」
私は慌てて扉に向った。振り向くと彼女はじっと立ったままだった。
「あなたの名前は?」
『アストリッド。』
アストリッドは表情1つ変えないまま、ゆっくりとした口調で言い、消え去った。
「アストリッド…」
私はみんながいる部屋に戻った。
「絵梨香。どこ行っていたの?」
心配そうに風華が駆け寄ってきた。
「あー…あのね、例の女の人に会ってね」
私は隠し部屋のことは何も言わなかった。
「何か聞いたの?」
「え?……ううん。あ、名前くらい…かな。アストリッドだって」
ミレファと瓜二つだということなんて、言えない。未だに信じられないし。
風華は腑に落ちないような表情をしたが何も言わなかった。
私は腕時計に目をやった。針は5時半をさしているのに相変わらず窓の外は真っ暗だった。
私達はアストリッドについて調べようと部屋を出た。
「人物について調べるなら…」
と、翔が地図を開いた。咲も地図を覗きこんだ。
「書庫…は?」
「うん。そこがいいかな。…あれ?」
書庫への通路を指で確認していた翔が手をとめた。
「どうしたの?」
私と風華も気になって聞いた。隼人と瑠美は2人で何やら話し込んでいて、声をかけ難い雰囲気だ。
翔は地図をじっと見つめた。
「通路が、途切れてるんだ。どこから行っても書庫にたどり着けない。」
「じゃあどうしたら…」
その時不意に体が言う事を聞かなくなった。
「え…」
「絵梨香?」
風華が私の手を握った。私は何故か握り返すことも出来なかった。そのまま私の体は何かに操られたかのように歩き出した。
「絵梨香?どこ行くんだよ?」
翔や、他のみんなが慌てて駆け寄ってきた。
私も分からないよ…なんで勝手に動くの?
私、どうしちゃったの…
昨日、隠し部屋の呪文を呟いた時のように、自分が自分では無いような錯覚に陥った。
『怖がらないで、書庫へ連れて行ってあげる。』
頭の中で、そんな言葉が聞こえた気がした。
そこに描かれていたのは”私”だった。
「………どうして私の顔が…」
思いあたる所なんてなかった。
でもやっぱり彼女は私じゃない。
瞳の色が違うから。
一度見たら目が離せなくなるような…何かを彼女は持っていた。
彼女は長い髪をゆるく縛り、王女にしては簡素な服だった。ドレスでも、着物でもない民族衣装。
「あ、引き出しの中にあった冠…」
ミレファは触れることが出来なかったあの冠をつけていた。
「…………」
その時、背後から声が聞こえた。
『なぜこの部屋に入ってこられた…』
「え……」
振り向くと、昨日見たあの女の人が私を睨みつけていた。
「……あなたは…?」
『この城の守り人。とでも言っておこうか』
「やっぱり住人なの?」
『………』
彼女は何も言わなかった。
「あ、あなたが私達をここへ?」
『妾ではない。ここへ来た意味はおのずと分かるであろう。』
「…………どうして私と瓜二つなの…この肖像画。」
女の人はミレファの肖像画を見上げた。
それから私に向き直り、低い声で言った。
『そなたこそ……何故お前がミレファ様と瓜二つなのか…』
「え……」
それきり彼女は何も言わなかった。
気まずい沈黙が流れ、彼女が口を開いた。
『そろそろ戻りなさい。もうすぐ朝がくる。』
「え、もうそんな時間?」
私は慌てて扉に向った。振り向くと彼女はじっと立ったままだった。
「あなたの名前は?」
『アストリッド。』
アストリッドは表情1つ変えないまま、ゆっくりとした口調で言い、消え去った。
「アストリッド…」
私はみんながいる部屋に戻った。
「絵梨香。どこ行っていたの?」
心配そうに風華が駆け寄ってきた。
「あー…あのね、例の女の人に会ってね」
私は隠し部屋のことは何も言わなかった。
「何か聞いたの?」
「え?……ううん。あ、名前くらい…かな。アストリッドだって」
ミレファと瓜二つだということなんて、言えない。未だに信じられないし。
風華は腑に落ちないような表情をしたが何も言わなかった。
私は腕時計に目をやった。針は5時半をさしているのに相変わらず窓の外は真っ暗だった。
私達はアストリッドについて調べようと部屋を出た。
「人物について調べるなら…」
と、翔が地図を開いた。咲も地図を覗きこんだ。
「書庫…は?」
「うん。そこがいいかな。…あれ?」
書庫への通路を指で確認していた翔が手をとめた。
「どうしたの?」
私と風華も気になって聞いた。隼人と瑠美は2人で何やら話し込んでいて、声をかけ難い雰囲気だ。
翔は地図をじっと見つめた。
「通路が、途切れてるんだ。どこから行っても書庫にたどり着けない。」
「じゃあどうしたら…」
その時不意に体が言う事を聞かなくなった。
「え…」
「絵梨香?」
風華が私の手を握った。私は何故か握り返すことも出来なかった。そのまま私の体は何かに操られたかのように歩き出した。
「絵梨香?どこ行くんだよ?」
翔や、他のみんなが慌てて駆け寄ってきた。
私も分からないよ…なんで勝手に動くの?
私、どうしちゃったの…
昨日、隠し部屋の呪文を呟いた時のように、自分が自分では無いような錯覚に陥った。
『怖がらないで、書庫へ連れて行ってあげる。』
頭の中で、そんな言葉が聞こえた気がした。
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