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ギフト
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「はあ・・・完全に二手に別れろってことか。」
ディスタンスの言葉に全員が目を見開いて彼女を見た。
「嘘だろ・・・!」
「人選はお任せします。」
『人間界か、魔界か。』
どうして。テストが終わって、いつものメンバーでカラオケをしていただけなのだ。9人もいたらなかなかマイクが回ってこないね~なんていいながら。歌う声よりやかましくタンバリン鳴らすやつがいたり、変な合いの手入れて良い歌を台無しにするやつがいたり。
それでいつもみたいに、また明日学校でって、駅で解散するはずだった。
それがなんだ。こんな訳の分からない場所に連れてこられて、挙句の果てに二手に別れろって。
「そんなの、全員人間界が良いに決まって・・・!」
「私は魔界だな~」
ずっと泣きそうな星夜の声を無視するようにディスタンスは言った。
「人間界に男性陣、魔界に女性陣・・・で、よろしいですね?」
「お前ホントにいいん?」
ディスタンスが珍しく心配するように私を見てきた。
「だって・・・なんかアンタら妙に状況把握できてるし・・・。」
「あぁ~・・・まあな。」
「思った以上に『あるある』の世界っぽいしね・・・。」
「うちらはまぁね・・・。なんていうかオタクでよかった(?)」
いや、ゆみこだすはともかくしぃは全く喋ってなかったじゃん。私よりポカーンとしてたって。
「ホントに大丈夫なのかこれで。女子に魔界行かすって・・・。」
全員納得した上での振り分けといっても、確かに普通ではこうはならないかもしれない。
永音は特に正義感が強い性格なので納得しきれない部分があるのだろう。
「お前話聞いてたか?魔界は『食糧事情の改善及び文化の発達』、人間界は『人間同士での戦争による自滅の回避』だぞ?」
やれやれといった様子のディスタンス。
「でも魔界だぞ!話が通じるかもわかんねーのに!!」
星夜も意外と私たちのことを心配しているらしい。でもどっちかというとあんたの方が心配だよ。
「こう言っちゃあれだけどむしろそっちの方が心配だなぁ。」
「なんで?!」
私の心を代弁してくれたしぃに対し、星夜は納得がいかないようだ。
女子組は強い。腕っぷしではなく、精神力が。
この中だったらおそらく一番脆いのは私だ。
彼女たちはよく泣き、よく笑う。そして、決して折れない。
だから私は、守ってくれそうな彼らではなく、炎の中ですら一緒に笑ってくれそうな彼女たちと行くことを選んだのだ。
「そっちメンタルが豆腐ばっかじゃん。」
「な~んだと?」
こんな会話をするのも次はいつになるのだろうか。
「右から豆腐(風真)、一つとばして豆腐(星夜)、鉄(永音)、ガラス(卯月)。」
「わかめは?」
「こいつはある意味鋼かもしらん。」
「うちらは?」
「鋼(でぃすたんす)、鋼(ゆみこだす)、鉄(しぃ)、ガラス(えりたく)。」
「否定できねぇ。」
あーあ。必ずまた会えるって、言われてはいるけど・・・。
この9人でする会話も当分おあずけなのか。
「てことでそっちはお前が折れたら終わりだからな!!がんばれ!!」
「きっっっつ」
ねぇ、みんな今どういう気持ちで笑ってる?
無意識に握っていた拳の指先は冷たくなっていた。
「次はギフトの割り振りか・・・。」
行先が決まったので、次は『ギフト』というものを決めていくらしい。要は特殊能力というか、必殺技?みたいなことだって言われたけど。
「漫画の世界で活躍するのはどんなの?」
「あれだな、『鑑定』」
「弱そう。」
特殊能力ってなんかもっと念力!とかじゃないの?ビーム撃つとか。
「あー!鑑定強いんだよ!?物の善し悪しがわかったり、物によっては人のステータスが見られたりとか!!」
ゆみこだすは必至に『鑑定』がいかに有用かを騙り始めた。私たちの住む現代日本では物事のほとんどが解明されているが、異世界の場合そうでないことが多い。それを利用してうんたらかんたら。
「・・・有用そうだな。」
卯月には理解されたらしい。私は途中から聞くのを諦めた。
話し合いはオタク(女子)たちを中心に進められる。そもそもほかのメンバーは選択肢が何かすらわからないのだ。
「あと~『錬金術』?」
「それは強そう。」
パッと星夜が顔を上げた。
さっきからあんたは強いか弱いかしか気にしてないの?
「主に金儲けに使う。」
「なんでやねん」
「お前少年漫画の読みすぎ。」
夢がないな・・・。あれ?むしろ夢があるのか?砂を砂金に変える・・・的なことでしょ?
「あとあれじゃない!?『ネットショッピング』!」
「あ~~~www」
「は???お取り寄せ的なアレ???」
現代で大活躍のネットショッピング。
私はさほどお世話になったことはないけど、最近は出来立ての料理なんかも届けてもらう時代だもんね。
「その世界の通貨で元の世界の物を取り寄せるっていうw」
「それ絶対誰か取ろう。」
ゆみこだすの言葉に速攻で反応する星夜。確かになじみのあるものが一切ない世界で現代のものが取り寄せられるのは、有用なだけでなく心の支えにもなるだろう。
「適性ある奴がいればな。」
「取れそうな人います?」
「そうですね・・・そちらのあなたか、あなたなら。」
アリステアに選ばれたのは、星夜としぃ。
「ネットショッピングの適正ってなにwwww」
「取り寄せ楽しいぞ?後あれ、宅配料理。」
「あ~・・・」
星夜は世界中のお菓子を取り寄せるのがブームらしい。このボンボンめ。
「しぃは?何買ってるの?」
「あーの・・・あれ、本とか。」
なぜか多少言いよどんだ様子のしぃだったが、本なら確かに自分の足で探すより取り寄せた方が便利だろう。
「本は取り寄せ便利かもね~」
((同人誌か・・・。))
ディスタンスとゆみこだすの目が生暖かいような気がしたが何だったのだろう。
「じゃあ俺はそれで!」
「わかりました。」
「しぃは?」
「チーム別に一人ずついた方がいんじゃね?」
「魔界は通貨があるのか?」
卯月の言葉に全員がそうだ、という表情を浮かべた。
「いえ、食べ物にも困っている状況ですから・・・。」
「じゃあダメじゃん。」
「聞いといてよかったな。」
ギフトの無駄撃ちなんて絶対にできない。
話し合いをしているうちに私の心もきまって来た。私の神様たちだってそう言っていただろう。
『運命なんてクソくらえ』だ。死に戻りなんて絶対にごめんだ。
生きて帰ってやる。
そのままの流れで魔界組のギフトが決まった。
私が『食特化』。さっきも話に出たが『ギフト』には適性というものがあるらしい。その人がある程度練度を上げたものや、才能がある物でないと授かることができないのだ。
平凡な私が取れそうなものは少ないが、料理なら自信があるしきっと役に立つ。
しぃが『錬金術』。
絵をかくことやものづくりの得意な彼女にしか取れなかったギフトだ。
ディスタンスが『戦闘特化』。ちなみにこれは本人が取りたいと言ってきかなかった。こいつは頭もいいし器用なくせに脳内は少年なのだ。ロマンだなんだかんだとうるさいのでそのまま決定した。
ゆみこだすが『天使のギフト』。これはアリステアの推薦から。不定期にその時彼女が『一番欲しているもの』が届くらしい。コントロールが難しいながらも、可能性が無限大のギフトなんだとか。
「次、人間界組~。」
何かどんどんノリが軽くなっているでぃすたんす。やっぱ鋼メンタルだな。
「とりあえず決まってるのが星夜だけだろ?」
『内乱による自滅の回避』。これが人間界組に課せられた条件だ。
召喚された彼らがどの立ち位置につくかわからないとはいえ、
「一人くらいは戦えないとまずいよな。」
「・・・。」
「戦いたくねぇよな・・・。」
数秒の沈黙。当たり前だろう。彼らはただの高校生なのだ。
命のやり取りなど想像すらつかない。
「・・・適性がある人は?」
恐る恐る風真が問う。
「適性は、」
「俺が戦う。」
答えを聞く前に前に出たのは、永音だった。
「・・・いいのか。」
「・・・運動部なめんな。」
「あなたなら、武具の適正もあるかと。」
永音は決心したようにスッと卯月を見つめた。
両方の拳は震えるほどにギュッと握りしめられている。
「・・・お前、頭脳戦は何とかしろよ。」
「わかってる。」
お前にだけは、負けない。
真っ直ぐに真摯に、そして力強い永音。
何でも出来る癖に皮肉屋でリアリストな卯月。
いつも敵対しがちな彼らの間には、一種の信頼のようなものが見える。
「俺に『鑑定』の適性はあるか。」
「ええ、あなたになら高度鑑定が可能です。」
高度鑑定、と言われてもわかりはしないが。卯月は、それでいいと言って一歩下がった。
「何が良いんだろう、あと必要そうなのは・・・。」
「オタク組大活躍だな。」
金策、戦力、価値を見極める力。バランスよく能力がばらけているだけに何を入れるべきか悩んでいる様子だ。
「『威圧』『説得』あたり強そうだけどな・・・。」
「この方にはどちらも適性がありませんね。」
「だよねぇ~」
「ごめん・・・。」
温厚で口があまり達者ではない風真には適性が無いのは目に見えていたが。
アリステアは風真をじっと見つめると。
「こちらの方は・・・『テイマー』の素質があるようですが。」
テイマー?これは私もRPGゲームをしたことがあるからわかる。要は魔物や獣を使役できる力。
風真はなぜこの適性を持っているのか?ペット飼ってたっけ?
ふと全員の視線が風真の隣に立っている人物に向けられた。
「ぶはーーーーーーー!!」
「確かにね!!wwww凄腕だ!!!wwwww」
「やめたげて!wwwww」
いつも風真と行動を共にしているわかめという人物。小柄でいつも眠たそうな目をしている。
目を離すと何をするか誰にも予想ができないトラブルメーカーだが、なぜか周りに愛されるマスコット的存在だ。風真はわかめに対してあれやこれやといつも世話を焼いている。
そんな彼にテイマーの適性があるということは、まあそういうことだろう。
男性陣もゲーム等で『テイマー』の存在は知っているわけで。
「いや、おまっ・・・!最高・・・!!!」
「・・・・・。」
諦めたような苦笑いをする風真であった。
「・・・そんで、残るはわかめか。」
「こいつは何か適性あります?」
アリステアはわかめを見つめると、少し驚いたような顔をして言った。
「適性は・・・『愛嬌』それから・・・『豪運』。」
「豪運!???」
「おいぜっったいそれにしろ!!!勝ち確だから!!!」
興奮するオタクたち。
「なに!なんだよ豪運って!」
ちょっと引き気味の男子たち。
「強運追い越してもはや神に愛されてるレベルの運の持ち主ってことだよ!」
「戦場に行くなら絶対連れてけ!なぜか弾が全部避けてくはずだから!」
「えぇ・・・おまえ強・・・。」
「??」
本人はよくわかっていないようだったが、女子の勢いに負けて『豪運』に決定。
・・・これで全員のギフトが決まった。
さっきまでの明るさはどこに行ったのだろうか。察したように全員が黙り込んだ。
「・・・あ~なんだ。お前ら、頑張れよ。」
人間界組に茶化したようにエールを送るでぃすたんす。
「お前こそだろ・・・。まあ、お前は殺しても死なねぇか。」
永音はすでに決心を固めたのだろう。笑って答えた。
「そうだよ・・・。女はしぶといんだから・・・。」
私も何とか笑って見せる。本当は涙が溢れそうだけど。
「そうそう!絶対また会えるんだからさ!」
「そうだな!再会したときに武勇伝聞かせまくってやる!」
「あはは!待ってる!うちらも負けないよ!!」
「・・・僕らにしんみりしたのは似合わないか。」
「全員、生きて帰るぞ。」
「「ああ!」」
「では、よろしいですか。」
「はい!」
アリステアはふわりとほほ笑むと両手を前に掲げた。
「双方同時に転移開始します。」
・・・私のいとし子たちを頼みます・・・
ディスタンスの言葉に全員が目を見開いて彼女を見た。
「嘘だろ・・・!」
「人選はお任せします。」
『人間界か、魔界か。』
どうして。テストが終わって、いつものメンバーでカラオケをしていただけなのだ。9人もいたらなかなかマイクが回ってこないね~なんていいながら。歌う声よりやかましくタンバリン鳴らすやつがいたり、変な合いの手入れて良い歌を台無しにするやつがいたり。
それでいつもみたいに、また明日学校でって、駅で解散するはずだった。
それがなんだ。こんな訳の分からない場所に連れてこられて、挙句の果てに二手に別れろって。
「そんなの、全員人間界が良いに決まって・・・!」
「私は魔界だな~」
ずっと泣きそうな星夜の声を無視するようにディスタンスは言った。
「人間界に男性陣、魔界に女性陣・・・で、よろしいですね?」
「お前ホントにいいん?」
ディスタンスが珍しく心配するように私を見てきた。
「だって・・・なんかアンタら妙に状況把握できてるし・・・。」
「あぁ~・・・まあな。」
「思った以上に『あるある』の世界っぽいしね・・・。」
「うちらはまぁね・・・。なんていうかオタクでよかった(?)」
いや、ゆみこだすはともかくしぃは全く喋ってなかったじゃん。私よりポカーンとしてたって。
「ホントに大丈夫なのかこれで。女子に魔界行かすって・・・。」
全員納得した上での振り分けといっても、確かに普通ではこうはならないかもしれない。
永音は特に正義感が強い性格なので納得しきれない部分があるのだろう。
「お前話聞いてたか?魔界は『食糧事情の改善及び文化の発達』、人間界は『人間同士での戦争による自滅の回避』だぞ?」
やれやれといった様子のディスタンス。
「でも魔界だぞ!話が通じるかもわかんねーのに!!」
星夜も意外と私たちのことを心配しているらしい。でもどっちかというとあんたの方が心配だよ。
「こう言っちゃあれだけどむしろそっちの方が心配だなぁ。」
「なんで?!」
私の心を代弁してくれたしぃに対し、星夜は納得がいかないようだ。
女子組は強い。腕っぷしではなく、精神力が。
この中だったらおそらく一番脆いのは私だ。
彼女たちはよく泣き、よく笑う。そして、決して折れない。
だから私は、守ってくれそうな彼らではなく、炎の中ですら一緒に笑ってくれそうな彼女たちと行くことを選んだのだ。
「そっちメンタルが豆腐ばっかじゃん。」
「な~んだと?」
こんな会話をするのも次はいつになるのだろうか。
「右から豆腐(風真)、一つとばして豆腐(星夜)、鉄(永音)、ガラス(卯月)。」
「わかめは?」
「こいつはある意味鋼かもしらん。」
「うちらは?」
「鋼(でぃすたんす)、鋼(ゆみこだす)、鉄(しぃ)、ガラス(えりたく)。」
「否定できねぇ。」
あーあ。必ずまた会えるって、言われてはいるけど・・・。
この9人でする会話も当分おあずけなのか。
「てことでそっちはお前が折れたら終わりだからな!!がんばれ!!」
「きっっっつ」
ねぇ、みんな今どういう気持ちで笑ってる?
無意識に握っていた拳の指先は冷たくなっていた。
「次はギフトの割り振りか・・・。」
行先が決まったので、次は『ギフト』というものを決めていくらしい。要は特殊能力というか、必殺技?みたいなことだって言われたけど。
「漫画の世界で活躍するのはどんなの?」
「あれだな、『鑑定』」
「弱そう。」
特殊能力ってなんかもっと念力!とかじゃないの?ビーム撃つとか。
「あー!鑑定強いんだよ!?物の善し悪しがわかったり、物によっては人のステータスが見られたりとか!!」
ゆみこだすは必至に『鑑定』がいかに有用かを騙り始めた。私たちの住む現代日本では物事のほとんどが解明されているが、異世界の場合そうでないことが多い。それを利用してうんたらかんたら。
「・・・有用そうだな。」
卯月には理解されたらしい。私は途中から聞くのを諦めた。
話し合いはオタク(女子)たちを中心に進められる。そもそもほかのメンバーは選択肢が何かすらわからないのだ。
「あと~『錬金術』?」
「それは強そう。」
パッと星夜が顔を上げた。
さっきからあんたは強いか弱いかしか気にしてないの?
「主に金儲けに使う。」
「なんでやねん」
「お前少年漫画の読みすぎ。」
夢がないな・・・。あれ?むしろ夢があるのか?砂を砂金に変える・・・的なことでしょ?
「あとあれじゃない!?『ネットショッピング』!」
「あ~~~www」
「は???お取り寄せ的なアレ???」
現代で大活躍のネットショッピング。
私はさほどお世話になったことはないけど、最近は出来立ての料理なんかも届けてもらう時代だもんね。
「その世界の通貨で元の世界の物を取り寄せるっていうw」
「それ絶対誰か取ろう。」
ゆみこだすの言葉に速攻で反応する星夜。確かになじみのあるものが一切ない世界で現代のものが取り寄せられるのは、有用なだけでなく心の支えにもなるだろう。
「適性ある奴がいればな。」
「取れそうな人います?」
「そうですね・・・そちらのあなたか、あなたなら。」
アリステアに選ばれたのは、星夜としぃ。
「ネットショッピングの適正ってなにwwww」
「取り寄せ楽しいぞ?後あれ、宅配料理。」
「あ~・・・」
星夜は世界中のお菓子を取り寄せるのがブームらしい。このボンボンめ。
「しぃは?何買ってるの?」
「あーの・・・あれ、本とか。」
なぜか多少言いよどんだ様子のしぃだったが、本なら確かに自分の足で探すより取り寄せた方が便利だろう。
「本は取り寄せ便利かもね~」
((同人誌か・・・。))
ディスタンスとゆみこだすの目が生暖かいような気がしたが何だったのだろう。
「じゃあ俺はそれで!」
「わかりました。」
「しぃは?」
「チーム別に一人ずついた方がいんじゃね?」
「魔界は通貨があるのか?」
卯月の言葉に全員がそうだ、という表情を浮かべた。
「いえ、食べ物にも困っている状況ですから・・・。」
「じゃあダメじゃん。」
「聞いといてよかったな。」
ギフトの無駄撃ちなんて絶対にできない。
話し合いをしているうちに私の心もきまって来た。私の神様たちだってそう言っていただろう。
『運命なんてクソくらえ』だ。死に戻りなんて絶対にごめんだ。
生きて帰ってやる。
そのままの流れで魔界組のギフトが決まった。
私が『食特化』。さっきも話に出たが『ギフト』には適性というものがあるらしい。その人がある程度練度を上げたものや、才能がある物でないと授かることができないのだ。
平凡な私が取れそうなものは少ないが、料理なら自信があるしきっと役に立つ。
しぃが『錬金術』。
絵をかくことやものづくりの得意な彼女にしか取れなかったギフトだ。
ディスタンスが『戦闘特化』。ちなみにこれは本人が取りたいと言ってきかなかった。こいつは頭もいいし器用なくせに脳内は少年なのだ。ロマンだなんだかんだとうるさいのでそのまま決定した。
ゆみこだすが『天使のギフト』。これはアリステアの推薦から。不定期にその時彼女が『一番欲しているもの』が届くらしい。コントロールが難しいながらも、可能性が無限大のギフトなんだとか。
「次、人間界組~。」
何かどんどんノリが軽くなっているでぃすたんす。やっぱ鋼メンタルだな。
「とりあえず決まってるのが星夜だけだろ?」
『内乱による自滅の回避』。これが人間界組に課せられた条件だ。
召喚された彼らがどの立ち位置につくかわからないとはいえ、
「一人くらいは戦えないとまずいよな。」
「・・・。」
「戦いたくねぇよな・・・。」
数秒の沈黙。当たり前だろう。彼らはただの高校生なのだ。
命のやり取りなど想像すらつかない。
「・・・適性がある人は?」
恐る恐る風真が問う。
「適性は、」
「俺が戦う。」
答えを聞く前に前に出たのは、永音だった。
「・・・いいのか。」
「・・・運動部なめんな。」
「あなたなら、武具の適正もあるかと。」
永音は決心したようにスッと卯月を見つめた。
両方の拳は震えるほどにギュッと握りしめられている。
「・・・お前、頭脳戦は何とかしろよ。」
「わかってる。」
お前にだけは、負けない。
真っ直ぐに真摯に、そして力強い永音。
何でも出来る癖に皮肉屋でリアリストな卯月。
いつも敵対しがちな彼らの間には、一種の信頼のようなものが見える。
「俺に『鑑定』の適性はあるか。」
「ええ、あなたになら高度鑑定が可能です。」
高度鑑定、と言われてもわかりはしないが。卯月は、それでいいと言って一歩下がった。
「何が良いんだろう、あと必要そうなのは・・・。」
「オタク組大活躍だな。」
金策、戦力、価値を見極める力。バランスよく能力がばらけているだけに何を入れるべきか悩んでいる様子だ。
「『威圧』『説得』あたり強そうだけどな・・・。」
「この方にはどちらも適性がありませんね。」
「だよねぇ~」
「ごめん・・・。」
温厚で口があまり達者ではない風真には適性が無いのは目に見えていたが。
アリステアは風真をじっと見つめると。
「こちらの方は・・・『テイマー』の素質があるようですが。」
テイマー?これは私もRPGゲームをしたことがあるからわかる。要は魔物や獣を使役できる力。
風真はなぜこの適性を持っているのか?ペット飼ってたっけ?
ふと全員の視線が風真の隣に立っている人物に向けられた。
「ぶはーーーーーーー!!」
「確かにね!!wwww凄腕だ!!!wwwww」
「やめたげて!wwwww」
いつも風真と行動を共にしているわかめという人物。小柄でいつも眠たそうな目をしている。
目を離すと何をするか誰にも予想ができないトラブルメーカーだが、なぜか周りに愛されるマスコット的存在だ。風真はわかめに対してあれやこれやといつも世話を焼いている。
そんな彼にテイマーの適性があるということは、まあそういうことだろう。
男性陣もゲーム等で『テイマー』の存在は知っているわけで。
「いや、おまっ・・・!最高・・・!!!」
「・・・・・。」
諦めたような苦笑いをする風真であった。
「・・・そんで、残るはわかめか。」
「こいつは何か適性あります?」
アリステアはわかめを見つめると、少し驚いたような顔をして言った。
「適性は・・・『愛嬌』それから・・・『豪運』。」
「豪運!???」
「おいぜっったいそれにしろ!!!勝ち確だから!!!」
興奮するオタクたち。
「なに!なんだよ豪運って!」
ちょっと引き気味の男子たち。
「強運追い越してもはや神に愛されてるレベルの運の持ち主ってことだよ!」
「戦場に行くなら絶対連れてけ!なぜか弾が全部避けてくはずだから!」
「えぇ・・・おまえ強・・・。」
「??」
本人はよくわかっていないようだったが、女子の勢いに負けて『豪運』に決定。
・・・これで全員のギフトが決まった。
さっきまでの明るさはどこに行ったのだろうか。察したように全員が黙り込んだ。
「・・・あ~なんだ。お前ら、頑張れよ。」
人間界組に茶化したようにエールを送るでぃすたんす。
「お前こそだろ・・・。まあ、お前は殺しても死なねぇか。」
永音はすでに決心を固めたのだろう。笑って答えた。
「そうだよ・・・。女はしぶといんだから・・・。」
私も何とか笑って見せる。本当は涙が溢れそうだけど。
「そうそう!絶対また会えるんだからさ!」
「そうだな!再会したときに武勇伝聞かせまくってやる!」
「あはは!待ってる!うちらも負けないよ!!」
「・・・僕らにしんみりしたのは似合わないか。」
「全員、生きて帰るぞ。」
「「ああ!」」
「では、よろしいですか。」
「はい!」
アリステアはふわりとほほ笑むと両手を前に掲げた。
「双方同時に転移開始します。」
・・・私のいとし子たちを頼みます・・・
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