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第2章 黒騎士と魔王
第63話 一触即発!望まぬ対決!!
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「なるほど。貴公らも隠し通路の存在を疑って、探し当てたということか。」
鉢合わせした俺たちは、一旦地上に出て、お互いの事情を話し合うことになった。当然サヨちゃんを含めた他のメンバーも来ていた。だが、どういうわけか、雰囲気はよろしくない。一触即発な感じが漂っている。
「こちらも貴公らを捜索するつもりでここへ戻ってきた。古い資料で隠し通路の存在も確認した上でな。」
あるとわかった上でやってきたわけか。こちらは憶測と希望だけでなんとか探し当てたというのに。……ひょっとして、そのまま待ってたほうがよかったのか?
「それはどうも。ありがとうよ。落ちてそのまま死んでたかもしれないのに。」
「例えそうだったとしても、捜索は行うさ。生死は大した問題ではないよ。」
生死は問題じゃない?死体を回収して弔ってくれたかもしれないってことか?……いや、まてよ?額冠か?額冠の回収は確実にしないといけないからだろうか?ヴァルのやつも欲しがってたし、重要な遺物だからか?
「最も貴公が死んでいるとは思ってはいなかったよ。私が考えていた可能性は……、」
「可能性?」
「貴公がその娘を連れて私から逃げる可能性を考えていたのだよ。」
「……!?」
やっぱ、見逃してはもらえないわけね。見つからずにそのままどこかへ逃げようとしていたのは事実だった。そして、運悪く鉢合わせしてしまった。
「ねえ、さすがに厳しすぎるんじゃないの?この子が悪いわけじゃないし、この子も悪い子じゃないよ?」
「その娘の善悪は関係ない。あるのはデーモン・コアをその体に宿していると言う事実だけだ。」
「そこをなんとか。体からコアを取り除く手段とかあるんじゃないの?」
「そのような方法はない。方法はただ一つ。……その娘ごと浄化を行うしかないのだよ。当然それは娘の死を意味している。」
納得できない!なんでこんないい子が死ななければならないんだ!理不尽すぎる。
「俺がそれを許さないと言ったら?」
「無論、例え貴公が勇者であったとしても許しておくわけにはいかない。貴公を斬り捨ててでも私はデーモンを駆除する。」
エドワードは宣戦布告とばかりに、剣を鞘からゆっくりと抜いた。言葉だけではない。コイツは本気だ。
「マジかよ。なんでアンタと戦わなきゃいけないんだよ。」
エドワードは無言で剣の切っ先をこちらに向けている。こうなれば……、
「アンタがその気なら、俺にも考えがあるぜ!」
俺はエドワードにそっぽを向き、後ろの方にいたエルちゃんの元へと向かった。そして、その手を取ろうとした時、俺たち二人の間目掛けて、光球が飛んできた。
「なっ……!?」
「逃げるおつもりですか?」
その声がした方へ顔を向けるとクロエがこちらに錫杖を向けた状態で構えていた。
「ワタクシ達から逃げられるとでもお思いですか?決して逃がしませんよ。必ず浄化して差し上げます。」
本気で殺意を向けられている。こちらをデーモンでも見るかのような目つきで睨んでいた。エドワード以上に本気を感じる。
「なあ、アンタらも同じ意見なのかよ?」
攻撃態勢を取っていない、ウネグ、ジェイにも問いかけてみる。わずかな希望を込めて。
「同じも何も、俺たちゃ、そういう仕事をやってるんでな。エドの旦那の意向に従うまでさ。テメエも覚悟を決めな!」
「右に同じニャ。かわいそうだとは思うけど、仕方がないのニャ。浄化してあげるのがその子のためなのニャ。」
この二人は積極的にこちらを攻撃するつもりはなさそうだが、エドワードに反対するつもりはなさそうだ。でも……、
「なあ、サヨちゃん!サヨちゃんは俺の意見に賛成してくれるよな?」
さっきから、ダンマリを決め込んでいるサヨちゃんにも聞いてみる。さすがに俺に反対するなんてことは……、
「そなたの気持ちはわかるが、さすがにその娘を見逃すわけにはいかんのじゃよ。」
「嘘だろ。サヨちゃんまで……。」
まるで追い詰められた歴史上の名将のようだった。四方から故郷の歌でも聞こえてきそうだ。状況は違うけど、今の自分の様な心境だったに違いない。
「わかった。要するにアンタらを倒せばいいんだろ?」
「フッ、勝つつもりでおいでか?勇壮なことだ。だが、私は決して、その心意気は嫌いではない。」
さあ、どうする?どうやって勝つ?相手はどんな戦い方をしてくるのか?だけど、勝たなくてはいけない。自分のためじゃない。エルちゃんの命がかかっているんだ。
「貴公の心意気に免じて、ここは私一人で相手をすることにしよう。みんな、決して手を出さないでくれ。」
「イグレス様!」
「すまぬ、クロエ。これは私のわがままであることは百も承知だ。デーモンは決して許してはならぬ存在だ。しかし、勇者殿の心意気にも答えなくてはならぬのだ。」
「……クッ!!」
クロエは納得がいってない様子だが、エドワードの意向にも逆らえないようだ。
「こうであれば、貴公も心ゆくまで戦えよう。さあ、来たまえ!」
やるしかない。もしかしたら、エドワードに勝ちさえすれば、なんとかなるかもしれない。相手が一人なら……。とはいえ、一人で相手するって事は勝つ自信があるということなのかもしれない。
「じゃあ、いくぜ!」
俺は遠慮なしに斬りかかっていった。相手はやすやすと攻撃を受け止めてみせた。挨拶代わりの攻撃とはいえ、いとも簡単に止められたのはくやしいけど。
「フム、悪くない一撃だ。力、速さ、共にそれなりの修練を積んでおいでのようだ。」
今の一撃で色々分析されてしまっている。むこうはだいぶ余裕がありそうだ。
「だが、私に勝つつもりであるのならば、もう一声、必要だな!」
俺の剣の歯を滑らせて、体勢を崩してきた。意表を突かれて、思わず体勢を崩してしまった。そこへすかさず、相手の攻撃が来た。鋭い突きだ!
「とっ!」
ギリギリで躱す。危ない。そしてすぐさま二撃目が来た。またしても、鋭い突きだ。
「くうっ!」
またしても、ギリギリで躱す羽目になった。……そして躱した突きをそのまま横になぎ払ってきた。
「おわっ!」
身をかがめて躱す。しかし、髪の毛をかすめてしまったようだ。まだ、攻撃の手は止まず、攻撃の軌道は袈裟懸けに変化してきた。
「うおっ!?」
これにはたまらず、後ろへ飛び退いて躱す形になった。これなら追撃は出来ないはずだ。
「どうした?防戦一方ではないか。このままでは私には勝つことはできぬよ。」
言われたとおりだ。出だしの一撃だけで一向に攻撃できていなかった。ていうか、この人強い。剣技だけならヴァル・ムングなみの強さだ。と言っても強さの質はかなり違うけど。ヴァルが力と勢いで攻めてくるタイプだったが、エドワードは速さとテクニックでくるタイプだ。俺の苦手なタイプだ。
「デーモンと戦っていたときの技はどうした。あの技を使わぬ限り、貴公は敗北することになる!」
エドワードの剣が輝きを帯び始めた。これはまさか……!
「貴公が来ないのであれば、これで決めさせて頂こう!勇者の三大奥義の一つ……、」
低く身構え、剣先をまえに向けたまま、後ろに引く体勢を取った。このまま突っ込んでくるつもりか!
「シャイニング・ガスト!!」
強烈に輝く光弾が自分に向かって突っ込んでくる!どうやって凌ぐ?判断している時間はあまりにも短すぎた。
「ぐおおおおっ!」
とっさに、本能の赴くままに防御態勢を取った。受け止めた一撃から凄まじい衝撃が伝わってきた。耐えきれず、後ろに吹き飛ばされてしまった。
「らぅしっ!!!」
壁に激突し頭をぶつけた。その拍子に変な声が出た。痛い。だが、相手はおそらくこちらを殺すつもりだったに違いない。この程度で済んだだけでもマシな方だろう。
「戦い方が消極的とはいえ、この技を凌ぐとは大したものだ。これで、少しは本気を出す気になったかな?」
くそう、まだ頭がクラクラする。しかも、手が痺れてる。これじゃ、剣を持つ手に力が入らねえや。
「凌いだとはいえ、先ほどの攻撃が身に染みたと見える。だが、私は攻撃を緩めるつもりはない。覚悟!」
ヤバイ。もう一度、あの技で来るみたいだ。どうする。このままでは打つ手がない。こういう時は……、
(ザクッ!)
俺は無意識に剣を目の前の地面に突き立てた。これはまさか?俺の体よ、あの技を使えというのか!
「……!?どういうつもりだ?まさか、あきらめたというわけではあるまいな?構わず、私は君を倒させて貰う!」
あの技が来る。閃光がこちらに向かってくる。……それなのに俺は落ち着いていた。目を閉じていた。もう何をするのかは決まっていた。……いや、それどころか、自分の勝利を確信してさえいた。
「勇者よ!我が一撃で昇天するがいい!」
「……一0八計が一つ!凰留撃!」
鉢合わせした俺たちは、一旦地上に出て、お互いの事情を話し合うことになった。当然サヨちゃんを含めた他のメンバーも来ていた。だが、どういうわけか、雰囲気はよろしくない。一触即発な感じが漂っている。
「こちらも貴公らを捜索するつもりでここへ戻ってきた。古い資料で隠し通路の存在も確認した上でな。」
あるとわかった上でやってきたわけか。こちらは憶測と希望だけでなんとか探し当てたというのに。……ひょっとして、そのまま待ってたほうがよかったのか?
「それはどうも。ありがとうよ。落ちてそのまま死んでたかもしれないのに。」
「例えそうだったとしても、捜索は行うさ。生死は大した問題ではないよ。」
生死は問題じゃない?死体を回収して弔ってくれたかもしれないってことか?……いや、まてよ?額冠か?額冠の回収は確実にしないといけないからだろうか?ヴァルのやつも欲しがってたし、重要な遺物だからか?
「最も貴公が死んでいるとは思ってはいなかったよ。私が考えていた可能性は……、」
「可能性?」
「貴公がその娘を連れて私から逃げる可能性を考えていたのだよ。」
「……!?」
やっぱ、見逃してはもらえないわけね。見つからずにそのままどこかへ逃げようとしていたのは事実だった。そして、運悪く鉢合わせしてしまった。
「ねえ、さすがに厳しすぎるんじゃないの?この子が悪いわけじゃないし、この子も悪い子じゃないよ?」
「その娘の善悪は関係ない。あるのはデーモン・コアをその体に宿していると言う事実だけだ。」
「そこをなんとか。体からコアを取り除く手段とかあるんじゃないの?」
「そのような方法はない。方法はただ一つ。……その娘ごと浄化を行うしかないのだよ。当然それは娘の死を意味している。」
納得できない!なんでこんないい子が死ななければならないんだ!理不尽すぎる。
「俺がそれを許さないと言ったら?」
「無論、例え貴公が勇者であったとしても許しておくわけにはいかない。貴公を斬り捨ててでも私はデーモンを駆除する。」
エドワードは宣戦布告とばかりに、剣を鞘からゆっくりと抜いた。言葉だけではない。コイツは本気だ。
「マジかよ。なんでアンタと戦わなきゃいけないんだよ。」
エドワードは無言で剣の切っ先をこちらに向けている。こうなれば……、
「アンタがその気なら、俺にも考えがあるぜ!」
俺はエドワードにそっぽを向き、後ろの方にいたエルちゃんの元へと向かった。そして、その手を取ろうとした時、俺たち二人の間目掛けて、光球が飛んできた。
「なっ……!?」
「逃げるおつもりですか?」
その声がした方へ顔を向けるとクロエがこちらに錫杖を向けた状態で構えていた。
「ワタクシ達から逃げられるとでもお思いですか?決して逃がしませんよ。必ず浄化して差し上げます。」
本気で殺意を向けられている。こちらをデーモンでも見るかのような目つきで睨んでいた。エドワード以上に本気を感じる。
「なあ、アンタらも同じ意見なのかよ?」
攻撃態勢を取っていない、ウネグ、ジェイにも問いかけてみる。わずかな希望を込めて。
「同じも何も、俺たちゃ、そういう仕事をやってるんでな。エドの旦那の意向に従うまでさ。テメエも覚悟を決めな!」
「右に同じニャ。かわいそうだとは思うけど、仕方がないのニャ。浄化してあげるのがその子のためなのニャ。」
この二人は積極的にこちらを攻撃するつもりはなさそうだが、エドワードに反対するつもりはなさそうだ。でも……、
「なあ、サヨちゃん!サヨちゃんは俺の意見に賛成してくれるよな?」
さっきから、ダンマリを決め込んでいるサヨちゃんにも聞いてみる。さすがに俺に反対するなんてことは……、
「そなたの気持ちはわかるが、さすがにその娘を見逃すわけにはいかんのじゃよ。」
「嘘だろ。サヨちゃんまで……。」
まるで追い詰められた歴史上の名将のようだった。四方から故郷の歌でも聞こえてきそうだ。状況は違うけど、今の自分の様な心境だったに違いない。
「わかった。要するにアンタらを倒せばいいんだろ?」
「フッ、勝つつもりでおいでか?勇壮なことだ。だが、私は決して、その心意気は嫌いではない。」
さあ、どうする?どうやって勝つ?相手はどんな戦い方をしてくるのか?だけど、勝たなくてはいけない。自分のためじゃない。エルちゃんの命がかかっているんだ。
「貴公の心意気に免じて、ここは私一人で相手をすることにしよう。みんな、決して手を出さないでくれ。」
「イグレス様!」
「すまぬ、クロエ。これは私のわがままであることは百も承知だ。デーモンは決して許してはならぬ存在だ。しかし、勇者殿の心意気にも答えなくてはならぬのだ。」
「……クッ!!」
クロエは納得がいってない様子だが、エドワードの意向にも逆らえないようだ。
「こうであれば、貴公も心ゆくまで戦えよう。さあ、来たまえ!」
やるしかない。もしかしたら、エドワードに勝ちさえすれば、なんとかなるかもしれない。相手が一人なら……。とはいえ、一人で相手するって事は勝つ自信があるということなのかもしれない。
「じゃあ、いくぜ!」
俺は遠慮なしに斬りかかっていった。相手はやすやすと攻撃を受け止めてみせた。挨拶代わりの攻撃とはいえ、いとも簡単に止められたのはくやしいけど。
「フム、悪くない一撃だ。力、速さ、共にそれなりの修練を積んでおいでのようだ。」
今の一撃で色々分析されてしまっている。むこうはだいぶ余裕がありそうだ。
「だが、私に勝つつもりであるのならば、もう一声、必要だな!」
俺の剣の歯を滑らせて、体勢を崩してきた。意表を突かれて、思わず体勢を崩してしまった。そこへすかさず、相手の攻撃が来た。鋭い突きだ!
「とっ!」
ギリギリで躱す。危ない。そしてすぐさま二撃目が来た。またしても、鋭い突きだ。
「くうっ!」
またしても、ギリギリで躱す羽目になった。……そして躱した突きをそのまま横になぎ払ってきた。
「おわっ!」
身をかがめて躱す。しかし、髪の毛をかすめてしまったようだ。まだ、攻撃の手は止まず、攻撃の軌道は袈裟懸けに変化してきた。
「うおっ!?」
これにはたまらず、後ろへ飛び退いて躱す形になった。これなら追撃は出来ないはずだ。
「どうした?防戦一方ではないか。このままでは私には勝つことはできぬよ。」
言われたとおりだ。出だしの一撃だけで一向に攻撃できていなかった。ていうか、この人強い。剣技だけならヴァル・ムングなみの強さだ。と言っても強さの質はかなり違うけど。ヴァルが力と勢いで攻めてくるタイプだったが、エドワードは速さとテクニックでくるタイプだ。俺の苦手なタイプだ。
「デーモンと戦っていたときの技はどうした。あの技を使わぬ限り、貴公は敗北することになる!」
エドワードの剣が輝きを帯び始めた。これはまさか……!
「貴公が来ないのであれば、これで決めさせて頂こう!勇者の三大奥義の一つ……、」
低く身構え、剣先をまえに向けたまま、後ろに引く体勢を取った。このまま突っ込んでくるつもりか!
「シャイニング・ガスト!!」
強烈に輝く光弾が自分に向かって突っ込んでくる!どうやって凌ぐ?判断している時間はあまりにも短すぎた。
「ぐおおおおっ!」
とっさに、本能の赴くままに防御態勢を取った。受け止めた一撃から凄まじい衝撃が伝わってきた。耐えきれず、後ろに吹き飛ばされてしまった。
「らぅしっ!!!」
壁に激突し頭をぶつけた。その拍子に変な声が出た。痛い。だが、相手はおそらくこちらを殺すつもりだったに違いない。この程度で済んだだけでもマシな方だろう。
「戦い方が消極的とはいえ、この技を凌ぐとは大したものだ。これで、少しは本気を出す気になったかな?」
くそう、まだ頭がクラクラする。しかも、手が痺れてる。これじゃ、剣を持つ手に力が入らねえや。
「凌いだとはいえ、先ほどの攻撃が身に染みたと見える。だが、私は攻撃を緩めるつもりはない。覚悟!」
ヤバイ。もう一度、あの技で来るみたいだ。どうする。このままでは打つ手がない。こういう時は……、
(ザクッ!)
俺は無意識に剣を目の前の地面に突き立てた。これはまさか?俺の体よ、あの技を使えというのか!
「……!?どういうつもりだ?まさか、あきらめたというわけではあるまいな?構わず、私は君を倒させて貰う!」
あの技が来る。閃光がこちらに向かってくる。……それなのに俺は落ち着いていた。目を閉じていた。もう何をするのかは決まっていた。……いや、それどころか、自分の勝利を確信してさえいた。
「勇者よ!我が一撃で昇天するがいい!」
「……一0八計が一つ!凰留撃!」
応援ありがとうございます!
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