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第2章 黒騎士と魔王
第78話 今、悪夢を斬る!!
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三皇の精神。おそらく、今の自分に必要なのは、それだと思った。長らく忘れていたけど、エルちゃんを守りたい、救いたいという気持ちが自然と思い出させた、引き寄せたような気がする。
「あとはそれをどうやって実現するかだ!」
今、サヨちゃんはエルちゃんと戦っている。ほぼ互角に見える。サヨちゃんはあくまで回避に専念し、攻撃はあまりしていない。俺を助けたときぐらいだろう。
「このっ、このっ!トカゲ女めえっ!」
エルちゃんは必死に攻撃していた。今まで俺たちを相手にしていたときよりも勢いがある。
「誰が蜥蜴じゃ!このたわけがっ!蜥蜴ごときと妾を一緒にするでないわ!」
魔王が相手とはいえ、サヨちゃんは本気をだしていないみたいだ。出したら出したで大変なことになるだろうけど。でも、なにか疲れているようにも見える。あの謎の魔女と戦ったからだろうか?
「サヨちゃん、待たせてゴメン!今、戻ったぜ!」
「……!?おお!回復したか?」
エルちゃんの攻撃を躱し、隙を見て俺の所までやってきた。やっぱり、彼女は疲労があるようだ。少し息が上がっている。こんな姿は見たことがない。……早いとこ決着を付けないと、本当に全滅してしまう。
「……して、そなたはどのような算段があるのじゃ?」
「八刃だよ。あの技を使う。」
「ということは、二段階目に挑むのじゃな?」
「ああ。」
あの技の神髄について、サヨちゃんが独自の分析をしていた。少し俺の記憶を見ただけで「最早、魔術の領域に近い」と本人が悟ったように、解析を進めるにつれて、それが正しかったことが証明されていった。
「見えない物を斬る、それを実現したい。」
八刃は全部で八段階あることもわかった。一段階目は壊せない物を斬る。二段階目は見えない物を斬る。これを実現できればデーモン・コアを斬ることができるはずだ。
「今はあの時と違って、一刻の猶予もないぞ?本当にできるのじゃな?」
できるかどうかの確認をしてはいるが、その口調からは「できる」ことを確信しているみたいだ。あの時よりも追い詰められているのに、不思議と負ける気がしない。
「できる!今なら!」
「何をコソコソ話してるの?どうせ、二人で私をどうやっていじめるか、相談でもしてるんでしょ!」
エルちゃんは俺たちの様子にイライラしているようだった。俺たち二人が仲良くしているのに嫉妬しているようにも聞こえる。
「もうそろそろ、終わりにしよう、エルちゃん。」
「終わり?……やっぱり、殺すんだ!私を!」
エルちゃんは物凄い勢いで襲いかかってきた。本気で殺す気を感じる攻撃だ。
「三皇の精神……極意、光風霽月!」
俺は目を閉じ、集中力を高めた。目で見ていなくても、彼女の攻撃が、殺意が手に取るようにわかる。自然と感覚で攻撃を躱す。
「なんで?なんで当たんないの?目で見てないのに!」
彼女は闇雲に攻撃をしかけてくる。俺はそのたびに躱しつつ、精神を集中させていった。彼女は攻撃のたびに焦り、動揺が積み重なっていくのが気配でわかった。
「コレなら、躱せないでしょ!」
どす黒い気配が彼女から発せられるのを感じた。多分、これは毒霧だ!
「破竹撃!」
気配を斬った。感じるままに斬った。斬ったそばから、どす黒い気配が薄れていくのを感じた。
「毒霧を斬った!?嘘でしょ!?そんなのありえない!」
集中力を高めるに従って、彼女の魂の形がわかるようになってきた。弱々しい輝きが見える。これが彼女の魂だろう。それに覆い被さり食い尽くそうとしているどす黒い闇が見えた。これがデーモン・コアか!
「行くぞ!これで、決める!」
怯んでいるエルちゃんのところまで、間合いを詰める。この一撃で全てが終わる!
「究極奥義、霽月八刃!!」
どす黒い闇を、デーモン・コアを切り払う。さっきの毒霧のように消え失せるだろう。ハッキリとわかる。
「い、いま、何を……!?」
わかるはずがない。今、彼女を斬ったのではなく、デーモン・コアだけを斬ったんだ。彼女を一切傷つけることなく。
「あ、あれ?何これ?」
そこで俺はゆっくりと目を開ける。目の前にはエルちゃんがいた。次第にデーモンの角、翼、獣毛などが黒い煙のように霧散していった。元より大分大きくなっていた体格も戻っていった。髪の色と目の色も茶色になった。もとはこの色だったのか。
「やりおった!成し遂げおった!!」
サヨちゃんが俺の代わりに喜びの声を上げる。俺は俺で何故か落ち着いていた。普段の俺なら飛び上がりたいくらい嬉しいはずなのに。
「ぶっつけ本番でよくも見事に成功させたもんじゃのう?普段のそなたから微塵にも感じぬのにのう!」
「これは、あのときとおんなじさ。みんなの助けがなけりゃ、どうにもならなかったさ。これはみんなの勝利だ!」
そうだ、一人じゃない。一人だけでできるわけない。あの時も同じだった。ヴァル・ムングを倒した時も。
「勇者様!」
元の姿に戻ったエルちゃんが俺に抱きついてきた。
「もう、なんともない?怪我とか残ってない?」
「何ともありません。……それよりありがとう、勇者様!私を助けてくれて。」
なんだか照れくさかった。こんなに人から感謝されたのは初めてかもしれない。
「口惜しいけれど、私たちの負けね。」
突然、邪悪な気配が現れた。あの魔女か?
「勇者……。大したものね。こんな坊やが私の想像を超える働きをするだなんて。ヴァル様を倒したのは、どうやら真実のようね。」
何?ヴァルの名前がなんで今、コイツの口から出てくるんだ。こいつはまさか……、
「そうよ。貴方の想像した通り、私は邪竜。……レギンよ!」
何!俺の心が読まれたのか?そんなことより、コイツがレギンだったなんて!
「今回はこのまま引き下がってあげるわ。じっくりと策を練ってから、貴方達を苦しめてあげる。だって、このまま普通に殺しても、面白くないもの。」
負け惜しみか?このまま相手をしてもいいが、みんなを守り切れるかわからない。怪我人もいるし……。
「また会いましょう。勇者。そして、竜帝のお嬢ちゃん。次に会うときは貴方たちが死ぬ時よ!覚悟しておきなさい!」
さんざん負け惜しみを言った後、魔女レギンは姿を消した。転移魔法とかいうやつだろうか?
「妾の方こそ、次会うときは返り討ちにしてくれようぞ!」
サヨちゃんは魔女がいた方向に向かって思い切り、アカンベエーをしていた。この中じゃダントツで年を食ってるくせに、わりと子供っぽいところがあるんだよなあ。
「勇者殿!」
俺がサヨちゃんにあきれていたところへエドワードがやってきた。そして、右手を差し出してきていた。俺は反射的に握手で答えた。
「見事な技だった。見えぬ物を斬る事など常人には出来ることではない。」
エドワードは俺の成し遂げたことに対して賞賛していた。その感情には嘘偽りはないようだが、その目の光には何か別の感情を感じた。
「貴公に折り入って頼みたいことがある。」
「え?何?」
「もう一度、私と戦ってはくれないか?」
ああ、そうか。これは闘志だ!ただ、ただ純粋に強さに対する欲求!そういえば、エルちゃんをどうするかで揉めたときも、決着はうやむやになっていたんだった!
「俺は構わないよ。アンタがそれを望むなら、喜んで受けて立つぜ!」
俺は構えた。同時にエドワードも構える。決まりだな。お互い、体が闘争を求めている!
「こらああ!!待て待て、待てえぃぃ!!!」
二人の間にサヨちゃんが割って入ってきた!
「この馬鹿者どもが!そんな体で何をするつもりじゃあ!」
はっと我に返った。そういえば、エドワードは怪我をしていたんだった!しかも、結構重傷のはず。
「一旦、治療に専念せい!話はそれからじゃ!」
サヨちゃんは凄い剣幕でエドワードに薬瓶を差し出した。これを飲んで休めという事だろう。
「ウ、ウム。賢者殿の言う通りだな。休ませて頂こう。」
エドワードは多少引き気味で薬を受け取り素直に従った。このまま推し進めても無駄だと思ったようだ。
「じゃ、じゃあ、俺もきゅうけ……い!!??」
俺は振り返り、あるものを目にしてしまった。エルちゃんの体を!彼女は一切何も身に付けていなかったのだ!
「……!?」
俺は両方の鼻の穴から暖かい物が流れ出るのを感じた。その直後に急に目の前が真っ暗になった。
「あとはそれをどうやって実現するかだ!」
今、サヨちゃんはエルちゃんと戦っている。ほぼ互角に見える。サヨちゃんはあくまで回避に専念し、攻撃はあまりしていない。俺を助けたときぐらいだろう。
「このっ、このっ!トカゲ女めえっ!」
エルちゃんは必死に攻撃していた。今まで俺たちを相手にしていたときよりも勢いがある。
「誰が蜥蜴じゃ!このたわけがっ!蜥蜴ごときと妾を一緒にするでないわ!」
魔王が相手とはいえ、サヨちゃんは本気をだしていないみたいだ。出したら出したで大変なことになるだろうけど。でも、なにか疲れているようにも見える。あの謎の魔女と戦ったからだろうか?
「サヨちゃん、待たせてゴメン!今、戻ったぜ!」
「……!?おお!回復したか?」
エルちゃんの攻撃を躱し、隙を見て俺の所までやってきた。やっぱり、彼女は疲労があるようだ。少し息が上がっている。こんな姿は見たことがない。……早いとこ決着を付けないと、本当に全滅してしまう。
「……して、そなたはどのような算段があるのじゃ?」
「八刃だよ。あの技を使う。」
「ということは、二段階目に挑むのじゃな?」
「ああ。」
あの技の神髄について、サヨちゃんが独自の分析をしていた。少し俺の記憶を見ただけで「最早、魔術の領域に近い」と本人が悟ったように、解析を進めるにつれて、それが正しかったことが証明されていった。
「見えない物を斬る、それを実現したい。」
八刃は全部で八段階あることもわかった。一段階目は壊せない物を斬る。二段階目は見えない物を斬る。これを実現できればデーモン・コアを斬ることができるはずだ。
「今はあの時と違って、一刻の猶予もないぞ?本当にできるのじゃな?」
できるかどうかの確認をしてはいるが、その口調からは「できる」ことを確信しているみたいだ。あの時よりも追い詰められているのに、不思議と負ける気がしない。
「できる!今なら!」
「何をコソコソ話してるの?どうせ、二人で私をどうやっていじめるか、相談でもしてるんでしょ!」
エルちゃんは俺たちの様子にイライラしているようだった。俺たち二人が仲良くしているのに嫉妬しているようにも聞こえる。
「もうそろそろ、終わりにしよう、エルちゃん。」
「終わり?……やっぱり、殺すんだ!私を!」
エルちゃんは物凄い勢いで襲いかかってきた。本気で殺す気を感じる攻撃だ。
「三皇の精神……極意、光風霽月!」
俺は目を閉じ、集中力を高めた。目で見ていなくても、彼女の攻撃が、殺意が手に取るようにわかる。自然と感覚で攻撃を躱す。
「なんで?なんで当たんないの?目で見てないのに!」
彼女は闇雲に攻撃をしかけてくる。俺はそのたびに躱しつつ、精神を集中させていった。彼女は攻撃のたびに焦り、動揺が積み重なっていくのが気配でわかった。
「コレなら、躱せないでしょ!」
どす黒い気配が彼女から発せられるのを感じた。多分、これは毒霧だ!
「破竹撃!」
気配を斬った。感じるままに斬った。斬ったそばから、どす黒い気配が薄れていくのを感じた。
「毒霧を斬った!?嘘でしょ!?そんなのありえない!」
集中力を高めるに従って、彼女の魂の形がわかるようになってきた。弱々しい輝きが見える。これが彼女の魂だろう。それに覆い被さり食い尽くそうとしているどす黒い闇が見えた。これがデーモン・コアか!
「行くぞ!これで、決める!」
怯んでいるエルちゃんのところまで、間合いを詰める。この一撃で全てが終わる!
「究極奥義、霽月八刃!!」
どす黒い闇を、デーモン・コアを切り払う。さっきの毒霧のように消え失せるだろう。ハッキリとわかる。
「い、いま、何を……!?」
わかるはずがない。今、彼女を斬ったのではなく、デーモン・コアだけを斬ったんだ。彼女を一切傷つけることなく。
「あ、あれ?何これ?」
そこで俺はゆっくりと目を開ける。目の前にはエルちゃんがいた。次第にデーモンの角、翼、獣毛などが黒い煙のように霧散していった。元より大分大きくなっていた体格も戻っていった。髪の色と目の色も茶色になった。もとはこの色だったのか。
「やりおった!成し遂げおった!!」
サヨちゃんが俺の代わりに喜びの声を上げる。俺は俺で何故か落ち着いていた。普段の俺なら飛び上がりたいくらい嬉しいはずなのに。
「ぶっつけ本番でよくも見事に成功させたもんじゃのう?普段のそなたから微塵にも感じぬのにのう!」
「これは、あのときとおんなじさ。みんなの助けがなけりゃ、どうにもならなかったさ。これはみんなの勝利だ!」
そうだ、一人じゃない。一人だけでできるわけない。あの時も同じだった。ヴァル・ムングを倒した時も。
「勇者様!」
元の姿に戻ったエルちゃんが俺に抱きついてきた。
「もう、なんともない?怪我とか残ってない?」
「何ともありません。……それよりありがとう、勇者様!私を助けてくれて。」
なんだか照れくさかった。こんなに人から感謝されたのは初めてかもしれない。
「口惜しいけれど、私たちの負けね。」
突然、邪悪な気配が現れた。あの魔女か?
「勇者……。大したものね。こんな坊やが私の想像を超える働きをするだなんて。ヴァル様を倒したのは、どうやら真実のようね。」
何?ヴァルの名前がなんで今、コイツの口から出てくるんだ。こいつはまさか……、
「そうよ。貴方の想像した通り、私は邪竜。……レギンよ!」
何!俺の心が読まれたのか?そんなことより、コイツがレギンだったなんて!
「今回はこのまま引き下がってあげるわ。じっくりと策を練ってから、貴方達を苦しめてあげる。だって、このまま普通に殺しても、面白くないもの。」
負け惜しみか?このまま相手をしてもいいが、みんなを守り切れるかわからない。怪我人もいるし……。
「また会いましょう。勇者。そして、竜帝のお嬢ちゃん。次に会うときは貴方たちが死ぬ時よ!覚悟しておきなさい!」
さんざん負け惜しみを言った後、魔女レギンは姿を消した。転移魔法とかいうやつだろうか?
「妾の方こそ、次会うときは返り討ちにしてくれようぞ!」
サヨちゃんは魔女がいた方向に向かって思い切り、アカンベエーをしていた。この中じゃダントツで年を食ってるくせに、わりと子供っぽいところがあるんだよなあ。
「勇者殿!」
俺がサヨちゃんにあきれていたところへエドワードがやってきた。そして、右手を差し出してきていた。俺は反射的に握手で答えた。
「見事な技だった。見えぬ物を斬る事など常人には出来ることではない。」
エドワードは俺の成し遂げたことに対して賞賛していた。その感情には嘘偽りはないようだが、その目の光には何か別の感情を感じた。
「貴公に折り入って頼みたいことがある。」
「え?何?」
「もう一度、私と戦ってはくれないか?」
ああ、そうか。これは闘志だ!ただ、ただ純粋に強さに対する欲求!そういえば、エルちゃんをどうするかで揉めたときも、決着はうやむやになっていたんだった!
「俺は構わないよ。アンタがそれを望むなら、喜んで受けて立つぜ!」
俺は構えた。同時にエドワードも構える。決まりだな。お互い、体が闘争を求めている!
「こらああ!!待て待て、待てえぃぃ!!!」
二人の間にサヨちゃんが割って入ってきた!
「この馬鹿者どもが!そんな体で何をするつもりじゃあ!」
はっと我に返った。そういえば、エドワードは怪我をしていたんだった!しかも、結構重傷のはず。
「一旦、治療に専念せい!話はそれからじゃ!」
サヨちゃんは凄い剣幕でエドワードに薬瓶を差し出した。これを飲んで休めという事だろう。
「ウ、ウム。賢者殿の言う通りだな。休ませて頂こう。」
エドワードは多少引き気味で薬を受け取り素直に従った。このまま推し進めても無駄だと思ったようだ。
「じゃ、じゃあ、俺もきゅうけ……い!!??」
俺は振り返り、あるものを目にしてしまった。エルちゃんの体を!彼女は一切何も身に付けていなかったのだ!
「……!?」
俺は両方の鼻の穴から暖かい物が流れ出るのを感じた。その直後に急に目の前が真っ暗になった。
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