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第3章 迷宮道中膝栗毛!!

第164話 ほっとけるわけないだろ!

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「まだ終わらんぞ!私の魔力を侮るな!」


 嫌な予感は的中した。建物の奥からさらに敵が出てきた。ダイヤ竜が二体、三体と次から次へと出てきた。


「一体潰されただけで、十分に時間稼ぎにはなった。もうこれで貴様らには勝ち目はなくなった。」


 絶望だ。一体を倒すだけでも精一杯だったというのに複数でこられたら持ちこたえられない。そう思っている間にも、次々と数は増えていった。最終的には十体ほどに増えていた。


「こりゃ、まずいな……。」


 思わず声に出してつぶやいてしまった。傍らを見るとメイちゃんが震えていた。この状況を見てそうなるのも無理はない。俺でさえヤバイと思った。このままではいけない。


「大丈夫だ。俺がなんとかする!」

「勇者さん……。」


 勇者の俺が怖じ気づいていては話にはならない。なんとか、状況を打破しないと。……少なくとも、今の状況ならブレスは使えないはず。さっきと同じでヤツら自身を盾にできるからな。同じ失敗をするほどアイツはバカじゃないだろう。少しでも前向きに状況を把握しよう。


「一人ずつ、虱潰しにしてくれるわ!」


 とにかく!一体ずつ数を減らすことを考えよう。手近なヤツから斬りかかっていった。


「霽月八刃!」


 今はまだ、虚心坦懐の精神に至る糸口さえ見えていない。だが、留まってはいられない。俺が動かなければ、みんながやられてしまう。俺は勇者だ!


「よくもまあ、体力が持つものだ。貴様の生命力は油虫並みだな。他の者は明らかに疲弊してきておるぞ。」

「スタミナだけが取り柄なんでね!」


 連戦に続く連戦でみんなは徐々に疲れが出始めていた。侍やサヨちゃんまで疲労が溜まってきているようだ。これ以上続くとみんなが持たない。早く決着をつけないと……。


「パゴア、パゴア!ほれほれ、どうした。このままでは息の根を止めてしまうぞ!」


 見てみれば、サヨちゃんがダイヤ竜二体に羽交い締めにされていた。別の一体がサヨちゃんに攻撃を加えていた。あまりにも一方的な攻撃だった。このままじゃまずい!


《気にするでない!妾がこうしておれば、少なくとも三体は釘付けにすることは出来る!》

「そんな状態を見て、ほっとけるわけないだろ!」


 俺はサヨちゃんのところへ駆けつけようとしたが、数体のダイヤ竜に阻まれて前に進むことができなかった。自分だけじゃなくて、他のみんなも阻まれてたどり着けないようだった。


「パゴア、悔しかろう!だが、私が貴様らから受けた屈辱はこんなものではないぞ。もっと苦しむがよい!」


 為す術がないのか。このまま何もできない内に終わってしまうのか?


(ドゴォォォォン!!!)

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