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第3章 迷宮道中膝栗毛!!
第167話 君は一人じゃない
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「一体、どうすれば……。」
味方からも敵からも倒せるのはお前だけだ、と告げられはしたが、具体的な糸口が未だに見えてこなかった。
《ロア……。》
そのとき、どこからともなく俺を呼ぶ声が聞こえた。誰だ?あまり聞き覚えのない声だ。思い出せそうで思い出せない。
《少し話を聞いてくれないか?》
「聞くって何を?」
その瞬間、目の前の景色が何もない空間へと切り替わった。これはおかしい。なにか変な魔法をかけられたのか?確かめるために目をこすってみても、顔をつねってみても元に戻ったりしなかった。
《こうやって、君と会うのは“あの日”以来だな。》
背後から声がする。振り返ると“あの日”に一度会ったきりの“あの人”がいた。
《“あの日”、ろくに君とは話せないまま、別れることになってしまった。先代の私から話さないといけないことがたくさんあったのにも関わらずだ。》
先代……その人物は先代勇者カレルだった。“あの日”、俺が勇者を受け継ぐことになった日、彼は俺の目の前で息を引き取ったはずだ。話したことがないというのも当然だった。
《見ず知らずの君に苦難の道を歩ませる結果になってしまったことをお詫びしたい。》
「そんな……謝らないでくれ。俺としては、感謝したいぐらいなんだ。その…何て言うか、勇者になってなきゃ、今頃、どうなってたかわからないし。それに…色んな仲間に出会えた。」
クルセイダーズの連中やエルちゃん、そして、サヨちゃんに出会ってなかったら、奥義修得なんてできなかっただろう。身に付けた技に対しても向き合うなんてことはできなかったと思う。
《そう思ってもらえているとは、こちらとしても嬉しい。でも、君に恩返しをしたい。窮地に立たされている今、君の手助けをしたい。》
「でも、何を……?」
《あの時と同じさ。ヴァル・ムングを打ち倒したときと同じように、君に力を貸そう。》
あの時、無我夢中で放った技、“光裂八刃”。あの技はシャイニング・イレイザーと未完成状態の八刃を無意識に組み合わせて放った。あの時はカレルが力を貸してくれていたのか。
《力を貸したのはそのときだけだ。後は君自身だけで技を使えるようになった。切っ掛けだけなんだ。君はそれだけの力を持ち合わせている。》
俺にそんな力があるのか?未だに信じ切れない。だからこそ、今もこうして立ち止まっている。
《私だけじゃない。先達の勇者たちも力を貸してくれる。》
カレルの後ろには様々な年齢、性別、種族が異なる戦士たちがいた。戦士だけじゃない。魔術師、神官、弓使いといった風貌の人までいた。自分やカレルのような剣士だけが勇者になっていたわけではないのがわかった。
《歴代の先輩方に声をかけて、協力をお願いして、こうして集まってもらった。全ての先輩方だけではないが、ここまで大勢の方々に集まって頂けたんだ。》
これで全てではないと?本来なら一体何人いたんだろう?ここにいるのが全ての歴代勇者とも思えるほどの人数がいた。具体的な数はわからないが、これだけでも十分に大人数だった。もしかして……この中に侍と因縁のある“剣豪勇者”もいるのだろうか?
《君は一人じゃないんだ。仲間と力を合わせてこその勇者だ。そして、みんなに勇気を与えるのが勇者の役目だ。歴代の私たちも例外じゃない。》
みんなに勇気を与える……。そうだ。そのためにも不可能を可能にしなきゃいけない。
《君に勇気を……。》
俺は最後の一太刀を決めるために、ダイヤ野郎の実体を見定めるための集中を始めた。
味方からも敵からも倒せるのはお前だけだ、と告げられはしたが、具体的な糸口が未だに見えてこなかった。
《ロア……。》
そのとき、どこからともなく俺を呼ぶ声が聞こえた。誰だ?あまり聞き覚えのない声だ。思い出せそうで思い出せない。
《少し話を聞いてくれないか?》
「聞くって何を?」
その瞬間、目の前の景色が何もない空間へと切り替わった。これはおかしい。なにか変な魔法をかけられたのか?確かめるために目をこすってみても、顔をつねってみても元に戻ったりしなかった。
《こうやって、君と会うのは“あの日”以来だな。》
背後から声がする。振り返ると“あの日”に一度会ったきりの“あの人”がいた。
《“あの日”、ろくに君とは話せないまま、別れることになってしまった。先代の私から話さないといけないことがたくさんあったのにも関わらずだ。》
先代……その人物は先代勇者カレルだった。“あの日”、俺が勇者を受け継ぐことになった日、彼は俺の目の前で息を引き取ったはずだ。話したことがないというのも当然だった。
《見ず知らずの君に苦難の道を歩ませる結果になってしまったことをお詫びしたい。》
「そんな……謝らないでくれ。俺としては、感謝したいぐらいなんだ。その…何て言うか、勇者になってなきゃ、今頃、どうなってたかわからないし。それに…色んな仲間に出会えた。」
クルセイダーズの連中やエルちゃん、そして、サヨちゃんに出会ってなかったら、奥義修得なんてできなかっただろう。身に付けた技に対しても向き合うなんてことはできなかったと思う。
《そう思ってもらえているとは、こちらとしても嬉しい。でも、君に恩返しをしたい。窮地に立たされている今、君の手助けをしたい。》
「でも、何を……?」
《あの時と同じさ。ヴァル・ムングを打ち倒したときと同じように、君に力を貸そう。》
あの時、無我夢中で放った技、“光裂八刃”。あの技はシャイニング・イレイザーと未完成状態の八刃を無意識に組み合わせて放った。あの時はカレルが力を貸してくれていたのか。
《力を貸したのはそのときだけだ。後は君自身だけで技を使えるようになった。切っ掛けだけなんだ。君はそれだけの力を持ち合わせている。》
俺にそんな力があるのか?未だに信じ切れない。だからこそ、今もこうして立ち止まっている。
《私だけじゃない。先達の勇者たちも力を貸してくれる。》
カレルの後ろには様々な年齢、性別、種族が異なる戦士たちがいた。戦士だけじゃない。魔術師、神官、弓使いといった風貌の人までいた。自分やカレルのような剣士だけが勇者になっていたわけではないのがわかった。
《歴代の先輩方に声をかけて、協力をお願いして、こうして集まってもらった。全ての先輩方だけではないが、ここまで大勢の方々に集まって頂けたんだ。》
これで全てではないと?本来なら一体何人いたんだろう?ここにいるのが全ての歴代勇者とも思えるほどの人数がいた。具体的な数はわからないが、これだけでも十分に大人数だった。もしかして……この中に侍と因縁のある“剣豪勇者”もいるのだろうか?
《君は一人じゃないんだ。仲間と力を合わせてこその勇者だ。そして、みんなに勇気を与えるのが勇者の役目だ。歴代の私たちも例外じゃない。》
みんなに勇気を与える……。そうだ。そのためにも不可能を可能にしなきゃいけない。
《君に勇気を……。》
俺は最後の一太刀を決めるために、ダイヤ野郎の実体を見定めるための集中を始めた。
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