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第5章 完成!究極の超次元殺法!!
第314話 義父、リャオ・パイフゥ
しおりを挟む「どうした? 攻めねば、いずれは負けるぞ?」
宗家の分身体……いや、ある意味全てが本体とも言える……が矢継ぎ早に攻撃を仕掛けてきた。私は絶影百歩を駆使し、全力で回避する。絶影百歩をで攻め始めた時は間違いなく、私の攻勢だった。だが、それも瞬時に終わり、守勢に回らなければいけなくなった。
「燕雀連攻!!」
数には数だ。手数の多いこの技で対抗するしかない。複数の相手からの攻撃を凌ぐには手出しをする隙を与えないようにする。
「フハハ、大したものよ! 絶影百歩を駆使した上での連撃か! 並みの者ならば何回も殺せておるだろうな。」
無数の突きを放ち続けた、その時、槍の動きを止められた。槍を掴まれたのだ。しかも複数の分身体に一度に掴まれた。いくら力を込めようと動かすことさえ出来なかった。
「生憎、私は燕でも、雀でもない。倒したければ、全ての攻撃に鴻鵠並みの力を込めねば、私に触れることさえ出来ぬ。」
「くうっ!?」
燕雀連攻に鴻鵠合衝並みの力を込めよというのか? 互いに相反する技の性質を込めよ、というのは無理がある。相反するからこそ、それぞれの技の持ち味が生きてくるのだ。
「私の言うことは矛盾している、と考えておるな? 違うぞ。それらの、いや、全ての技の性質を持ち合わせた奥義があることを忘れておるのではないか?」
「……八相撃か。」
各流派で呼び方は異なるが、全てをひっくるめ称する場合は、“八相撃”と呼ぶ。槍術の場合は八破だ。基本的には同じような呼び方をするが、その特性は流派毎で異なる。槍は特に速さを重視している。
「私に八破を使えと言っているのか?」
「言ったはずだぞ、全力を出せとな。出し惜しみをするような相手ではないぞ、私は。」
技の使用を促すために、宗家は槍から手を離した。ならば使うしかない。私の全力を以て当たるまでだ。しかし、今まであの技を使わなかったのは、ある懸念があったからだ。
「霽月八破!!」
霽月の力が乗れば、相手の真実の姿を暴き出し、実体の無い物や仮初めの生命さえも打ち砕く。普通に考えれば“離伯月影”を打ち破れると算段するだろう。だが、あの技の恐ろしい所はそれが効かないということだ。
「やはり、これは紛い物だな。“八相撃”の本質を捉えておらぬ。貴様だけではない。貴様の義弟、弟子も同じ勘違いをしておる。」
私の渾身の奥義をも、この男は軽く払いのけるように凌いでみせた。当然、彼の分身体を消すには至っていない。
「貴様の義父は“三皇の精神”の重要性を唱えてはいたが、所詮そんなものは絵空事、夢見物語にすぎぬと私は考える。精神性を高め、物見の次元を超越する? そのような実体性を持たぬものには価値などない。所詮、武術は勝ちをとるための技術、相手の息の根を止めることにこそ真価がある。」
「我が父リャオ・パイフゥを愚弄するつもりか!」
今の姿では義父の友人を装っていたが、私の素性について知っているであろう、この男の前では本音で語ることにした。尊敬していた義父の精神を侮辱されたとあっては、私も黙ってはいられなくなった。
「精神性はな。しかし、あの男の実力、その物は評価している。あの男もかつては修羅道を生きる人間であったことは知っているな?その時の奴は私すら凌駕する実力者だったのだ。」
もちろん知っている。昔、義父はある勢力の頂点の一角を担っていたことも知っている。何時の日か、彼はその過ちに気付き、悔い改め、梁山泊を訪れたということも。私が彼に拾われたのも、丁度そのころだった。
「惜しい男よな。精神性などとうつつを抜かした結果が“敗死”に繋がったのだ。勝ってこそ、生きていてこそ、その信念は正当性を持つのだ。勝利、強さこそが絶対正義なのだ。」
「違う! あなたは間違っている! 血塗られた勝利に正当性などない!」
「ならば勝って見せよ! 生き抜いて証明して見せよ! 勝たねば、信念は踏みにじられ、抹消される。脆弱な精神論などに正当性を求めるな!」
宗家は私の槍の穂先をグイ、と引き寄せ、体勢を崩し、幾多もの攻撃を叩き込んできた。今までとは比べものにはならないほどの強さと速さだ!
「精神性如きで私の技を凌げるのか? 他人を思うだけで自分や他人を守れるのか? 答えて見せよ! 勝って自身の正当性を証明して見せよ! 負けて死すれば、ただ消えゆくのみ! 所詮は夢うつつに過ぎぬのだ!」
「……かはっ!?」
反撃の糸口が見えない。このままではやられるがままだ。ここまで圧倒的とは。そして……私はどれだけ無力なのだ。自身の弱さが腹立たしい。
「これで終わりだ。戯れ事にはもう飽きた。自分の無力さを痛感しながら、沈むが良い!」
宗家は構えを取った。あの技で仕留めるつもりのようだ。今の私ではどうすることも出来ない。弟子や弟を守ることすら出来ずに終わるとは……。
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