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第5章 完成!究極の超次元殺法!!
第322話 悔いはない。
しおりを挟む「とうとう、この日がやってきた。」
大武会最終日。決勝戦。俺達は控え室でコールがかかるのを待っていた。試合を見に来た多くの人間にとっては待ちに待った日だろう。大会への期待は最高潮に達しているだろう。観客の期待を裏切らない戦いをしたい。
「なあ、ファル。俺の希望を聞いてくれて、ありがとうな。」
俺の希望とは、“俺一人で宗家と戦う”ということだった。俺の決着に他人を巻き込みたくなかったし、相棒の力を借りるわけにもいかなかったからだ。宗家も一人で戦う以上、こっちも一人で挑みたい。
「何言ってやがる。お前が決めたことだろう。俺が口を挟むようなことじゃない。」
昨日のうちに話し合っていたので、知っていたが、相棒は意外とすんなり俺の希望を受け入れてくれた。俺をないがしろにするな、とか言いそうだったんだけどなあ。
(……ガチャ。)
誰が入ってきたのかと思えば、サヨちゃんだった。医務室で話して以降、会ってもいなかったが、まさかこのタイミングで顔を合わすとは思わなかった。嫌われたと思っていたのに。
「行くんじゃな?」
「当然だろ。」
サヨちゃんはいつになく神妙な顔をしていた。俺と再び顔を合わすときは、不機嫌な顔をしているだろうと思っていた。
「エルちゃんは……まだ?」
「うむ、まだ意識は戻っておらぬ。」
彼女の意識はまだ戻っていなかった。だが、命に別状がないくらいには回復したらしい。俺はあれ以来彼女の顔を見ていない。何度か医務室には行ってみたが、毎回ミヤコに追い出されたからだ。この前の件で機嫌を大きく損ねてしまったようだ。
でも、彼女の容態についてはレンファさんがこっそり俺に教えてくれた。そして、メイちゃんやジュリア、ミヤコの三人が交代で彼女の治療を行ってくれていることも聞いた。その甲斐もあって、峠は越えたようだ。感謝してもしきれない程、献身的な行為だ。女性陣にとってもエルちゃんの存在は大きなものであることが窺えた。
「何かエル坊に伝えたい事はあるか?」
「伝えたいこと……か。」
人生の最後かもしれないのに、彼女と顔を合わせることすら許されていないのは辛かったが、仕方ない。俺がよろしくない選択をした結果だったから。
「今まで俺みたいな情けない奴を愛してくれてありがとう、って言っといてくれ。」
「……馬鹿者が。」
サヨちゃんは冷めた顔で俺の言葉を受け止め、控え室を出て行った。ちゃんと伝えてくれるんだろうか?
「そういえば、お前、妙に落ち着いてやがるな? 死ぬかもしれねえってのに。」
「いや、別に、普通にしてるんだけどな。なんかもう、妙にすがすがしいというか……、もう悔いはないという感じかな。」
「なんだよそれは。本当に死ぬ気満々じゃねえか。」
「あ、でもなくはないかな。せめて一回だけでもキスくらいはしときたかったか…な?」
「バーカ。」
その時、ノックと共にドアが開いた。とうとうお呼びがかかったようだ。決勝戦の開幕だ。
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