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第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】
第1話 その名はエピオン
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この作品はシリーズ物の第2部となっています。
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【第1部】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~
https://www.alphapolis.co.jp/novel/937348841/295767893
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
大武会の終結後、拙者はかねてより招聘を受けていたヴァル・ムング殿の居城を訪れた。熱烈な歓迎を受け、居城の完成祝いを兼ねた祝宴の余興にて、ある戦士との演武を披露する事となった。
「まずは小手調べとさせて頂こう!」
エピオンという名の戦士と対峙し、鍔迫り合いへと持ち込む。拙者が正体不明の相手と戦うときの常套手段だ。敵と間近に対峙する事で戦力、技量、精神力等をある程度推し量ることが出来る。
「むう……これはなかなか見た目によらず、大した腕力を持っているようだ。」
鍔迫り合いを押し返す力が拙者と拮抗している。拙者よりも若く小柄で腕もまだ細い。その風貌とは裏腹に腕力がある。だが、腕力に頼りすぎている。技量はまだまだ拙いようだ。
「表情は見えぬが……大した気迫だ。兜の面を通じて伝わってくるぞ。」
西洋では兜に顔面を守る為の装甲を配していることは拙者も熟知している。それ故、視界の悪化という欠点を有している事もだ。この戦士の兜は視界の確保すらしていない。それでも十分に拙者の位置は察知している。恐らくは闘気のみで気配を読み取っているのであろう。……もしくは兜に何らかの細工が施されているやもしれぬ。
「むぅん!」
気合いと共に相手を撥ね飛ばし、鍔迫り合いを解除する。ある程度は相手の力量を推し量ることは出来た。あとは実戦で見極めるのみ。
「地磊震《じらいしん》!!」
上段に振りかぶり、最大の膂力を以て振り下ろす。どう対処するか、見せてもらおう!
「……。」
相手は剣を水平に構え、その刃を自らの左手の小手で支え、防御に注力する姿勢を取った。生半可な防御では崩されると見たのであろう。
(ゴギャァァン!!!)
打ち込んだ刀を物ともせず防いだ。先程の相手の判断は正しかったと言える。だが、二撃目はどう凌ぐ?
「地磊震《じらいしん》、二連!!!」
二撃目、立て続けの連撃を叩きつける。相手は防御姿勢を崩すことは無いが、足がぐらつくのを確認した。そのまま三撃目に耐えられるか?
「三連!!!!」
その刹那、相手は防御を解き、拙者の攻撃に合わせて、剣を横薙ぎに一閃してきた!
(バギャァァァッ!!!!!)
拙者の刀を折った。三撃目、同じ攻撃が来ると予測して拙者の武器を破壊する選択をした。真っ向勝負を引き受けると見せかけ、相手の殲滅を図るということか。だが……、
「雷破音速拳《らいはおんそくけん》!!」
刀を捨て、相手の懐に潜り込み、拳を腹に叩き込む。たまらず相手は吹き飛び、背後の壁に激突した。相手も素手で来るとは予測できなかったようだ。
「勝負あったな。これぐらいでやめにしておこう。二人とも見事な健闘ぶりであった。」
ヴァル殿が制止する。拙者としてはもう少し戦っても良かった。相手の底力をもう少し見たかったのだ。そういう意味では心は躍っている。紛れもなく、拙者は楽しんでいた。この戦士はそれに見合う実力を備えているのは十分わかった。
「……クッ、くそっ、負けた。」
若き戦士はうめき声を上げながら、起き上がる。兜の装甲が上方に展開し、顔が露わになる。負けは認めつつも、拙者に対して殺気のこもった眼差しを向けている。いい目だ。戦士はこうでなくてはならぬ。果てぬ闘志を持ってこそ真の戦士だ。
「見事な戦いぶりだった。あの技を凌ぎ、拙者の刀を折る者など滅多におらぬ。誇りにするが良かろう。」
「……クッ!」
戦士は以前変わらぬ目で睨む。よっぽど誇りを傷付けたのであろう。だが、その繰り返しが己を鍛える糧となる。若い彼に許容するのは難しいかもしれぬが。
「被験者一号、結果トしてハ負けでスが、いいデータが取レたのデ、落ち込ム必要なイですヨ。十分アなたはガんばりマしたでスよ!」
「なのに、敵わなかったから悔しいんじゃないか!……クソッ!」
学者殿が励ますも、戦士は以前態度を変えなかった。今の短い間に情報が取れたというのが、拙者には意外だった。この若者の膂力は彼の技術による物だったのだろうか? 体格には不相応の怪力を有していた。これはどこかで見たことがある。大武会……勇者の伴侶が使っていた魔力に似ている。関係があるのやもしれん。
「学者殿、一つ質問しても良いかな?」
「ナんデすか? お答エ出来る範囲でなラ、オ答えシまスですヨ。」
「兜に膂力を制御するカラクリを仕込んでおるのかな? その力は闇の魔力に由来する物であると見た。」
「ご名答! そノ通りデすよ。実は……、」
中々に興味深い内容だった。拙者も雷と土の魔力を探求する身。それ故他分野にも興味がある。如何なる物でも、強さの探究への手掛かりとなるやもしれぬからだ。学者殿とも良い酒が酌み交わせそうだ。
第1部を読んでいない方は↓からお読みください。
【第1部】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~
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大武会の終結後、拙者はかねてより招聘を受けていたヴァル・ムング殿の居城を訪れた。熱烈な歓迎を受け、居城の完成祝いを兼ねた祝宴の余興にて、ある戦士との演武を披露する事となった。
「まずは小手調べとさせて頂こう!」
エピオンという名の戦士と対峙し、鍔迫り合いへと持ち込む。拙者が正体不明の相手と戦うときの常套手段だ。敵と間近に対峙する事で戦力、技量、精神力等をある程度推し量ることが出来る。
「むう……これはなかなか見た目によらず、大した腕力を持っているようだ。」
鍔迫り合いを押し返す力が拙者と拮抗している。拙者よりも若く小柄で腕もまだ細い。その風貌とは裏腹に腕力がある。だが、腕力に頼りすぎている。技量はまだまだ拙いようだ。
「表情は見えぬが……大した気迫だ。兜の面を通じて伝わってくるぞ。」
西洋では兜に顔面を守る為の装甲を配していることは拙者も熟知している。それ故、視界の悪化という欠点を有している事もだ。この戦士の兜は視界の確保すらしていない。それでも十分に拙者の位置は察知している。恐らくは闘気のみで気配を読み取っているのであろう。……もしくは兜に何らかの細工が施されているやもしれぬ。
「むぅん!」
気合いと共に相手を撥ね飛ばし、鍔迫り合いを解除する。ある程度は相手の力量を推し量ることは出来た。あとは実戦で見極めるのみ。
「地磊震《じらいしん》!!」
上段に振りかぶり、最大の膂力を以て振り下ろす。どう対処するか、見せてもらおう!
「……。」
相手は剣を水平に構え、その刃を自らの左手の小手で支え、防御に注力する姿勢を取った。生半可な防御では崩されると見たのであろう。
(ゴギャァァン!!!)
打ち込んだ刀を物ともせず防いだ。先程の相手の判断は正しかったと言える。だが、二撃目はどう凌ぐ?
「地磊震《じらいしん》、二連!!!」
二撃目、立て続けの連撃を叩きつける。相手は防御姿勢を崩すことは無いが、足がぐらつくのを確認した。そのまま三撃目に耐えられるか?
「三連!!!!」
その刹那、相手は防御を解き、拙者の攻撃に合わせて、剣を横薙ぎに一閃してきた!
(バギャァァァッ!!!!!)
拙者の刀を折った。三撃目、同じ攻撃が来ると予測して拙者の武器を破壊する選択をした。真っ向勝負を引き受けると見せかけ、相手の殲滅を図るということか。だが……、
「雷破音速拳《らいはおんそくけん》!!」
刀を捨て、相手の懐に潜り込み、拳を腹に叩き込む。たまらず相手は吹き飛び、背後の壁に激突した。相手も素手で来るとは予測できなかったようだ。
「勝負あったな。これぐらいでやめにしておこう。二人とも見事な健闘ぶりであった。」
ヴァル殿が制止する。拙者としてはもう少し戦っても良かった。相手の底力をもう少し見たかったのだ。そういう意味では心は躍っている。紛れもなく、拙者は楽しんでいた。この戦士はそれに見合う実力を備えているのは十分わかった。
「……クッ、くそっ、負けた。」
若き戦士はうめき声を上げながら、起き上がる。兜の装甲が上方に展開し、顔が露わになる。負けは認めつつも、拙者に対して殺気のこもった眼差しを向けている。いい目だ。戦士はこうでなくてはならぬ。果てぬ闘志を持ってこそ真の戦士だ。
「見事な戦いぶりだった。あの技を凌ぎ、拙者の刀を折る者など滅多におらぬ。誇りにするが良かろう。」
「……クッ!」
戦士は以前変わらぬ目で睨む。よっぽど誇りを傷付けたのであろう。だが、その繰り返しが己を鍛える糧となる。若い彼に許容するのは難しいかもしれぬが。
「被験者一号、結果トしてハ負けでスが、いいデータが取レたのデ、落ち込ム必要なイですヨ。十分アなたはガんばりマしたでスよ!」
「なのに、敵わなかったから悔しいんじゃないか!……クソッ!」
学者殿が励ますも、戦士は以前態度を変えなかった。今の短い間に情報が取れたというのが、拙者には意外だった。この若者の膂力は彼の技術による物だったのだろうか? 体格には不相応の怪力を有していた。これはどこかで見たことがある。大武会……勇者の伴侶が使っていた魔力に似ている。関係があるのやもしれん。
「学者殿、一つ質問しても良いかな?」
「ナんデすか? お答エ出来る範囲でなラ、オ答えシまスですヨ。」
「兜に膂力を制御するカラクリを仕込んでおるのかな? その力は闇の魔力に由来する物であると見た。」
「ご名答! そノ通りデすよ。実は……、」
中々に興味深い内容だった。拙者も雷と土の魔力を探求する身。それ故他分野にも興味がある。如何なる物でも、強さの探究への手掛かりとなるやもしれぬからだ。学者殿とも良い酒が酌み交わせそうだ。
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