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第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】
第23話 いわゆる正義の味方だ!
しおりを挟む「もキューん!」
俺はエルとオバサンの間に割って入れるように、全力ダッシュした。これだけの大声を上げているんだ。当然、三人ともこちらを振り向く。オバサンも振り上げた鞭をそのままにしている。エルを救うなら今だ。でも、奇声を上げながら接近する俺って一体……。
「何者!?」
「く、曲者ですわ!?」
なんとか割って入ることには成功した。問題はここからだ。どうやって切り抜けるかな? エルは大丈夫かな?
「……だ、誰?」
振り向いて様子を見ると、彼女は震えながら俺を見つめていた。まるで、不審者を見る目だ。当然だ。この時点では彼女は俺のことを知らない。辛いが今は耐えるしかない。
「もんですやん! もるげっそ!」
「……え?」
ちくしょう! しゃべれないのは辛い。「俺は君を助けに来た。いわゆる正義の味方だ!」と言ったつもりだ。しかも額冠の力が機能しないから、勇者とは認識してもらえない。……それ以前にエルには元々、額冠の力は効かないんだった!忘れてた。
「あなた誰ですの?」
「とんだ邪魔が入ったものですわ。」
オバサン達も当然、俺を不審者扱いだ。それはともかくとして、オバサンと対峙することになった。この空間を作った本人だ。記憶の中とはいえ、攻撃すれば何か影響を与えることは出来るかもしれない。チャンスだ!
「……なんてね。まんまと罠にかかってくれたわね、勇者の坊や。」
急激に違和感が発生した。目の前にいるオバサンが別人に入れ替わった? 見た目は変わっていないのに? いや、目が? 目が違う。人間の目じゃない! これは“蛇”の目だ!
「ホホホ。仲間を隔離した上で確実に仕留める。特にあの老人は私でも厄介。勇者単体ならば十分倒せる。あなたを殺れるチャンスは逃すものですか!」
豹変したオバサンは物騒なことを言い始めた。俺狙いの罠だったのか、ここは? それにこの豹変ぶり、例の少年が言っていた“蛇”なんだろうか? コイツは何者なんだ? 発せられる気配からすると魔族。それも特段に強い。もしかしたら、コイツは魔王かもしれない。前に見た人形女と気配が似ている。
「それに人質もいる。あなたには勝ち目など無いのよ。観念なさい。」
人質? エルのことか。今、俺の後ろには過去のエルがいる。本体ではないが、もし傷付けられれば悪影響が出るだろう。そういう意味で蛇は人質と言っているのだろう。本体なら、共闘することも出来るだろうが、この時点での彼女はあまりにも弱い。だから、何があっても全力で守らないといけない!
「守り切れるかしらねえ? 足手まといがいる状態で勝てるなどとは思わない事ね!」
手にした鞭を振るってきた。刃物や鈍器とは違って殺傷力は低いが、軌道が読みにくいのが厄介だ。しかも、攻撃範囲も広い。とっさにエルを抱えて鞭の軌道の範囲から、間合いを離す。
「何をするんですか! 離して下さい!」
「もんげるまん! もっふぁろーもん!」
奇声を発しながら抱きかかえようとしてるんだから当然そんなことを言われる。本当は「ゴメン。こうしないと君も巻き込まれるんだ!」と言いたいのに! よくわからない不審者に触られるんだから、抵抗はあるんだろうな。自分も巻き込まれるという意識はないのだろう。でも鞭の軌道は明らかに彼女をも巻き込もうとしていた。これで助けない選択なんて取れるはずがない。嫌われても守らなきゃいけない。
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