115 / 331
第2章 はぐれ梁山泊極端派【燃えよ、十字剣!!】
第115話 突然の乱入
しおりを挟む「ハ、ハリスだと!? 序列第五位の魔王が何故ここに……?」
いつの間にか意識を取り戻していたエドが謎の羊男について言及した。アレの正体が魔王だっていうのか? 最悪だ。こんなタイミングで敵の増援、しかも魔王だ! エドの言葉から判断すると、猿の魔王や蛇の魔王よりも格上のはず!
「メ゛ェェェェェェェっ゛!!」
羊男は一切しゃべらずに薄気味悪い声を上げるだけだった。この状況を見て、余裕を見せつけているのだろうか? 俺はともかく、みんな傷つき息も絶え絶えだ。猿の魔王は敵意をなくしているとはいえ、向こうからすれば絶好のチャンスだろう。そういうのが一切わからないことが更に不気味さを強調している。
「どういうつもりだ、ハリス! 俺が負けたから始末しに来たっていうのか? そのつもりなら俺も容赦しないぞ!」
羊男は顔を上げ、ニッと笑った後、姿を消す。気付いたときには俺と猿の魔王の目の前に現れた。一瞬だった。猿の魔王の命を狙っているのは明らかだったから、俺は妨害に入る!
「メ゛ェェェェェェェっ゛!!」
「味方殺しなんかさせないぜ!」
猿の魔王との間に割って入り、剣で攻撃を受け止める。間一髪だった。その時初めて相手の武器の正体がわかった。小型の短刀だ。しかも戦闘用には見えない。チャチなナイフで、普通の剣を受け止めたりしたら簡単にへし折れそうなくらいだ。こんな物でも猿の魔王の太い腕を切り落とすぐらいだから切れ味は相当あるだろう。
「メ゛ェェっ゛!」
羊男は短く啼いた。と同時に手元に異変を感じ視線を落としてみると、剣に切れ込みが入っていた。丁度、相手の短刀と合わせている部分からスッパリと切れている!
「なっ!? そんなバカな!?」
あり得ない事が発生した。持ち主が死なない限りは壊れないと言われていた剣を壊された! これはどういう事なんだ! 肝心の武器が壊されてしまったら、戦いようがない! これは大変なことになってきたぞ!
「メ゛ェェっ゛!」
動揺している俺に踵を返し、猿の魔王に向き直った。猿の魔王も応戦するが、ナイフによって切り刻まれ、残っていた方の腕も切り落とされた!
「メ゛っ!!」
羊男はがら空きになった猿の魔王の胸に腕を突き刺した! 黒い血が辺りに飛び散り、突き刺した当人も血まみれになった。
「メ゛ェェっ!」
不気味な笑いを上げながら、貫いた手を強引に引き抜いた。その手には水晶が握られていた。デーモン・コアだ!
「チェストォォォォォッ!!!!!!」
大声を張り上げながら迫り来る大きな威圧感! その声の主は……総長だった! 声と共に手にした巨大な剣を一閃させた。
「メ゛っ!!」
「今度こそは逃がさんぞ、ハンニバル・ハリス!!」
間一髪で攻撃を避けたハリスは総長を目の前にして、身構えていた。様子からすると想定外の出来事だったようだ。当人も十分不意打ちと言ってもいいような乱入の仕方だったのだが。
「我が剣、十字剣の錆となるがいい!!」
総長の十字剣は大剣に二本の大きな刃が交差するような形状になっている。この刃が大剣から分離し、ハリスを取り囲むように展開した。ロッヒェンの炎剣はこれを元にして作られたらしい。確かに似ている。
「三位一体の制裁!!」
複数の刃が羊男を襲う! 片腕を切り飛ばされつつも、猛烈な攻撃の嵐を軽業師のように複雑な動きで回避している! それどころか、最終的に真上に跳躍し総長と刃を交えて着地した。
「相変わらず器用なことをしよる! 我が剣の猛攻を躱すとは!」
「メ゛っ!!」
突如、視界全てが真っ暗になった。突然の出来事だったので、一瞬何が起きたのかわからなかった。しかし、さっきまでの戦いで似た現象は見た。ブリーリョなんとかっていう目眩ましだ。多分アレだ! でも気付くのが遅かったかもしれない。この隙にハリスが逃亡を図っているかもしれなかったからだ!
「ムウッ!? 逃げおったか!」
総長の出現に危機感を感じたのか、あっさりと逃げてしまった。気付けば、切り落とされた腕も消え失せていた。あの腕にはコアが握られていたはず。多分アレを奪うことが目的だったのだろう。でも一体、何のために? 謎は深まるばかりだった。
0
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる