243 / 331
第3章 第2幕 はぐれ梁山泊極端派【灰と青春と学園モノ!!】
第243話 エゲつない程の格の違い
しおりを挟む「ファルちゃん!」
「勇者にしては随分と痛々しい姿になってるじゃないか、相棒?」
魔術師の総本山とも言える魔術学院。そこには一度も姿を現さなかったし、噂とか評判の話も聞いたことはなかった。学長の身内の可能性が高いのに。その張本人がここに現れた。そしてそのとなりには小柄でふくよかな女性…メイちゃんがいた。
「が、学長? 学長が何故ここへ?」
ラヴァン、いや、引き連れている魔術師連中やアンネ先生、トニヤ、ジム、ここにいる全員が驚愕の表情を浮かべていた。学長の顔はみんな知っているので、驚きを隠せないようだ。
「あのクソ野郎に似てるってか? バカ言え! あんなのと一緒にするな! このローブの剣十字が目に入らねえか! 学長と決別した放蕩息子の噂くらいは聞いたことあるだろ?」
「わ、若様なのですか?」
魔術師連中が口々に“若様”とつぶやいている。みんなファルの事を知らないわけではないようだが、その姿を見たのは初めての人間が多いようだ。学長自身もノーコメントと言っていたように、ファルちゃんの事自体、この学院ででは禁忌視されていた可能性はある。
「裏切りの後継者が何故ここへ? あなたは学院への立ち入りを禁じられているはず! 学長のご子息とはいえ、あなたも拘束させて頂く!」
「は? 何抜かしてんだ、このタコ! テメエら如きに俺を拘束出来ると思ってんのか?」
「な、何を!」
ファルを捕らえると宣言するラヴァン。それに真っ向勝負で迎え撃とうとするファル。その間にファルはメイちゃんへと指示を出し、俺の所へと向かわせてきた。
「勇者さん、応急処置をします!」
「すまない。世話をかけるな。」
「いいですよ、これくらい。それよりも無茶しすぎです! これを知ったら、エルちゃんが悲しみますよ!」
「そうだよな。つい、後先考えず、無茶しちまった。」
メイちゃんは治療魔法を使い始める。とはいえ、手首をそのままつなげようとはせず、止血する事に専念しているようだ。時間の経過と共に出血が収まっていく。本格的な治療は後からということだろう。骨の治療は魔法でも手間がかかると聞いたことがある。それよりも失血で死ぬのを食い止めるのが先決だろうし。
「彼を捕らえろ! 手段は問わない! ただし、命だけは取るなよ!」
ラヴァンが部下達に命令を下し、自身も魔法の準備をしている。それから次々とファルの動きを制限するような現象が起こり始めた。地面の砂が足に纏わり付いたり、砂浜の向こう側から草が伸びてきて腕に絡みついたりしていた。ファルはその現象に対しても全く動じずに、ふてぶてしい態度を崩さなかった。
「そろいもそろって、この程度かよ? ショックウェーブ!!」
(ブワッ!!!!)
轟音と共に風が巻き起こり、魔術師の集団はまとめて吹き飛ばされた。敵の魔法で動きを制限され、魔法を使う素振りを全く見せなかったのにこの威力! この一通りの流れだけで、雑魚との格の違いを見せつけている!
「ご不満かな? では、これならどうだ! グラビティ・フィールド!」
(ヴォォォォン!)
唯一、吹き飛ばされてもすぐに持ち直したラヴァンが魔法を発動させた。鈍い音と共にファルが砂にめり込む! 重力を強くする魔法のようだ。空間を操る魔法を得意とするラヴァン定番の魔法だ。俺も学院内で何度か喰らった事がある。逃げ足を止めるのによく使う手段だ。
「雑魚共をまとめ上げる立場のお前でもこの程度か? 全く学院ってのは、能力主義な割には大したヤツがいないな?」
「私を舐めるな!」
(ヴヴヴォォォォォォン!!!)
ファルの一言にキレたラヴァンが重力魔法を強めた。よりファルの体が砂にめり込んでいく! 下手したら体が潰れるんじゃないのかというくらいに。
「あぁ!? 舐めてんのはテメエの方だろうが! ダウン・バースト!!」
(……ッ、ドンッッッ!!!!!)
「ぐはっ!?」
ラヴァンが見えない力で地面に叩きつけられた。同時にラヴァンの足元の砂も巻き上がる! 見たところ、真上から空気の塊を叩きつけたのかもしれない。ファルは風魔法で重力魔法に似た効果を再現したんだろう。これも格の違いを見せつけるために違いない!
「重力制御か? 大げさな名前のクセに大したことねえな? こんなモン、風属性で十分余裕で再現できるぜ。」
「……くうっ!?」
学院勢の魔術師達がファルたった一人に手も足も出ない状態にされていた。俺は人生で初めて見た魔術師がファルだったから、アイツを基準にしていたんだが、アイツ、ホントとんでもないんだな。一般の魔術師は割と常識的な強さだったのだ。誰でも超人的ってワケじゃないのが良くわかった。
「かくなる上は……、我が最大の秘術でも喰らえ! スター・バースト!!」
ラヴァンは最大火力の魔法を放った。秘術って割には、頻繁に披露しているような気がするんだが? それはそうと、ファルはコレをどう防ぐのか? それが気になってしょうが無かった。無防備に喰らって消えるなんて思っちゃいない。俺は相棒だから、それが良くわかる!
0
あなたにおすすめの小説
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
盾の間違った使い方
KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。
まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。
マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる