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第3章 第3幕 はぐれ梁山泊極端派【絶望と憎しみと学園モノ……と大戦争!?】
第266話 囚われの闇戦士
しおりを挟む「オイ! オレをさっさと殺せ! オレに何をしようっていうんだ!」
オレは捕まってしまった。牢屋に入れられ手足を鎖でつながれている。鎧も外され脱出は出来そうにない。
「まあ、落ち着き給え、デュオ・マックスウェル君。いや、エピオン君と呼んだ方が良いかね?」
「うるさい! 名前なんて好きに呼べばいい!」
オレとしたことが潜入先で捕らえられた。相手は銀仮面だ。ヤツ一人なら勝てただろうが、ヤツには相棒がいた。金色の鎧を着たヤツに不意打ちされ、気が付いた時には捕らえられていたのだ。
「掃除屋の拷問を経たというのに、元気なものだ。部下に欲しいくらいだ。」
「アンタなんかには従わない!」
傲慢不遜な痩せっぽちのエルフ、この男が学院の学長、ラルスだ。ヴァル様の話では七賢人メンバーの疑いがある人物でもある。かつてヴァル様を貶め、「野心多き奸雄」とまで称し、討伐対象としたという。ヴァル様が世界に仇為す者と見なされる切っ掛けを作ったのが、この男だという。
「君の鎧は素晴らしい物だな。実に良く作られている。“魔骸布”シリーズ強化の参考にさせてもらうとするよ。」
「フン! やっぱりアレもデーモン・アーマーと同じ仕組みの鎧なのか! なんであんな物が複数も存在している?」
「同じとは一言も言っていないはずだが? 一級品を作ろうとすれば、自ずと性質は似てくる物だよ。憶えておき給え。」
あの銀と金の鎧は明らかにオレのデーモン・アーマーと同じだ。アクセレイションを使用したオレの動きに易々と追いついてくる。ただ、違う点は闇系の能力を全く使用していないというところだ。動力源が異なる可能性はある。デーモン・コアが何個も存在しているはずがないしな。
「鎧のデータは取り終わったんだろう? オレを生かしておく理由なんてあるのか?」
「聞きたいのかね? 一つは掃除屋の腹いせだよ。額冠と剣を盗まれ、彼はご立腹だったしな。まあ、あの件は他に思い当たる事もあるので、私自身は君のことを責めようなどと思ってはいない。“彼”に感謝しておくことだ。君の仕事を手助けした黒幕がいるということだよ。」
「何の話だ?」
「さあ? 私の独り言だとでも思っておき給え。“彼”の事は君の主さえも知らぬだろうからな。」
オレの手助けをしたヤツがいる? 何者だ?ヴァル様は何も言っていなかったし、それらしい人物を学院で見かけたこともない。通りで容易く盗めると思った。オレはそいつに嵌められたのか?
「もう一つの理由、それは古い友人を誘き寄せるためだよ。その鎧の制作者をね。」
「なんであの男に……、」
「わたシに用なンて、ドういウ風のふきマワシでスカ?」
鎧の制作者、オプティマが姿を現した。オレはこの男を呼び出すためのダシに使われたというわけか。クソッタレめ!
「やあ、久し振りだな、キョウショ・クロス。30年ぶりだったか?」
「ソの名前は捨てマしタ! 今ハ、オプティマ・マッド名義で活動していルのデす!」
「まあ、そう言うな。私にとってはこの名前の方がなじみ深いのだよ。私は当時から君のことは評価していた。闇属性の研究者は貴重だったからね。しかも、私に匹敵する頭脳の持ち主だ。今でも“仲間”と思っているよ。」
「私はアなタに興味などゴざいマせン! 死体とデーモン・コアにシか興味ないノデす!」
「はっはっはっ! 相変わらずだな、君は!」
あの名前は偽名だったのか? どうでもいいことだが、学長と知り合いだったのは以外だ。世間から疎まれヴァル様に拾われたとは聞いていたが、あれだけおかしいんだ。世間から嫌われてもおかしい話じゃない。自業自得だ。オレや姉さんとは違う。
「とうとう完成させたのだな? “コア理論”を導入したパワード・アーマー。賢人会議、特に法王庁の猛抗議にあって、計画は頓挫していた物と思っていたが、成就したのだな。これについては祝辞を述べさせてもらうよ。」
「馬鹿おっしゃイ! あなタ自身も紛い物を完成させたノでしょウ? 盗人猛々しいトは良く言っタものデス!」
「君を尊敬しているからだよ? 君の消息も不明になっていたし、君の意志を継ぐつもりで研究を始めたのだよ。それ以外に“コア理論”は私の探求する“アストラル理論”の核心に迫るには重要な要素だったのだよ。」
正直、魔術師連中の考えることは良くわからない。究極的には魔力の根源に到達するとかなんとか、非現実的な事ばかり考えている。その前に、このロクでもない世界をどうにかしろってのがオレの本音だ。魔術師ってのは自己中の屑野郎ばっかりだ! この学院に来てからよりその考えが強まった。
「君相手だから敢えて言おう! 私はついに完成に至ったのだ。それは近いうちに君も目撃することとなろう!」
何のことだかわからない。だが、ヤツの戯言を聞いているうちにオプティマが鎖を腐食させ、脱出するように工作していた。全く、抜かりのない男だ。ありがたく、利用させてもらう!
「ダーク・ソード・インパルス!!」
ヤツが自分の話に酔いしれている隙を狙って、闇の刃をヤツの喉元に食い込ませた! しかし、手応えがない!
「フフ、惜しかったな。本体であれば私の肉体は滅んでいただろう。生憎、これは実体ではない。」
ヤツの姿はかき消えてしまった。幻術を使っていたのか、口惜しい! オレの感覚すら欺いていたなんて!
「焦るな。もうじき本領を発揮した私自身と対峙する事になる。そのために私は君たちの様なゲストを多く招いていたのだよ。」
奴の声は意味深な言葉を残し、それっきり気配すらしなくなった。オレ達の相手は終わりということだろう。次、現れたときには全力で叩き潰してやろうと、オレは心に誓った!
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